眼瞼下垂の基礎知識

後天性眼瞼下垂とは|原因の6タイプと危険なサイン、外傷性・治療の考え方

髙田 尚忠

後天性眼瞼下垂(こうてんせいがんけんかすい)とは、生まれつきではなく、成長後に上まぶたが下がってくる状態です。
加齢による挙筋腱膜のゆるみや、長年のコンタクトレンズ使用などが主な原因ですが、神経・筋肉の病気が隠れている場合もあります。

後天性眼瞼下垂では、上方の視野が狭くなる、目が開けにくい、額の筋肉を使って眉を上げるなどの症状が現れます。
治療方法は原因によって異なり、挙筋腱膜を修復する手術が適した場合もあれば、原因疾患の治療を優先する場合もあります。

この記事では、後天性眼瞼下垂の原因、先天性眼瞼下垂との違い、注意すべき症状、検査、手術や保険適用の考え方について、眼科医・髙田尚忠が医学的な根拠をもとに解説します。

  • いちばん多いのは腱膜性:加齢やコンタクトレンズで、まぶたを上げる「すじ」がゆるむタイプ。手術で治せます。
  • 急に下がった・物が二重に見えるときは、神経の病気を先に調べます。
  • 治療はタイプで変わる:原因を見分けることが、治療の第一歩です。

執筆:髙田 尚忠(高田眼科 院長/眼科医・眼形成外科) 最終更新:2026年10月

後天性眼瞼下垂とは:先天性との違い

このページ後天性眼瞼下垂

生まれたときは問題なく、成長してから下がってきたもの。眼瞼下垂の大半はこちらです1。両目に起こることも多く、まぶたを上げる筋肉の力は保たれていることが多いのが特徴です2。

別のページ先天性眼瞼下垂

生まれつき、まぶたを上げる筋肉の発達が弱いもの。片目のことが多く、筋肉の力そのものが弱い点が大きな違いです2。

先天性眼瞼下垂とは
似ているが別物偽眼瞼下垂

皮膚のたるみや眉の下垂、目の位置の違いなどで、下がって「見える」状態。まぶたの縁そのものは下がっていません1。

偽眼瞼下垂とは/まぶたのたるみとの違い
髙田尚忠医師
髙田尚忠医師

診察をしていると、「昔はもっと目が大きかった」「最近、目が細くなってきた」とお話しされる方が少なくありません。

加齢による眼瞼下垂は、単純にまぶたを持ち上げる筋肉が弱くなるだけでなく、筋肉の力をまぶたに伝える腱膜が緩むことが重要な原因です。

そのため、筋肉そのものの働きが比較的保たれていれば、腱膜を適切な位置に固定し直すことで、まぶたの開きを改善できる可能性があります。

後天性眼瞼下垂の原因:主な5つの病態と手術・薬剤の影響

眼瞼下垂のタイプ別の内訳:腱膜性が半数を超える
腱膜性60%
外傷性11%
先天性10%
腫れ・できもの9%
神経の病気6%
筋肉の病気4%

シンガポールの専門施設で手術の相談に紹介された251人。オレンジは参考として示した先天性(文献1に収載)1

最も多い腱膜性

まぶたを上げる筋肉の先の「すじ(腱膜)」がゆるむ・外れる。加齢、ハードコンタクト、目をこする習慣が主な原因です。

腱膜性眼瞼下垂/コンタクトとの関係
けが・事故外傷性

まぶたや頭部のけがのあとに起こる。筋肉・すじ・神経・傷あとのどこが傷んだかで経過が変わります。

このページの「外傷性眼瞼下垂」へ
重みで下がる腫れ・できもの(機械性)

まぶたの腫瘍やしこり、強い腫れの重みで持ち上がらなくなる。原因を取り除くことが治療です1。

眼瞼腫瘍の切除
要注意神経の病気(神経原性)

動眼神経麻痺、ホルネル症候群、重症筋無力症など。脳の病気が隠れていることがあります。

動眼神経麻痺/ホルネル症候群/重症筋無力症
両目がゆっくり筋肉の病気(筋原性)

慢性進行性外眼筋麻痺や眼咽頭型筋ジストロフィーなど。目の動きやのみ込みにくさを伴うことがあります6。

筋原性眼瞼下垂
治療のあとに手術・目薬が関係するもの

白内障や緑内障の手術のあと、緑内障の目薬(プロスタグランジン系)の長期使用で起こることがあります1。

内眼手術後/緑内障の目薬と眼瞼下垂
髙田尚忠医師
髙田尚忠医師

長年ハードコンタクトレンズを使用されている方や、白内障手術を受けた方に眼瞼下垂が見られることがあります。

ただし、これらの経験があるからといって、それだけが原因とは限りません。

加齢による腱膜の変化や皮膚のたるみなど、複数の要因が重なっていることもあります。

私は診察の際、過去のコンタクトレンズ使用歴や眼科手術歴だけでなく、現在のまぶたの状態を総合的に評価することを大切にしています。

後天性眼瞼下垂で注意すべき危険な症状

次のどれかに当てはまる場合は、早めに眼科を受診してください

  • 数時間〜数日のうちに急に下がった
  • 物が二重に見える、目が外側に寄っている
  • 片方の瞳だけが大きい、または小さい
  • 強い頭痛や目の奥の痛みを伴う
  • 朝は軽く、夕方や疲れたときに極端に悪くなる

動眼神経麻痺では脳動脈瘤、ホルネル症候群では腫瘍や脳卒中が原因のことがあり、検査を急ぎます1。詳しくは「まぶたが下がる原因と受診の目安」をご覧ください。

神経が原因の眼瞼下垂の内訳
動眼神経麻痺36%
重症筋無力症29%
神経の再生異常14%
ホルネル症候群7%

手術の相談に紹介された眼瞼下垂のうち、神経が原因だった例の内訳(文献1に収載)1

多くの場合は心配の少ないタイプ

4人に3人 原因がはっきりしない眼瞼下垂で専門外来に紹介された人のうち、腱膜性だった割合 カナダの神経眼科外来、60人3
重症筋無力症を疑う手がかり

この研究で重症筋無力症と診断された方の10人中9人に、物が二重に見える症状がありました3。

片目だけで、ほかの症状がない場合

目の動きやまばたきの力にも異常がなければ、重症筋無力症の可能性は低いとされています3。

髙田尚忠医師
髙田尚忠医師

私が眼瞼下垂の診察で特に注意しているのは、まぶたが「いつから、どのように下がったのか」という点です。

数年かけてゆっくり下がった場合と、昨日まで普通だったまぶたが急に下がった場合では、考えるべき原因が異なります。

特に、突然の眼瞼下垂に物が二重に見える、瞳孔の大きさが左右で違う、強い頭痛があるといった症状を伴う場合は、動眼神経麻痺などの重大な疾患が隠れている可能性があります。

こうした場合には、眼瞼下垂手術を考える前に、速やかな原因精査が必要です。

外傷性眼瞼下垂:けがによる後天性眼瞼下垂

交通事故や転倒、まぶたの切り傷、頭部のけがのあとに起こる眼瞼下垂です。「外傷性」とひとまとめにされがちですが、実際には傷んだ場所によって4つに分かれ、見通しも治療も異なります4。

筋肉が傷ついた筋肉の損傷

ガラスや刃物でまぶたを上げる筋肉が切れたもの。最も多く、回復に時間がかかります。

すじが外れた腱膜の損傷

まぶたを強く引っぱられた、大きな内出血で伸ばされたなど。見通しが最も良いタイプです。

傷あとが引っぱる瘢痕(はんこん)

傷あとが硬くなり、まぶたの動きを妨げるもの。閉じにくさやドライアイに注意が必要です。

神経が傷ついた神経の損傷

頭部や首のけがで、動眼神経や交感神経が傷んだもの。自然な回復を待つ期間が必要です。

外傷性眼瞼下垂55人の内訳
筋肉の損傷18人
腱膜の損傷16人
瘢痕14人
神経の損傷7人

米国の大学病院で20年間に治療された眼瞼下垂648人のうち、外傷によるもの4

けがの直後に、あわてて手術をする必要はありません。

多くのタイプで、しばらくすると自然に少し持ち上がってきます。神経の損傷では少なくとも3か月、改善が止まるまで待ってから手術を考えるとされています4。筋肉のすじが完全に切れた例で、9か月後に力が戻ってきたという報告もあります5。

見通し手術を受けたのは約3人に2人

改善が止まった段階で手術を行い、最終的にはどのタイプでもまぶたの高さが改善していました4。

例外深い切り傷は早めに相談を

すじが瞼板から切り離されている場合は、傷が硬くなる前に縫い直すことが勧められています5。

目の手術のあとに下がった場合は「内眼手術後の眼瞼下垂」、ほかの病院での眼瞼の手術のあとに下がった場合は「眼瞼下垂の再手術(修正手術)」をご覧ください。

後天性眼瞼下垂の診断と検査

  1. いつから、どのように下がったか
    急か、ゆっくりか。けがや目の手術、コンタクトの使用歴。日によって変わるか。
  2. 目の動きと瞳の大きさ
    二重に見えないか、左右の瞳の大きさが同じか。神経の病気を見落とさないための確認です。
  3. まぶたの高さと筋肉の力
    まぶたの縁の位置と、まぶたを上げる筋肉の動く幅を測ります。
  4. 疲れやすさ
    上を見続けたときに下がってこないか。重症筋無力症の手がかりになります3。
  5. 必要に応じて他科と連携
    神経の病気が疑われる場合は、血液検査やMRIを脳神経内科・脳神経外科と連携して進めます。

ご自宅でできる確認方法は「眼瞼下垂のセルフチェック」をご覧ください。

髙田尚忠医師
髙田尚忠医師

眼瞼下垂の患者さんは、無意識におでこの筋肉を使ってまぶたを持ち上げていることがあります。

診察では、眉毛の位置や額の筋肉の使い方も確認します。普段は目が十分に開いているように見えても、眉を持ち上げる力を抜いていただくと、隠れていた眼瞼下垂が明らかになることがあります。

まぶたの開き具合だけでなく、眉や額との関係まで評価することが、適切な治療方針を考えるうえで重要です。

後天性眼瞼下垂の治療方法:原因別の選び方

手術の長持ちしやすさを左右するのは、術式よりも「原因のタイプ」です。

一度うまく上がった後に下がり直すリスクは、腱膜性以外のタイプで腱膜性の約2.4倍でした7。

腱膜性挙筋前転法で固定し直す

ゆるんだすじを瞼板に固定し直します。筋肉が保たれているので、結果が安定しやすいタイプです。

腱膜性眼瞼下垂の治療
筋原性閉じにくさに配慮して控えめに

当院では挙筋前転法が基本です。まばたきの力が弱い方が多いため、目を守ることを優先して上げすぎないようにします6。

筋原性眼瞼下垂
神経原性原因の病気の治療が先

まぶたの手術は、原因の治療が終わり、状態が落ち着いてから検討します。

動眼神経麻痺/ホルネル症候群
重症筋無力症まずお薬の治療

内科の治療で十分に良くならない場合に、手術を検討します6。

重症筋無力症と眼瞼下垂
外傷性回復が止まるのを待つ

自然な改善が止まった段階で、傷んだ場所に合わせた手術を選びます4。

手術・目薬が関係原因を確かめてから

時間とともに戻るものもあるため、経過と原因を確認してから治療を決めます1。

緑内障の目薬と眼瞼下垂

費用と保険

保険診療基準を満たす後天性眼瞼下垂

診断がつき、視界や生活に支障がある場合は健康保険の対象です。

眼瞼下垂手術の費用
自費診療筋肉の力が極端に弱い場合など

後天性でも、まぶたを上げる力が先天性と同じくらい失われている場合や、仕上がりに審美的なご希望がある場合は自費診療です。

髙田尚忠医師
髙田尚忠医師

私は眼瞼下垂手術において、まぶたをしっかり開けられるようにすることはもちろん、まぶたの組織に必要以上の負担をかけないことも大切にしています。

特に、ミュラー筋と眼瞼挙筋をむやみに剥離せず、腱膜を固定する際にもミュラー筋への通糸をできるだけ少なくするよう心がけています。

手術後の違和感などを完全になくせるわけではありませんが、こうした細かな操作の積み重ねが、より負担の少ない手術につながると考えています。

後天性眼瞼下垂についてよくある質問

ストレスでまぶたが下がることはありますか。

ストレスそのものが、まぶたのすじを傷めるという根拠はありません。疲れや寝不足で一時的に重く感じることはあります。ただし、日によって大きく変わる、夕方に極端に悪くなる、物が二重に見える場合は重症筋無力症などの可能性があるため、受診してください3。

片目だけ下がってきました。

腱膜性でも片目から目立ち始めることはよくあります。急に下がった場合や、瞳の大きさの違い、複視を伴う場合は、神経の病気を先に確かめます(「片目だけまぶたが下がる原因」)。

何科を受診すればよいですか。

まずは眼科で原因を見分けてもらうのが近道です。神経の病気が疑われれば専門科と連携します(「眼瞼下垂は何科を受診すべきか」)。

自然に治りますか。

腱膜性は自然には戻りにくい状態です。一方、外傷や目の手術のあと、ボトックス注射のあとなどは、時間とともに改善することがあります1,4(「眼瞼下垂を放置するとどうなる」)。

まぶたの下がりが気になる方へ

どのタイプの眼瞼下垂か、急いで調べるべき病気が隠れていないか。まず原因を見分けたうえで、必要な治療だけをご提案します。浜松と名古屋で、全国からのご相談をお受けしています。

高田眼科(浜松)〒435-0052 静岡県浜松市中央区天王町字諏訪1981-3
イオンモール浜松市野 1F
053-466-5551
フラミンゴ眼瞼・美容クリニック(名古屋)〒460-0003 愛知県名古屋市中区錦2丁目11-27
TH錦ビル 6階
052-201-9222
執筆:髙田 尚忠(たかだ なおただ)
高田眼科 院長。岡山大学医学部卒業。眼科医・眼形成外科医として眼瞼下垂手術を専門とし、関連クリニックを含め年間2,000件以上の眼瞼手術に携わっています。

参考文献

PubMed収載論文をもとに作成しています。すべて全文を確認しています。

  1. Bacharach J, Lee WW, Harrison AR, Freddo TF. A review of acquired blepharoptosis: prevalence, diagnosis, and current treatment options. Eye (Lond). 2021;35(9):2468-2481. doi:10.1038/s41433-021-01547-5
  2. Lee YG, Son BJ, Lee KH, et al. Clinical and demographic characteristics of blepharoptosis in Korea: a 24-year experience including 2,328 patients. Korean J Ophthalmol. 2018;32(4):249-256. doi:10.3341/kjo.2017.0118
  3. Donaldson L, Issa M, Dezard V, Margolin E. Low probability of myasthenia gravis in patients presenting to neuro-ophthalmology clinic for evaluation of isolated ptosis. Eur J Ophthalmol. 2023;33(1):524-529. doi:10.1177/11206721221107300
  4. Jacobs SM, Tyring AJ, Amadi AJ. Traumatic ptosis: evaluation of etiology, management and prognosis. J Ophthalmic Vis Res. 2018;13(4):447-452. doi:10.4103/jovr.jovr_148_17
  5. Czyz C, Blair K. Spontaneous improvement of levator palpebrae superioris function after traumatic transection. Trauma Case Rep. 2020;30:100375. doi:10.1016/j.tcr.2020.100375
  6. Park RB, Akella SS, Aakalu VK. A review of surgical management of progressive myogenic ptosis. Orbit. 2023;42(1):11-24. doi:10.1080/01676830.2022.2122514
  7. Cohen D, Passaro ML, Grachova E, et al. Long term risk of recurrence of ptosis repair: implications for surgical counseling and follow-up. Front Ophthalmol (Lausanne). 2026;5:1689010. doi:10.3389/fopht.2025.1689010

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このブログの執筆者
髙田尚忠
髙田尚忠
高田眼科 院長|フラミンゴ美容クリニック/銀座Jクリニック/あさ美皮フ科 眼瞼手術担当
岡山大学医学部卒業後、郡山医療生活協同組合 桑野協立病院などの様々な医療機関を勤務し、現在は高田眼科の院長を務めつつ、関連クリニックの名古屋のフラミンゴ眼瞼・美容クリニック、銀座のJ clinic、亀戸のあさ美皮フ科においても、眼瞼下垂手術を中心に年間2,000件以上の眼瞼手術に携わっています 「見え方(視機能)」と「日常の快適さ」を回復することを第一に、診察では原因(加齢・コンタクト・体質・既往手術など)を丁寧に整理し、必要な治療を分かりやすく説明すること心がけています。 このブログでは、眼瞼下垂の症状、治療選択、術後経過で不安になりやすいポイントなどを、専門医の立場からできるだけ具体的に発信しています。
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