眼瞼下垂の基礎知識

白内障・硝子体・緑内障の手術後の眼瞼下垂|自然に戻る? 治療のタイミングと手術を眼形成外科医が解説

髙田 尚忠

白内障の手術を受けてから、片方のまぶたが重い。硝子体や緑内障の手術のあと、目が小さくなった気がする。目の手術のあとに起こる眼瞼下垂は「術後眼瞼下垂」と呼ばれ、決して珍しいものではありません。手術の種類ごとの起こりやすさ、自然に戻るかどうか、治療のタイミングを解説します。

  • 手術直後の下がりは、多くが自然に戻る:白内障手術の翌日にまぶたが下がっていた人も、ほとんどが1〜3か月で元に戻りました。
  • 6か月たっても残る下がりもある:はっきり下がったまま残ったのは、白内障手術で約3%、硝子体手術や緑内障手術では約1割でした。
  • 残った下がりは手術で治せる:まぶたを持ち上げる腱膜を固定し直す「眼瞼挙筋前転法」で治療します。

執筆:髙田 尚忠(高田眼科 院長/眼科医・眼形成外科) 最終更新:2026年10月

目の手術のあとにまぶたが下がる「術後眼瞼下垂」とは

白内障手術、硝子体手術、緑内障手術など、目の中の手術(内眼手術)のあとに、手術した側のまぶたが下がることがあります。手術直後の一時的な下がりと、時間がたっても残る下がりがあり、研究では手術から6か月以上たっても残るものを「持続する術後眼瞼下垂」として区別しています1,2。

白内障手術のあと、まぶたが下がっていた人の割合
手術の翌日13.6%
1か月後1.7%
3〜6か月後0%

インドの病院で、点眼麻酔で白内障手術を受けた250眼を6か月追った研究。開瞼器の種類による差はありませんでした3

手術直後の下がりは、まず数か月様子をみます。

翌日に下がっていても、多くはまぶたの腫れや麻酔の影響が引くとともに戻ります。一方で、翌日に下がっていた人ほど6か月後にも残りやすいという報告もあり4、経過をみておくことが大切です。

手術の種類によって、起こりやすさが違う

手術から6か月以上たっても、まぶたが2mm以上下がったままだった人の割合
白内障手術3.2%
硝子体手術11.3%
緑内障手術12.9%

イランの同じ研究グループが、同じ基準で行った3つの研究(白内障313眼、硝子体53眼、緑内障124眼)1,5,2

白内障手術多くは一時的。残るのは数%

現在の小さな切開の手術を調べた研究をまとめると、下垂の頻度は0〜10.7%で、5つの研究のうち4つは4.1%以下でした。点眼麻酔だけで行った研究では、下垂はほとんどみられませんでした6。日本の研究では、切開を上に置いても横に置いても差はありませんでした7。

硝子体手術網膜剥離・黄斑の手術など

持続する下垂は約1割で、わずかな下がりまで含めると半数近くにみられました5。手術後1週間が最も下がりやすく、多くはその後戻ります8。強膜バックリング(網膜剥離の手術)後に下垂が起こり、3か月で自然に戻った報告もあります9。

緑内障手術トラベクレクトミー・チューブ手術

トラベクレクトミーで13.7%、チューブを入れる手術で10.8%に持続する下垂がみられました2。福井大学の研究では、片目だけの眼瞼下垂で手術を受けた人は、その目に緑内障の濾過手術を受けていることが多く、関係の強さを示す値(オッズ比)は17.6と、調べた要因の中で最も大きいものでした10。

目の注射黄斑の病気に対する注射

開瞼器を使って注射をくり返しても、下垂は増えなかったという研究が2つあります11,12。一方で、1年でまぶたの高さが平均0.6mm下がったという報告もあり13、結論は出ていません。

白内障手術も、片目だけの眼瞼下垂と関係していました(オッズ比2.07)10。緑内障の目薬(PG関連薬)を長く使っている場合は、目薬そのものがまぶたに影響することもあります。詳しくは「緑内障の目薬によるPAP(目のくぼみ・眼瞼下垂)」をご覧ください。

なぜ目の手術でまぶたが下がるのか

まぶたは、眼瞼挙筋という筋肉の先にある腱(すじ)、「挙筋腱膜」が瞼板(まぶたの縁の硬い板)を引き上げることで開きます。目の手術中や手術後に、この仕組みに負担がかかると考えられています。

よく挙げられる開瞼器による引き伸ばし

手術中は、開瞼器という器具でまぶたを大きく開いたまま保ちます。目を閉じようとする力に逆らって引き伸ばされることで、腱膜が瞼板から外れたり、伸びたりすると考えられています3,14。

麻酔まぶたの近くへの麻酔の注射

注射の麻酔薬が筋肉に影響することがあり、手術翌日の下がりの程度は、麻酔薬の量と関係していました4。

手術の操作目を下に向けておく糸

緑内障手術などでは、目を下に向けておくために、目の上側に糸をかけて引くことがあります。この牽引も原因の一つと考えられています2,3。

手術後まぶたの腫れ・炎症

手術後の腫れや炎症が長引くと、まぶたを上げる組織が弱ると考えられています10。手術後1週間の下がりの多くは、この影響です8。

ただし、手術時間や開瞼器の種類と下垂の関係ははっきりしておらず6、原因は一つではないと考えられています14。まれに、硝子体手術で使ったシリコンオイルがまぶたに漏れて、腫れと下垂を起こすこともあります15,16。

院長コメント:手術で見える腱膜の変化

目の手術のあとに下がったまぶたを手術すると、挙筋腱膜が瞼板から外れていたり、薄く伸びていたりすることがほとんどです。多くは強い癒着もなく、腱膜を瞼板に固定し直すことで、まぶたは上がるようになります。

術後眼瞼下垂が起こりやすい人

筋肉の力まぶたを上げる力が弱い人

白内障手術のあとに下垂が残った人は、手術前からまぶたを上げる筋肉の力(挙筋機能)が弱い傾向がありました1。

まぶたの高さもともと目がぱっちり開いている人

手術前のまぶたの位置が高い人ほど、手術後に下がる幅が大きい傾向がありました2,6。

性別男性(緑内障手術)

緑内障手術のあとの持続する下垂は、男性に多くみられました2。

経過手術翌日に下がっていた人

手術翌日の下がりの有無と程度が、6か月後の下垂を最もよく予測していました4。

いつまで様子をみる? 治療のタイミング

  1. 手術後1〜3か月:まずは経過をみる
    腫れや麻酔の影響による下がりは、この時期に戻ることがほとんどです3,8。目の手術を受けた主治医の診察を続けてください。
  2. 6か月たっても残る場合:持続する下垂と考える
    研究でも、6か月以上残るものを持続する下垂としています1,2。視界の上が見えにくい、額に力が入って疲れる、といった症状があれば、まぶたの診察を受けましょう。
  3. ほかの原因がないかを確認する
    物が二重に見える、瞳孔の大きさに左右差がある、夕方になると下がる、といった場合は、神経や筋肉の病気が隠れていないかを調べます。
  4. 手術でまぶたの高さを整える
    外れたり伸びたりした腱膜を、瞼板に固定し直します。

急に下がって、物が二重に見えるときはすぐに受診を

目の手術とは関係なく、脳の血管の病気などで神経がまひして、まぶたが下がることがあります。頭痛や物が二重に見える症状を伴う場合は、すぐに医療機関を受診してください。詳しくは「動眼神経麻痺による眼瞼下垂」「ホルネル症候群」「重症筋無力症」をご覧ください。

術後眼瞼下垂の手術

当院の基本眼瞼挙筋前転法

皮膚を切開して挙筋腱膜を見つけ、瞼板に固定し直します。加齢による眼瞼下垂(腱膜性眼瞼下垂)と同じ仕組みの下がりのため、同じ方法で治療します。

腱膜性眼瞼下垂の治療
緑内障手術後濾過胞(ブレブ)がある目

濾過手術の跡(濾過胞)があることは、眼瞼下垂の手術後の再発の要因の一つと報告されています17。濾過胞に負担をかけないよう配慮し、緑内障の主治医と連携して手術を計画します。

片目だけ左右差をそろえる

手術した目だけが下がっている場合は、反対側の目の高さを基準にして、左右差が少なくなるように調整します。

片目だけの眼瞼下垂

視界が狭くなるなど、生活に支障がある眼瞼下垂と診断された場合は、保険診療で手術を受けられます。費用は「眼瞼下垂手術の費用」をご覧ください。

よくある質問

白内障の手術を受けると、必ずまぶたが下がりますか。

いいえ。手術直後に一時的に下がることはありますが、残るのは数%です。研究では、6か月後にはっきり下がったまま残ったのは約3%でした1。

眼瞼下垂と白内障の両方があります。どちらの手術を先に受けるべきですか。

当院では、白内障の手術を先に受けていただくことをおすすめしています。白内障手術では開瞼器を使うため、先にまぶたを整えても、その後の手術でまぶたが再び下がるおそれがあるためです。白内障手術から数か月たち、まぶたの状態が落ち着いてから、眼瞼下垂の手術を検討します。

目の手術のあとに下がったまぶたも、保険で治療できますか。

視界が狭いなど、生活に支障がある眼瞼下垂と診断されれば、保険診療の対象です。原因が目の手術であっても変わりません。

黄斑の病気で目の注射を続けています。まぶたが下がりませんか。

注射をくり返しても下垂は増えなかったという研究が多く、心配しすぎる必要はありません。まぶたの重さが気になる場合は、注射を受けている主治医に相談してください11,12。

高田眼科の考え方

当院は眼科として、白内障・硝子体・緑内障の手術のあとに起こる眼瞼下垂を、目の状態とあわせて診察します。手術直後の下がりは経過をみたうえで、残った下がりには眼瞼挙筋前転法で腱膜を固定し直す手術を行います。緑内障の手術を受けた方は、緑内障の主治医と連携して治療を進めます。

目の手術のあと、まぶたの下がりが気になる方へ

まぶたの下がりが一時的なものか、手術が必要なものかを診察で見きわめ、治療方針をご提案します。

高田眼科(浜松)〒435-0052 静岡県浜松市中央区天王町字諏訪1981-3
イオンモール浜松市野 1F
053-466-5551
フラミンゴ眼瞼・美容クリニック(名古屋)〒460-0003 愛知県名古屋市中区錦2丁目11-27
ほうかつ錦ビル6階
052-201-9222
執筆:髙田 尚忠(たかだ なおただ)
高田眼科 院長。岡山大学医学部卒業。眼科医・眼形成外科医として眼瞼下垂手術を専門とし、関連クリニックを含め年間2,000件以上の眼瞼手術に携わっています。

参考文献

PubMed収載論文をもとに作成しています。文献2・3・7・10は全文、それ以外は抄録を確認しています。

  1. Kashkouli MB, Abdolalizadeh P, Es’haghi A, et al. Postoperative blepharoptosis after modern phacoemulsification procedure. Am J Ophthalmol. 2020;213:17-23. doi:10.1016/j.ajo.2019.12.023
  2. Nilforushan N, Es’haghi A, Jafari S, et al. Postoperative blepharoptosis after trabeculectomy versus Ahmed glaucoma valve implantation. J Curr Ophthalmol. 2022;33(4):388-393. doi:10.4103/joco.joco_120_21
  3. Palanivel S, Jayagayathri R, Yadalla D. The impact of speculum uses on the incidence of blepharoptosis in patients undergoing phacoemulsification surgery: a prospective analysis. Indian J Ophthalmol. 2025;73(2):210-213. doi:10.4103/IJO.IJO_1476_24
  4. Hosal BM, Tekeli O, Gürsel E. Eyelid malpositions after cataract surgery. Eur J Ophthalmol. 1998;8(1):12-15. doi:10.1177/112067219800800104
  5. Abdolalizadeh P, Kashkouli MB, Falavarjani KG, et al. Postoperative blepharoptosis after pars plana vitrectomy procedure. Ophthalmic Plast Reconstr Surg. 2021;37(5):431-434. doi:10.1097/IOP.0000000000001890
  6. Kilian R, Taloni A, De Ruvo V, et al. Blepharoptosis after modern phacoemulsification cataract surgery: incidence, risk factors and underlying mechanisms. J Cataract Refract Surg. 2026. Online ahead of print. doi:10.1097/j.jcrs.0000000000001997
  7. Tamaki R, Gosho M, Mizumoto K, et al. Influence of upper and temporal transconjunctival sclerocorneal incision on marginal reflex distance after cataract surgery. BMC Ophthalmol. 2016;16:95. doi:10.1186/s12886-016-0286-1
  8. Pongsachareonnont P, Hemarat K, Panjaphongse R, et al. Factors associated with the development of blepharoptosis after pars plana vitrectomy surgery. Semin Ophthalmol. 2022;37(4):509-514. doi:10.1080/08820538.2021.2006240
  9. Muste JC, Hwang CJ, Abraham J, et al. Spontaneous resolution of ptosis after scleral buckling. Retin Cases Brief Rep. 2026;20(4):533-535. doi:10.1097/ICB.0000000000001786
  10. Katsuo A, Iwasaki K, Takayanagi R, et al. Evaluation of risk factors for unilateral aponeurotic ptosis using the fellow eye as control: a retrospective study. Clin Ophthalmol. 2026;20:585186. doi:10.2147/OPTH.S585186
  11. Lee AY, Kovacs K, Orlin A, et al. Incidence of blepharoptosis following intravitreal anti-vascular endothelial growth factor injections. Am J Ophthalmol. 2024;265:236-240. doi:10.1016/j.ajo.2024.02.031
  12. Berco E, Ostrovsky M, Esomchukwu O, et al. Risk of ptosis following eyelid speculum assisted intravitreal anti-VEGF injections. Graefes Arch Clin Exp Ophthalmol. 2025;263(6):1711-1717. doi:10.1007/s00417-025-06763-3
  13. Bermudez-Castellanos I, Cruz Velasco A, Garcia DM, et al. Blepharoptosis after intravitreal anti-VEGF injections: a prospective study. Ophthalmic Plast Reconstr Surg. 2026;42(3):305-309. doi:10.1097/IOP.0000000000003085
  14. Mehat MS, Sood V, Madge S. Blepharoptosis following anterior segment surgery: a new theory for an old problem. Orbit. 2012;31(4):274-278. doi:10.3109/01676830.2012.681750
  15. Donker DL, Paridaens D, Mooy CM, van den Bosch WA. Blepharoptosis and upper eyelid swelling due to lipogranulomatous inflammation caused by silicone oil. Am J Ophthalmol. 2005;140(5):934-936. doi:10.1016/j.ajo.2005.05.028
  16. Deguchi Y, Maeno T, Hori Y, et al. Migration of intraocular silicone oil from the vitreous cavity into the upper eyelid causing ptosis. Case Rep Ophthalmol. 2014;5(2):226-230. doi:10.1159/000365647
  17. Sweeney AR, Dermarkarian CR, Williams KJ, et al. Recurrence following ptosis repair surgery: a multivariate analysis of risk factors. Orbit. 2025;44(2):154-162. doi:10.1080/01676830.2024.2396373
このブログの執筆者
髙田尚忠
髙田尚忠
高田眼科 院長|フラミンゴ美容クリニック/銀座Jクリニック/あさ美皮フ科 眼瞼手術担当
岡山大学医学部卒業後、郡山医療生活協同組合 桑野協立病院などの医療機関に勤務し、現在は高田眼科の院長を務めつつ、関連クリニックの名古屋のフラミンゴ眼瞼・美容クリニック、銀座のJ clinic、亀戸のあさ美皮フ科においても、眼瞼下垂を中心とした眼瞼手術に携わっています。眼瞼手術実績は2025年度2,000眼以上(高田院長の全拠点合計)です。 「見え方(視機能)」と「日常の快適さ」を回復することを第一に、診察では原因(加齢・コンタクト・体質・既往手術など)を丁寧に整理し、必要な治療を分かりやすく説明することを心がけています。 このブログでは、眼瞼下垂の症状、治療選択、術後経過で不安になりやすいポイントなどを、専門医の立場からできるだけ具体的に発信しています。
記事URLをコピーしました