後天性眼瞼下垂の症状「内眼手術後眼瞼下垂」
内眼手術後眼瞼下垂って?
「硝子体手術(しょうしたいしゅじゅつ)」、「白内障手術」、「緑内障手術」は、眼内を対象とした手術ですので、眼科では「内眼手術(ないがんしゅじゅつ)」と呼んでいます。
「内眼手術後眼瞼下垂(がんけんかすい)」とは、これらの手術が誘因となって発症する眼瞼下垂を指します。
まずは、それぞれの疾病について、簡単に説明しましょう。
①硝子体手術
硝子体とは、眼球のなかにある器官のひとつでガラス体とも呼ばれます。
無色透明なゲル状の組織で構成され99%が水分です。
この硝子体が混濁や出血をすることで網膜に光が入るのを邪魔したりすることがあります。
その場合には網膜剥離が合併していたりするので、緊急性が高く、硝子体とともに、出血などの濁りを取り除くと同時に、剥がれた網膜を復位する手術が硝子体手術です。
硝子体手術が必要なケースとしては、糖尿病網膜症に対する硝子体手術があります。
糖尿病網膜症は、進行すると、新生血管が発生します。
さらに、新生血管を取り囲むように増殖膜(線維性血管膜)ができます。
この「線維性血管膜」は網膜から立ち上がり、硝子体に癒着します。
増殖膜は、そのまま放置していると、網膜を引っ張るようになり、網膜剥離になります。
結果として、増殖糖尿病網膜症という段階になれば、硝子体手術が検討される理由となります。
②白内障手術
次に、白内障とは、カメラでレンズの役割をする水晶体の濁りによって、見にくい、まぶしい、かすむなどの症状を生む疾病です。
白内障手術を行うことで、濁った人工水晶体を超音波で取り除き、人工のレンズを入れることで、視力の向上を期待する手術です。
白内障は、進行すると、隅角が狭くなり、急激な眼圧上昇を引き起こします。
急性緑内障発作と言われる状況で、早急に白内障手術を行うことで隅角を広げ、眼圧を低下させることにより視神経の障害を防いで、症状の進行を抑制することができます。
③緑内障手術
緑内障とは、何らかの原因により、脳に色や形などの情報を送る視神経に障害が起こり、視野が狭くなっていく病気です。
言い換えれば、視神経が障害されることで、網膜からの電気信号(目で見た情報、視覚情報)がスムーズに脳に伝わらなくなる疾病で、ほおっておくと、病状が悪化して、視力を失ってしまいます。
厚生労働省の調査では、日本人の失明原因の第 1位を占める深刻な状況を呈しています。
治療は、点眼薬による療法やレーザー を照射して、眼圧を調整している房水の流出を促すレーザー治療をまず行い、改善しなかった場合に手術を実施することになります。
手術には、様々な手術方法があります。
基本的には、房水と呼ばれる眼球内の水を眼球の外へ誘導する手術となります。
最近では、インプラントとよばれるリコン製のチューブとプレートからなるデバイスを使った手術が行われるようになってきております。
これは、房水を眼内からチューブに通して強膜上のプレートに流出させ、プレート周囲の結合組織に房水を吸収させることで眼圧下降を得る手術です
トラベクレクトミーは代表的な濾過手術であり、強膜弁下から前房内へ房水流出路を作成し前房内から眼外へ房水を排出させることで眼圧下降効果が得られる手術です。
トラベクレクトミーは、優れた眼圧下降効果が得られ、病型や病期によらず施行できるため、第1選択となる手術であり、実際に、世界で一番多く施行されている手術となります。
内眼手術後眼瞼下垂が生じる場合
内眼手術後に眼瞼下垂が生じる場合は、高齢者に限定して術後に現われるケースと、年齢に関係なく手術侵襲(手術時にメスを入れられること)や術後の炎症反応が特に強かった際に発症するケースの2つがあるとされておりますが、詳細は分かっておりません。
前者の高齢者のケースは、手術が何らかの影響を及ぼして「老人性眼瞼下垂」が発症してしまうことによります。
後者のケースでは、まぶたを上げる際の動力となる「眼瞼挙筋」とその周りの組織が癒着することで眼瞼下垂が発症するもので、眼瞼挙筋そのものに障害が発生するわけではないとされております。
しかし、個人的には、手術操作による眼瞼挙筋への障害が原因と考えております。
内眼手術を行う際には、一般的に、開瞼器という器具を装着を使い、まぶたを閉じれない状態にいたします。
機械的に、無理やり開く形になりますので、その過程で、眼瞼挙筋腱膜が瞼板から外れてしまったり、腱膜が断裂してしまうと考えております。
事実、内眼手術後眼瞼下垂症を引き起こした症例のほとんどが、特段の眼瞼挙筋の炎症性の癒着を認められず、普通に眼瞼挙筋腱膜前転法によって、腱膜を瞼板に再固定する単純な手術で改善しております。