眼瞼下垂の原因:ストレスやコンタクトの影響は?片眼だけ瞼が下がる原因も紐解く
眼瞼下垂とは、目を開いたときに瞼(まぶた)の位置が下がっている状態です。
眼瞼下垂を発症すると、目を開きづらくなって視界が狭くなるため、日常生活に支障をきたしかねません。
また、眠たそうな印象を与えたり、肩こりや頭痛などのトラブルを引き起こしたりするおそれもあります。
眼瞼下垂は大きく先天性と後天性に分けられ、原因は多岐にわたります。
後天性眼瞼下垂の多くは加齢によるものですが、目に負担がかかる生活習慣を続けていると、若い方でも発症するケースがあるため注意が必要です。
本記事では、眼瞼下垂の主な原因について詳しく解説していきます。
眼瞼下垂と偽眼瞼下垂症の概要と症状
眼瞼下垂とは
眼瞼下垂(がんけんかすい)とは、上まぶたが通常より下がってしまう状態を指します。
これは、まぶたを開けるための筋肉、特に眼瞼挙筋という筋肉が弱まるか、または機能しないことにより起こります。
この状態は一時的なものであったり、長期にわたるものであったりします。
偽眼瞼下垂症とは
一方、偽眼瞼下垂症(ぎがんけんかすい)とは、眼瞼挙筋に問題はないものの、まぶたの脂肪が増えたり、眼球が奥に下がったりすることで、眼瞼下垂と同じようにまぶたが下がって見える状態を指します。
この状態は、加齢や体重の変化などにより引き起こされるケースが多いです。
眼瞼下垂症の一般的な症状
眼瞼下垂や偽眼瞼下垂症の主な症状は、上まぶたが重く感じる、視界が狭くなる、頭痛や目の疲れを感じるなどがあります。
特に、視界が狭くなるという症状は日常生活に支障をきたし、瞼が下がると目が開きにくくなり、見た目にも影響を及ぼします。
眼瞼下垂の原因(先天性)
先天性眼瞼下垂は、生まれつき瞼を十分に開けられない状態を指します。
先天性とは、筋肉や神経の発達異常といった先天的な要因によって生じる疾患や身体的な特徴です。
通常、先天性の眼瞼下垂は、出生時または生後すぐに認められます。生涯にわたって続き、自然に治ることはほとんどありません。
- 眼瞼挙筋の未発達
- 動眼神経の障害(先天性動眼神経麻痺)
- 片目だけ発症することが多い
- 視力に影響する場合は手術が必要
眼瞼挙筋の未発達
眼瞼挙筋(がんけんきょきん)とは、瞼を持ち上げる主な筋肉です。
生まれつき眼瞼挙筋の力が弱かったり、動かなかったりすると瞼が上がりにくく、眼瞼下垂になってしまいます。
先天性眼瞼下垂の約9割が、眼瞼挙筋の発育不全によるものであり、「単純性眼瞼下垂(たんじゅんせいがんけんかすい)」と呼ばれています。
動眼神経の障害(先天性動眼神経麻痺)
動眼神経とは、眼球の運動にかかわる筋肉を支配している神経です。
生まれつき動眼神経に何からの異常がある「先天性動眼神経麻痺(せんてんせいどうがんしんけいまひ)」を発症している場合にも、眼瞼下垂を引き起こすおそれがあります。
脳神経の一つである動眼神経は、外眼筋の大部分を支配しているほか、瞳孔を収縮させたり、水晶体の厚みを調節したりする重要な役割を担っています。
そのため、動眼神経に障害を持って生まれると、瞼を持ち上げる力に影響が出て眼瞼下垂になってしまうのです。
そのほかにも、口を開くときに上瞼が勝手に上がる「マーカスガン現象」や、交感神経に障害がある「ホルネル症候群」、全身の筋力が落ちる「重症筋無力症」などの疾患が原因で眼瞼下垂が発症することも稀にあります。
片目だけ発症することが多い
先天性眼瞼下垂には両眼性(りょうがんせい)と片眼性(へんがんせい)があり、約8割の人が片目だけに発症します。
両眼性の場合、染色体の優性遺伝が原因である事例が報告されていますが、片眼性の先天性眼瞼下垂は遺伝に関係なく突発的に発症するケースがほとんどです。
視力に影響する場合は手術が必要
先天性の眼瞼下垂は、視力の発達に影響を及ぼすおそれがあります。
瞼が瞳孔を部分的に覆う軽度のものから、瞳孔を完全に覆う重度のものまで、眼瞼下垂の程度は人によってさまざまです。
症状が重くなるほど弱視や斜視(※1)を招くリスクがあり、手術の必要性が高まるでしょう。
※1 斜視(しゃし): 片目は正しい方向を向いているのに、もう片方の目が別の方向に向いている状態。
症状が軽度であり、赤ちゃんがものを見ようとしている様子がある場合は、慌てて手術を受ける必要はありません。
視力の発達を見守り、3歳以降に手術をおこなうのが一般的です。
ただし、成長に伴い顔つきは変化するため、審美的な観点でいうと、顔の成長がある程度落ち着く思春期以降に手術を受けることが推奨されます。
このように、眼瞼下垂の程度によって手術の必要性やタイミングが異なるため、先天性眼瞼下垂が認められたら定期的に眼科を受診して医師の判断を仰ぐことが大切です。
眼瞼下垂の原因(後天性)
元々は問題なく開いていた瞼が、徐々に、あるいは急に下がってしまう状態が後天性眼瞼下垂です。
後天性眼瞼下垂の多くは両目に認められますが、片目だけに発症するケースもあります。
これは何らかの原因によって、片方の目のみにダメージが蓄積し、瞼を持ち上げる力が弱まってしまうためです。
後天性眼瞼下垂を引き起こす原因は多岐にわたるものの、加齢や生活習慣の影響で生じる「腱膜性眼瞼下垂(けんまくせいがんけんかすい)」が大半を占めています。
腱膜性眼瞼下垂は、瞼を上げるために重要な挙筋腱膜(きょきんけんまく)と、瞼の先端部分にある瞼板(けんばん)の結合がゆるむことで、瞼が上がりにくくなっている状態です。
また、腱膜性眼瞼下垂のほかに、動眼神経の異常によって発症する「神経原性」や、筋肉の障害が原因の「筋原性」、異物や腫瘍による「機械性」の眼瞼下垂もあります。
- 加齢による筋力低下や皮膚のたるみ
- コンタクトレンズの長期装用
- 継続的なストレス
- アイプチの長期使用
- スマホやPCの使いすぎ
- 花粉症やアトピー性皮膚炎
加齢による筋力低下や皮膚のたるみ
加齢に伴う眼瞼挙筋の衰えや皮膚のたるみによって瞼が下がり、眼瞼下垂を引き起こすことがあります。
老化現象が原因であるため「老人性眼瞼下垂」や「加齢性眼瞼下垂」とも呼ばれています。
年齢を重ねるとともに挙筋腱膜がたるんでくると、眼瞼挙筋やミュラー筋(上眼瞼挙筋と瞼板をつないでいる筋肉)の力が瞼板にうまく伝わらなくなり、瞼が上がりにくくなってしまうのです。
老人性眼瞼下垂は高齢者のほとんどの方に認められ、両目に発症するケースが多く見られます。
コンタクトレンズの長期装用
コンタクトレンズを長年装着している場合、若い方でも眼瞼下垂を発症するリスクが高まります。
とくに、ハードコンタクトレンズを装着している方は注意が必要です。
ハードコンタクトレンズは出し入れをするときに瞼を強く引っ張ることが多いため、挙筋腱膜と瞼板の結合部がゆるみやすく、眼瞼下垂につながります。
ハードコンタクトを使用している方は、非使用者に比べて眼瞼下垂になる確率が約20倍高いという調査結果(※2)も報告されています。
※2 Takeshi Kitazawa Hard contact lens wear and the risk of acquired blepharoptosis: a case-control study ePlasty 13 e30 2013/6/19
コンタクトの正しいケアと使用方法
コンタクトレンズを安全に使用するためには、適切なケアと正しい使用方法が不可欠です。
日々のケアや定期的な眼科でのチェックは、目の健康を守る鍵となります。
コンタクトレンズの適切な使用とケアを習慣化すると、眼瞼下垂のリスクを低減できます。
眼瞼下垂を防ぐコンタクトレンズ使用のルール
- 必要以上に眼に負担をかけないため、コンタクトレンズを外すときは優しく行う
- コンタクトレンズの装用時間を守り、出来るだけメガネの使用時間を増やす
- コンタクトレンズを使用しない日を作ったりし、まぶたを休める
- ハードレンズを外す際には、専用のスポイトを使用する
継続的なストレス
眼瞼下垂はストレスの蓄積によっても発症すると考えられています。
瞼を支えているミュラー筋は、自律神経につながる筋肉です。
そのため、継続的なストレスによって自律神経のバランスが乱れると、ミュラー筋が緊張して眼瞼下垂を引き起こすおそれがあります。
また、長時間の仕事や画面の見過ぎなどの日常的なストレスは、眼瞼下垂の原因となる可能性が考えられます。
その他、疲れた目は継続的なストレスによって筋肉や神経が弱ってしまい、眼瞼が下がることがあります。
ストレス要因 | 眼瞼下垂のリスク |
---|---|
長時間のスマホ使用 | 高 |
仕事のプレッシャー | 中 |
不規則な生活リズム | 高 |
ストレスを軽減する方法は多岐にわたりますが、目の健康を守るための具体的なアプローチとしては、定期的な休憩、適切な照明のもとでの作業、そして目のエクササイズが挙げられます。
アイプチの長期使用
アイプチは手軽に二重瞼をつくれる便利なアイテムです。
一重で瞼が腫れぼったい方や、加齢によって瞼の皮膚がたるんでいる方は、アイプチを使用することで目が開きやすくなる可能性はあるでしょう。
しかし、アイプチで眼瞼下垂の根本的な改善はできません。
瞼は非常にデリケートな部分であるため、アイプチを長期的に使用していると、瞼の筋肉が疲労したり、皮膚がかぶれたりして眼瞼下垂を誘発する場合があります。
- アイプチと眼瞼下垂症の関係について
-
アイプチは、目元を大きく見せたいという願望から、多くの方に愛用されている化粧品の一つです。
特に一重や奥二重の方々には欠かせないアイテムとなっていますが、アイプチの使用が眼瞼下垂症にどう影響するのか、その関係性について深掘りしてみましょう。
アイプチの使用によるまぶたへの影響
- 筋肉の疲労: アイプチを使用することで、まぶたの筋肉が引っ張られる状態が続くことがあります。まぶたの筋肉が常にアイプチによるテンションを感じることで、筋肉が疲労し、その機能が低下するリスクが考えられます。
- まぶたの皮膚のトラブル: アイプチは、まぶたの皮膚に直接貼り付けるため、肌にダメージを与えることが考えられます。特に頻繁な貼り直しや、長時間の使用は皮膚への負担となります。
アイプチ使用と眼瞼下垂症の関係
アイプチの長期使用や誤った使用方法が、眼瞼下垂症のリスクを高めると指摘されることがあります。
まぶたの筋肉が疲労して機能が低下すると、まぶたの持ち上げが難しくなり、結果として眼瞼下垂症の症状が現れる可能性が考えられます。
対策と注意点
- アイプチの使用は適度に。毎日の使用を避け、休日などはまぶたのケアを心掛けることがおすすめです。
- アイプチを使用する際は、取扱説明書をよく読み、正しい方法での使用を心掛けてください。
- 使用後はしっかりとクレンジングし、まぶたの皮膚をいたわるケアを行いましょう。
アイプチは、目元の美しさを追求するためのアイテムとして非常に便利ですが、その使用には注意が必要です。
眼瞼下垂症のリスクを低減させるために、適切な使用方法とケアを心掛けることが大切です。
スマホやPCの使いすぎ
スマホやタブレット、PCなどを長時間使用し、目を酷使していると、まばたきの回数が減って「VDT症候群」を引き起こすリスクが高まります。
VDT症候群とは、ドライアイや目の疲れ、かすみ、視力低下などの症状が現れる現代病であり、眼瞼下垂の原因となります。
スマホやPCの使用を控えたり、定期的にディスプレイから目を離したりと、目に負担をかけないための対策が必要です。
- スマホ使用とVDT症候群、その影響と眼瞼下垂症の関係
-
現代社会でスマホやPCの使用は日常的になっています。長時間のスクリーンの前での作業や娯楽は、VDT症候群の原因となると指摘されています。
このVDT症候群が眼瞼下垂症とどのような関係があるのか、その点を詳しく探ることにします。
VDT症候群とは?
VDT症候群(Video Display Terminal Syndrome)は、長時間のディスプレイ使用に関連する目や体の不調を指します。
主な症状としては、目の疲れ、頭痛、首や肩の痛みなどが挙げられます。
スマホ使用とVDT症候群
スマホの使用時、多くの人々は目を酷使し、瞬きの回数が減少する傾向があります。これにより、目の乾燥や疲労が進行し、VDT症候群のリスクが高まります。
VDT症候群と眼瞼下垂症の関係
- 瞼の筋肉の疲労: 長時間スマホやPCの画面を見つめることで、まぶたの筋肉が過度に疲労します。これが眼瞼下垂症の原因となる可能性が考えられます。
- 瞬きの減少: VDT症候群に関連して瞬きの回数が減少すると、まぶたの筋肉の休息時間が短くなり、筋肉が過労となる可能性があります。
対策と注意点
- 1時間ごとに10分程度の休憩を取り、目を休めるよう心掛ける。
- スマホやPCの画面の明るさを適切に調整し、目の疲れを軽減する。
- 適切な姿勢でディスプレイを使用することで、首や肩の負担を減らす。
スマホやPCの長時間使用はVDT症候群のリスクを高めると共に、眼瞼下垂症の原因ともなる可能性が考えられます。
日常的な使用を避けることは難しいかもしれませんが、適切な休憩とケアで、これらのリスクを最小限に抑えることが可能です。
特に若い世代は、若い頃からの長時間のスマホ使用しているわけで、そういった意味での目の負担が長期に積み重なることが問題となり、新たな眼瞼下垂のリスク要因とも言えます。
花粉症やアトピー性皮膚炎
花粉症やアトピー性皮膚炎で瞼をこすったり掻いたりする習慣がある方は、若くても眼瞼下垂を発症しやすいため注意が必要です。
瞼へ慢性的に刺激が加わることで、挙筋腱膜と瞼板のつながりがゆるんで瞼が上がりにくくなってしまいます。
眼瞼下垂の原因として考えられる疾患
加齢や生活習慣といった原因以外に、脳や神経系に影響を及ぼす疾患によって眼瞼下垂が生じるケースもあります。
神経原性眼瞼下垂の原因として考えられる重大な疾患を3つ紹介します。
- 脳梗塞(のうこうそく)
- 脳腫瘍(のうしゅよう)
- 髄膜炎(ずいまくえん)
脳梗塞(のうこうそく)
脳梗塞とは、脳の血管が一時的にふさがり、血流が途絶える重篤な病気です。
脳に血液がいかなくなると酸素や栄養が届かなくなるため、さまざまな神経症状を引き起こします。
「片方の手足が動かない・しびれる」「ろれつが回らない」「立てない・歩けない」などが代表的な症状です。
脳腫瘍(のうしゅよう)
脳腫瘍とは、頭蓋骨の内側に発生する腫瘍の総称です。
腫瘍ができる位置によって症状は異なりますが、動眼神経が圧迫されたり損傷したりすると眼瞼下垂を引き起こします。
また、脳腫瘍が原因で眼瞼下垂が生じている場合、ものが二重に見える「複視」や、顔に強い痛みがでる「顔面痛」などを同時に発症するケースがあります。
脳腫瘍も脳梗塞と同様に重篤な疾患であり、腫瘍が増大すれば命にかかわる事態になりかねません。
髄膜炎(ずいまくえん)
髄膜は頭蓋骨と脳の間に存在し、脳を保護している膜です。
この髄膜に細菌やウイルスが感染し、炎症が起こる病気を髄膜炎といいます。
偽眼瞼下垂症の原因
偽眼瞼下垂(ぎがんけんかすい)症とは、瞼を持ち上げる力は保たれているにもかかわらず、瞼が下がって見える症状です。
「瞼が重く開けづらい」「眠たそうに見える」など、眼瞼下垂と同じような症状が現れます。
また、視界を確保するために無意識に眉を上げるため、顔の表情が固定化され、顔面の筋肉に負担がかかることもあります。
眼瞼下垂の症状 | 偽眼瞼下垂症の症状 |
---|---|
・まぶたが下がり、目が開かない ・まぶたを開けるために眉を上げる癖がある ・視野が狭くなる ・頭痛や目の疲れを感じる | ・目の周囲の皮膚がたるむ ・まぶたが重たく感じる ・目が開きにくい ・二重まぶたが消える |
症状は似ていますが、偽眼瞼下垂症は眼瞼下垂とは原因がまったく異なり、先天的なものと後天性なものに分かれます。
先天的原因 | 後天的原因 |
---|---|
・眼瞼裂狭小症候群 ・小眼球症 ・外斜視片目つぶり | ・加齢に伴う疾患 (眉毛下垂、眼瞼皮膚弛緩症) ・外傷(眼球陥凹) ・眼瞼けいれん |
この症状が見られた場合、専門の医療機関で診察を受けることをおすすめします。
偽眼瞼下垂症は、自己判断で治療を試みると、症状が悪化する可能性があります。また、他の眼瞼の疾患と症状が似ているため、正確な診断が必要です。
先天的原因
偽眼瞼下垂症の原因となる先天的な疾患は以下のとおりです。
眼瞼および顔貌の発達に影響を及ぼす遺伝的疾患。目の開きが小さく、眼瞼下垂のように見えることがあります。
生まれつき片目または両目の眼球が小さい状態です。重度の小眼球症は全盲となるケースも。
左右どちらかの目が外側を向いている外斜視を発症していると、屋外で片目をつぶりやすくなり、眼瞼下垂のように見えてしまいます。
後天的原因
偽眼瞼下垂症の後天的な原因としては、加齢や外傷によって発生する以下のような疾患が挙げられます。
加齢や外傷などにより顔の筋肉が弱くなり、眉毛が下がっている状態。眉毛が下垂しているため瞼も下がり、視野が狭くなります。
加齢が原因で上瞼の皮膚がたるみ、視野が制限されている状態です。目に瞼の皮膚がかぶさっている状態であり、瞼を持ち上げる筋肉に欠陥はありません。
眼球が凹んだり、くぼんだりしている状態。何らかの外傷によって、目の入れ物である眼窩(がんか)内の組織や目を動かす筋肉がはみ出すことで発生します。
瞼を閉じる筋肉が、自らの意思とは関係なく継続的にけいれんする病気。目を開けづらくなり、まばたきがうまくできなくなるのが特徴です。
発症原因は明らかになっていませんが、更年期の女性に多いのが特徴であり、ストレスや疲れ、睡眠不足などの影響が大きいと考えられています。
片目だけ瞼が下がる原因
多くの眼瞼下垂の症状は両目に現れることが多いですが、中には片目だけに現れるケースも存在します。このような場合、原因の特定が難しくなります。
片目だけの眼瞼下垂症
車が左側だけタイヤがパンクしているような状態に似ています。全体的なバランスが崩れ、一方だけの問題が全体の機能に影響を及ぼす可能性があります。
つまり、ヘリング現象と言われる、片側の眼瞼下垂が、対側の眼瞼下垂の状態に影響することになります。
ヘリング現象には、前頭筋の代償が関連しており、片方の眼瞼下垂を誤魔化そうと、前頭筋が収縮し、結果として、対側の開きが良くなってしまう状態になります。
一般的な原因
いくつかの一般的な原因が考えられます。外傷や脳の異常、筋肉や神経の問題などが挙げられます。
たとえば、片側だけ下がる原因として、片側顔面痙攣、アトピー性皮膚炎など眼瞼皮膚炎、コンタクトレンズ(片目だけの装用状態)、アイプチ、先天性眼瞼下垂、顔面神経麻痺、重症筋無力症、脳梗塞、脳動脈瘤、脳腫瘍、動眼神経麻痺などが考えられます。
コンタクトの使用との関連
片目だけでコンタクトを使用したり、アイプチの使いすぎは、片目だけの眼瞼下垂の原因となることがあります。
正しい診断と早期治療への道
医師の診断を受ける手順
眼瞼下垂の診断は、まず自己観察から始めます。自分の目の状態に異変を感じたら、まず鏡を見て目の開き具合を確認しましょう。
上まぶたが通常よりも下がっているように見えたら、眼科医への相談をお勧めします。
眼科医は、まず症状の詳細を尋ね、視力テストを行ったり、まぶたの筋肉の力を試したりします。
さらに、医師は目の周囲の筋肉、神経、皮膚の状態を評価するために詳細な眼科検査を行います。必要に応じて、MRIやCTスキャンなどの画像検査、血液検査も行われます。
治療の選択肢
眼瞼下垂の治療法は、その原因と重症度によります。
一部の眼瞼下垂は、特定の薬物や生活習慣の変化、眼球運動の療法などで改善することがあります。
しかし、重度の眼瞼下垂や、視力に影響を及ぼす眼瞼下垂の場合は、手術が必要です。
具体的な行動指針
自分自身で眼瞼下垂の症状を感じたら、まずは眼科医に相談しましょう。
自己診断やインターネットでの情報に頼るのではなく、専門家の意見を求めることが重要です。
また、手術が必要と判断された場合は、手術のリスクと利益、手術後の見込みなどについて医師と詳しく話し合うことが重要です。
眼瞼下垂症の診断は、専門的な知識と十分な経験を持つ医師によって行われるべきです。
以下に、医師の診断を受ける手順を説明します。
眼瞼が重い、視界が狭まっている、眉を上げておでこに皺が入っているなどの症状がある場合、眼瞼下垂の可能性があります。しかし、自己診断は避け、医師の診断を受けることが重要です。
眼科、形成外科、美容外科など、眼瞼下垂の治療を行う医療機関があります。自身の状況に合わせて適切な医療機関を選びましょう。
医師との初診では、自身の症状や悩みを詳しく話し、医師からの質問に正確に答えることが求められます。これにより、医師は症状の原因を特定し、適切な診断を行うことができます。
医師は視力検査、視野検査、眼球運動検査などの検査を行い、眼瞼下垂の程度や原因を確認します。また、重大な疾患が隠れていないか確認するための検査も行われる場合があります。
検査結果を基に、医師は眼瞼下垂の診断と治療方針を説明します。質問や不明点がある場合は、遠慮せずに医師に尋ねることが大切です。
眼瞼下垂症は自己診断ではなく、専門医の診断を受けることが重要であるということを忘れないでください。
眼瞼下垂の種類とそれぞれの最適な治療法
眼瞼下垂の治療は、その原因や程度、患者の年齢や健康状態などにより異なります。主に以下のような治療の選択肢が存在します。
- 薬物療法:特定の疾患によって引き起こされた眼瞼下垂症は、続発性眼瞼下垂と呼ばれ、薬物療法が有効な場合があります。
例えば、重症筋無力症という自己免疫疾患が原因であれば、ステロイドなどの薬物療法が適用されることがあります。 - 運動療法:一部の眼瞼下垂は、目の筋肉を鍛えることで改善することがあります。適切なエクササイズの指導が行われます。
- 手術:重度の眼瞼下垂や、他の治療法が効果を示さない場合には、手術の検討となります。手術では、眼瞼を持ち上げる筋肉を補強したり、余分な皮膚を取り除いたりします。手術は通常、局所麻酔下で行われ、回復期間(ダウンタイム)も、手術方法によりことなりますが、全体的に、思っているよりは比較的短いです。
これらの治療法の選択は、専門的な医療知識が必要であるため、必ず医師の診断と指導を受けてください。
自己判断での治療選択は避け、信頼できる眼瞼下垂の専門医と十分に話し合い、最善の治療法を選択しましょう。
眼瞼下垂の原因ごとの最適な治療法
各種類の眼瞼下垂には、それぞれ適した治療法が存在します。
1. 先天性眼瞼下垂: この症状の場合、早期の手術が一般的に推奨されます。特に視力に影響を及ぼす可能性がある場合や、子供の成長と共に症状が改善しない場合は、手術を検討することが重要です。
2. 後天性眼瞼下垂: このタイプの場合、保険適用の手術やボトックス注射などが選択肢となります。また、生活習慣の改善やアイケア商品の使用も効果的な対策となることがあります。
3. 神経性眼瞼下垂: 原因となる疾患の治療が最優先となります。脳梗塞や脳腫瘍が原因の場合は、専門的な医療機関での治療が必要となります。
眼瞼下垂の専門医に相談する際のポイント
眼瞼下垂の治療を考える際、適切な診断と治療を受けるためのポイントを理解することが重要です。
治療前の相談時の注意点:
- 自分の症状を正確に伝えることが大切です。具体的には、既往症や現在の健康状態を詳しく伝えることが求められます。
- 治療に関する質問や不安を伝えることで、治療のリスクや結果について十分に理解することができます。
相談時のポイント:
- 自身の症状を正確に伝えることで、医師はより正確な診断を行うことができます。
- 過去の症状や最近の体調変化を伝えることで、病状の原因を特定する手助けとなります。
- 診察の際には、治療法や手術の必要性、治療にかかる時間や費用などの質問を準備しておくと良いでしょう。
- 信頼できる医師を選ぶことが重要です。医師の評判や経験を事前に調査することをおすすめします。
眼瞼下垂は早期発見・早期治療が鍵となるため、何か異常を感じたらすぐに専門家に相談しましょう。
まとめ
本記事では、眼瞼下垂の主な原因や注意すべき疾患について解説しました。
眼瞼下垂には先天性と後天性があり、それぞれ原因が異なります。
後天性眼瞼下垂の原因は加齢だけではなく、ハードコンタクトレンズやアイプチの使用、スマホの使いすぎなどの生活習慣が影響しているケースも多く見られます。
また、脳梗塞や脳腫瘍といった重大な疾患が隠れている可能性もゼロではありません。
さらに、眼瞼下垂と似た症状があらわれる偽眼瞼下垂症も存在するため、眼瞼下垂の原因を自己判断することは非常に困難です。
気になる症状がある場合は早めに眼科で診察を受けましょう。
フラミンゴ眼瞼・美容クリニックでは、眼瞼下垂の診察・治療を保険診療で受けられます。
眼瞼下垂のスペシャリストである高田尚忠医師がすべて執刀し、患者様の負担を軽減しながら手術を行っています。
「瞼が重い」「視界が狭くなった」などの症状がある方は、ぜひ一度当院にご相談ください。
眼瞼下垂の原因についてよくある質問Q&A
- 眼瞼下垂の原因は何ですか?
-
加齢、遺伝、筋疾患、神経障害、長期間のコンタクトレンズ使用などが原因とされます。
- ストレスが眼瞼下垂を引き起こすことはありますか?
-
直接的な原因とは言えませんが、ストレスによる全身の健康状態の変化が影響を与える可能性はあります。
- コンタクトレンズが原因で眼瞼下垂が起こることはありますか?
-
長期間のコンタクトレンズの使用が原因で眼瞼筋が弱まり、下垂を引き起こすことがあります。
- 片目だけが下がることはありますか?
-
片目だけ眼瞼下垂になることはあります。先天性眼瞼下垂は約8割の人が片目だけに発症します。後天性眼瞼下垂の多くは両目に認められますが、片目だけに発症するケースもあります。
- 眼瞼下垂は加齢によって起こりますか?
-
加齢により眼瞼の筋肉が弱まることで、下垂を引き起こすことがあります。
- 子供でも眼瞼下垂になることはありますか?
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生まれつきの遺伝的要因や筋肉の異常などにより、子供でも眼瞼下垂になることがあります。
- 眼瞼下垂は自然に治りますか?
-
原因によりますが、多くの場合自然には治らず、治療が必要です。
- 眼瞼下垂は遺伝しますか?
-
一部の眼瞼下垂は遺伝的な要因が関係していると考えられています。
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