眼瞼下垂の基礎知識

[先天性眼瞼下垂]の症状「単純性眼瞼下垂」

Dr.髙田
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高田 尚忠
高田 尚忠(たかだ なおただ)
高田眼科 院長 |ひとみ眼科 / フラミンゴ美容クリニック 眼瞼手術担当医師
所属学会:日本眼科学会、日本形成外科学会、日本眼形成再建外科学会
岡山大学医学部卒業後、横浜形成外科の二木 裕先生に師事。 郡山医療生活協同組合 桑野協立病院などの様々な医療機関を勤務し、 現在は高田眼科の院長を務める。 眼科医と形成外科医の知識と、これまでの豊富な眼瞼手術の術者としての経験をもとに、2022年においては年間2,000件超える眼瞼下垂症手術を手がけております。 2022年3月より、名古屋市内の伏見駅近くのフラミンゴ眼瞼・美容クリニックを開院。

単純性眼瞼下垂って?

「単純性眼瞼下垂(たんじゅんせいがんけんかすい)」は、「先天性眼瞼下垂」のなかで約9割を占めるともいわれる最も一般的な症状で、生後から1年以内に発症します。

原因は、まぶたを上げる役割をする「上眼瞼挙筋(じょうがんけんきょきん)」という筋肉の発育不全、もしくは上眼瞼挙筋を動かす神経の発達異常によるものと考えられております。

生まれつきまぶたを上げる筋肉が働かないことや、その筋肉の力が弱いことから、まぶたが下に垂れ下がる「眼瞼下垂」になってしまいます。

目の両側に症状が現れる「両眼性(りょうがんせい)」の場合もありますが、約8割は、どちらか片側の目の方に症状が出る「片眼性(へんがんせい)」のことが多いです。

単純性眼瞼下垂では、眼瞼下垂以外の眼球運動障害などの障害は、ほとんどみられることはありません。

したがって基本的には、眼科医のもとで推移を見守る場合が多いようです。

ただ、単純性眼瞼下垂においても片方の目が正しい方向を向いているのに、もう片方の目がズレて向いている「斜視」や、視覚情報が伝わる経路上に支障があることで視力が弱まった「弱視」を伴うケースがみられますので、症状に応じた治療が求められます。

治療について

単純性眼瞼下垂の治療にあたっては、まぶたを上げる挙筋機能の力が残っている場合と、残っていない場合とで方法が異なります。

力が残っている場合は、ゆるんでしまった腱膜を、筋肉を傷つけずにまぶたの内にある「瞼板(けんばん)」に単純に再固定する「挙筋前転法(きょきんぜんてんほう)が主に用いられます。

一方、まぶたを上げる力が残っていないか、かなり弱まっている場合は、「筋膜(または腱)移植による吊り上げ術」を行うことが多いようです。

ただし、筋膜移植による吊り上げ術には、いろいろと問題もあり、なるべくなら避けるべき手術方法だと当院では考えております。

この方法は、まぶたと、まゆげや額を上げる「表情筋(ひょうじょうきん)」のひとつである「前頭筋(ぜんとうきん)」の間に、通常は大腿の筋膜や前腕の腱を移植し、前頭筋の力でまぶたを上げる手術です。

筋膜を移植する場合には、上記のように、大腿(ふともも)、前腕(うで)に、傷が残りますし、移植した後に時間が経つと、周辺組織と癒着したり、また、段々と縮んでくるので、瞼の挙がり方に歪みが出てしまい、修正に難儀するケースがあります。

そのため、ゴアテックスやシリコン糸など人工材料を使うほうがメリットがあると考えられております。

なお、子どもの場合の眼瞼下垂の手術は、全身麻酔が基本となってきますので、局所麻酔ができる思春期まで手術を待つことが多いです。

手術で、まぶたが上がりすぎて「過矯正(かきょうせい)」になったときに、眼瞼下垂とは逆の「閉瞼不全(へいけんふぜん)」の状態になることがあるため、注意が必要です。

若い方(小学生、中学生、高校生)の眼瞼下垂については下記の記事もご覧ください。

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先天性眼瞼下垂症を持つ方は、目を開く力も弱い分、目を閉じる力も弱いケースが多く、閉瞼不良が発生しやすいといえます。

「兎眼(とがん)」とも呼ばれるこの閉瞼不良の症状は、目を閉じようとしたときに上まぶたがきちんと閉じられず白目がのぞいてしまうもので、眼瞼下垂症手術の合併症以外には、顔面神経麻痺によっても引き起こされます。

眼瞼下垂症手術後の場合、概ね、3ヶ月程度で改善するケースが多いように思いますが、それ以上続く場合には、修正手術を検討した方が良いように思います。

- 【眼瞼下垂】延べ2万眼瞼以上の手術経験 -
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