老人性眼瞼下垂とは?高齢者のまぶたが下がる原因・症状・受診の目安を眼形成外科医が解説

「年をとってから、まぶたが重くて目が開けにくい」「上のほうが見えにくく、あごを上げて見ている」「親のまぶたが下がってきて、いつも眠そうに見える」。このページでは、高齢者のまぶたの下がり(いわゆる老人性眼瞼下垂)について、何が下がっているのかの見分け方と、受診の目安を眼形成外科医が解説します。
執筆:髙田 尚忠(高田眼科 院長/眼科医・眼形成外科) 最終更新:2026年10月
老人性眼瞼下垂とは?加齢でまぶたが下がる理由
「老人性眼瞼下垂」は、年齢とともにまぶたが下がってきた状態を指す呼び方で、「加齢性眼瞼下垂」「退行性眼瞼下垂」とも呼ばれます。その中身の大部分は、まぶたを持ち上げる筋肉の先にある挙筋腱膜という腱(すじ)がゆるんだ腱膜性眼瞼下垂です1。
一方で、高齢になると皮膚の弾力が落ち、眉の位置も変わります。そのため、ご本人やご家族が「まぶたが下がった」と感じていても、実際には次の3つが単独で、あるいは重なって起きています2,1。
まぶたの縁の高さは保たれていますが、余った皮膚がひさしのように垂れ、まつ毛や瞳孔の上にかぶさります。見かけ上の眼瞼下垂(偽眼瞼下垂)の代表です。
まぶたのたるみと眼瞼下垂の違い眉そのものが下がり、上まぶたの皮膚を上から押し下げます。目尻側が特に重く見えるのが特徴です。
「老人性眼瞼下垂」と言われたら、何が下がっているのかを確かめることが大切です。
腱膜のゆるみ、皮膚のたるみ、眉の下がりは、それぞれ治し方が違います。高齢者では2つ以上が重なっていることが多いため、1つだけを見て判断しないことが、治療後の見え方を左右します。
老人性眼瞼下垂の主な原因
海外の調査では、まぶたが下がっている人の割合は70歳以上で約2〜3割にのぼり、年齢とともに増えていきます2。腱膜がゆるむ仕組みや、コンタクトレンズなど年齢以外の原因は腱膜性眼瞼下垂のページで詳しく解説しています。ここでは、高齢者で特に重なりやすい変化を挙げます。
米国の大規模な調査では、加齢性眼瞼下垂の人は、目の手術を受けたことがある割合が高く(関係の強さを示す値〈オッズ比〉は4.2)、甲状腺機能亢進症や2型糖尿病とも関係がみられました3。
白内障・緑内障などの手術後の眼瞼下垂目の手術歴や持病との関係は観察研究で示された「関係」で、それぞれが直接の原因だと証明されたわけではありません。
高齢者に多い症状と見た目の変化
年齢を重ねた方は、まぶたが少しずつ下がるため、ご本人が気づかないまま慣れてしまうことがよくあります。次のような変化は、ご家族が先に気づくことも少なくありません。
暮らしの中で気づくサイン
何が下がっているかで見た目が違う
- 腱膜性眼瞼下垂が主な場合:二重の幅が広がる、目の上がくぼむ、まつ毛の生え際(まぶたの縁)が瞳孔にかかる。詳しくは腱膜性眼瞼下垂の症状をご覧ください。
- 皮膚のたるみが主な場合:二重の線が皮膚に隠れ、まつ毛の上に皮膚が乗る。目尻側が三角に垂れる。
- 筋肉の変化が加わっている場合:二重の線はあまり上がらず、まぶたが厚ぼったく見える1。
目の疲れや頭痛・肩こりとの関係は眼瞼下垂と肩こり・頭痛で解説しています。
眼瞼下垂と眼瞼皮膚弛緩症の違い
見分けるいちばんのポイントは「まぶたの縁の高さ」です。余った皮膚を軽く持ち上げたとき、まぶたの縁が正常な高さにあれば皮膚のたるみ、持ち上げてもまぶたの縁が瞳孔にかかっていれば眼瞼下垂が疑われます2。
| 項目 | 腱膜性眼瞼下垂 | 眼瞼皮膚弛緩症 | 眉毛下垂 |
|---|---|---|---|
| 下がっているもの | まぶたの縁そのもの | まぶたの縁にかぶさる皮膚 | 眉と、その下の皮膚 |
| 皮膚を持ち上げると | まぶたの縁は低いまま | まぶたの縁は正常な高さ | 眉を持ち上げると、かぶさりが減る |
| 目立つ場所 | まぶた全体(黒目の上) | まつ毛の上、目尻側 | 目尻側 |
| 主な治療 | 腱膜を瞼板に固定し直す手術 | 余った皮膚の切除(まぶた・眉の下) | 眉の下や額での皮膚の引き上げ |
皮膚を切るだけでは、まぶたの縁の下がりは治りません。
腱膜性眼瞼下垂と皮膚のたるみが重なっている場合、皮膚だけを切除しても、まぶたの縁の高さは変わらず、見えにくさが残ることがあります。反対に、皮膚のたるみだけの人に腱膜の手術は必要ありません1。
老人性眼瞼下垂の診断と検査
まぶたの高さ(瞳孔の中心からまぶたの縁までの距離、MRD-1)や、まぶたを上げる筋肉の力の測り方は腱膜性眼瞼下垂のページで紹介しています。高齢の方では、これに加えて次の点を確認します。
- 皮膚と眉を持ち上げたときの高さ
皮膚のたるみ、眉の下がり、腱膜のゆるみが、それぞれどのくらい関わっているかを分けて評価します2。 - 視野検査
上方の視野がどれだけ欠けているか、まぶたを持ち上げると広がるかを調べます。米国眼科学会の報告では、上方の視野の欠けが手術を考える目安の1つです4。 - 目の表面(ドライアイ・角膜の傷)
日本では60歳以上の7割以上にドライアイの症状があるとされ5、まぶたをどこまで上げられるかに関わります。 - 目の閉じ方
しっかり閉じられるか、目を閉じたときに黒目が上に逃げる反射(ベル現象)があるかを確かめます。手術を考えるときに、角膜を守れるかの判断材料になります。 - 目の動き・瞳孔・経過
物が二重に見えないか、瞳孔の大きさに左右差がないか、急に下がっていないかを確認し、神経や筋肉の病気が隠れていないかを調べます2。
ご自宅でのおおまかな確認方法は眼瞼下垂のセルフチェックをご覧ください。高齢の方は皮膚のたるみや眉の代償があるため、自己判断は難しく、最終的な判断は診察で行います。
どのような症状があれば眼科を受診すべきか
次の症状があるときは、加齢による眼瞼下垂ではない可能性があります。早めに(症状によっては当日中に)受診してください。
- 数日〜数週間のうちに、急にまぶたが下がった
- 物が二重に見える(複視)
- 片方の瞳孔が大きい、または小さい(瞳孔の大きさの左右差)
- 強い頭痛、目の痛み、吐き気をともなう
- 夕方や疲れたときに悪化し、休むとよくなる。飲み込みにくさや手足のだるさがある
動眼神経麻痺(脳動脈瘤などが原因のことがあります)、ホルネル症候群、重症筋無力症などが隠れていることがあり、脳の画像検査や神経内科での治療が必要になる場合があります2。詳しくはまぶたが下がる原因と危険なサイン、動眼神経麻痺、重症筋無力症をご覧ください。
急ぎではないが、一度相談をおすすめする症状
- まぶたが瞳孔にかかり、上が見えにくい
- あごを上げないと見えない、運転中に信号や標識が見えにくい
- 読書や手元の作業でまぶたが重く、見えにくい
- まつ毛や皮膚が目に当たり、ごろごろする
これらは、米国眼科学会の報告で手術による改善が期待できる目安として挙げられている症状と重なります4。
治療が必要な場合と経過観察できる場合
加齢による眼瞼下垂は命に関わる病気ではなく、診断されたからといって必ず手術が必要になるわけではありません。治療を考えるかどうかは、日常生活でどれだけ困っているかとまぶたの状態をあわせて判断します。
治療の中心は手術で、何が下がっているかによって、腱膜を固定し直す手術、皮膚を切除する手術、またはその組み合わせを選びます1。点眼でまぶたを一時的に持ち上げる方法もありますが、腱膜そのものは治りません(アップニーク点眼薬)。
高齢の方の術式の選び方、70代・80代で手術を受けるときの注意点、費用や術後の経過は、老人性眼瞼下垂の手術で詳しく解説しています。
髙田医師からの専門家コメント

皮膚のたるみだけを見て判断しないこと
高齢の方のまぶたが下がっている場合、皮膚のたるみだけでなく、挙筋腱膜の状態とまぶたの縁の高さを評価することが重要です。実際の診察では、腱膜のゆるみと皮膚のたるみの両方が重なっている方が多くいらっしゃいます。
皮膚を持ち上げてもまぶたの縁が瞳孔にかかっている場合、皮膚を切除するだけでは見えにくさが十分に改善しないことがあります。
「年のせい」で片づけないでください
「年だから仕方がない」とあきらめて、何年も不便を我慢されている方は少なくありません。一方で、急に片方だけ下がった場合や、物が二重に見える場合は、加齢ではなく神経の病気が原因のことがあります。いつから、どのように下がってきたかを、ぜひ診察でお聞かせください。
よくある質問
老人性眼瞼下垂と腱膜性眼瞼下垂は同じですか?
ほぼ重なりますが、まったく同じではありません。高齢者の眼瞼下垂の9割以上は腱膜性です1。ただ「老人性眼瞼下垂」と呼ばれる状態には、皮膚のたるみや眉の下がりが重なっていることも多く、それぞれ治し方が違います。
高齢になるとまぶたが下がるのはなぜですか?
まぶたを持ち上げる腱(挙筋腱膜)が伸びて薄くなるためです。あわせて、皮膚が伸びて余ったり、眉が下がったりして、上からかぶさることも原因になります1。
まぶたの皮膚がたるんでいるだけの場合もありますか?
あります。余った皮膚を持ち上げたときにまぶたの縁が正常な高さにあれば、皮膚のたるみが主な原因です。この場合は皮膚の切除が治療の選択肢になります2。
眼瞼下垂は自然に改善しますか?
加齢による眼瞼下垂は、自然に改善することは期待しにくいです。ただし急に起きた眼瞼下垂の一部(神経の病気など)は、原因の治療で改善することがあるため、早めの受診が大切です。
どの程度の症状で受診すればよいですか?
まぶたが瞳孔にかかって見えにくい、あごを上げて見ている、という段階が相談の目安です。急に下がった、物が二重に見える、瞳孔の大きさが左右で違うときは、程度に関係なく早めに受診してください2,4。
親のまぶたが下がっていますが、本人は気にしていません。受診をすすめたほうがよいですか?
あごを上げて見ている、つまずきやすい、運転が不安といった様子があれば、一度診察をおすすめします。ゆっくり進むため、ご本人は見えにくさに慣れていることがあります。急に下がった場合は、すぐに受診してください。
まとめ
- 高齢者の眼瞼下垂の中心は腱膜性眼瞼下垂ですが、皮膚のたるみや眉の下がりが重なっていることがよくあります。
- 見分けるポイントは、皮膚を持ち上げたときのまぶたの縁の高さです。
- 見えにくさや姿勢の変化など、生活に支障がある場合は治療を検討します。
- 急に下がった、物が二重に見える、瞳孔の大きさが左右で違うときは、早めに受診してください。
高田眼科の考え方
当院では、まぶたが下がっている原因が腱膜のゆるみなのか、皮膚のたるみなのか、眉の下がりなのか、あるいは別の病気なのかを、眼科の検査で確かめたうえで治療の必要性をご説明します。手術が適している場合の術式や費用は、老人性眼瞼下垂の手術をご覧ください。
年齢とともにまぶたが重くなってきた方へ
皮膚のたるみなのか眼瞼下垂なのか、まずは診察で確かめてみませんか。ご家族の付き添いも歓迎します。
参考文献
PubMedに収載された論文と米国眼科学会(AAO)の報告をもとに作成しています。文献1・2・5は全文、それ以外は抄録を確認しています。
- Lee TY, Shin YH, Lee JG. Strategies of upper blepharoplasty in aging patients with involutional ptosis. Arch Plast Surg. 2020;47(4):290-296. doi:10.5999/aps.2020.01361
- Bacharach J, Lee WW, Harrison AR, Freddo TF. A review of acquired blepharoptosis: prevalence, diagnosis, and current treatment options. Eye (Lond). 2021;35(9):2468-2481. doi:10.1038/s41433-021-01547-5
- Cohen LM, Campbell BC, Esfandiari M, et al. Ophthalmic surgeries and systemic medical conditions associated with the development of involutional ptosis. Ophthalmic Plast Reconstr Surg. 2021;37(2):133-137. doi:10.1097/IOP.0000000000001707
- Cahill KV, Bradley EA, Meyer DR, et al. Functional indications for upper eyelid ptosis and blepharoplasty surgery: a report by the American Academy of Ophthalmology. Ophthalmology. 2011;118(12):2510-2517. doi:10.1016/j.ophtha.2011.09.029
- Asamura S, Wada Y, Tanaka S, Saika S. Study to the effect of involutional blepharoptosis surgery using objective and subjective parameters. Arch Plast Surg. 2022;49(4):473-478. doi:10.1055/s-0042-1751101






