眼瞼下垂の基礎知識

「重症筋無力症」における眼瞼下垂症の治療について

Dr.髙田
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高田 尚忠
高田 尚忠(たかだ なおただ)
高田眼科 院長 |ひとみ眼科 / フラミンゴ美容クリニック 眼瞼手術担当医師
所属学会:日本眼科学会、日本形成外科学会、日本眼形成再建外科学会
岡山大学医学部卒業後、横浜形成外科の二木 裕先生に師事。 郡山医療生活協同組合 桑野協立病院などの様々な医療機関を勤務し、 現在は高田眼科の院長を務める。 眼科医と形成外科医の知識と、これまでの豊富な眼瞼手術の術者としての経験をもとに、2022年においては年間2,000件超える眼瞼下垂症手術を手がけております。 2022年3月より、名古屋市内の伏見駅近くのフラミンゴ眼瞼・美容クリニックを開院。

重症筋無力症って?

「重症筋無力症(じゅうしょうきんむりょくしょう)」は、末梢神経と筋肉のつなぎ目としての役割を果たす「神経筋接合部(しんけいきんせつごうぶ)」の障害によって筋力低下が引き起こされます。

そして、瞼を上げる筋肉に障害が発生すると、「眼瞼下垂(がんけんかすい)」の原因になります。

そのメカニズムをさらに詳しく説明します。

先ず、重症筋無力症は、筋肉側にある「アセチルコリン受容体」AChRが生まれつき少ない(先天性)、またはそれを攻撃する抗体が産生されていること(後天性)に分類されます。

通常、筋肉は、脳からの指令で神経繊維の末端から出た記憶や学習などに関わる情報伝達物質「アセチルコリン」AChを、筋肉側の受け皿である「アセチルコリン受容体」AChRで受けて収縮し動きます。

ところが、末梢神経 と筋肉の接ぎ目(神経筋接合部)において、この筋肉側の受容体(AChR)が 自己抗体 により破壊されることのよって脳からの情報伝達を妨げられ、筋力の低下を引き起こすのが重症筋無力症です。

全身の筋力低下、 易疲労性 が出現し、特に眼瞼下垂、 複視 などの眼の症状をおこしやすいことが特徴です。

眼の症状だけの場合は眼筋型、全身の症状があるものを全身型とよんでいます。

眼球を動かす「外輪筋(がいりんきん)」、まぶたにも関わる「外眼筋(がいげんきん)」、そしてまぶたを上げる「眼瞼挙筋(がんけんきょきん)」などの「眼筋(げんきん)」の筋力低下を引き起こすことで眼瞼下垂にもつながります。

重症筋無力症になると、筋力の低下に伴って通常よりも疲れやすい「易疲労性(いひろうせい)」の症状として現れ、日常で不通にできていたことも難しくなります。

また、朝よりも夕方になるにつれて症状が悪くなる「日内変動(にちないへんどう)」があることが多いと言えます。

したがって、易疲労性と日内変動は、重症筋無力症において特徴的な症状であり、診断にあたっての大事な手掛かりとなります。

症状と治療について

症状について

重症筋無力症は、眼瞼下垂をはじめ、物が二重に見える「複視」などの眼の症状を引き起こしやすく、症状が眼だけに限って現れる場合は「眼筋型(がんきんがた)」と呼ばれます。

一方、全身の症状がある場合は「全身型」と呼ばれ、歯磨きや整髪の際に腕がだるかったり、階段の上り下りでとても疲れたり、食べ物をうまく飲み込めない「嚥下障害(えんげしょうがい)」や発音がしづらい「構音障害(こうおんしょうがい)」も引き起こし、症状が重くなると呼吸困難に陥ることで命を落とすことがあります。

重症筋無力症の診断において、眼や顔面の筋肉に症状が出ているかどうか、特に眼瞼下垂があるかどうかは、重要な判断材料になります。

重症筋無力症の患者の約半数が、眼筋型として発症するが、概ね2年程度で全身型に7割程度の人が進行してしまいます。

逆に、2年以上経っても眼筋型の場合には、その後、全身型になることは、ほぼないと言って良いと考えられております。

治療について

重症筋無力症の治療方法は、薬剤を飲む内科的な治療と手術による外科的な治療に分かれます。

薬剤は、筋肉への情報伝達を強める薬剤コリンエステラーゼ阻害薬や、抗体を抑制するステロイド薬、免疫抑制薬などがありまが、対症療法と根治的な 免疫療法に別れます。

対症療法として使われる代表的な薬剤がコリンエステラーゼ阻害薬であり、神経から筋肉への信号伝達を増強する薬剤です。

ただ、これはあくまでも、一時的な対症療法であり、第一選択とはなりません。

治療の基本は 免疫療法で、この病気の原因である抗体の産生を抑制したり、取り除く治療になります。

抗体の産生を抑制するものには、ステロイド薬、免疫抑制薬があり、ステロイド薬は内服で行ったり、点滴行ったりします。

その他には、血漿成分を交換して、血液中の好ましくない抗体を取り除いてしまう血液浄化療法 、大量の抗体を静脈内投与する大量ガンマグロブリン療法、補体C5を特異的に阻害する抗体製剤があり、患者さんの症状や状態に応じて、治療方法が選択されています。

これらは、体内の抗体を区別なく除去したり、抗体の作用を特異的に押さえたりする治療ではなく、これもまた、根治できるものではありません。

手術には、「胸腺摘除(きょうせんてきじょ)」があります。

特に、胸腺というリンパ組織に 胸腺腫を合併する場合は、まず外科的にこれを取り除く必要があります。

胸腺腫は早期に発見されば場合は、一括して切除でき、 生命予後 の良い腫瘍です。

眼瞼下垂症に対しては、通常の眼瞼下垂症で主に用いられる手術も施されますが、症状をみながらまず内科的な治療から始めるのが一般的です。

重症筋無力症の眼瞼下垂症の治療について

眼瞼下垂症の治療に関しては、ステロイドによる免疫療法が一番効果的だと考えられております。

抗コリンエステラーぜ薬による治療は、ステロイド治療よりも効果が落ちると考えられており、満足が行く結果が出るのは約20%〜約50%だと言われております。

眼瞼下垂で眼瞼下垂のみを示すケース、重症筋無力症の治療後でも眼瞼下垂のみが残存するケースに対して、ナファゾリン点眼による対症療法は非常に有効と言えます。その治療効果は高く、概ね70%のケースで改善が見られたという報告があります。

しかしながら、治療に反応せず眼瞼下垂症が固定している場合には、適切な眼瞼下垂症手術を行うことで、機能的、審美的な改善を図ることが出来ると言えます。

- 【眼瞼下垂】延べ2万眼瞼以上の手術経験 -
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