ホルネル症候群とは?眼瞼下垂・縮瞳の症状と原因を解説

片方のまぶたが少しだけ下がり、同じ側の瞳孔が小さい。ホルネル症候群は、目やまぶたに届く「交感神経」の通り道がどこかで途切れたときに現れるサインです。まぶたの下がり自体は軽いものの、原因として首の血管や胸の病気が隠れていることがあるため、見つけたら原因を確かめることが何より大切です。
- 3つのサイン:小さい瞳孔、少し下がったまぶた、顔の片側の汗が出にくい。
- まぶたの下がりは軽い:ミュラー筋という小さな筋肉の働きが止まるため。目がくぼんで見えるのは見かけ上の変化です。
- 痛みを伴うときは急いで検査:首の血管の裂け目(頸動脈解離)などを見逃さないためです。
執筆:髙田 尚忠(高田眼科 院長/眼科医・眼形成外科) 最終更新:2026年10月
ホルネル症候群とは:3つのサイン
脳から出た交感神経は、首の脊髄、胸の上部、首の血管の壁を通って目に届く、長い道のりをたどります。この道のどこかが傷むと、片側の目に次のような変化が起こります1。1869年にスイスの眼科医ホルネルが詳しく報告したことから、この名前が付いています。
瞳孔を広げる筋肉が働かなくなります。暗い場所で左右差がはっきりします。
上まぶたが少し下がり、下まぶたはわずかに上がります。
ホルネル症候群450人の報告(文献2に収載)。汗の変化は、積極的に調べないと見落とされやすいとされています2

眼瞼下垂の診察では、まぶたがどの程度下がっているかだけでなく、左右の瞳孔の大きさにも注意を払います。
ホルネル症候群では、まぶたの下がり方が比較的軽いため、一般的な加齢性眼瞼下垂と見分けにくいことがあります。
特に、片側のまぶたが下がり、同じ側の瞳孔が小さくなっている場合には、単なるまぶたの問題ではなく、神経の異常が関係していないかを考える必要があります。
なぜまぶたが下がる? 目がくぼんで見えるのはなぜ?
まぶたを上げる主役は眼瞼挙筋で、こちらは別の神経(動眼神経)が動かしています。ホルネル症候群で止まるのは、補助役のミュラー筋だけです。
まぶたが大きく下がっている場合は、ホルネル症候群だけでは説明できません。
交感神経の障害だけで強い下垂は起こらないため、腱膜性眼瞼下垂や動眼神経麻痺など、別の原因が重なっていないかを確かめます2。
原因:神経の通り道のどこで途切れたか
交感神経の通り道は3つの区間に分かれ、どこで途切れたかによって疑う病気が変わります1,2。
脳幹の脳梗塞(ワレンベルグ症候群)、脊髄の病気など。めまい、手足のしびれ、ろれつが回らないといった症状を伴うことが多い区間です。
肺の先端の腫瘍、首や胸の手術、外傷など。腫瘍が原因のこともあるため、手術歴がなければ詳しく調べます。
頸動脈解離(首の血管の壁の裂け目)、群発頭痛など。頭や首の痛みを伴うときは最優先で調べます。

私が特に注意したいのは、急に片側のまぶたが下がった場合です。
ホルネル症候群の原因にはさまざまなものがありますが、中でも見逃してはならないのが内頸動脈解離です。
突然の眼瞼下垂に、頭痛や首の痛み、目の奥の痛みなどを伴う場合は注意が必要です。こうした症状が現れた場合は、眼瞼下垂の手術を考える前に、救急医療機関で速やかに原因を調べることが大切です。
すぐに受診してほしいサイン
次の症状を伴う場合は、当日中に救急外来や脳神経外科を受診してください
- 首、顔、頭の片側の痛み(頸動脈解離の可能性)
- 手足のしびれや麻痺、めまい、ろれつが回らない(脳幹の脳梗塞の可能性)
- 肩から腕にかけての痛み、手の力が入らない(肺の先端の腫瘍の可能性)
- 物が二重に見える(目の奥の病気の可能性)
頸動脈解離では、ホルネル症候群が最初の、そして唯一のサインだったという例が半数あったと報告されています1。
検査と診断
- 暗い部屋で瞳孔を比べる
照明を消した直後、ホルネル症候群の瞳孔は広がるのが数秒遅れます。左右差が最もはっきりする瞬間です1。 - 点眼で確かめる
アプラクロニジンという目薬を差すと、ホルネル症候群の瞳孔だけが広がり、左右の大小が逆転します。発症直後は反応が出にくいことがあり、陰性でも疑いが強ければ検査を続けます2,3。 - ほかの神経の確認
目の動きや顔の感覚、手足の動きを調べ、途切れた場所の見当をつけます。 - 画像検査
疑われる区間に合わせて、MRIやCTで脳・首・胸と血管を調べます。必要に応じて脳神経内科・外科と連携します2。
瞳孔の大きさが少し違うだけなら、病気ではないこともあります。
健康な人の最大2割は、もともと左右の瞳孔の大きさが少し違います。そこに加齢による腱膜性眼瞼下垂が重なると、ホルネル症候群とよく似た見た目になるため、点眼検査で見分けます1。
治療:原因の治療と、まぶたの治療
まず原因の病気を見つけて治療し、そのうえで、まぶたの見た目の悩みに対応します。
自然に戻ることはあるか
手術のあとなどに起こったホルネル症候群は、時間とともに改善することがあります。
経過が記録された36例。完全に回復した例は、すべて1年以内に回復していました3
まぶたの手術
当院では、ホルネル症候群にも眼瞼挙筋前転法で対応しています。働かなくなったミュラー筋のぶんを、まぶたを上げる主役である眼瞼挙筋の腱膜を前に出して固定することで補い、左右の高さをそろえます。下がりが軽いため、調整する幅は小さく済むことが多いタイプです。原因の検査が済み、状態が落ち着いてから検討します。
眼瞼下垂の手術について手術や外傷のあとに起きた場合は、1年ほどかけて回復することもあるため3、回復の様子を見てから手術の時期を決めます。
症例:胸の手術のあとに起こったホルネル症候群
右眼のまぶたの下がり(眼瞼挙筋前転法・右眼のみ)
手術直前と、手術中の確認(皮膚を縫う直前)


(皮膚を縫う直前)
手術翌日


1週間後


2週間後(抜糸時)

手術前は右のまぶたが下がり、右眼が小さく見えていました。手術中は、皮膚を縫う前に目を開けていただき、左右の高さとまぶたのカーブ(アーチ)を確認してから仕上げています。翌日は腫れと内出血がありますが、1週間後には落ち着いてきています。写真は術後2週間までの経過で、最終的な仕上がりではありません。当然のことですが、効果や経過には個人差があります。
アップニーク点眼液は効く?
アップニーク®ミニ点眼液0.1%(成分:オキシメタゾリン)は、まぶたを補助的に持ち上げるミュラー筋を収縮させる目薬です。ホルネル症候群は、まさにこのミュラー筋が働かなくなる病気です。
効く可能性は高いと考えられますが、ホルネル症候群で効果を確かめた研究はまだありません。
2026年10月時点で、ホルネル症候群にアップニーク(オキシメタゾリン)を使った研究や症例報告は、PubMedには見当たりませんでした。ただし、同じ仕組みの目薬の報告から、効果が期待できる理由はあります。
スイスの大学病院、ホルネル症候群18人。ホルネル側がより大きく上がるため、左右差が縮まりました5
この系統の目薬は、ホルネル症候群で小さくなった瞳孔を広げることがあります6。瞳孔の大きさの左右差は、ホルネル症候群の診断や回復の目安になる大切なサインです。点眼で見えにくくならないよう、原因の検査が済んでから使います。
自然な回復を待っている間や、手術の前に上がった状態を確かめたいとき、手術を望まない方の選択肢になります。処方については「眼瞼下垂の点眼薬(アップニーク)」をご覧ください。

ホルネル症候群による眼瞼下垂は、加齢によって挙筋腱膜が緩む一般的な眼瞼下垂とは、発症の仕組みが異なります。
そのため、まぶたが下がっているからといって、すぐに眼瞼下垂手術を行うわけではありません。
まず原因となる神経や血管などの異常を調べ、必要な治療を優先することが重要です。原因の評価と治療を行ったうえで、まぶたの下がりが残り、日常生活に支障がある場合には、眼瞼下垂に対する手術を検討することもあります。
よくある質問
ホルネル症候群は治りますか。
原因によります。手術や外傷のあとに起こったものは、1年ほどかけて回復することがあります3。回復しない場合でも、まぶたの下がりは手術で整えられます。
目がくぼんで小さく見えるのは治りますか。
眼球が奥に下がっているわけではありません。上下のまぶたのすき間が狭いことによる見かけの変化なので、まぶたの位置を整えると印象は改善します1。
何科を受診すればよいですか。
痛みや手足の症状があれば、脳神経外科や救急外来へ。それ以外は、まず眼科で瞳孔とまぶたを調べ、必要に応じて専門科と連携します。
まぶたの手術は保険が使えますか。
眼瞼下垂として診断され、視界や生活に支障がある場合は保険診療の対象です。詳しくは「眼瞼下垂手術の費用」をご覧ください。
ほかの原因の眼瞼下垂との違いは「後天性眼瞼下垂とは」「動眼神経麻痺」「まぶたが下がる原因と受診の目安」で解説しています。
瞳孔の大きさの左右差やまぶたの下がりが気になる方へ
ホルネル症候群かどうか、急いで調べるべき原因がないか。まず原因を見分け、必要な検査は専門科と連携して進めます。原因が落ち着いたあとの、まぶたの治療もご相談ください。
参考文献
PubMed収載論文をもとに作成しています。すべて全文を確認しています。
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- Maamouri R, Ferchichi M, Houmane Y, et al. Neuro-ophthalmological manifestations of Horner’s syndrome: current perspectives. Eye Brain. 2023;15:91-100. doi:10.2147/EB.S389630
- Xie T, Fu Y, Jin X, et al. Horner syndrome as a postoperative complication of thyroid surgery: a systematic review. Front Endocrinol (Lausanne). 2025;16:1664870. doi:10.3389/fendo.2025.1664870
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- Li Z, Liu Y, Yin H, et al. Naphazoline eye drops for the treatment of Horner syndrome following radical thyroid cancer surgery: a case report. J Int Med Res. 2025;53(8):3000605251359467. doi:10.1177/03000605251359467
- Ishikawa H, Oka K, Inoue H. Six-month efficacy and safety of oxymetazoline hydrochloride 0.1% in Japanese patients with acquired blepharoptosis: a phase 3 study. Jpn J Ophthalmol. 2026;70(4):820-829. doi:10.1007/s10384-026-01340-5







