眼瞼下垂の基礎知識

眼瞼下垂は遺伝する?親から子への確率と、先天性眼瞼下垂の家族歴を眼形成外科医が解説

髙田 尚忠

「自分が眼瞼下垂だと、子どもにも遺伝するのか」「生まれた子のまぶたが片方だけ下がっているのは、家系のせいなのか」。このページでは、眼瞼下垂と遺伝の関係を、タイプごとに研究の数字で整理します。

  • 生まれつきの眼瞼下垂の多くは遺伝ではない:米国の住民調査では、家族にも眼瞼下垂の人がいたのは約12%でした1。
  • 一部に、親から子へ伝わる家系がある:常染色体顕性(優性)遺伝の家系が報告されていますが、遺伝子の変化を受け継いでも発症しない人がいます2,3。
  • 加齢やコンタクトレンズによる眼瞼下垂は、生活の影響が大きい:一卵性の双子でも、コンタクトレンズの使用でまぶたの高さに差が出ていました4。

執筆:髙田 尚忠(高田眼科 院長/眼科医・眼形成外科) 最終更新:2026年10月

眼瞼下垂は遺伝するのか(タイプ別の答え)

眼瞼下垂は、原因によって遺伝との関わり方がまったく違います。まず、ご自身やお子さんがどのタイプに近いかを確認してください。

生まれつき先天性眼瞼下垂

大半は家族歴のない単発の発症です。一部に、親から子へ伝わる家系があります1,2。

先天性眼瞼下垂について
遺伝性の病気症候群・筋肉の病気に伴うもの

瞼裂狭小症候群や筋ジストロフィーなど、病気そのものが遺伝するタイプです5。

筋肉の病気による眼瞼下垂
大人になってから加齢・コンタクトレンズによるもの

まぶたを上げる筋肉の腱(すじ)がゆるんで起こります。生活の影響が大きく、親から決まった形で伝わるものではありません4。

腱膜性眼瞼下垂について

先天性眼瞼下垂と遺伝:家族歴があるのは約1割

米国ミネソタ州の一つの郡で、40年間に眼瞼下垂と診断された19歳未満の107人を調べた研究があります。このうち81人が、ほかの病気を伴わない「単純先天性眼瞼下垂」でした1。

約12% 家族にも眼瞼下垂の人がいた割合 単純先天性眼瞼下垂のうち、家族歴の記録があった60人中7人1

つまり、およそ9割の方には、家族に同じ症状の人がいませんでした。「親のせい」「妊娠中の過ごし方のせい」と考える必要はありません。

842人に1人単純先天性眼瞼下垂で生まれる頻度1
96%片方のまぶただけに起こった割合1

片方だけの場合は、左のまぶたが68%を占めていました。理由は分かっていません1。なお、この調査の対象は白人が大半の地域の住民で、日本人で同じ規模の調査は見つかりませんでした。

親が眼瞼下垂の場合、子どもに遺伝する確率

答えは、ご家族の中に眼瞼下垂の方が何人いるかで変わります。

家族の中でご本人だけが眼瞼下垂の場合

先天性眼瞼下垂の多くがこの形です。この場合にお子さんへ伝わる確率を直接調べた研究は見つかりませんでした。家族歴のない方が約9割を占めることから1、高い確率で伝わるとは考えにくいものの、正確な数字は示せません。

親・きょうだい・祖父母にも眼瞼下垂の方がいる場合

世代を越えて続く家系では、常染色体顕性(優性)遺伝という伝わり方が報告されています。両親のどちらかが持つ遺伝子の変化が、性別に関係なく子に伝わる形です。

  1. 受け継ぐ確率は2分の1
    常染色体顕性(優性)遺伝では、親が持つ遺伝子の変化を子が受け継ぐ確率は、妊娠ごとに50%です。
  2. 受け継いでも発症しないことがある
    イタリアの5世代14人の家系では、変化を受け継いだ人のうち実際に発症するのは70〜90%と推定されました2。米国の大きな家系の解析でも、発症しない人がいることを前提にしています3。
  3. 症状の出方は家族の中でも違う
    同じ家系の中に、片方だけの人と両方の人、軽い人と重い人がいました2。親と同じ程度になるとは限りません。

遺伝がはっきりしている家系でも、お子さんが発症する確率は半分より低くなります。

受け継ぐ確率(50%)に、発症する割合(70〜90%)を掛けると、おおよそ3〜4割台です。これは一つの家系の推定値にもとづく目安で、すべての家系に当てはまるわけではありません2。

原因の遺伝子はどこまで分かっているか

ほかの病気を伴わない先天性眼瞼下垂について、原因の遺伝子がある場所の候補はいくつか見つかっています。ただし、検査で確定できる遺伝子はまだ定まっていません。

米国の家系1番染色体

大きな家系の解析で、1番染色体の一部(1p32-p34.1)に原因の場所があると報告されました3。

英国の家系X染色体

両方のまぶたが下がる家系で、X染色体の一部(Xq24-q27.1)との関連が報告されました。男女とも同じように発症していました6。

日本人の家系長崎大学の研究

日本人の一家系を調べ、8番染色体など3か所を候補に挙げました。候補の遺伝子(ZFHX4)に、この家系に特有の変化は見つかりませんでした7。

このため、通常の先天性眼瞼下垂で、遺伝子検査が診断や治療方針を決めることはありません。

遺伝することがはっきりしている眼瞼下垂

眼瞼下垂が、遺伝性の病気の症状の一つとして現れることがあります。まぶた以外の症状を伴うのが特徴です5。

生まれつき瞼裂狭小症候群

目の横幅が狭い、目頭の皮膚が逆向きにかぶさる、目と目の間が広い、といった特徴を伴います。FOXL2という遺伝子の変化が主な原因で、常染色体顕性(優性)遺伝です8。

生まれつき外眼筋線維症

目を動かす筋肉が生まれつき働かず、目の動きの制限と眼瞼下垂が起こります。型によって顕性(優性)遺伝と潜性(劣性)遺伝があります5。

大人で発症眼咽頭型筋ジストロフィー

眼瞼下垂と飲み込みにくさが主な症状で、常染色体顕性(優性)遺伝です5。

眼咽頭型筋ジストロフィー
年齢はさまざま筋強直性ジストロフィー

筋力の低下、握った手が開きにくい症状、白内障などを伴い、常染色体顕性(優性)遺伝です5。

筋強直性ジストロフィー

まぶた以外の症状があるときは、先にお伝えください

  • 飲み込みにくい、むせやすい
  • 手足の力が入りにくい、疲れやすい
  • 物が二重に見える、目が動かしにくい
  • 夕方になると症状が強くなる

これらがある場合は、脳神経内科などでの検査が必要になることがあります。夕方に悪化する場合は、遺伝しない病気である重症筋無力症も考えます。

大人の眼瞼下垂(加齢・コンタクトレンズ)は遺伝するか

「母も祖母もまぶたが下がっていた」という方は少なくありません。体質の影響はありますが、生活の影響も同じように大きいことが、双子の研究で分かっています。

皮膚のたるみには体質が関わる

オランダと英国の研究では、上まぶたの皮膚のたるみについて、個人差の61%が遺伝の影響で説明できると推定されました(英国の双子1,052組)。年齢、男性、色白の肌、肥満もたるみと関係していました9。

ただし、これは皮膚がかぶさる状態の研究で、まぶたを上げる力が落ちる眼瞼下垂そのものを調べたものではありません。違いは皮膚のたるみと眼瞼下垂の見分け方で説明しています。

同じ遺伝子でも、コンタクトレンズで差が出る

米国の研究では、まぶたの下がり方に差がある一卵性の双子96組を調べました。遺伝子が同じでも、コンタクトレンズを使っている人のほうが、まぶたが下がっていました4。

一卵性の双子で比べた、まぶたの下がり幅の平均(mm)
使用なし1.0
ソフト1.41
ハード1.84

米国の一卵性の双子96組(192人)の写真を計測。喫煙、日光、飲酒、睡眠、体格との関係は認められませんでした4

コンタクトレンズとの付き合い方は、アイプチ・コンタクトレンズと眼瞼下垂をご覧ください。

お子さんのまぶたが気になるとき

遺伝かどうかよりも大切なのは、視力の発達に影響していないかを確認することです。先ほどの米国の住民調査では、単純先天性眼瞼下垂の子ども81人のうち12人(約15%)に弱視がありました。まぶたが瞳孔をふさいだことだけが原因だったのは7人(約9%)で、残りは強い屈折異常や斜視によるものでした10。

早めに眼科を受診していただきたいサイン

  • まぶたが瞳孔にかかっている
  • あごを上げて物を見る
  • 片方の目だけで見ているように見える、目の向きがずれる

乳幼児でまぶたが瞳孔を大きくふさいでいる場合は、小児眼科のある病院で早めに相談してください。

髙田尚忠医師
髙田尚忠医師

「遺伝ですか」とよく聞かれます

診察では、ご両親から「自分のせいでしょうか」と聞かれることがよくあります。先天性眼瞼下垂の多くは、ご家族に同じ症状の方がいない単発のものです。ご自身を責める必要はありません。

当院では、ご本人が手術を理解できる小学校高学年以降に、眼瞼挙筋前転法で手術を行っています。

手術の方法や時期は、先天性眼瞼下垂のページで詳しく説明しています。

よくある質問

片方だけの先天性眼瞼下垂も遺伝しますか。

多くは遺伝ではありません。ただし、遺伝する家系の中にも片方だけの方がいるため、片方だけだから遺伝しないとは言い切れません2。

上の子が先天性眼瞼下垂です。次の子にも起こりますか。

ご両親や親族に同じ症状の方がいなければ、多くは単発です。きょうだいでの確率を直接調べた研究は見つかりませんでした。親族に複数いる場合は、遺伝する家系の可能性があります1。

遺伝子検査は受けたほうがよいですか。

まぶただけの症状であれば、通常は必要ありません。原因の遺伝子が定まっていないためです7。まぶた以外の症状がある場合は、専門の診療科で相談します。

親が加齢で眼瞼下垂の手術を受けました。自分もなりますか。

必ずなるわけではありません。コンタクトレンズの使用など、生活の影響が大きいことが双子の研究で示されています4。

遺伝による眼瞼下垂は予防できますか。

生まれつきの眼瞼下垂を予防する方法は知られていません。早く気づき、視力の発達を確認していくことが大切です10。

高田眼科の考え方

遺伝する家系かどうかにかかわらず、手術の方法は変わりません。当院では、先天性眼瞼下垂に対して、眼瞼挙筋を前に引き出して固定する眼瞼挙筋前転法を基本としています。先天性眼瞼下垂の手術は自費診療で、片眼350,000円(税込・麻酔代を含む)です。手術は二重のラインを作ったり、左右の二重をそろえたりするものではありません。詳しくは先天性眼瞼下垂のページをご覧ください。

ご自身やお子さんの眼瞼下垂で、遺伝が気になる方へ

まぶたの状態とご家族の様子をうかがい、タイプと治療の選択肢をご説明します。

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執筆:髙田 尚忠(たかだ なおただ)
高田眼科 院長。岡山大学医学部卒業。眼科医・眼形成外科医として眼瞼下垂手術を専門とし、関連クリニックを含め年間2,000件以上の眼瞼手術に携わっています。

参考文献

PubMedに収載された論文をもとに作成しています。文献1・5は全文、それ以外は抄録を確認しています。

  1. Griepentrog GJ, Diehl NN, Mohney BG. Incidence and demographics of childhood ptosis. Ophthalmology. 2011;118(6):1180-1183. doi:10.1016/j.ophtha.2010.10.026
  2. Pavone P, Barbagallo M, Parano E, et al. Clinical heterogeneity in familial congenital ptosis: analysis of fourteen cases in one family over five generations. Pediatr Neurol. 2005;33(4):251-254. doi:10.1016/j.pediatrneurol.2005.03.018
  3. Engle EC, Castro AE, Macy ME, et al. A gene for isolated congenital ptosis maps to a 3-cM region within 1p32-p34.1. Am J Hum Genet. 1997;60(5):1150-1157. PMID:9150162
  4. Satariano N, Brown MS, Zwiebel S, et al. Environmental factors that contribute to upper eyelid ptosis: a study of identical twins. Aesthet Surg J. 2015;35(3):235-241. doi:10.1093/asj/sju070
  5. Pavone P, Cho SY, Praticò AD, et al. Ptosis in childhood: a clinical sign of several disorders: case series reports and literature review. Medicine (Baltimore). 2018;97(36):e12124. doi:10.1097/MD.0000000000012124
  6. McMullan TF, Collins AR, Tyers AG, et al. A novel X-linked dominant condition: X-linked congenital isolated ptosis. Am J Hum Genet. 2000;66(4):1455-1460. doi:10.1086/302860
  7. Nakashima M, Nakano M, Hirano A, et al. Genome-wide linkage analysis and mutation analysis of hereditary congenital blepharoptosis in a Japanese family. J Hum Genet. 2008;53(1):34-41. doi:10.1007/s10038-007-0214-6
  8. Shen Q, Zhao X, Ji Y, et al. Deletion of cis-regulatory element in FOXL2 promoter in a Chinese family of type II blepharophimosis-ptosis-epicanthus inversus syndrome with polydactyly. J Craniofac Surg. 2024;35(1):e52-e56. doi:10.1097/SCS.0000000000009801
  9. Jacobs LC, Liu F, Bleyen I, et al. Intrinsic and extrinsic risk factors for sagging eyelids. JAMA Dermatol. 2014;150(8):836-843. doi:10.1001/jamadermatol.2014.27
  10. Griepentrog GJ, Diehl N, Mohney BG. Amblyopia in childhood eyelid ptosis. Am J Ophthalmol. 2013;155(6):1125-1128.e1. doi:10.1016/j.ajo.2012.12.015
このブログの執筆者
髙田尚忠
髙田尚忠
高田眼科 院長|フラミンゴ美容クリニック/銀座Jクリニック/あさ美皮フ科 眼瞼手術担当
岡山大学医学部卒業後、郡山医療生活協同組合 桑野協立病院などの様々な医療機関を勤務し、現在は高田眼科の院長を務めつつ、関連クリニックの名古屋のフラミンゴ眼瞼・美容クリニック、銀座のJ clinic、亀戸のあさ美皮フ科においても、眼瞼下垂手術を中心に年間2,000件以上の眼瞼手術に携わっています 「見え方(視機能)」と「日常の快適さ」を回復することを第一に、診察では原因(加齢・コンタクト・体質・既往手術など)を丁寧に整理し、必要な治療を分かりやすく説明すること心がけています。 このブログでは、眼瞼下垂の症状、治療選択、術後経過で不安になりやすいポイントなどを、専門医の立場からできるだけ具体的に発信しています。
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