まぶたが下がる症状でお悩みの方へ – 片側だけのケースも。原因・対策は?

「年齢とともにまぶたが下がってきた」「目元が重たく感じる」
まぶたに関するこのようなお悩みを抱えていませんか。
まぶたが下がる主な原因は加齢です。しかし、まぶたの下垂「眼瞼下垂(がんけんかすい)」の症状である可能性もあり、その場合は治療により改善できます。
本記事では、まぶたが下がる症状でお悩みの方へ向けて、原因と起こりうる症状、治療法や対策について詳しくまとめました。
まぶたが下がる原因
加齢とともに、まぶたが下がってきたと悩む方は少なくありません。
老化によってまぶたが下がる原因としては、乾燥やたるみ、眼瞼下垂などが考えられます。

乾燥
加齢に伴い皮脂の分泌量が減少すると、肌が乾燥しやすくなり、バリア機能が低下します。
バリア機能には水分量を維持し、外部刺激から肌を守る役割があり、ハリとうるおいのある肌を保つために欠かせません。
そのため、肌のバリア機能が衰えると、外部からの刺激を受けやすい状態となります。
とくに、まぶたの皮膚は非常に薄くデリケートです。そのため乾燥によってまぶたに大きな負担がかかり、たるみにつながるおそれがあります。
たるみ
年齢とともに、肌のハリや弾力を保つためのコラーゲンやエラスチンなどの成分が減少することも、まぶたが下がる原因の一つです。
目元の皮膚の弾力性が失われると、たるみが生じてまぶたが下がりやすくなります。
眼瞼下垂
眼瞼下垂とは、まぶたを持ち上げる筋肉(眼瞼挙筋)の機能が低下し、目を開きにくくなる疾患です。
年齢を重ねるごとに眼瞼挙筋が衰えていくため、まぶたが下がりやすくなります。

眼瞼下垂になると、まぶたが重くなるだけではなく、肩こりやめまいなどの不調を引き起こすケースもあり、早期の治療が推奨されます。
なお、眼瞼下垂を引き起こす原因は加齢だけではなく、生まれたときからまぶたが上がりにくい、先天性眼瞼下垂の人もいます。
また、生活習慣やほかの病気の影響などで眼瞼下垂を発症する可能性も考えられます。
眼瞼下垂は、見た目の問題だけでなく、視野が狭くなるなど日常生活に支障をきたす可能性があります。
治療により改善可能であるため、症状が気になる場合は眼科医に相談することをお勧めします。
片側だけまぶたが下がるのはなぜ?
上述したとおり、まぶたが下がる原因の多くは加齢によるもので、両目に症状があらわれるのが一般的です。
一方で、片側のまぶただけ下がるケースも稀に見られます。
片側だけまぶたが下がっている場合は眼瞼下垂だけではなく、ほかの疾患が影響している可能性もあるため、早めに眼科で受診することが大切です。
先天性眼瞼下垂
先天性眼瞼下垂の約8割は、片側だけまぶたが下がる片眼性(へんがんせい)です。
眼瞼挙筋が生まれつき機能していない、もしくは力が弱いために発症します。
眼瞼挙筋の発育不全が起こる明確な原因は、いまだ解明されていません。
ただし、確率は低いものの、先天性眼瞼下垂であっても両眼に症状が出るケースはあり、遺伝の影響が強いと考えられています。
片目へのダメージの蓄積
もともとは正常だったまぶたが徐々に下がってくる後天性眼瞼下垂は、両目に発症するケースがほとんどです。
しかし、日常生活のなかで片側のまぶたに負担がかかっていると、挙筋腱膜が徐々にゆるみ、片目だけの眼瞼下垂を発症するおそれもあります。
たとえば、コンタクトレンズを片目だけ装着している方、アイプチやアイテープなどを片目だけ使用している方は注意が必要です。
また、花粉症やアレルギー性皮膚炎などで、片側のまぶたばかり強く擦っていると、片目に負担がかかり眼瞼下垂につながります。
眼瞼下垂手術後のヘリング現象
片目の眼瞼下垂手術を受けたあとに、反対側のまぶたが下がってきた場合は、ヘリング現象を起こしている可能性が高いです。
眼瞼下垂が片側のみ進んでいる場合、反対側の前頭筋も代償的に収縮して、本来よりもまぶたを大きく上げています。
そのため、手術によって片目のまぶたが正常になると、治療していない側のまぶたが本来の位置まで下がってしまうのです。これをヘリング現象といいます。
左右差をできるだけ少なくするためには、片目だけが眼瞼下垂であっても両眼同時手術をおこなうことが推奨されます。
その他の疾患
神経系や筋肉の病気が原因で眼瞼下垂を発症し、片側だけまぶたが下がるケースもあります。
通常、眼瞼下垂は、まぶたへのダメージが徐々に蓄積し、長い年月をかけて症状が進行します。
一方、ほかの病気が原因の場合は、急にまぶたが重くなるのが特徴です。
ある日突然、片側の眼瞼下垂を発症した場合は、脳梗塞や脳動脈瘤といった重篤な病気が疑われるため、速やかに医療機関を受診しましょう。
【片側だけまぶたが下がる疾患】
疾患名 | 特徴 |
---|---|
脳腫瘍 | 脳やその周囲など、頭蓋骨内にできる腫瘍の総称。 |
脳動脈瘤(のうどうみゃくりゅう) | 脳動脈の一部が、瘤(こぶ)のように膨らんだ状態。破裂するとくも膜下出血を起こす危険性がある。 |
脳梗塞 | 脳の血流が途絶え、酸素や栄養が行きわたらなくなり脳の細胞が壊死する病気。 |
片側顔面痙攣(へんそくがんめんけいれん) | 顔の片側の筋肉が、自分の意志とは関係なくピクピクと動く病気。 |
重症筋無力症 | 筋肉が弱くなり、手足を動かすとすぐに疲れて力が入らなくなる病気。まぶたが下がったり、ものが二重に見えたりと、眼の症状があらわれる場合もある。 |
動眼神経麻痺 | まぶたを上げる筋肉や眼球を動かす筋肉を支配している動眼神経が麻痺する病気。糖尿病の合併症として発症するケースが見られる。 |
片目だけの眼瞼下垂については、下記の記事も参考にしてください。

まぶたが下がると起こりやすい症状
まぶたが下がって目の開きが悪くなると、ものが見えにくくなるだけではなく、さまざまな体調不良を引き起こすおそれがあります。
また、眠そうに見えたり、目つきが悪くなったりと、見た目にも影響を及ぼしかねません。
視野の狭まり
まぶたが下がり瞳孔(黒目)に被さっている状態だと、視野が狭くなります。
ものが見えにくくなれば、家事や仕事、読書、運動などが困難となり、日常生活に悪影響を及ぼします。
とくに高齢者の方は、転倒したり交通事故を起こしたりするリスクが高まるため注意が必要です。
疲れ目
まぶたが下がっている方は、目を大きく開いてものを見ようとします。
すると眼瞼挙筋に持続的な力が入るため、目が疲れやすくなります。

目を休ませずに疲れ目を放置すると、ドライアイやかすみ、充血などの症状が起こりやすくなるほか、全身に影響が出るケースも少なくありません。
頭痛や肩こり
眼瞼下垂を発症している場合、眼瞼挙筋の機能が低下しているため、おでこの筋肉(前頭筋)を使って眉を引き上げ、まぶたを開けようとします。
前頭筋は頭部や首、肩などの筋肉とつながっている部分です。
そのため、前頭筋の緊張状態が続くと、頭痛や肩こりに悩まされるおそれがあります。

さらに、めまいやふらつき、睡眠障害、便秘・下痢といったさまざまな随伴症状があらわれる場合もあります。
頭痛や肩こりなどの原因が必ずしも眼瞼下垂であるとは限りませんが、眼瞼下垂が原因の場合は手術によって症状が改善する方が多いです。
ほかにも、交感神経を支配しているミュラー筋の緊張が原因で、頭痛や肩こりが引き起こされると考える学説もあります。
見た目の変化
まぶたが下がると、眠そうな目に見える、二重の幅が広くなるなど、見た目に変化があらわれます。

前頭筋でまぶたを持ち上げている方は、おでこのしわが定着してしまい、老けて見えるおそれもあるでしょう。
まぶたの下がりを治す方法や対策は?
まぶたの下がりを改善するためには、原因に合わせた対処が必要です。
乾燥やコラーゲン不足によるたるみが原因でまぶたが下がっている場合は、保湿やハリ・弾力ケアによって改善する可能性があるでしょう。
一方、原因が眼瞼下垂である場合は、セルフケアでは改善できません。
ゆるんだ挙筋腱膜を短くして、目の開きを良くする手術を受ける必要があります。
まぶたが下がる原因は多岐にわたり、自己判断は難しいため、症状が見られた場合は早めに眼科医に相談しましょう。
眼瞼下垂手術の種類
眼瞼下垂手術にはいくつかの手法があり、もっとも広くおこなわれているのが「挙筋前転法」です。
そのほか、眼瞼下垂の重症度によっては、挙筋短縮法や前頭筋吊り上げ術、ミュラー筋タッキング法、埋没式挙筋短縮法などが選択されるケースもあります。
【主な眼瞼下垂手術の方法】
手術方法 | 特徴 |
挙筋前転法 | まぶたを切開し、ゆるんだ挙筋腱膜を折りたたんで瞼板に再固定する方法。 |
挙筋短縮法 | 挙筋腱膜を短くしてから瞼板に固定する方法。 |
前頭筋吊り上げ術 | おでこの筋肉と瞼板を糸や筋膜で連結させ、まぶたを上げる方法。 |
ミュラー筋タッキング法 | 眼瞼挙筋とミュラー筋を剥離し、ミュラー筋のみを縫い縮めて瞼板に再固定する方法。 |
埋没式挙筋短縮法 (切らない眼瞼下垂) | 糸を用いて、ゆるんだ眼瞼挙筋を瞼板に引き寄せて固定する方法。 |
眼瞼下垂予防には早めの手術を推奨
眼瞼下垂を一度発症すると、どんどん症状が進行してしまうおそれがあり、全身の不調を引き起こしかねません。
重症化するほど難易度の高い手術が必要となるほか、再発のリスクも高まります。
そのため、まぶたの下がりができるだけ軽度のうちに手術を検討しましょう。
治療法の選択肢が広がり、身体への負担やダウンタイムを軽減できます。
まとめ
まぶたが下がる原因としては、加齢による乾燥やたるみ、眼瞼下垂などが考えられます。
なかでも眼瞼下垂は、まぶたを上げる筋肉が衰えるために発症する疾患で、セルフケアでは根本的な改善は期待できません。
進行するとさまざまな全身症状があらわれるおそれがあり、早めの治療が大切です。
また、片側のまぶただけが急に下がってきた場合は、ほかの病気の存在が疑われます。
脳梗塞や脳動脈瘤などの命にかかわる病気が隠れているケースもあるため、すぐに医師の診察を受けてください。
まぶたが下がる症状に関してよくある質問
- まぶたが下がる症状は年齢と関係ありますか?
-
加齢によって筋力が低下し、まぶたが下がりやすくなります。
- 片目だけまぶたが下がる場合、深刻な病気の可能性はありますか?
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可能性はあります。脳腫瘍や脳卒中などの症状の一つである場合があるため、医師の診断を受けることをお勧めします。
- まぶたが下がる症状は遺伝しますか?
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遺伝的要因が関係する場合もあります。家族に同様の症状がある場合は、遺伝の可能性が高くなります。
- まぶたが下がる症状と視力低下に関連性はありますか?
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まぶたが下がることで視野が狭くなり、結果的に視力に影響を与える可能性があります。
- まぶたが下がる症状と喫煙に関連性はありますか?
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喫煙は血流を悪くし、皮膚の弾力性を低下させるため、症状を悪化させる可能性があります。
- まぶたが下がる症状が眼瞼下垂かどうか、自分で調べることはできますか?
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ある程度の自己チェックは可能ですが、最終的な診断は医療専門家に委ねるべきです。眼瞼下垂のセルフチェック方法についてはこちらの記事をご覧ください。
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