眼瞼下垂を放っておくとどうなる?
「まぶたが重く感じる」「視界が狭くなってきた」など、眼瞼下垂の症状があらわれたら、早めの受診がおすすめです。
最初は軽度であっても、眼瞼下垂は徐々に進行して症状が悪化するケースも少なくありません。
治療を受けずに放っておくと、日常生活にさまざまな影響を及ぼすおそれがあります。
この記事では、眼瞼下垂を放っておくとどうなるかについて解説しました。起こり得るトラブルを把握し、対策を講じて進行を防いでいきましょう。
眼瞼下垂を放置すると起こり得ること
眼瞼下垂の程度には個人差があり、軽度であれば日常生活に大きな支障は生じません。
しかし、眼瞼下垂の治療を受けずに放っておくと、加齢やまぶたへの刺激などが原因で症状が悪化するおそれがあります。
眼瞼下垂が進行すると目を開きにくくなるだけではなく、見た目に影響したり、身体の不調を引き起こしたりするケースもあります。
視野が狭くなる
眼瞼下垂になると、まぶたが下がって視野が狭くなり、上方や外側が見えづらくなります。
軽度の場合は瞳孔(黒目)にまぶたが少し被さる程度ですが、放置するとさらにまぶたが垂れ下がる危険性があります。
視野が狭くなると、転倒や交通事故などのリスクが高まるため注意が必要です。
目が疲れる(眼精疲労)
目が疲れやすくなることも眼瞼下垂の代表的な症状です。
重く開きづらいまぶたを無理に上げようとして、眼瞼挙筋に持続的に力を入れるためです。
目の疲れや眼精疲労を放置すると、身体的および精神的な不調につながるほか、ほかの眼疾患を引き起こすリスクも高まってしまいます。
眠たそうな見た目になる
まぶたが瞳孔の大部分を覆うようになると、眠たそうな表情になったり、目つきが悪くなったりと、目元の印象が大きく変化してしまいます。
仕事や私生活で人と会う機会が多い方にとっては、大きなストレスとなるおそれがあります。
額のしわが増える
眼瞼下垂はまぶたを上げる筋肉である眼瞼挙筋が衰えている状態のため、無意識のうちに額の筋肉(前頭筋)を使って目を開くようになります。
眉毛を上げてものを見るようになり、常に額の筋肉を動かしていると、徐々に額のしわが増えて定着してしまう可能性があります。
肩こりや頭痛が生じる
眼瞼下垂になると、眼瞼挙筋を補佐しているミュラー筋が常に緊張している状態となり、首周辺の筋肉まで力が入って肩こりを引き起こすと考えられています。
筋肉の緊張が続くと、血流が悪化して頭痛につながる場合もあります。
また、ミュラー筋は自律神経の一つである交感神経に支配されているため、ミュラー筋のバランスが崩れると、便秘や手足の冷えなどのトラブルが生じるおそれもあります。
眼瞼下垂がひどくなるとどうなる?
眼瞼下垂がひどくなると、まぶたが瞳孔を半分以上覆い、目をさらに開きにくくなります。
重度の視野障害につながり、日常生活に大きな支障をきたすおそれが出てきます。
運転や読書、歩行などが困難となれば、仕事にも悪影響を及ぼしかねません。
進行するほど治療が難しくなる
また、眼瞼下垂は症状が進行するほど簡単には治せなくなります。
軽度であれば幅広い手術方法のなかから選択できますが、重度になると切開法でなければ治療が難しく、手術の難易度も上がります。
二重のラインが不自然になったり、左右差が生じたりと、思いどおりの仕上がりにならないリスクが高まるため注意が必要です。
眼瞼下垂は早めの対処がおすすめ
眼瞼下垂を放置しても、命にかかわる重大な病気につながる危険性はありません。
しかし、放っておくとどんどん進行して、日常生活に大きな影響を及ぼす場合があるため、悪化させないための対策が必要です。
「まぶたが重い」「まぶたがたるんできた」と感じる方は、まぶたへの刺激を避けたり、眼瞼挙筋を鍛えたりして、眼瞼下垂の進行を防ぎましょう。
また、眼瞼下垂が疑われる場合は、早めに眼科医に相談することも重要です。
眼瞼下垂を進行させないために気をつけたいこと
眼瞼下垂は自然には治らないため、根本的な改善には手術が必要です。
しかし、症状が軽度の場合、日常生活のなかでまぶたにかかる負担を軽減すれば、進行を防げる可能性があります。
まぶたへの刺激を減らす
眼瞼下垂の進行させないためには、まぶたへの刺激を極力減らしましょう。
洗顔時にまぶたを擦らない、アイプチやつけまつげの使用を控える、濃いアイメイクは避けるなどの対策が有効です。
花粉症やアトピー性皮膚炎で目のかゆみがあっても、できるだけ目の周りをかかないように注意しましょう。
また、まぶたを強くこすったり引っ張ったりするマッサージは逆効果です。
挙筋腱膜にダメージを与え、眼瞼下垂を悪化させるおそれがあります。
スキンケアで乾燥を防ぐ
肌が乾燥していると、古い角質が肌の表面に蓄積して角質肥厚が起こります。
これによりまぶたの重量が増し、眼瞼下垂を引き起こしやすくなります。
保湿ケアを丁寧におこない、ターンオーバーを促して乾燥を防ぎましょう。
また、日焼けも肌の乾燥を招き、角質肥厚の原因となるため、紫外線対策も忘れてはいけません。
コンタクトレンズの使用方法を見直す
コンタクトレンズを使用している方は、着用時間や頻度、取り外し方法を見直してみましょう。
とくに、ハードコンタクトレンズは眼瞼下垂のリスクを高めるといわれています。
まばたきによってまぶたの上下運動を繰り返すと、角膜上に装着されたハードコンタクトレンズとの間に摩擦が生じ、挙筋腱膜やミュラー筋が徐々に伸びてしまうためです。
また、コンタクトレンズの装着時や取り外す際にまぶたを引っ張る行為もよくありません。
下まぶたを下げて付ける・はずすほか、眼鏡に変えたり、コンタクトレンズの着用時間を減らしたりしてまぶたへの負担を軽減しましょう。
ハードコンタクトレンズを使用している方は、ソフトコンタクトレンズに変更するだけでも挙筋腱膜へのダメージを抑えられます。
長時間のVDT作業を控える
VDT(Visual Display Terminal)作業とは、パソコンやスマートフォン、タブレットなどの端末を使用する作業です。
デジタル機器のディスプレイ画面を長時間見続けると、ドライアイ・目のかすみ・視力低下などの症状を引き起こすVDT症候群につながり、眼瞼下垂の原因となります。
普段からVDT作業が多い方は、長時間の作業を控えたり、休憩をとって目を定期的に休めたりしてまぶたへの負担を軽減しましょう。
1時間の作業ごとに10〜15分程度の休息時間を設けるのが効果的だといわれています。
眼瞼挙筋のトレーニングをおこなう
多くの場合、眼瞼下垂は眼瞼挙筋の衰えによって発症するため、眼瞼挙筋を鍛えると眼瞼下垂の予防につながります。
- 目を閉じて眉毛を下げ、額の力を抜きます。
- 眉毛が動かないように、手のひらで額全体を押さえます。
- 両目を限界まで大きく見開き、5秒間キープしてください。
- ゆっくりと目を閉じてリラックスします。
- ①〜④を1セットとして、1日に数回、気づいたときにおこなうと効果的です。
ただし、先天性の眼瞼下垂で生まれつき眼瞼挙筋が発達してない場合や、すでに眼瞼挙筋の機能が著しく低下している場合は、トレーニングの効果はほとんど見込めません。
医師と相談し、眼瞼下垂の状態を把握したうえで取り入れるとよいでしょう。
もっとも効果的な予防方法は眼瞼下垂手術
先述したように、眼瞼下垂が軽度であれば日常生活にそれほど影響は出ないため、とくに不便を感じていなければ手術を受けなくてもよいでしょう。
しかし、どれほど気をつけて生活していても、加齢とともに眼瞼挙筋は衰えていくため、将来的に症状が悪化するリスクは避けられません。
先に紹介した対策方法により眼瞼下垂の進行はある程度防げますが、完治することはありません。
そのため、眼瞼下垂の症状が見られたら、できるだけ早く眼科で受診し、軽度のうちに専門医へ相談することを推奨します。
また、生活や仕事に支障がある場合や、肩こり・頭痛といった不調がある場合は症状がすでに進行している可能性が高いため、早めに手術を検討しましょう。
まとめ
眼瞼下垂は軽度だからといって放っておくと、目の開きにくさが悪化するほか、目元の印象が変化したり、肩こりや頭痛といった身体的なトラブルを引き起こしたりするおそれがあります。
進行を防ぐために、まぶたへの負担をできるだけ避けて生活しましょう。
また、重症化する前に眼瞼下垂手術を受けたほうが負担を軽減できるほか、手術の際の負担も少なくすみます。
眼瞼下垂を放っておくとどうなるかについて、よくある質問
- 眼瞼下垂を放置すると視界が狭くなりますか?
-
眼瞼下垂が進行すると上まぶたが目を覆い、視野が狭くなる可能性があります。
- 眼瞼下垂を放置すると目が疲れやすくなりますか?
-
眼瞼下垂により、目を開けるために余分な力が必要となり、目の疲れや頭痛の原因になることがあります。
- 眼瞼下垂は放置すると治りますか?
-
眼瞼下垂は自然に治ることはありません。
- 眼瞼下垂を放置すると、視力が低下しますか?
-
眼瞼下垂自体は視力低下の直接的な原因ではありませんが、重度の場合は視野が妨げられ、見えにくくなる可能性があります。
参考文献
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