男性の眼瞼下垂の症状・手術
眼瞼下垂の患者は、男性よりも女性のほうが多いといわれていますが、性別に関係なく発症します。
男性でも加齢やまぶたへの刺激により、眼瞼下垂を引き起こすリスクはあるため注意が必要です。
本記事では、男性の眼瞼下垂に焦点をあてて、主な症状や原因、治療法について解説していきます。
「まぶたが重く感じる」「視界が狭くなってきた」など、眼瞼下垂の症状に悩んでいる男性の方は、ぜひ参考にしてください。
眼瞼下垂とは
眼瞼下垂とは、上まぶたが十分に上がらず、目が開きにくくなる状態です。
まぶたを上げる筋肉である眼瞼挙筋が衰えたり、眼瞼挙筋と瞼板をつなぐ挙筋腱膜がゆるんだりして発症します。
また、眼瞼下垂には、生まれつきまぶたを上げる力が弱い「先天性眼瞼下垂」と、加齢や生活習慣などが原因で生じる「後天性眼瞼下垂」が存在し、片目のまぶただけが下がる場合もあれば、両目に発症する場合もあります。
罹患率は女性のほうが高いといわれていますが、男性でも眼瞼下垂にかかるリスクはあります。
症状の程度は、黒目(瞳孔)のわずか上にまぶたがかかっている軽度のものから、黒目が半分以上隠れている重度のものまでさまざまです。
男性の眼瞼下垂の特徴・症状とその原因
眼瞼下垂は、性別にかかわらず発症するリスクのある疾患です。
男性でも眼瞼下垂にかかっている人は多くいます。
- まぶたが重く、目を開けにくくなる
- 視界が狭くなる
- 二重の幅が広がる
- 眠たそうにみえる
- 目つきが悪くなる
- 頭痛・肩こり
- 眉間や額にシワができる
- 不眠やうつ病
眼瞼下垂の主な症状は、まぶたの重さや開きにくさです。
まぶたが黒目(瞳孔)に被さって、視野が狭くなったり、眠たそうにみえたりします。
また、まぶたが下がるのを補うために、無意識に前頭筋を使うようになり、頭痛や肩こりを引き起こすケースも少なくありません。
眉間や額にシワができやすくなり、老けた印象を与えてしまうおそれもあるでしょう。
さらに、眼瞼挙筋の力が弱まると、まぶたの裏側で瞼板と直接つながっているミュラー筋が常に収縮した状態となります。
ミュラー筋は、自律神経の一つである交感神経によって動く筋肉です。
感情の「興奮」と深くかかわっている交感神経を緊張させている状態が続くため、うつ病や不眠などにつながるリスクもあると言われております。
男性特有の眼瞼下垂の症状
男性の皮膚は、紫外線や酸化ストレスに対する高い感受性と抗酸化力の低さにより、女性よりも目尻のシワが早く形成される傾向があり、これに加えてスキンケアやサンケアへの意識の差が影響して、眼瞼下垂を引き起こしやすくなっていると考えられます。
皮膚の厚み | 男性では加齢と平行して皮膚の厚さが増加しますが、女性では40歳頃になるとその進行は緩徐となります。結果、眼瞼下垂が生じた際に、男性では強調される傾向があります。 |
角質肥厚 | 日焼けなどにより、男性では上眼瞼への角質肥厚が多くみられます。これにより、眼瞼の重量が増加し、眼瞼下垂を引き起こしやすくなります。 |
眉毛の位置 | 一般的に、男性は女性と比べて眉毛の位置が低いため、眼瞼下垂が生じた際に、前頭筋の緊張による代償で男性では眉毛と上眼瞼の距離が長くなると、眼瞼下垂がより目立つ傾向があります。 |
皮膚の進展性 | 加齢に伴う皮膚の進展性の低下は、男女ともにみられますが、男性では女性と比べてその程度が強い傾向があります。これにより、眼瞼の下垂がより顕著になりやすいとされています。 |
後天性眼瞼下垂の原因
先述のとおり、眼瞼下垂には先天性のものと後天性のものがあります。
多くの場合は、もともと正常だったまぶたが徐々に、または突然上がりにくくなる「後天性眼瞼下垂」です。
後天性眼瞼下垂を引き起こす大きな原因は、加齢による眼瞼挙筋の衰えや、皮膚のたるみです。
また、コンタクトレンズの長期装着や、スマートフォンの長時間使用、まぶたへの摩擦などにより、眼瞼下垂につながるおそれもあります。
加齢
年齢を重ねるにつれて、眼瞼挙筋が衰えたり、まぶたの皮膚がたるんだりして眼瞼下垂を引き起こす場合があります。
後天性眼瞼下垂の約9割が、加齢によるもの(老人性眼瞼下垂)といわれており、60歳以上の高齢者に多くみられます。
コンタクトレンズの長期装着
コンタクトレンズを長期間にわたり(20年以上)使用している場合、眼瞼下垂を引き起こすリスクが高まります。
とくに、ハードコンタクトは着脱時にまぶたへ負担がかかりやすいため注意が必要です。
眼瞼下垂を防ぐためには、コンタクトレンズの使用を中止するのがもっとも効果的ですが、常用しないと生活が困難な方は、装着時間を短くしたり、ソフトコンタクトに変更したりしてまぶたへの刺激を減らしましょう。
スマートフォンやPCの長時間使用
スマートフォンやPCなどのモニターを長時間見続けると「VTD症候群」を引き起こすリスクが高まります。
VTD症候群とは、目を酷使することでまばたきの回数が減り、ドライアイや目の疲れ、充血などの症状が表れる病気で、眼瞼下垂を招く原因の一つです。
また、ストレスを感じたり、不安感を覚えたりと、精神面にも悪影響をおよぼすおそれがあります。
まぶたへの摩擦
目元を擦ったり掻いたりして、まぶたの皮膚に摩擦を与えるのもよくありません。
慢性的に摩擦を与えると、挙筋腱膜が徐々にゆるんで眼瞼下垂につながるおそれがあります。
洗顔の際にゴシゴシと洗っている方や、目をこする癖がある方は注意してください。
花粉症やアトピー性皮膚炎などでかゆみがひどいときも、できるだけ目をこする行為は避けましょう。
内眼手術後眼瞼下垂
硝子体手術、白内障手術、緑内障手術の内眼手術が原因で眼瞼下垂が起こるケースもあります。
発症する明確な原因は明らかになっていませんが、開瞼器の使用による挙筋腱膜のゆるみが大きく影響していると考えられています。
内眼手術後眼瞼下垂を引き起こした場合でも、一般的な眼瞼下垂手術によって治療が可能です。
また、内眼手術後眼瞼下垂は数か月で自然治癒する可能性もあります。
男性の眼瞼下垂の治療方法と手術
男性の眼瞼下垂は、手術によって改善が可能です。
眼瞼下垂手術には、挙筋前転法や挙筋短縮法、前頭筋吊り上げ術などいくつかの術式があり、眼瞼下垂の症状に応じて選択されます。
手術方法 | 特徴 |
---|---|
挙筋前転法 | ゆるんだ眼瞼挙筋腱膜を折りたたんで、瞼板に再固定する方法。 |
挙筋短縮法 | 眼瞼挙筋腱膜を短くして瞼板に縫い付ける方法。 |
前頭筋吊り上げ術(筋膜移植) | 前頭筋と瞼板の間に、太ももや頭部の腱を移植する方法。 |
ミュラー筋タッキング | まぶたの裏側に糸を通し、瞼板とミュラー筋を折りたたんで縫い縮める方法。 |
眼瞼下垂の重症度やまぶたの状態により、適した方法が異なります。
手術を受ける際は、医師とよく相談したうえで、症状に合った治療法を選択しましょう。
手術以外の治療・改善方法
眼瞼下垂を治療するには手術が必要ですが、軽度の眼瞼下垂であれば、眼瞼挙筋のトレーニングやボトックス注射などにより症状を和らげられる可能性があります。
ただし、これらの方法はあくまで眼瞼下垂の進行を遅らせるための予防法にすぎません。
重度の眼瞼下垂には効果が期待できないほか、根本的な治療にはつながらない点に注意しましょう。
リスクを抑えつつ、きれいな仕上がりを目指すためには、症状が進行する前に手術を受けることが推奨されます。
眼瞼挙筋トレーニング
眼瞼下垂を予防するためには、まぶたを上げる主な筋肉である眼瞼挙筋のトレーニングが効果的です。
目を閉じた状態から、大きく見開いて5秒ほどキープし、ゆっくりと目を閉じる行為を数回繰り返してみてください。
できるだけ大きくまぶたを開くようにするのがポイントです。
また、ウインクやまばたきをして、目の周りにある眼輪筋を鍛えるのも眼瞼下垂の予防に効果的だといわれています。
なお、まぶたを押したり引っ張ったりするマッサージは、眼瞼下垂の予防にはつながりません。
まぶたに負担がかかり、かえって眼瞼下垂の症状を悪化させてしまう危険性があるため避けましょう。
ボトックス注射
ボツリヌス菌の毒素注射であるボトックス注射も、眼瞼下垂の予防に効果的です。
額にボトックスを注射すると、額の筋肉が動きにくくなります。
目を開くために眼瞼挙筋を多く使うようになるため、自然と眼瞼挙筋が鍛えられます。
ただし、すでに眼瞼下垂が進行し、眼瞼挙筋の力が弱くなっている場合は、ボトックス注射によって症状が悪化するおそれがあるため注意が必要です。
眼瞼下垂手術のリスク
眼瞼下垂手術には副作用やリスクが伴うことも理解しておかなければいけません。
術後の副作用としては、赤みや腫れ、内出血などが挙げられます。
また、ドライアイや涙目、視力の低下、目が開きにくくなるなどの症状が表れる場合も。
これらの副作用は一時的なものであり、多くの場合は時間の経過によって元に戻るため心配はいりません。
しかし、手術が失敗してしまったり、希望の仕上がりにならなかったりと、再手術が必要なトラブルが生じるケースもあります。
- 予定外重瞼線
- 目頭、目尻のラインが二股になる
- 二重のラインが浅い
- 二重の食い込みが深すぎる
- 低矯正、過矯正
- 傷跡が残る
- 二重の幅が広すぎる
- まぶたに左右差が出る
- 稗粒腫、霰粒腫・眼瞼けいれん
こうしたトラブルを避けるために、眼瞼下垂手術の実績が豊富で、再手術率が低いクリニックで手術を受けるように注意しましょう。
男性の眼瞼下垂手術で注意すること
眼瞼下垂手術を受けると、目元の印象が変わります。
また、まぶたの切開を伴う手術では、ダウンタイムが長引きやすい点もデメリットです。
仕事や日常生活への影響をできるだけ抑えたい方は、事前に手術後の注意点や過ごし方を確認しておきましょう。
基本的に二重になる
一般的な眼瞼下垂手術では、二重のラインを切開し、ゆるんだ眼瞼挙筋を縫い縮めて瞼板に固定します。
術後は基本的に二重が形成されるため、もともと一重や奥二重の方で、目の印象を変えたくない男性の方は注意が必要です。
女性的な二重のデザインに仕上がり、違和感を覚える可能性もあります。
審美的な観点でみると、男性の眼瞼下垂手術は女性の眼瞼下垂手術よりも難易度が高いとされており、センスと経験が求められます。
手術を受ける際は、後悔のないよう、カウンセリングで仕上がりのイメージをよく確認して信頼のできるクリニックを選んでください。
当院では、よりナチュラルな仕上がりが期待できる「TKD切開法」をおこなっております。
まぶたの縁のラインを基準に切開するため、二重幅が広くなり過ぎず、見た目の変化を抑えられます。
また、出血が少なく、通常の切開法と比べてダウンタイムを短縮できる点もメリットです。
眼瞼下垂手術について詳しくは下記の記事をご覧ください。
ダウンタイム・仕事への影響
先述したとおり、眼瞼下垂の手術後は赤みや腫れ、内出血などが生じます。
個人差はありますが、抜糸のことも考えると、1〜2週間は傷跡が目立つ傾向があります。
傷の状態によっては、1〜3か月ほどのダウンタイムが発生する可能性も。一般的に、抜糸が終われば仕事復帰が可能ですが、完全に傷口が落ち着くまでには時間がかかります。
職場の人に知られたくない方や、接客業をしている方は、余裕をもって休暇をとっておくのがおすすめです。
まとめ
本記事では、男性の眼瞼下垂の症状や主な原因、治療法について解説しました。
眼瞼下垂は、性別にかかわらず発症するリスクがある病気です。
加齢による筋肉の衰えのほか、生活習慣によって眼瞼下垂を引き起こすおそれもあります。
眼瞼下垂は手術によって治療できますが、とくに男性の場合は、二重になることで見た目が変化したり、ダウンタイムが生じて仕事に影響したりする点に注意しましょう。
術後のイメージについて医師とよく相談し、副作用やリスクを把握したうえで手術を検討してください。
男性の眼瞼下垂症でよくある質問
- 眼瞼下垂の症状はどのようなものですか?
-
眼瞼下垂の主な症状は、上まぶたが下がって目を開けにくくなることです。疲れ目、視野の狭まり、老け顔などの症状も見られます。
- 眼瞼下垂の原因は何ですか?
-
加齢によるまぶたの筋肉の衰えが主な原因ですが、先天性の場合や、神経障害、外傷、腫瘍などが原因となることもあります。
- 手術後の回復期間はどのくらいですか?
-
個人差がありますが、通常1~2週間程度で日常生活に復帰できます。腫れや内出血は1~3ヶ月程度で落ち着きます。
- 手術の効果はどのくらい持続しますか?
-
個人差がありますが、通常5~10年程度は効果が持続します。加齢とともに再び下がってくることもあります。
- 男性も眼瞼下垂になりますか?
-
眼瞼下垂は男性よりも女性が多いとされていますが、性別にかかわらず発症します。
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