まぶたのたるみと眼瞼下垂の違い
眼瞼下垂とは、まぶたがうまく上がらなくなり、視野が狭くなったり眠たそうな見た目になったりする疾患です。
では、加齢に伴う「まぶたのたるみ」とはどのような違いがあるのでしょうか。
まぶたのたるみと眼瞼下垂では似たような症状があらわれますが、まったく別のものであり、治療方法も異なります。
この記事では、まぶたのたるみと眼瞼下垂の違いや見分け方、診断方法などについてまとめました。
まぶたのたるみと眼瞼下垂、原因の違いは?
まぶたのたるみと眼瞼下垂は、どちらも加齢によって起こりやすく、目の開きが悪くなって視界が狭くなる状態です。
しかし、ゆるみが生じている部分が異なります。
加齢に伴う皮膚のゆるみが「まぶたのたるみ」で、眼瞼皮膚弛緩症(がんけんひふちかんしょう)とも呼ばれます。
一方、まぶたを上げる筋肉のゆるみが原因で生じるのが「眼瞼下垂」です。
なお、眼瞼下垂には、生まれつきまぶたを上げる力が弱い「先天性眼瞼下垂」と、正常だったまぶたが徐々に、または急に下がる「後天性眼瞼下垂」があります。
腱膜性眼瞼下垂と眼瞼皮膚弛緩症
まぶたを上げるために重要な挙筋腱膜と、先端部分にある瞼板の結合がゆるんで、まぶたが下がっている状態を「腱膜性眼瞼下垂(けんまくせいがんけんかすい)」といいます。
主な原因は加齢による筋力低下(眼瞼挙筋の衰え)であり、後天性眼瞼下垂の大半が腱膜性眼瞼下垂です。
まぶたを上げる力が十分にないため、目を開けにくくなったり、眠そうな印象を与えたりします。
また、頭痛や肩こり、眼精疲労などの不調を引き起こすケースも少なくありません。
腱膜性眼瞼下垂は、加齢のほか、ハードコンタクトレンズの長期装着、まぶたへの物理的な刺激、パソコンやスマホの長時間使用などの生活習慣が原因で発症する場合もあります。
- 加齢
- コンタクトレンズの長期装着
- 花粉症やアトピー性皮膚炎
- 継続的なストレス
- アイプチやアイテープの長期使用
- パソコンやスマホの長時間使用
- 白内障手術 など
一方、眼瞼皮膚弛緩症は、まぶたの皮膚がたるんでいる状態です。
加齢に伴い、皮膚のコラーゲンやエラスチンが減少し、弾力性が低下するために起こります。
また、紫外線や喫煙なども、皮膚の老化を早めてまぶたのたるみを引き起こす要因です。
- 加齢
- 紫外線
- 喫煙 など
眼瞼皮膚弛緩症は、腱膜性眼瞼下垂とは異なり、まぶたの筋肉に問題はありません。
たるんだ皮膚が瞳孔(黒目)にかぶさるため視野が狭くなったり、目つきが悪くなったりします。
眼瞼下垂と似た症状があらわれることから「偽眼瞼下垂(ぎがんけんかすい)」を引き起こす疾患の一つとされています。
偽眼瞼下垂とは
偽眼瞼下垂とは、眼瞼挙筋の機能は保たれているものの、皮膚がたるんだりまぶたの脂肪が増えたりして、眼瞼下垂のように目を開きづらくなる状態です。
偽眼瞼下垂の原因は、先天性なものと後天的なものに大別されます。
後天的な原因としては、眼瞼皮膚弛緩症のほかにも、加齢や外傷により発生する眉毛下垂や眼瞼けいれん、眼球陥凹などがあります。
眉毛下垂(びもうかすい) | 加齢により、眉毛が自然に下がっている状態 |
眼瞼けいれん | まぶたを閉じる筋肉が過剰に緊張し、開きにくくなっている状態 |
眼球陥凹(がんきゅうかんおん) | 外傷や甲状腺の病気などが原因で、眼球がへこんだように見える状態 |
偽眼瞼下垂は、眼瞼下垂とは根本的な原因が異なるため眼瞼下垂手術では改善できず、症状に合った治療が必要です。
まぶたのたるみと眼瞼下垂の見分け方
症状が似ているまぶたのたるみ(眼瞼皮膚弛緩症)と眼瞼下垂ですが、まぶたの下がり方で見分けられる可能性があります。
まぶたのたるみは、皮膚がまぶたの縁を超えて垂れ下がるのが特徴で、まぶたの縁の位置に変化はありません。
まぶたの皮膚を指や細い針金などで持ち上げたときに、まぶたの縦幅が変化し、まぶたの縁が高い位置にあれば、まぶたのたるみであると判断できます。
一方、眼瞼下垂は、まぶたの縁が下がっている状態を指し、皮膚を持ち上げてもまぶたの縦幅が変わらないのが特徴です。
眼瞼下垂かどうかの判断基準
眼瞼下垂を診断するための基準として、一般的に用いられるのが「MRD(Margin-Reflex Distance)」です。
MRDとは上まぶたの縁から黒目の中央部(瞳孔)までの距離を指し、個人差はありますが、正常値は3.5〜4.5mm程度です。
この距離がおよそ3.0〜3.5mm以下になった場合に眼瞼下垂と診断されます。
上まぶたが瞳孔にかかっていたら、眼瞼下垂と考えてよいでしょう。
軽度の眼瞼下垂ではMRDが1.5mm前後、中等度では0.5mm前後、重度になると上まぶたが瞳孔をふさいでしまい、MRDはマイナスとなります。
まぶたのたるみと眼瞼下垂が合併している場合も
先述のとおり、まぶたのたるみと眼瞼下垂を引き起こす主な要因は加齢によるものです。
そのため、とくに高齢の方は、両方が影響してまぶたが下がっているケースも少なくありません。
まぶたのたるみと眼瞼下垂を合併している場合、改善するためには、たるんだ皮膚を切除したうえで眼瞼下垂手術をおこなう必要があります。
たるみを切除する手術方法としては、上眼瞼皮膚切除術や眉下切開などが代表的です。
上瞼皮膚切除術 | 二重のラインに沿って余分な皮膚を切除し、たるみを改善する方法 |
眉下切開 | 眉毛の下部分を切開し、余分な皮膚や脂肪を取り除く方法 |
眼瞼下垂の診断・検査はどこでする?
眼瞼下垂の診断・検査は眼科で受けることが推奨されます。
眼瞼下垂の手術自体は、眼科以外に形成外科や美容外科などでも可能です。
しかし、一般的に形成外科や美容外科には、眼球を詳細に検査できる機器がありません。
眼瞼下垂かどうかを正確に調べるためには、専門の機器がそろっている眼科がおすすめです。
症状に応じた複数の検査が可能なため、まぶたのたるみとの違いや、ほかの病気の有無を的確に調べてもらえます。
眼瞼下垂かどうかが明らかではない場合や、偽眼瞼下垂が疑われる場合は、まず眼科を受診しましょう。
眼科では保険適用による治療が可能
眼瞼下垂の治療法には「保険診療」と「自由診療」があります。
眼科での検査や手術の多くが保険の対象となり、3割以内の自己負担で治療が可能です。
ただし、保険診療が適用されるのは、眼瞼下垂の改善を目的とした治療法のみであり、美容目的の場合は基本的に自由診療となります。
眼瞼下垂手術の保険適用については、こちらの記事でも詳しく紹介していますので参考にしてください。
まとめ
まぶたのたるみと眼瞼下垂は症状が似ており、一見区別がつきにくいものの、根本的な原因はまったく異なります。
まぶたのたるみは皮膚のゆるみ、眼瞼下垂は筋肉のゆるみが原因で起こる疾患です。
眼瞼下垂かどうかの判断は非常に難しく、「まぶたが重い」「視界が狭くなった」などの症状があっても、眼瞼皮膚弛緩症のような偽眼瞼下垂である可能性は十分に考えられます。
高齢の方の場合、まぶたのたるみと眼瞼下垂が合併しているケースも少なくありません。
症状に適した治療を受けるためにも、まずは目の機能や疾患を専門としている眼科で診察・検査をおこないましょう。
フラミンゴ眼瞼・美容クリニックでは、年間2,000件を超える眼瞼下垂手術を手がけているスペシャリスト・高田 尚忠医師による診察・治療を保険診療で受けられます。
自然な二重に仕上がるオリジナルの眼瞼下垂手術「TDK切開法+ファシア剥離法」により、術後の負担を軽減しながら眼瞼下垂を安全かつ短時間で治療します。
眼瞼下垂の症状が気になる、まぶたのたるみとの判断ができないなど、まぶたに関するお悩みを抱えている方はぜひ一度ご相談ください。
メールでのご相談も受け付けております。
まぶたのたるみと眼瞼下垂の違いについてよくある質問
- まぶたのたるみと眼瞼下垂の主な違いは何ですか。
-
まぶたのたるみは加齢によって皮膚が伸びて垂れ下がること(皮膚のゆるみ)が原因ですが、眼瞼下垂は眼瞼挙筋の機能低下(筋肉のゆるみ)が原因です。
- まぶたのたるみと眼瞼下垂、どちらの方が多いですか。
-
加齢に伴って誰にでも起こりうるまぶたのたるみの方が、眼瞼下垂よりも発生頻度が高いです。
- まぶたのたるみと眼瞼下垂、見た目の違いはありますか。
-
まぶたのたるみは皮膚の余剰感が目立ちますが、眼瞼下垂はまぶたが下がって目が開きにくくなります。
- 症状の現れ方に違いはありますか。
-
まぶたのたるみは徐々に進行しますが、眼瞼下垂は急激に現れることもあります。
- まぶたのたるみと眼瞼下垂、視界への影響の違いはありますか。
-
まぶたのたるみは視界を妨げることは少ないですが、眼瞼下垂は上まぶたが下がることで視野が狭くなります。
参考文献
JACONO, Andrew A.; MOSKOWITZ, Bruce. Transconjunctival versus transcutaneous approach in upper and lower blepharoplasty. Facial plastic surgery, 2001, 17.01: 021-028.
ZOUMALAN, Christopher I.; ROOSTAEIAN, Jason. Simplifying blepharoplasty. Plastic and reconstructive surgery, 2016, 137.1: 196e-213e.
DAMASCENO, Renato Wendell, et al. Upper blepharoplasty with or without resection of the orbicularis oculi muscle: a randomized double-blind left-right study. Ophthalmic Plastic & Reconstructive Surgery, 2011, 27.3: 195-197.
ALGHOUL, Mohammed. Blepharoplasty: anatomy, planning, techniques, and safety. Aesthetic surgery journal, 2019, 39.1: 10-28.
BERRY-BRINCAT, A.; WILLSHAW, H. Paediatric blepharoptosis: a 10-year review. Eye, 2009, 23.7: 1554-1559.
FINSTERER, Josef. Ptosis: causes, presentation, and management. Aesthetic plastic surgery, 2003, 27.3: 193-204.