偽眼瞼下垂症とは? 眼瞼下垂症との違いを分かりやすく説明します。

髙田 尚忠

「まぶたが重い」「眠そうと言われる」。でも、実はまぶたを上げる筋肉は元気なまま、ほかの理由で下がって見えているだけかもしれません。これが偽眼瞼下垂(ぎがんけんかすい)です。このページでは、偽眼瞼下垂の正体と、似た病気を5つのグループに分けた見分け方をまとめています。

  • まぶたを上げる力は正常:皮膚や眉のたるみ、目の位置や大きさ、まぶたを閉じる力の強さなどで「下がって見える」状態を、偽眼瞼下垂と呼びます1,2。
  • 原因ごとに治療がまったく違う:皮膚を取る手術、眉の手術、斜視の治療、ボトックス注射など、選ぶ治療は原因で決まります3。
  • 本当の眼瞼下垂と一緒にあることが多い:たるみ取りの手術を受けた人の約7割は、眉や眼瞼下垂などの手術も一緒に受けていました4。見極めは専門医の診察で行います。

執筆:髙田 尚忠(高田眼科 院長/眼科医・眼形成外科) 最終更新:2026年10月

偽眼瞼下垂とは?本当の眼瞼下垂との違い

偽眼瞼下垂と眼瞼下垂の違いを示す比較図。偽眼瞼下垂では余ったまぶたの皮膚が瞳孔にかぶさって見え、眼瞼下垂ではまぶたの縁自体が下がる

まぶたは、脳からの信号が動眼神経を通って眼瞼挙筋(まぶたを上げる筋肉)に届き、その力が腱(すじ)を通じて瞼板(まぶたの芯)に伝わることで開きます。この「神経→筋肉→腱→瞼板」のどこかが弱ってまぶたが下がるのが、本当の眼瞼下垂です。

偽眼瞼下垂は、この仕組みには問題がないのに、まぶたが下がって見える状態です。神経内科や眼形成の総説でも、眼瞼下垂の診断ではまず偽眼瞼下垂を区別することが最初の一歩とされています2,5。

本当の眼瞼下垂まぶたを上げる仕組みが弱っている

腱がゆるむ、筋肉や神経が弱るなどで、まぶたの縁そのものが下がります。治療は主に眼瞼挙筋前転法などの手術です。

腱膜性眼瞼下垂について
偽眼瞼下垂仕組みは正常、見た目が下がる

皮膚が覆いかぶさる、眉が下がる、目の位置がずれる、まぶたを閉じる力が強すぎるなど、まぶたの外の理由で下がって見えます。

「まぶたの縁」が下がっているのか、「まぶたの縁にかぶさるもの」があるのかが分かれ目です。

皮膚のたるみは、余った皮膚を持ち上げてからまぶたの縁の高さを測ると見分けやすくなります1。

診察での見分け方

眼科では、次の順番で確認します。ご自宅で正確に判断するのは難しいので、目安として読んでください。

  1. 急ぎの病気でないかを確認
    急に下がった、ものが二重に見える、瞳孔の大きさに左右差がある、頭痛を伴う場合は、脳や神経の病気を先に調べます1,3。思い当たる方はまぶたが下がる原因と受診の目安をご覧ください。
  2. 皮膚と眉を持ち上げて、まぶたの縁の高さを測る
    瞳孔の中心からまぶたの縁までの距離(MRD-1)は、ふつう4〜5mmほどです。眉を押さえ、余った皮膚を持ち上げても距離が保たれていれば、たるみによる偽眼瞼下垂が疑われます1。
  3. まぶたを上げる力(挙筋機能)を測る
    下を見てから上を見たときに、まぶたが動く幅を測ります。15mmを超えれば正常で、力が保たれていれば偽眼瞼下垂や腱のゆるみが考えやすくなります1。
  4. 目の位置・動き・大きさを見る
    目が下にずれている(下斜視)、眼球がへこんでいる、眼球が小さいといった場合も、まぶたが下がって見えます1,6,7。
  5. 反対の目のまぶたも見る
    片方のまぶたが上がりすぎていると(甲状腺眼症など)、正常な側が下がって見えることがあります1。

偽眼瞼下垂を起こす病気(5つのグループ)

それぞれの病気は、専門のページで詳しく解説しています。気になるものからお読みください。

1. 皮膚・眉が原因

皮膚まぶたのたるみ(眼瞼皮膚弛緩症)

加齢で伸びた皮膚が、ひさしのようにまぶたの縁にかぶさります。偽眼瞼下垂でもっとも多い原因の一つです1。

まぶたのたるみと眼瞼下垂の違い
眉眉毛下垂

眉が下がると、その分の皮膚がまぶたに押し寄せます。たるみ取りの手術を受けた人の約2割が、眉の手術も一緒に受けていました4。

眉毛下垂とは

2. 目の位置・動きが原因

斜視斜視と眼瞼下垂

片目が下を向いていると、まぶたもいっしょに下がって見えます6。斜視の治療が必要な場合は、斜視を先に治します。

斜視と眼瞼下垂
外斜視片目をつぶる癖

外斜視があると、ものが二重に見える不快さを避けるため、無意識に片目を細めたりつぶったりします。治療は斜視の手術です。

外斜視による片目つぶり
生まれつきデュアン症候群

目を動かす神経の配線が生まれつき違う病気で、目を内側に向けたときに目が細くなり、まぶたが下がったように見えます。

デュアン症候群とは

3. 眼球の大きさ・位置が原因

へこみ眼球陥凹

骨折や病気で眼球が奥に引っ込むと、まぶたを支えるものがなくなり、下がって見えます1。

眼球陥凹とは
生まれつき小眼球症・無眼球症

眼球が小さい、または義眼の場合も、まぶたが下がって見えます。義眼の方でも、まぶたの下垂とくぼみが起こりやすいことが知られています7。

小眼球症・無眼球症

4. まぶたの向きが原因

まつげ眼瞼内反症(逆さまつげ)

まぶたが内側に向いてまつげが目に当たると、まぶしさやゴロゴロ感から目を細めがちになり、まぶたが下がって見えます。

眼瞼内反症とは

5. まぶたを閉じる力が強すぎる

けいれん眼瞼けいれん

まぶたを閉じる筋肉が勝手に強く働き、目が開けにくくなります。上げる力が弱い眼瞼下垂とは逆の仕組みです5。ドライアイと間違われやすい病気です。

眼瞼けいれんと眼瞼下垂の見極め
治療ボトックス注射

複数の臨床試験をまとめた分析(コクランレビュー)では、症状を中等度以上に改善すると評価されています(根拠の確かさは中程度)8。高田眼科と関連クリニックで受けられます。

眼瞼けいれんのボトックス治療

そのほか、メージュ症候群、薬による眼瞼けいれん、片側顔面けいれん、チックも、まぶたが閉じがちになる病気です。眼瞼けいれんのページから各解説へ進めます。

眼瞼裂狭小症候群は、偽眼瞼下垂と間違われやすい生まれつきの病気です。

目の横幅が短いためにまぶたが下がって見えるだけでなく9、本当の眼瞼下垂を伴うことが多いため、このページの5グループとは分けて解説しています。詳しくは眼瞼裂狭小症候群(BPES)をご覧ください。

偽眼瞼下垂と眼瞼下垂は一緒に起こることが多い

まぶたのたるみも、腱のゆるみによる眼瞼下垂も、主な原因は加齢です。そのため実際の診察では、両方が重なっている方が少なくありません。

69% たるみ取りだけで終わらず、眉や眼瞼下垂などの手術も一緒に行った人の割合 ブラジルの大学病院で上まぶたのたるみ取りを受けた956人の研究4
たるみ取りと一緒に行われた手術(956人のうちの割合)
眉の手術21.5%
眼瞼下垂の手術19.1%

ブラジル・サンパウロ州立大学、2012〜2016年の上まぶたのたるみ取り1,068件の研究4。米国メイヨークリニックの278人の研究でも、たるみの相談で来た方の約2割(20.5%)に眼瞼下垂の手術を同時に行っていました10。

たるみだけを取っても、隠れていた眼瞼下垂が残れば「まだ重い」と感じます。反対に、眼瞼下垂だけを治しても、余った皮膚がかぶされば見た目は変わりません。手術の前に、どちらがどれだけあるかを見極めることが大切です。

髙田尚忠医師
髙田尚忠医師

学問的には分けても、実際はセットで考えます

当院では、ほとんどの方にTKD切開・ファシアリリース法(眼瞼挙筋前転法の一つ)を最初の手術としてお勧めしています。余った皮膚を切除し、必要なら眼窩脂肪も取りながら、腱のゆるみも同時に直せるので、手術が一回で終わる可能性が高いからです。

一方、たるみが軽く、顔の印象をできるだけ変えたくない方には、眉下切開をお勧めすることもあります。

よくある質問

自分が偽眼瞼下垂かどうか、鏡で分かりますか?

目安にはなりますが、確定はできません。眉を軽く押さえ、指で余った皮膚を持ち上げたときに、瞳孔の中心からまぶたの縁まで4〜5mmほどあれば、たるみが主な原因かもしれません1。ただし両方が重なっていることが多いため、手術を考える前に診察を受けてください。

偽眼瞼下垂でも保険で手術できますか?

原因と程度によって変わります。視野が狭くなるなど見え方に支障がある場合と、見た目を整える目的の場合とで扱いが異なります。診察で原因を確かめたうえでご説明します。眼瞼下垂手術の費用と保険もご覧ください。

片目だけ下がって見えるのですが?

下がって見える側ではなく、反対側に原因があることもあります。甲状腺眼症などで片方のまぶたが上がりすぎると、正常な側が下がって見えます1。片目だけのお悩みは片目だけ下がる眼瞼下垂で詳しく解説しています。

ボトックス注射でまぶたが下がることはありますか?

一時的に下がることがあります。眼瞼けいれんのボトックス治療では、偽薬(プラセボ)と比べてまぶたの下垂が起こりやすいと報告されています。1回の効果は、ある試験では平均10週ほど続きました8。詳しくはボトックス治療のページをご覧ください。

高田眼科の考え方

「まぶたが重い」の原因は一つとは限りません。当院では、皮膚・眉・目の位置・まぶたを閉じる力まで確認し、本当の眼瞼下垂がどれだけあるかを見極めてから治療を決めます。眼瞼けいれんのボトックス注射も、高田眼科と関連クリニックで行っています。手術全体の流れは眼瞼下垂治療ガイドにまとめています。

眼瞼下垂か、偽眼瞼下垂か迷っている方へ

原因を見極めることが、遠回りしない治療の第一歩です。お気軽にご相談ください。

高田眼科(浜松)〒435-0052 静岡県浜松市中央区天王町字諏訪1981-3
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フラミンゴ眼瞼・美容クリニック(名古屋)〒460-0003 愛知県名古屋市中区錦2丁目11-27
TH錦ビル 6階
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執筆:髙田 尚忠(たかだ なおただ)
高田眼科 院長。岡山大学医学部卒業。眼科医・眼形成外科医として眼瞼下垂手術を専門とし、関連クリニックを含め年間2,000件以上の眼瞼手術に携わっています。

参考文献

PubMed・Cochrane Libraryに収載された論文をもとに作成しています。いずれも抄録を確認しています。

  1. Nichols KK, Malloy KA, Karpecki PM, et al. Topical review: an update of diagnostic and management algorithms for acquired blepharoptosis. Optom Vis Sci. 2022;99(3):230-240. doi:10.1097/OPX.0000000000001868
  2. Yadegari S. Approach to a patient with blepharoptosis. Neurol Sci. 2016;37(10):1589-1596. doi:10.1007/s10072-016-2633-7
  3. Martel A. Management of ptosis [in French]. J Fr Ophtalmol. 2022;45(2):233-246. doi:10.1016/j.jfo.2021.09.005
  4. Schaal LF, de Souza Meneghim RL, Padovani CR, et al. Upper eyelid blepharoplasty and associated ancillary procedures to improve cosmesis. J Fr Ophtalmol. 2022;45(1):53-56. doi:10.1016/j.jfo.2021.08.007
  5. Oosterhuis HJ. Acquired blepharoptosis. Clin Neurol Neurosurg. 1996;98(1):1-7. doi:10.1016/0303-8467(95)00087-9
  6. Struck MC, Larson JC. Surgery for supranuclear monocular elevation deficiency. Strabismus. 2015;23(4):176-181. doi:10.3109/09273972.2015.1099710
  7. Rokohl AC, Kopecky A, Trester M, et al. Post-enucleation socket syndrome—a novel pathophysiological definition. Graefes Arch Clin Exp Ophthalmol. 2022;260(8):2427-2431. doi:10.1007/s00417-022-05648-z
  8. Duarte GS, Rodrigues FB, Marques RE, et al. Botulinum toxin type A therapy for blepharospasm. Cochrane Database Syst Rev. 2020;(11):CD004900. doi:10.1002/14651858.CD004900.pub3
  9. Hall BD, Graham JM Jr, Cassidy SB, Opitz JM. Elements of morphology: standard terminology for the periorbital region. Am J Med Genet A. 2009;149A(1):29-39. doi:10.1002/ajmg.a.32597
  10. Falcon Rodriguez L, Kuruoglu D, Salinas CA, et al. Eyelid and brow rejuvenation: technical pearls and outcomes of upper blepharoplasty with or without ptosis correction and brow lift. Plast Reconstr Surg. 2024;154(6):1199-1207. doi:10.1097/PRS.0000000000011324
このブログの執筆者
髙田尚忠
髙田尚忠
高田眼科 院長|フラミンゴ美容クリニック/銀座Jクリニック/あさ美皮フ科 眼瞼手術担当
岡山大学医学部卒業後、郡山医療生活協同組合 桑野協立病院などの様々な医療機関を勤務し、現在は高田眼科の院長を務めつつ、関連クリニックの名古屋のフラミンゴ眼瞼・美容クリニック、銀座のJ clinic、亀戸のあさ美皮フ科においても、眼瞼下垂手術を中心に年間2,000件以上の眼瞼手術に携わっています 「見え方(視機能)」と「日常の快適さ」を回復することを第一に、診察では原因(加齢・コンタクト・体質・既往手術など)を丁寧に整理し、必要な治療を分かりやすく説明すること心がけています。 このブログでは、眼瞼下垂の症状、治療選択、術後経過で不安になりやすいポイントなどを、専門医の立場からできるだけ具体的に発信しています。
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