眼瞼裂狭小症候群(BPES)とは|原因・遺伝・弱視・手術を眼形成外科医が解説

髙田 尚忠

生まれたときから両目が細く、まぶたが重そうで、目頭の形も独特。あごを上げて物を見る――。こうした特徴がそろうとき、眼瞼裂狭小症候群(瞼裂狭小症候群、英語の略称でBPES)が疑われます。このページでは、特徴、遺伝のしくみ、視力への影響、手術の考え方を、医学論文にもとづいて整理します。

  • 4つの特徴が生まれつき両目にそろう病気:目の横幅が狭い、まぶたが下がる、目頭に逆向きの皮膚のひだがある、目頭どうしが離れている、の4つです。FOXL2という遺伝子の変化が主な原因です1。
  • まぶたより先に視力を守る:204人の調査では、約4割に弱視(視力が十分に育たない状態)がありました。眼鏡や斜視の治療を含めた眼科の管理が欠かせません2。
  • 女性は卵巣の働きにも注意:卵巣の働きが早く衰える方がいるため、思春期以降は婦人科・内分泌科での経過観察がすすめられています1。

執筆:髙田 尚忠(高田眼科 院長/眼科医・眼形成外科) 最終更新:2026年10月

眼瞼裂狭小症候群とは(4つの特徴)

眼瞼裂狭小症候群は、まぶたの形が生まれつき変わっている病気です。次の4つの特徴が、生まれたときから全員にみられます1。発症するのはおよそ5万人に1人と推定されていますが、気づかれていない方もいるため、実際はもう少し多いと考えられています1。

特徴1目の横幅が狭い(瞼裂狭小)

目を開けたときの横幅が、多くは20〜22mmほどです。大人の平均(25〜30mm)より明らかに短くなっています1。

特徴2まぶたが下がる(眼瞼下垂)

まぶたを上げる筋肉(眼瞼挙筋)がうまく育っていないことが原因です。両目に起こり、おでこの筋肉で眉を持ち上げたり、あごを上げたりして見ようとします1。

特徴3逆内眼角贅皮

下まぶたから目頭に向かって、内側・上向きに走る皮膚のひだです。一般的な「蒙古ひだ」とは向きが逆です1。

特徴4目頭が離れている(内眼角開離)

左右の瞳孔の間の距離は普通なのに、目頭だけが外側にずれて離れて見えます1。目そのものの間隔が広いわけではありません。

このほか、まぶたの縁がS字状に曲がる、二重のラインがない、涙の出口(涙点)が外側にずれて涙があふれやすい、といった特徴を伴うことがあります1。オーストラリアの28人の報告では、18%に涙の流れの問題がありました3。

眼瞼裂狭小症候群の原因と遺伝のしくみ

原因は、3番染色体にあるFOXL2という遺伝子の変化です。この遺伝子は、胎児のまぶたと卵巣が育つときに働きます1。日本人の家系でも、FOXL2の変化が確認されています4。

遺伝のしかたは常染色体顕性(優性)遺伝で、2本ある遺伝子のうち1本に変化があれば発症します。男女とも同じように受け継がれます1。

50% 発症している方のお子さんが、原因の変化を受け継ぐ確率 受け継いだ場合、まぶたの特徴はほぼ全員に現れます1
親から受け継ぐ半数以上は親も発症している

診断された方の半数以上に、同じ病気の親がいます1。英国の研究では、親から受け継いだ21人のうち20人が父親からでした5。

新たに起こる家族に誰もいないこともある

両親に変化がなく、お子さんで初めて起こる場合もあります。この場合も、そのお子さんの次の世代には50%の確率で受け継がれます1。

遺伝子検査一般的な検査で見つからないことも

英国の177人の調査で、原因の変化が見つかったのは119人でした5。遺伝子の周辺の大きな欠けなどは、検査方法によっては見つかりません1。

眼瞼下垂と遺伝の関係全般は、眼瞼下垂は遺伝するのかで詳しく説明しています。

眼瞼裂狭小症候群のI型・II型と、女性の卵巣の働き

この病気は従来、卵巣の働きが早く衰える(早発卵巣不全)のを伴う「I型」と、まぶたの特徴だけの「II型」に分けられてきました1。

ただ、同じ遺伝子の変化を持つ家族の中でも卵巣の状態はさまざまで、年齢とともに現れることもあります。そのため最新の専門家のまとめでは、2つの型に分けるより「一つの病気」として扱うほうが適切だとしています1。一方で、中国の研究では、遺伝子の変化の種類によってI型になりやすさに差があったと報告されており、見解は定まっていません6。

女性の患者さん・保護者の方へ

  • 初経は通常どおり来ることが多く、その後に月経が不規則になったり、止まったりします1。
  • 10歳ごろから思春期の進み具合を6〜12か月ごとに、大人になってからは婦人科で卵巣の働きを6〜12か月ごとに確認することがすすめられています1。
  • 将来の妊娠について、卵子や卵巣組織の凍結保存などを早めに相談できる場合があります1。

まぶたの手術だけで終わらせず、婦人科・内分泌科、必要に応じて遺伝カウンセリングを受けてください。

眼瞼裂狭小症候群の視力への影響:弱視・斜視・屈折異常

この病気で最も注意すべきなのは、子どもの視力の発達です。まぶたが瞳孔にかかることに加え、斜視や強い遠視・乱視を伴いやすいためです1。

眼瞼裂狭小症候群204人にみられた目の問題
弱視41%
眼鏡が必要34%
斜視20%

英国ムーアフィールズ眼科病院の204人を振り返った研究。弱視は両目21%・片目20%の合計。「眼鏡が必要」は眼鏡が必要な遠視・近視・乱視2。インドの33人の研究では弱視が60%と、さらに高い報告もあります7。

斜視があるかどうかで比べた弱視の割合
斜視あり64%
斜視なし24%

オーストラリアの小児病院の28人の研究。斜視があると弱視の割合はおよそ2倍以上でした3。

目頭のひだは成長とともに目立たなくなることがありますが、まぶたの下がりと目の横幅の狭さは自然には治りません。

そのため、乳幼児期は小児眼科で視力・眼鏡・斜視の管理を続けることが基本になります3,1。

眼瞼裂狭小症候群に似た病気との見分け方

目の横幅が狭い状態は、ほかの全身の病気の一部として現れることもあります。米国フィラデルフィア小児病院で目の横幅が狭い135人を調べた研究では、93%がまぶただけの眼瞼裂狭小症候群で、7%は全身の病気を伴う別の症候群でした8。

確認したいサインまぶた以外の症状

発達の遅れ、心臓や腎臓の病気、低身長、難聴などを伴う場合は、別の症候群やFOXL2の周囲を含む大きな欠けを考えます1,8。

似た症候群大戸症候群・Dubowitz症候群など

目の形は似ていても原因の遺伝子が違い、全身の管理が必要になります8。慶應義塾大学からは、知的障害を伴う別の遺伝子(ADNP)の変化でも同じような目の形になる例が報告されています9。

こうした場合は、小児科や遺伝の専門外来と連携して診断を進めます。生まれつきの眼瞼下垂全体については先天性眼瞼下垂とはをご覧ください。

眼瞼裂狭小症候群の手術の一般的な進め方

まぶたの形を治す方法は手術です。ただし、手術の時期・順番・方法について、世界的に統一された基準はありません。2026年に34の研究をまとめた分析でも、多くが小規模な症例の報告で、比べられる質の高い研究は少ないとされています10。

  1. 視力が危ないときは、まぶたを先に上げる
    まぶたが瞳孔をふさぎ、弱視のおそれが強い場合は、3歳ごろまでにまぶたを上げる手術を先に行う考え方があります3,10。
  2. 目頭の形を整える
    急ぎでない場合は、3〜5歳ごろに目頭のひだと目頭の離れを整える手術(内眼角形成術)を行うのが従来の進め方です1。
  3. まぶたを上げる手術
    その約1年後に、まぶたの下がりを治します。海外では、眉の上の筋肉(前頭筋)とまぶたをつなぐ「吊り上げ術」が多く選ばれています1,10。

目頭とまぶたを1回で同時に治す方法もあります。エジプトの3歳未満の24人の比較では、1回で行った場合と2回に分けた場合で、結果に大きな差はありませんでした11。目頭の手術の方法については、大阪市立総合医療センターの日本人20人の研究で、方法によって見た目の評価に差があったと報告されています12。

まぶたを上げる方法:吊り上げ術か、挙筋の手術か

この病気のまぶたを上げる筋肉(眼瞼挙筋)は育ちが悪いとされ、海外では吊り上げ術が中心です10。一方で、筋肉そのものを短くしたり前に出したりする手術の報告もあります。

ベルギーの研究筋肉は奥に残っている

遺伝子で診断が確定した8人をMRIと手術中の観察で調べると、腱(すじ)の部分が薄く長く伸びている一方、奥には筋肉の線維がしっかり残っていました13。

インドの研究筋肉が少ない報告も

手術で切り取った組織を調べた研究では、筋肉の線維が見つかったまぶたは一部にとどまりました14。筋肉の残り方には個人差があると考えられます。

挙筋の手術の報告挙筋で治した例も多い

チュニジアの44人の報告では、まぶたの手術79か所のうち64か所が挙筋を短くする手術でした15。愛知県の藤田保健衛生大学(現・藤田医科大学)からは、挙筋の手術と目頭の手術を1回で行った11人の報告があります16。

吊り上げ術に使う材料(自分の太ももの筋膜、人工の糸やシリコンなど)について、複数の比較試験をまとめた分析(コクランレビュー)では、どの材料が最もよいかは結論が出ていません17。手術の方法の違いは眼瞼挙筋前転法と前頭筋吊り上げ術で説明しています。

手術の前に確かめること:涙の量

ブラジルとポルトガルの21人の研究では、9人(43%)で両目の涙腺がCTで見つからず、涙の量が少ない方が多くいました18。研究者は、まぶたの手術を予定する場合は特に、事前に涙の量をしっかり調べることをすすめています18。まぶたを上げると目の表面が乾きやすくなるためです。

髙田尚忠医師
髙田尚忠医師

眼瞼裂狭小症候群でも、挙筋を前に出す手術を基本にしています

当院では、生まれつきの眼瞼下垂はまぶたを上げる力がほとんどないものとして、挙筋を大きく前に出して固定します。まぶたが三角に尖らないよう固定する点を増やし、自然なカーブに整えます。奥に筋肉が残っているという研究13も、この考え方の裏づけになると考えています。

この病気の方はもともと二重のラインがないことが多く、手術で二重を作ったり、そろえたりするものではありません。目を閉じにくくなるのを防ぐため、皮膚を大きく切り取らず、まぶたを閉じる筋肉をできるだけ残します。

眼瞼裂狭小症候群のよくある質問

成長すれば自然に治りますか?

まぶたの下がりと目の横幅の狭さは、自然には治りません。目頭のひだは成長とともに目立たなくなることがあります3。

子どもに遺伝しますか?

お子さん1人あたり50%の確率で受け継ぎます。男女に関係なく、父親・母親のどちらからも伝わります1。

男性にもまぶた以外の症状がありますか?

卵巣の働きの問題は女性に起こるもので、男性にはありません。ただし遺伝子の周辺を含む大きな欠けがある場合は、男女とも発達の遅れなどを伴うことがあります1。

遺伝子検査は必要ですか?

必須ではありませんが、女性や、まぶた以外の症状がある方では役立ちます。卵巣の経過観察の計画や、似た症候群との区別につながります8,1。

大人になってからでも手術できますか?

できます。報告の多くは子どもですが、大人の手術や、子どものころの手術後の修正の報告もあります10。

高田眼科の考え方

乳幼児期の視力の管理は、小児眼科で続けていただくことを前提にしています。当院でのまぶたの手術は、小学校高学年以降の方と大人の方が対象です。生まれつきの眼瞼下垂として、挙筋を前に出す手術を基本に、他院へ紹介せず当院で対応します。費用は自費診療で片眼35万円(税込)です。詳しくは手術費用をご覧ください。

生まれつきのまぶたの形と下がりにお悩みの方へ

お子さんの年齢や視力の状態、ご家族の経過をうかがったうえで、手術の時期と方法をご説明します。

高田眼科(浜松)〒435-0052 静岡県浜松市中央区天王町字諏訪1981-3
イオンモール浜松市野 1F
053-466-5551
フラミンゴ眼瞼・美容クリニック(名古屋)〒460-0003 愛知県名古屋市中区錦2丁目11-27
TH錦ビル 6階
052-201-9222
執筆:髙田 尚忠(たかだ なおただ)
高田眼科 院長。岡山大学医学部卒業。眼科医・眼形成外科医として眼瞼下垂手術を専門とし、関連クリニックを含め年間2,000件以上の眼瞼手術に携わっています。

参考文献

PubMed・Cochrane Libraryに収載された論文をもとに作成しています。文献1・10は全文、それ以外は抄録を確認しています。

  1. Matton C, Thomaes A, Cools M, et al. Blepharophimosis, Ptosis, and Epicanthus Inversus Syndrome. In: Adam MP, Bick S, Mirzaa GM, et al., eds. GeneReviews® [Internet]. Seattle (WA): University of Washington, Seattle; 1993-2026. Updated June 23, 2026. PMID:20301614
  2. Dawson EL, Hardy TG, Collin JR, et al. The incidence of strabismus and refractive error in patients with blepharophimosis, ptosis and epicanthus inversus syndrome (BPES). Strabismus. 2003;11(3):173-177. doi:10.1076/stra.11.3.173.16645
  3. Beckingsale PS, Sullivan TJ, Wong VA, et al. Blepharophimosis: a recommendation for early surgery in patients with severe ptosis. Clin Exp Ophthalmol. 2003;31(2):138-142. doi:10.1046/j.1442-9071.2003.00621.x
  4. Yamada T, Hayasaka S, Matsumoto M, et al. Heterozygous 17-bp deletion in the forkhead transcription factor gene, FOXL2, in a Japanese family with blepharophimosis-ptosis-epicanthus inversus syndrome. J Hum Genet. 2001;46(12):733-736. doi:10.1007/s100380170009
  5. Bunyan DJ, Thomas NS. Screening of a large cohort of blepharophimosis, ptosis, and epicanthus inversus syndrome patients reveals a very strong paternal inheritance bias and a wide spectrum of novel FOXL2 mutations. Eur J Med Genet. 2019;62(7):103668. doi:10.1016/j.ejmg.2019.05.007
  6. Dong Y, Xiao X, Li S, et al. Genetic and clinical features of FOXL2-associated blepharophimosis-ptosis-epicanthus inversus syndrome based on 11 Chinese families and literature review. Am J Med Genet A. 2026;200(6):1204-1214. doi:10.1002/ajmga.70058
  7. Chawla B, Bhadange Y, Dada R, et al. Clinical, radiologic, and genetic features in blepharophimosis, ptosis, and epicanthus inversus syndrome in the Indian population. Invest Ophthalmol Vis Sci. 2013;54(4):2985-2991. doi:10.1167/iovs.13-11794
  8. Landau Prat D, Nguyen BJ, Strong A, et al. “Blepharophimosis-plus” syndromes: frequency of systemic genetic disorders that also include blepharophimosis. Clin Exp Ophthalmol. 2021;49(5):448-453. doi:10.1111/ceo.13933
  9. Takenouchi T, Miwa T, Sakamoto Y, et al. Further evidence that a blepharophimosis syndrome phenotype is associated with a specific class of mutation in the ADNP gene. Am J Med Genet A. 2017;173(6):1631-1634. doi:10.1002/ajmg.a.38126
  10. Wojciechowska J, Wojarska M, Drobashko A, et al. Surgical management of blepharophimosis-ptosis-epicanthus inversus syndrome (BPES): a comprehensive review. Ophthalmol Ther. 2026;15(6):1879-1906. doi:10.1007/s40123-026-01370-9
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  18. Duarte AF, Akaishi PMS, de Molfetta GA, et al. Lacrimal gland involvement in blepharophimosis-ptosis-epicanthus inversus syndrome. Ophthalmology. 2017;124(3):399-406. doi:10.1016/j.ophtha.2016.10.028
このブログの執筆者
髙田尚忠
髙田尚忠
高田眼科 院長|フラミンゴ美容クリニック/銀座Jクリニック/あさ美皮フ科 眼瞼手術担当
岡山大学医学部卒業後、郡山医療生活協同組合 桑野協立病院などの様々な医療機関を勤務し、現在は高田眼科の院長を務めつつ、関連クリニックの名古屋のフラミンゴ眼瞼・美容クリニック、銀座のJ clinic、亀戸のあさ美皮フ科においても、眼瞼下垂手術を中心に年間2,000件以上の眼瞼手術に携わっています 「見え方(視機能)」と「日常の快適さ」を回復することを第一に、診察では原因(加齢・コンタクト・体質・既往手術など)を丁寧に整理し、必要な治療を分かりやすく説明すること心がけています。 このブログでは、眼瞼下垂の症状、治療選択、術後経過で不安になりやすいポイントなどを、専門医の立場からできるだけ具体的に発信しています。
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