眼瞼下垂手術後のびっくり目は治るのか
まぶたの開きを良くする眼瞼下垂手術を受けると、「びっくり目」になってしまう場合があります。
びっくり目とは、まぶたが開きすぎて驚いているような表情になる状態です。
びっくり目は時間が経つにつれて自然な開き具合に改善されるケースもありますが、修正手術によっても治療が可能です。
本記事では、眼瞼下垂手術後のびっくり目は治るのか、原因や修正手術の方法について詳しく解説します。
眼瞼下垂手術の過矯正「びっくり目」とは
びっくり目とは、眼瞼下垂手術によって目が大きく開きすぎる(過矯正)状態になることです。
常に驚いているような、睨んでいるような、違和感のある印象を与えてしまいます。
目を開いたときに黒目の上の白目が露出してしまうこともあり、これを上三白眼(うえさんぱくがん)といいます。
普段、力を抜いているときはまぶたの開き具合に問題がないものの、ふとした瞬間に目が開き過ぎてしまうのです。
半年たっても改善されない場合は修正手術を検討する
びっくり目は、術後3〜6カ月経つと目の開きが調整され、目立たなくなる可能性があります。
しかし、明らかに目の開きが大きい場合や、時間が経っても改善されない場合は修正手術が必要です。
また、目を閉じてもまぶたが完全には閉じなくなる兎眼(※1)を併発するケースも見られます。
※1 兎眼(とがん): まぶたを閉じられなくなる病気。眼球の表面が露出した状態で、目のかすみや乾燥、涙目などが生じやすくなる。眼瞼下垂手術の直後は眼輪筋が傷ついているため、まぶたを閉じる力が一時的に弱くなり、軽度の兎眼になる場合がある。
びっくり目になってしまう原因
びっくり目になる主な原因は、過矯正によってまぶたを持ち上げる眼瞼挙筋が短縮されすぎていることです。
その他、皮膚・眼輪筋の過剰切除や術前のまぶたの測定の誤り、術中の調整ミスによっても起こり得ます。
皮膚と眼輪筋の過剰切除
過矯正の一般的な原因は、皮膚と眼輪筋の過剰切除です(皮膚や筋肉の切除量が多すぎる)。
眼輪筋は、目の周りをぐるっと囲んでいる筋肉です。目を閉じたり開いたりするときに使います。
皮膚や眼輪筋の過剰切除により、まぶたが完全に閉じることができず、驚いたような印象を与えてしまいます。
当院では、保険診療においては、皮膚切除を5mm以下(通常は3mm程度を基準)にして行っておりますので、そのようなことが起こることをほぼ起こらないと考えております。
術前のまぶたの測定の誤り
びっくり目にならないようにするためには、術前の正確な測定が重要です。
この測定に誤りがあると、切除する部分を正しく決定できず、びっくり目になる可能性があります。
測定誤差の原因としては、やはり、前頭筋の代償の消失の有無などが考えられます。
通常は、眼瞼下垂手術を行うと、大なり小なり前頭筋の緊張が取れ、術後眉毛下垂がおこりますが、中には、その眉を挙げる癖が残るケースがあります。
結果として、力を抜いているときは、ちょうど良くても、無意識に力が入ると過矯正となってしまう状態となります。
術中の調整ミス
手術中の判断が誤っていた場合、意図しないまぶたの位置になるなどの過剰矯正が起こり、びっくり目につながってしまいます。
眼瞼下垂手術には、局所麻酔を必ず、使用しますので、予想以上に眼瞼挙筋自体に麻酔が効きすぎてしまい、その麻痺によって一時的に挙筋機能が落ちた状態で、術中定量を行うと、麻酔が覚めたときに、過矯正となってしまうことがあります。
挙筋腱膜の固定位置が悪い
目を見開くときに使われるミュラー筋の操作によってびっくり目になる場合もあります。
一般的な眼瞼下垂手術では、二重のラインを切開して挙筋腱膜(きょきんけんまく)を引き出し、瞼板(けんばん)の適切な位置に縫合固定します。
施設によって、ミュラー筋のみを固定する場合、ミュラー筋と眼瞼挙筋腱膜の両方を固定する場合、眼瞼挙筋腱膜のみを固定する場合があります。
そして、目を開いたときに、黒目が7〜9割ほど見えるように調整するのが通常です。
注意しないといけないのは、ミュラー筋を強く固定すると、睨みつけたような目つきになりやすいと言えます。
そして、挙筋腱膜の固定位置が強すぎると、まぶたの引き込みが強くなりすぎてしまい、びっくり目になる可能性が高くなります。
当院としては、自然な開き方を求めてますので、ミュラー筋の固定は行わず、眼瞼挙筋腱膜のみを固定するようにしております。
結果として、術後眼瞼痙攣(眼瞼けいれん)の発生も抑えられると考えております。
眼瞼下垂の過矯正「びっくり目」の修正手術
挙筋腱膜の過矯正によるびっくり目を改善するためには、眼瞼挙筋の短縮量を少なくする必要があります。
単純に、眼瞼下垂手術を行うことで予想される前頭筋の代償の減少がなく、前頭筋の過剰な働きが原因であれば、その前頭筋にボトックス注射を行うことで改善します。
ボトックスは、確かに、2、3ヶ月程度しか持ちませんが、繰り返し行うことで、前頭筋を使わなくなり、前頭筋が痩せますので、だんだんと、過矯正が治っていきます。
それでも改善しない場合には、初回の眼瞼下垂手術による癒着部分をはがし、適切な短縮量に調整して瞼板に再度固定することで修正が可能です。
場合によっては、再固定ではなく、後転させて、瞼板への眼瞼挙筋の作用を極端に無くしてしまうような手術を行うこともあり、眼瞼挙筋後転術といいます。
ただし、過矯正の修正手術は眼瞼下垂手術よりも難易度が高いといわれています。
修正手術をおこなっても短縮された挙筋腱膜が元に戻らず、びっくり目が思うように改善されないケースもあるため、まずは過矯正の修正手術経験が豊富な医師に相談することが大切です。
修正手術を検討するなら3〜6カ月待つのがベスト
眼瞼下垂手術後にびっくり目になった場合、すぐに修正手術を受けるのではなく、3〜6カ月ほど待つことが推奨されます。
これは、びっくり目は時間の経過によって改善する可能性があるためです。
手術直後は目の開きが大きすぎるように感じても、眼瞼挙筋が徐々にゆるんでちょうど良い開き具合になり、修正手術が不要となるケースも多くあります。
また、修正が必要な場合でも、傷跡の状態が完全に安定してから手術をおこなったほうが身体に負担がかかりません。
先に述べたように、その待っている間に、前頭筋へのボトックスを行っておくのも推奨されます。
明らかに過矯正がひどい場合は早めの修正が必要
ただし、眼瞼下垂手術後に明らかな過矯正が見られる場合は、1〜2週間以内に修正手術を受ける必要があります。
時間が経ってから修正手術をおこなう場合、瘢痕組織(※2)をすべて取り除かなければなりません。
※2 瘢痕組織: 手術によって硬くなった皮膚や眼輪筋、脂肪組織のこと。瘢痕組織が多く形成されているほど、修正手術の難易度が上がるとされている。
しかし、瘢痕形成が起こってからの修正手術は非常に難しく、成功率が著しく下がってしまいます。
とくに、ミュラー筋に操作を加えている場合は、瘢痕による変形や癒着を起こしやすいため、早期の修正が必要です。
挙筋腱膜と瞼板の癒着が起こる前に修正をすれば、成功率が上がるほか、きれいな仕上がりを目指せます。
また、出血が少なく、ダウンタイムを抑えられる点も早期に修正するメリットです。
いずれにせよ、修正手術を検討する際は医師とよく相談して適切なタイミングを決めましょう。
びっくり目になるリスクを軽減するためのポイント
眼瞼下垂手術の過矯正によるびっくり目は、修正手術によって治療が可能です。
しかし、一度手術をしている部分に手を加えることには、仕上がりが不自然になる、ダウンタイムが長引きやすいといったリスクが伴います。
何度も手術を受けると、心理的にも大きなダメージを受けてしまうでしょう。
そのため、眼瞼下垂手術を受ける際は、修正手術が必要にならないよう、以下のポイントに注意することが大切です。
医師の診察・カウンセリングで仕上がりのイメージを確認する
人によって眼瞼下垂の程度や症状は異なります。また、眼瞼下垂手術にはいくつかの術式があり、それぞれ仕上がりが変わってきます。
そのため、医師との診察やカウンセリングでは、自分の悩みを相談し、希望する仕上がりになるかどうかを確認することが大切です。
ただし、修正手術の場合には、瘢痕組織・術後癒着、組織変性などの状態によっては、術後のデザイン性をお約束すること自体が難しい部分もあります。
眼瞼下垂の状態をしっかりと診てもらい、手術に関する説明を受けましょう。
眼瞼下垂手術を受けるクリニックは慎重に選ぶ
びっくり目になる原因は、医師の技術不足によるものがほとんどです。
失敗のリスクをできるだけ減らすためにも、眼瞼下垂手術の症例が多く、信頼できるクリニックで手術を受けてください。
症例数のほか、成功率の高さや手術時間の短さなども確認しておくとよいでしょう。
また、カウンセリングを丁寧におこなっているかどうかもクリニック選びで重要なポイントです。
手術のメリットだけではなく、副作用などのデメリットや費用についても説明してくれるクリニックであれば、納得したうえで手術を受けられます。
修正手術が可能かどうかを確認する
眼瞼下垂手術後に万が一びっくり目になってしまった場合、再手術をしてもらえるかどうかをカウンセリング時に確認しておくことをおすすめします。
他院でも修正手術は可能ですが、術後のアフターケアまでしっかりと対応してもらえるクリニックであれば不安が緩和されるでしょう。
まとめ
眼瞼下垂手術後に起こりうるびっくり目の原因や修正手術について解説しました。
びっくり目になる主な原因は、挙筋腱膜を短縮しすぎてしまうことです。
修正手術によって改善は可能ですが、身体に大きな負担がかかってしまうおそれがあります。
どんなに優れた技術をもつ医師でも、再手術が必要となるリスクはゼロではありません。
しかし、できるだけびっくり目にならないよう、眼瞼下垂手術のクリニック選びを慎重におこなうことが大切です。
名古屋のフラミンゴ眼瞼・美容クリニックでは、眼瞼下垂のスペシャリストである高田尚忠医師がすべての手術を担当し、患者様の負担を軽減しながら短時間で手術をおこないます。
眼瞼下垂の症例は累計2万眼瞼以上の手術経験実績があります。
静岡県浜松市の高田眼科・東京亀戸駅のあさ美皮フ科亀戸駅前でも高田医師による眼瞼下垂手術を受けられます。
眼瞼下垂の診察・治療は健康保険適用が可能です。また、保険適用外となりますが、他院の眼瞼下垂手術後の修正手術にも対応しています。
眼瞼下垂やびっくり目など、まぶたに関する悩みをお持ちの方は、ぜひ一度当院にご相談ください。
眼瞼下垂手術後のびっくり目に関してよくある質問Q&A
- 眼瞼下垂手術後になぜ「びっくり目」が起こるのですか?
-
手術で瞼の筋肉や皮膚が過剰に短縮されることが原因です。
- びっくり目は、時間とともに改善されますか?
-
一部は時間と共に改善されることがありますが、状況によっては再手術が必要です。
- 再手術は必ず必要ですか?
-
症状の程度や改善の有無によって異なります。必ずしも再手術が必要とは限りません。
- 「びっくり目」の状態は視力に影響しますか?
-
直接的な視力への影響は少ないですが、眼の乾燥などによる不快感はあり得ます。
参考文献
PUTTERMAN, Allen M. Eyelid finger manipulation in the treatment of overcorrected blepharoptosis and postblepharoplasty ectropion-retraction. Plastic and Reconstructive Surgery, 2015, 135.6: 1073e-1074e.
CHEN, Samuel Huan-Tang, et al. Strategies for a successful corrective Asian blepharoplasty after previously failed revisions. Plastic and reconstructive surgery, 2004, 114.5: 1270-1277.
RODRIGUEZ, Liset Falcon, et al. Upper Blepharoplasty with Concurrent Ptosis Correction: A Safe and Effective Procedure. Plastic and Reconstructive Surgery–Global Open, 2021, 9.10S: 20-21.
LEE, Il Jae, et al. Blepharoptosis correction: repositioning the levator aponeurosis. Journal of Craniofacial Surgery, 2011, 22.6: 2284-2287.