眼球陥凹とは?目がくぼむ原因・治療と眼瞼下垂との違い

「片目だけくぼんで見える」「まぶたが下がって、目が小さくなった気がする」。こうした変化の原因として、まぶたではなく眼球そのものが奥に引っ込む「眼球陥凹(がんきゅうかんおう)」が隠れていることがあります。このページでは、眼球陥凹の原因と、まぶたが下がって見える仕組み、治療の考え方をまとめています。
執筆:髙田 尚忠(高田眼科 院長/眼科医・眼形成外科) 最終更新:2026年10月
眼球陥凹とは?なぜまぶたが下がって見えるのか
「陥凹(かんおう)」は、へこんだ状態やくぼんだ状態を表す医学用語です。眼球陥凹は、眼球が眼窩(目が入っている骨のくぼみ)の奥へ引っ込んだ状態をいいます。緑内障で使われる「視神経乳頭陥凹」は、目の奥の神経の入り口のくぼみのことで、眼球陥凹とはまったく別のものです。
上まぶたは、眼球の前面に支えられるようにして開いています。眼球が奥に引っ込むと、まぶたの支えが減り、上まぶたのくぼみが深くなって、まぶたが下がったように見えます。まぶたを上げる筋肉(眼瞼挙筋)には問題がないため、偽眼瞼下垂に分類されます。
左右差が2mmを超えると、見た目や見え方に影響すると考えられています。
眼球の前後の位置は、眼球突出計という器具で左右を比べて測ります。外傷のあとでは、CTで測るほうが正確で、再現性も高いとされています2。
眼球陥凹の主な原因
眼球陥凹は、見逃されやすい一方で、命に関わる病気の最初のサインになることもあるため、原因を確かめることが大切です1。
けがの覚えがないのに片目だけくぼんできた場合は、必ず検査を受けてください
まれに、乳がんの眼窩への転移や、眼窩の血管の病気(眼窩静脈瘤)が、眼球陥凹で見つかることがあります1。CTやMRIで原因を確かめることが大切です。
ホルネル症候群でも、まぶたの開きが狭くなるため、目がくぼんだように見えることがあります。詳しくはホルネル症候群による眼瞼下垂をご覧ください。
顔のけがのあとに起こる眼球陥凹
眼窩の骨が折れて中の空間(眼窩の容積)が広がると、そのぶん眼球が奥に沈みます。
ただし、骨の容積の変化で説明できるのは眼球陥凹の約半分で、残りは脂肪などのやわらかい組織の変化や、骨の形の変化によると考えられています6。
けがの直後は腫れで目立たず、腫れが引いてから眼球陥凹がはっきりしてくることもあります。手術をせずに経過を見た眼窩骨折の方の7〜10%に、あとから眼球陥凹が出たと報告されています7。
6本の研究をまとめた系統的レビュー。「陥凹が治った」は反対の目との差が2mm以内になった割合、「複視」はものが二重に見える症状8。
時間がたってからでも、眼球の位置はかなり戻せます。一方、ものが二重に見える症状は約半数しか治らないため、早めに専門の医療機関で相談することが大切です8。
緑内障の目薬による眼球陥凹(PAP)
緑内障の治療でよく使われるプロスタグランジン関連薬は、目の周りの脂肪を減らす作用があり、上まぶたのくぼみ、眼球陥凹、まぶたのたるみの変化などを起こすことがあります。これをまとめて、プロスタグランジン関連眼窩周囲症(PAP)と呼びます3。
トルコの研究では、60歳を超えていること、ビマトプロストやトラボプロストを使っていること、1年以上使っていることが、PAPが重くなる要因でした5。くぼみが出ても、ご本人が気づいていないことも少なくありません9。
目薬は、自分の判断でやめないでください
緑内障の目薬を急にやめると、眼圧が上がって視野が欠けるおそれがあります。目のくぼみが気になる場合は、眼圧の状態を確認したうえで、別の目薬への切り替えを主治医と相談しましょう。
当院では、眼圧の状態を確認したうえで、まずエイベリス(オミデネパグ イソプロピル)など、PAPを起こしにくい目薬への切り替えを考えます。詳しくは緑内障の目薬による眼瞼下垂(PAP)と緑内障の目薬の副作用をご覧ください。
眼球陥凹の治療
治療は原因によって大きく違います。まぶたを上げる手術だけでは、眼球陥凹そのものは治りません。
- 眼窩の骨折
ずれた骨を元の位置に戻し、眼窩の壁を再建して、広がった容積を元に戻します1,8。 - サイレントサイナス症候群
副鼻腔の手術と、眼窩の床の再建を一度に行う方法があります。35人の研究では、同時に行った人の眼球陥凹が平均3.2mmから0.6mmに改善しました4。 - 緑内障の目薬(PAP)
目薬の切り替えを検討します。くぼみが残る場合には、カルシウムハイドロキシアパタイトという充填剤の注入や、ご自身の脂肪の移植で、目の周りの容積を補う方法も報告されています10。 - 本当の眼瞼下垂も一緒にある場合
眼球陥凹に加えて、まぶたを上げる腱(すじ)のゆるみもある場合は、原因の治療を優先したうえで、眼瞼挙筋前転法でまぶたの高さを整えます。
高田眼科の考え方
「まぶたが下がった」というご相談でも、左右の眼球の位置を比べると、眼球陥凹が見つかることがあります。当院では、まぶたの高さとまぶたを上げる力に加えて、眼球の位置まで確かめてから治療を考えます。眼窩の骨折や副鼻腔の病気が疑われる場合は、形成外科や耳鼻咽喉科など専門の医療機関と連携します。緑内障の目薬が原因と考えられる場合は、眼圧を確かめながら目薬の見直しを提案します。
よくある質問
目がくぼんできたのは、眼瞼下垂ですか?
眼瞼下垂のこともあれば、眼球陥凹のこともあります。腱がゆるむ眼瞼下垂でも上まぶたはくぼみます。眼球の位置を測ると区別できるので、診察で確かめましょう。まぶたが下がって見える原因の全体像は偽眼瞼下垂とはにまとめています。
緑内障の目薬をやめれば、くぼみは戻りますか?
切り替えで改善が期待できますが、自己判断でやめるのは危険です。眼圧が上がって視野が欠けるおそれがあるため、必ず主治医と相談して、別の目薬に切り替えてください。
目のくぼみや、まぶたの下がりが気になる方へ
眼球陥凹なのか、眼瞼下垂なのか、両方なのか。原因を確かめることが、正しい治療への第一歩です。
参考文献
PubMedに収載された論文をもとに作成しています。いずれも抄録を確認しています。
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