後天性眼瞼下垂「眼咽頭型筋ジストロフィー」
眼咽頭型筋ジストロフィーって?
収縮性をもって筋肉組織を形づくる細胞である筋細胞(きんさいぼう)の正常な機能が崩れて変性や壊死(一部分の細胞や組織の死)に至ってしまうのを「筋ジストロフィー症」と言います。
筋肉の病であるこの難病は、「眼瞼下垂(がんけんかすい)」と密接に関係します。
先天性筋強直性ジストロフィーや後天性筋強直性ジストロフィーでも関係性について述べていますが、この「眼咽頭型筋(がんいんとうがたきん)ジストロフィー」は、前述した壊死などの特長がみられない点が異なります。
文字通り、物を飲み込んだり声を出すのに欠かせない喉の筋肉群である咽頭筋(いんとうきん)に障害が生じる疾病ですが、眼筋や舌の萎縮も半数以上にみられ、手足の筋力低下に広がることもあります。
ただ、呼吸するのに必要な呼吸筋や、心臓を正しく拍動させるために収縮する心筋が侵されないので致命的な状況をもたらすことはありません。
発症時期は50代以降の中年以降から老年期にかけての年代に多く、眼瞼下垂から始まります。
最初は片側の目だけに発症することもありますが、進行するにつれて両方の目に症状が生じます。
また、眼球運動の神経経路もしくは外眼筋に何らかの病変があり、眼球の運動にも障害が出ます。
これに、飲食物が飲みにくくなる嚥下(えんげ)障害も加わり、言葉が発しづらくなっていきます。
眼瞼下垂の程度が激しいときは状態に合わせた手術を、嚥下が困難なときは胃瘻(いろう)や誤嚥(ごえん)防止手術を実施することで症状の改善を目指すことができます。
胃瘻とは、お腹の壁を切開して胃の中に向けて管を通し、食物や水分、医薬品を送り込むための処置です。
また誤嚥とは、食物などが何らかの原因で、誤って喉と気管に入ってしまうことをいいます。
眼咽頭型筋ジストロフィーは、ほとんどの患者さんの原因が不明な難病で、現在のところ対症療法しかありません。
また、呼吸障害が生ずるような重症になった場合は、可能な限り呼吸器の機能を回復・維持させる呼吸リハビリテーションや、人工呼吸法などを施さなければなりません。