眼瞼下垂手術後に傷跡は残る?いつまで目立つのかやケア方法・消えない場合の対処法
2024/3/29 更新
眼瞼下垂の手術後には、腫れや赤みが生じ、切開した部分の傷が目立つ場合があります。
「どれくらいで傷が目立たなくなるのか」「消えずに残ってしまう可能性はあるのか」など、手術後の傷跡について不安を抱えている方も多いのではないでしょうか。
本記事では、眼瞼下垂手術後に傷跡は残るのか、いつまで目立つのかや、きれいに治すためのケア方法、傷跡が消えない場合の対処方法を詳しく解説していきます。
眼瞼下垂手術で跡が残る可能性は?
眼瞼下垂手術は、上まぶたの皮膚を切開してゆるんだ挙筋腱膜を折りたたみ、瞼板に再固定させる方法(眼瞼挙筋前転法)が一般的です。
そのため、切開した部分にはどうしても傷跡ができてしまいます。
しかし、まぶたは傷が治りやすい部分といわれており、時間が経てば傷跡は目立たなくなります。
また、多くの場合、傷跡は二重のラインに隠れてほとんど見えなくなります。
なお、切らない眼瞼下垂と呼ばれる埋没式の手術は、まぶたの裏側から糸を通して挙筋腱膜を瞼板に固定するため、傷跡は残りません。
ただし、保険が適用されないほか、切開式と比べて効果の持続性が劣るデメリットもあります。
眉下切開法は傷跡が目立ちにくい?
眼瞼下垂手術の方法の一つに、眉下切開法があります。
眉毛の下の皮膚を切開して上まぶたのたるみをとり、眼瞼下垂の症状を改善する単純皮膚切開術です。
眼瞼挙筋や挙筋腱膜には異常がなく、皮膚の余剰のみが原因で視野が狭くなっている皮膚弛緩症の場合に適しています。
その他、眼瞼挙筋前転法などの眼瞼下垂症手術後においても、術後眉毛下垂により皮膚の被りが気になる場合にも適していると言えます。
眉下切開法では、眉のラインに沿って切開・縫合するため、傷跡が眉毛に隠れて目立ちにくいといわれています。
しかし実際には、通常の眼瞼下垂手術のように二重のラインに傷口が隠れず、ダイレクトに露出してしまうため、施術直後の傷跡は目立つ傾向があります。
丁寧に縫合をおこなえば、時間の経過とともにきれいな状態へと戻っていきますが、ケロイド体質の方や、傷が治る過程で感染症を起こした場合は目立つ傷跡が残りかねません。
傷跡に関しては、眉下切開法は通常の眼瞼下垂手術よりもリスクが高いといえます。
一方、腫れにくく傷の治りが早い点や、目の印象が変わりにくい点は眉下切開法のメリットです。
皮膚縫合の糸の跡が目立つ場合もありますが、これは細い糸を使用することで、ある程度、防ぐことが出来ます。
一般的には、瞼の皮膚縫合の場合、6−0(直径 約0.08mm)という糸を使用することが多いのですが、当院では、通常の保険診療では7−0(直径 約0.06mm)、自費診療では8−0(直径 約0.045mm)、さらに、コダワル場合には、9−0(直径 約0.04mm)での糸を使用しております。
9-0で縫う場合には、さらに、糸の痕が残らないような特別な縫い方をしております。
傷跡とは
手術における傷跡は、実際の切開部分と縫合に使用される縫い目の両方から構成されています。これらの跡は、手術の種類、体質、縫合方法、縫合糸の種類、そして術後のケアによって大きく異なります。
熟練した技術で、コダわった縫合糸を用いて縫合することで、縫い目の跡を最小限に抑えるように気をつけております。
軟骨まで達しているので、深い傷にはなるため、 しっかりとした傷の縫合が必要であり、 二重の線になる様にも縫合することも必要となる。
切開線の跡
切開線の跡は、手術中に医師が皮膚やその他の組織を切開する際に生じます。
この跡は、切開方法、切開の大きさと深さによって異なります。
眼瞼下垂手術の切開線は通常、二重まぶたの線で隠せるとは言え、最も目立つ顔の傷跡であり、適切な技術を用いても完全に目立たない傷にするのは至難の技です。
眉下切開手術の傷についても、さらに、気をつけて、縫合をしなければならないですし、当然、術後のケアが非常に重要と言わざるをえません。
縫い目の跡
縫い目の跡は、手術後に切開された組織を閉じるために縫合糸を使用することで生じます。縫合糸の種類(材質、糸の太さ)、縫合技術(縫合方法)、そして糸を取り除く抜糸のタイミングなどによって、縫い目の跡の見た目が左右されます。
二重の線にするために、軟骨に少しだけ引っ掛けるアンカリング縫合が必要。ただ、糸で囲まれた部分は、血行が悪くなるため、炎症反応が強くなる。
傷跡はいつまで目立つ?術後の経過
眼瞼下垂手術後の傷跡がいつまで残るかは、手術方法や体質などによって個人差があります。
切開法の場合、手術から1〜2か月ほどで、メガネをかけていれば傷跡がほぼ目立たない状態となります。
そして、傷が完全に治り、目を閉じても自然な状態になるまでには3〜6か月ほどかかると考えておきましょう。
強い腫れや赤み、皮下出血(アザ)が生じます。手術翌日が腫れのピークです。また、切開部分の縫合糸が目立つ場合があります。
抜糸(術後10日目〜14日目)をした後は、縫合糸によるいびつさはやや残るものの、皮下出血がかなり消失して違和感がなくなっていきます。
傷が拘縮して硬くなります。赤みはだいぶ目立たなくなり、全体的に腫れも落ち着きます。二重の幅はまだ広い状態です。
二重の幅が狭くなり、完成に近づきます。赤みも消失し、目を閉じても傷跡はほとんどわかりません。
抜糸のタイミングが傷跡形成に与える影響
抜糸は、傷が治癒したことを確認して、縫合糸を取り除くことです。タイミングは、傷跡の形成に大きく影響します。
早すぎる抜糸
- 傷が十分に治癒していない状態で糸を抜くと、傷が開いてしまう可能性があります。
- 皮膚がまだ完全に接着していないため、傷が開くと、治癒に時間がかかったり、傷跡が残りやすくなったりします。
- 感染のリスクも高くなります。
遅すぎる抜糸
- 糸が皮膚に食い込んでしまい、跡が残ってしまうことがあります。
- 糸が皮膚を刺激し、炎症を起こす可能性もあります。
- 糸が細菌の繁殖場となり、感染のリスクを高めることもあります。
適切な抜糸のタイミング
- 傷の状態によって異なりますが、一般的には、医師の診察で傷が治癒したと確認されてから抜糸を行います。
- 傷の大きさや深さ、部位、患者さんの体調などによって、適切な抜糸のタイミングは異なります。
当院では、概ね、術後10日〜14日で抜糸することが多いです。
場合によっては、術後7日で抜糸することがありますが、傷が開いてしまうことで、余計にトラブルになってしまうことがポイントとなります。
傷跡を残さないための術後ケア
眼瞼下垂手術を受けたあとは、身体にできるだけ負担をかけないようにすることが大切です。
とくに、手術直後から抜糸までの間は、少しの刺激でも傷口が開いたり炎症を起こしたりするおそれがあるため注意してください。
手術直後は安静にして、傷口を冷やす
手術当日〜2日目までは、傷口の腫れができるだけ早く引くよう、安静に過ごしましょう。
また、傷口をクーリングすると腫れや痛みが緩和される可能性があります。
保冷剤をガーゼに包み、低温やけどに注意しながら優しく傷口に当ててください。
また、当院では傷口の冷却専用に開発されたアイスマスク「メオアイス」の使用もおすすめしています。
詳しくは下記の記事をご覧ください。
外用薬を塗布する
手術翌日から抜糸までの間は、抗生剤の軟膏、(場合によっては、ステロイド軟膏)の塗布をおこないます。
近年では、傷をきれいに治すためのケアとして、傷口を湿潤な状態に保つ「モイストヒーリング」が主流です。
軟膏を使って乾燥させないようにすると、かさぶたができにくくなって創傷治癒が早まります。
内服を忘れずにおこなう
眼瞼下垂手術後は、消炎鎮痛剤(痛み止め)や抗生剤、ケロイド(瘢痕)防止剤などが処方されます。
消炎鎮痛剤 | 術後の痛みを和らげ、腫れを抑える |
抗生剤 | 傷口の感染を予防するための薬。 |
ケロイド(瘢痕)防止剤 | ・トランサミン(トラネキサム酸):抗出血・抗炎症作用があり、傷の赤みを軽減する ・リザベン(トラニラスト):抗アレルギー薬。皮膚線維細胞の増殖を抑え、傷の赤みやかゆみを軽減する |
医療機関や術後の状態によって必要な薬や服用期間は異なるため、詳しくは担当医に相談してください。
医師の指示のもと、処方薬をきちんと服用することでダウンタイムを短縮し、傷跡が残るリスクを低減できます。
傷口を濡らさない
傷口が水に濡れると、感染症や再手術のリスクが高まるため注意が必要です。
抜糸をおこなうまでは、洗顔や洗髪をする際、まぶたに水がかからないようにしましょう。
また、抜糸後は洗顔可能ですが、傷が完全に塞がるまでは指の腹で軽く洗う程度にしてください。
血行を良くする行為を避ける
血行が良くなると、腫れが増したり出血したりして、傷の治りが遅くなるおそれがあります。
手術当日は、入浴をできるだけ控えてください。
翌日から抜糸までは、湯船にはつからずシャワーのみにしましょう。
また、ジョギングや筋力トレーニングなどの運動も血行を促すため、術後しばらくは避けるのが安心です。
まぶたに力が入って、傷口が開いてしまう危険性もあります。運動は抜糸後1週間経ったころから、徐々に再開するとよいでしょう。
コンタクトレンズやアイメイクは1か月後から
コンタクトレンズやアイメイクは傷口に負担をかけてしまうため、術後1か月は避けてください。
1か月以降でも、赤みが残っているうちは控えたほうがよいでしょう。
また、再開する際は、まぶたに強い刺激を与えるおそれがあるため、引っ張ったり擦ったりするのは厳禁です。
傷の状態によって再開できるタイミングは異なるため、定期的に医師の診察を受けて確認してください。
眼瞼下垂手術後に傷跡が消えない場合はあるの?
先述したとおり、眼瞼下垂手術による傷跡は、一時的に赤みが増したり硬くなったりすることはあっても、3〜6か月ほどでほとんど違和感のない状態となります。
しかし、術後の経過によっては、肥厚性瘢痕やケロイド、引きつれなどが生じて傷跡の状態が悪化する場合があります。
傷が治癒する過程で持続的に炎症が起こり、線維芽細胞が過剰に増えるのが原因です。
傷跡の盛り上がりや赤み、かゆみなどの症状が表れ、傷跡が消えなくなってしまいます。
まぶたの皮膚には肥厚性瘢痕やケロイドができにくいといわれており、過度に心配する必要はありません。
しかし、合併症のリスクをできるだけ低減して傷口をきれいに治すためには、術後の注意点を守り、ケアや内服を忘れずにおこなうことが大切です。
眼瞼下垂手術後に傷跡が目立つときの対処法
眼瞼下垂手術後、赤みや腫れが落ち着くまでは外出を控えたり、休暇をとったりするのがおすすめです。
しかし、仕事や買い物などで、外出しなければならないケースもあるでしょう。
傷跡を目立たせないためには、サングラスで隠すのが効果的です。
仕事や人と会う予定があってサングラスの使用が難しい場合は、黒縁メガネをかけるのもよいでしょう。
やや下にずらしてかけると、上まぶたの傷跡が黒縁メガネのフチで隠れて目立たなくなります。
なお、施術直後のアイメイクや、前髪で傷跡を隠す方法は、感染症のリスクを高めるおそれがあるため控えてください。
まとめ
眼瞼下垂手術後の傷跡はいつまで目立つのか、傷跡が残る可能性はあるのかについて解説しました。
切開式の眼瞼下垂手術を受ける場合、傷跡が一定期間目立つのは避けられません。
しかし、適切なアフターケアをおこなえば、3〜6か月ほどで目を閉じた状態でもほぼわからない程度まで傷が修復されます。
本記事で紹介した術後の注意点を守り、きれいな仕上がりを目指していきましょう。
当院では、傷跡が目立ちにくく、より自然な二重幅を形成するオリジナルの眼瞼下垂手術「TKD切開法」をおこなっております。
眼瞼下垂手術を検討しているけれど、傷跡についてご心配がある方は、ぜひ一度ご相談ください。
メールでのご相談も受け付けております。
眼瞼下垂手術後の傷跡についてよくある質問
- 眼瞼下垂手術後に傷跡は残りますか?
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手術後には傷跡が残りますが、時間が経つにつれて目立たなくなることが多いです。
- 手術後の傷跡はいつまで目立ちますか?
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人により異なりますが、通常は数週間から数ヶ月で薄くなります。
- 傷跡を目立たなくするケア方法はありますか?
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傷跡への直射日光を避け、保湿を心がけ、医師の指示に従ったケアをすることが重要です。
- 手術後、傷跡の赤みを減らすためにできることは?
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冷却パックの使用や、抗炎症薬の使用が効果的です。
- 傷跡が悪化する可能性のある要因は何ですか?
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喫煙や摩擦のほか、過度に紫外線へ当たると、傷跡を悪化させる可能性があります。
- 手術後に傷跡が盛り上がってきたらどうすればいいですか?
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盛り上がりはケロイドの可能性があるため、早めに医師に相談してください。
参考文献
FINSTERER, Josef. Ptosis: causes, presentation, and management. Aesthetic plastic surgery, 2003, 27.3: 193-204.
石嶋漢. 眼瞼下垂の治療. 眼科ケア: the Japanese journal of ophthalmic caring 眼科領域の医療・看護専門誌, 2022, 24.5: 517-520.