眼瞼下垂の手術と「眉下切開(アイリフト)」の違い
2024年5月15日更新
眼瞼下垂と眉下切開の違い
手術治療法 | 適応条件 | 手術内容 |
---|---|---|
眼瞼挙筋短縮術 | 眼瞼挙筋の機能が ある | 眼瞼挙筋を短縮・前転して、瞼を上げる力を強化する手術 |
眼瞼挙筋腱膜前転術 | ||
前頭筋吊り上げ術 | 眼瞼挙筋の機能が ない | 眼瞼挙筋の代わりに前頭筋を使用して瞼を上げる手術 |
単純皮膚切開手術 | 余剰皮膚が ある | 瞼の皮膚を切開して、余分な皮膚を取り除く手術 |
眉下切開法 | 眉下の皮膚を切開し、余分な皮膚を取り除く手術 |
「眼瞼下垂症(がんけんかすいしょう)」の手術治療法は、眼瞼挙筋機能の有無、余分な皮膚の量の大小で分けることができます。
眼瞼挙筋(がんけんきょきん)」の機能が残されている場合の「眼瞼挙筋短縮術」「眼瞼挙筋腱膜前転術」と、眼瞼挙筋がほとんど機能していない場合の「前頭筋吊り上げ術」に分けられます
そして、皮膚の余りが多ければ、「単純皮膚切開手術」「眉下切開法」となります。
通常の眼瞼下垂症手術のメリット
眼瞼挙筋短縮法、前転法などの眼瞼下垂症手術は、上眼瞼の筋肉や腱膜の異常を直接修正することで、まぶたの下垂を根本的に改善します。
したがって、視界が広がり、見た目の改善だけでなく、機能的な回復も期待できます。
瞼、そのものの皮膚を切開する手術、つまりは、眼瞼挙筋前転法、眼瞼挙筋短縮法、前頭筋吊り上げ術のデメリットとして、
- 目の印象が変わってしまう。
- 瞼の皮膚を多量に切除すると、睫毛側の薄い皮膚がなくなり、皮膚の厚みが変わってしまう。
- 目の近くを触る手術が怖いという心理的な抵抗感
などがあると考え、そのことを避けるためにも、「眉毛下切開法」、いわゆる眉下切開手術を希望される患者様が多い印象です。
とくに、目の開き自体は悪くなくて、単純に皮膚の余剰だけが強い状態で、皮膚が覆いかぶさっているだけのような状態に良い適応だと考えます。
眉下切開手術のメリット
眉下切開手術は、特に高齢者や皮膚のたるみが顕著な方に効果的です。
皮膚の厚さや弾力性に関係なく、皮膚の分厚い患者において相性の良い手術です。
施術する側も、単純に皮膚を切開、切除、縫合するというシンプルな手術ですので、その点を考えても、メリットがあります。
眉下切開のメリットは、皮膚の余りと重みをリスク少なく取ることができることです。
眉下切開手術と眼瞼下垂症手術との傷跡の違い
眉下切開のデメリットは、やはり傷跡が目立つ場所にあることです。
ただ、ほとんどのケースにおいては、手術直後は目立っても、時間が経てば、非常に目立たないことが多いと言えます。
しかしながら、傷跡が目立つ、目立たないの境界線は、体質や術後のケアの状況によっても左右されますので、運の要素が強いと言えます。
どんなに、綺麗に縫合したとしても、傷が綺麗に治らないようなケロイド体質だったり、創傷治癒の過程で感染等を起こしたりすると、残念なことになります。
そうだっとしても、やはり、皮膚を綺麗に縫う技術・テクニックの差が一番大きいので、病院選びが非常に重要とも言えます。
通常は、本当に目立つことなく、綺麗に治るので問題ないので、大変喜ばれる手術方法の一つだと考えております。
眉の生え際とはいえ、傷口そのものがダイレクトに露出して見える場所のため、眉下切開を施術をする側からすると、どうしても技術でカバーできない運の要素もあることから、内心、ヒヤヒヤしている部分があります。
その点、切開線を二重の奥に隠れる通常の眼瞼下垂症手術とは、違った一面があると言えます。
眉下切開手術と眼瞼下垂症手術とのダウンタイムの違い
一般的に、眼瞼下垂症手術のダウンタイムは長めとなります。
瞼は、皮膚はもちろん、眼輪筋、眼瞼挙筋、ミュラー筋、眼窩脂肪など様々な組織で成り立っております。
皮膚は基本的に腫れにくい組織なのですが、筋肉組織、脂肪組織が非常に腫れやすい組織です。
したがって、当然、眼瞼下垂症手術は、そういった眼輪筋、眼瞼挙筋、ミュラー筋などの筋肉に対して、手術操作を加えるため、非常に腫れやすい手術だと言えます。
眉下切開は、眉の境界の部分の皮膚組織だけを基本的に手術するため、実は、通常の眼瞼下垂症手術と比べて、ダウンタイムが短いということができます。
眉下切開手術のダウンタイムに影響するトラブル
一般的に、傷の治りにおいて、トラブルが起きる原因として、傷が開いてしまうことがポイントとなります。
傷が開いていると、その隙間を修復組織≒瘢痕組織で埋める形になるため、その組織構造の違いによって、傷が目立つという形になるわけです。
当院では、手術後は、傷口を触らない、押さえない、引っ張らない、動かさないことを強調してご説明・指示をしております。
つまりは、そうした行為をすると、せっかく縫合した傷口が開いてしまい、結果として、創傷治癒遅延が起こり、傷が発生します。
通常の眼瞼挙筋前転法などの眼瞼下垂症手術は、一日20000回も瞬き(まばたき)で動いてしまう瞼自体に傷を作るため、元々、傷の治りは良いとは言えない部分がありますが、隠れてくれるます。
ただ、眉下切開法に関しては、分厚く、そして、強い力がかかる部分であるため、傷が開いてしまうことがあります。
そのため、真皮縫合という特殊な皮膚縫合を行うことがキチンとできていれば、傷自体の経過は、非常に良いということができます。
眼瞼下垂症手術と眉下切開法はどっちを選ぶべきか?
さて、前頭筋は、前頭、つまり額(オデコ)の筋肉で、額にシワを作る筋肉ですが、眉を上に挙上する役割があります。
人は眉を持ち上げると、繋がっている(連なっているとも言えますが)瞼も上がることが期待できるというわけです。
どちらかというと、瞼が上がるというよりかは、瞼の皮膚が持ち上がって、余分な皮膚の被りがなくなって、楽になるというイメージで、下垂して瞳孔に被さっている瞼を治すという意味での眼瞼下垂症の改善としては、そのほかの手術手技に比べて、効果が低いとは言えます。
特に、眉下切開を行うと、皮膚を持ち上げる要素があるので、皮膚が被った感じで重く感じるケースには良い適応です。
さらに言うと、あまり雰囲気を変えたくないということを希望されるのであれば、特におすすめの手術であるとも言えます。
また、眼瞼挙筋前転法やミュラー筋タッキングなどと同様で、術後、どうしても眉と目の距離が近くなります。
したがって、眉と目の距離が近い方の場合には、眉の下ではなくて、眉上切開を行うことで、より近づいてしまうことを防ぐことができます。
眉下切開手術と眼瞼下垂手術での保険適応の違い
保険診療というのは、疾患によって損なわれた機能、疾患によって引き起こされた直接的な症状を改善する目的において、適用されるものです。
審美的な要素を直すためには、基本的には適用されるものではありません。
したがって、目の重み、余剰の皮膚による被さりによる視野の狭窄を改善する目的で行われる場合には、保険適応となる可能性があります。
逆に、瞼の弛みを取りたい、皺を取りたいという目的であれば、審美的な改善を目的となり、保険適応ではなく、自由診療での手術となります。
保険診療の場合には、手術の料金が全国、全施設一律に定められており、下記のようになります。
K219 眼瞼下垂症手術
実は、眉下切開を行う場合には、3のその他の方法に該当します。結果として、おおよそ、3割負担であれば、片眼につき18,200円(1割負担であれば、6,070円) となります。
そして、その他に、短期滞在手術基本料 術前検査、術後の診察代、薬剤の費用が約2〜3万円程度が3割負担であれば、別途かかるイメージとなります。
眉下切開術の実際は?
眉下の縁の線に沿って、皮膚切開のデザインを決めて、切除、縫合する方法です。
眉下切開の適応のある方は、眼瞼挙筋や挙筋腱膜に異常のない、言い換えれば、 挙筋が瞼板から外れていないケース、または、眼瞼挙筋前転法・眼瞼挙筋短縮法・ミュラー筋タッキングなどの手術を受けた後で追加の皮膚切除が必要なケースが対象となります。
デザイン通りに皮膚を切除し、眉毛の生え際が自然になるように、
傷口が直線的にならないように傷口がランダムになるようにして目立たなくするW切開法という方法もあります。
ただ、そういった手技を用いた場合には、高度な技術と手間と時間が必要であるため、自由診療となることが多いです。
眉下切開の症例写真
当院での眉下切開手術の症例
実際に、眉下切開は、通常の眼瞼下垂症(眼瞼挙筋前転法など)と異なり、目から離れたところを手術する関係で、ダウンタイム期間中は、意外に楽だったりします。
また、写真から分かる通り、術前術後の雰囲気があまり変化しないのも特徴です。
切開線が不自然にならないための工夫
毛包斜め切断法
毛に対して垂直に切開すると、切開線に沿って毛根が無くなってしまい、眉と傷との境界がハッキリし過ぎてしまうので、斜めに切開する方法がキモとなります。
毛包斜め切断法といい、切開線上に毛が残る方法となります。
図のように切断することで、毛包を切開線の上に残すことができ、直線的な脱毛を避けることができます。
w切開法
皮膚には、きめ細かいシワがランダムに入っております。
人間の目には、そういったランダムな模様の中にある直線的な変化を敏感に感じ取ることができます。
つまり、直線的な傷は、皮膚にあるランダムな模様を乱しているため、目立ち易くなります。
形成外科の手法には、w切開というものがあり、直線的な傷を敢えて、ギザギザにすることで、目立たなくされる方法があり、 眉下切開にも応用すると、よい場合があります。
もちろん、あまり大きなギザギザだと余計に目立つため、小さめなギザギザデザインとするのが鉄則となります。
しかし、細かすぎると、それはそれで、傷跡の線が太くなり過ぎたり、傷自体は本質的には長いと言えるため、逆に、感染症、ケロイドなどにより創傷治癒遅延が怒ったりして、逆に目立ってしまう可能性もありますので、注意が必要です。
眼瞼下垂手術と眉下切開法の同時施術について
眼瞼挙筋前転法などの通常の眼瞼下垂症手術と眉下切開法は、別の概念の手術であるため、それぞれのメリット、デメリットがあります。
ただ、どちらか一方を選ばなければならないというより、両方を選ぶという選択肢もあります。
眼瞼下垂症手術と眉下切開はどっちが先に行うべき??順番は?
眼瞼前転法・眼瞼挙筋短縮法・ミュラー筋タッキングなど瞼そのものを切開する方法では、皮膚切除量に限りがあるため、そういった手術を受けた後、瞼の被りが気になるなどで、追加の皮膚切除が多く必要なケースにおいて、追加手術として行う場合には、非常に良い適応だと考えます。
眉下切開術に対しての当院の考え方
顔面の傷は、意外にダウンタイムが長いと言えます。
特に、下眼瞼への手術や、眉下切開の手術は、二重の奥に傷を隠せる上眼瞼の手術と違い、一見、目立ちやすいと言えます。
しかしながら、眉下切開手術のダウンタイムの収束は、意外にも早く、一ヶ月もあれば、相当に改善することがほとんどです。
ただ、完全に赤みが消えるまでには、1ヶ月〜3ヶ月・・・場合によっては、それ以上の期間がかかる可能性があります。
そして、傷跡の問題だけを除けば、手術手技としては非常にシンプルな方法ですので、創部のトラブル以外には、失敗は少ないと言えます。
加えて、どうしても、眉の部分をカットすることから、眉が細くなったり、予期しない変形を起こすことも考えられます。その場合には、眉のアートメイクを施すことで対応することもあります。
フラミンゴ眼瞼・美容クリニックでは、医療資格を持った一流のアートメイクアイティストが所属しておりますので、そう言ったことに対しても、しっかり対応が可能となっております。