眼瞼下垂の基礎知識

眼瞼下垂を進行させないための究極の予防方法と治療方法とは?

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高田 尚忠
高田 尚忠(たかだ なおただ)
高田眼科 院長 |ひとみ眼科 / フラミンゴ美容クリニック 眼瞼手術担当医師
所属学会:日本眼科学会、日本形成外科学会、日本眼形成再建外科学会
岡山大学医学部卒業後、横浜形成外科の二木 裕先生を師事。 郡山医療生活協同組合 桑野協立病院などの様々な医療機関を勤務し、 現在は高田眼科の院長を務める。 眼科医と形成外科医の知識と、これまでの豊富な眼瞼手術の術者としての経験をもとに、2021年には年間1,500件超える眼瞼下垂症手術を手がけております。 2022年3月より、名古屋市内の伏見駅近くのフラミンゴ眼瞼・美容クリニックを開院。

予防できる眼瞼下垂と予防できない眼瞼下垂

この記事では、予防可能な後天的な眼瞼下垂において、生活習慣の改善やトレーニング、予防注射などで予防できる方法をご紹介します。

最後に、当院として、考える眼瞼下垂の究極の予防法についても説明いたします。

なおこの記事は、眼瞼下垂手術に関しての専門家として、年間2000件以上の眼瞼下垂手術(2022年度の実績)を執刀する 当院 院長 高田 尚忠が執筆しております。

1.眼瞼下垂とは、なに? どんな病気?

眼瞼下垂とは、何らかの要因により、瞼(目蓋/まぶた)を開く筋肉(眼瞼挙筋)の働きが弱くなることで、瞼(目蓋/まぶた)を上げようとしても、瞼が十分に上がらなくなる状態のことを言います。

目が開かないため、瞼(まぶた)が瞳孔(瞳の中心にある のぞき窓)の一部に被さってしまう状態とも言えます。

原因によって、先天性、後天性のパターンに分けられます。それ以外のパターンとして、偽眼瞼下垂と呼ばれるものもあります。

先天性というのは、生まれつきのもので、生まれた時から持っている眼瞼下垂症のことで、原因がよく分かってない場合が多いと言えます。

逆に、後天性とは、生まれた後に発症した眼瞼下垂症のことで、言い換えれば、加齢やコンタクトレンズなどにより、まぶたを引き上げる腱膜、筋肉、神経の異常により生じた眼瞼下垂(がんけんかすい)と言えます。

眼瞼下垂(がんけんかすい)の症状は、瞳(ひとみ)に瞼(まぶた)がかかった状態となるため、視野の狭窄化に伴う視力の低下、肩こり・頭痛などの眼精疲労症状などが出現します。

そして、軽度の眼瞼下垂では、眼瞼下垂だという認識ができず、原因がわからない身体の不定愁訴として片付けられてしまうので注意が必要です。

以下、それぞれの眼瞼下垂の予防ついての考え方を説明をいたします。

1-1.先天性眼瞼下垂は予防できるの?

健康な人の上瞼の断面図

先天性眼瞼下垂の人の上まぶたの断面

上記の図のように瞼を開くための一番メインとなる眼瞼挙筋が、全部、または一部が繊維化していることが多く、通常の手術では治らないと言えます。

例えれば、先天性眼瞼下垂の方の眼瞼挙筋は、劣化して硬くなったゴムの様に弾力がなく、ほとんど伸び縮みせず動きません。

先天性眼瞼下垂は、生まれつき、筋肉(眼瞼挙筋)や神経(動眼神経)に異常があり、目が十分に開かない状態と医学的には定義されてます。

加えて、先天性眼瞼下垂の特徴として、眼瞼挙筋とミュラー筋が正常な筋肉組織ではなく、伸び縮み出来ない硬い繊維組織になっており、挙筋機能が全くないか、あったとしても非常に少ない状態でもあります。

そして、眼窩脂肪と眼瞼挙筋との境界面のファシアが発達しているのも特徴で、開瞼時の抵抗が強い状態です。

結果、このファシアをしっかり処理しないと、通常の眼瞼挙筋前転法でも治らないと言えます(当院オリジナルのファシア理論)。

このように生まれつき上瞼(まぶた)が、下がって開きにくくなっている「先天性眼瞼下垂」は、自身の生活習慣などとは無関係な眼瞼下垂であり、予防することが出来ませんので注意が必要です。

1-2.偽眼瞼下垂は予防できるの?

偽眼瞼下垂は、まぶたを引き上げるための構造(動眼神経、眼瞼挙筋、眼瞼挙筋腱膜、瞼板軟骨など)の異常以外の原因によって、瞼(まぶたが)が上がらなくなってしまった眼瞼下垂症を意味します。

例えば、一般的に、生まれつきの一重瞼(ひとえまぶた)や奥二重瞼(おくぶたえ)になっているような腫れぼったい厚い瞼(まぶた)の人は、ハッキリとした二重の人よりも瞼が開きにくい状態となります。

それは、腫れぼったい瞼の人は、筋肉(眼瞼挙筋)の構造や神経(動眼神経など)の働きには問題ない代わりに、単純に皮膚が余りすぎてたり、眼輪筋や眼窩脂肪が多すぎるなどで、瞼(まぶた)が重すぎるからです。

そういった意味でも、腫れぼったい瞼を特徴にもつ典型的な日本人は、生まれつきの偽眼瞼下垂が多いとも言えます。

先に説明をしました本来の先天性眼瞼下垂とは区別しますが、このタイプの偽眼瞼下垂は、ある意味、生まれつきの要素(先天性)になりますので、予防するということはできず、最初から手術で対応することとなります。

その他には、眼瞼痙攣(眼瞼けいれん)も、代表的な偽眼瞼下垂と言えます。

眼瞼痙攣(眼瞼けいれん)は、脳の高次的な機能に、何らかの障害が発生し、目を閉じる筋肉が無意識に過剰に緊張してしまい、勝手に目を閉じようとする疾患です。

眼瞼痙攣(眼瞼けいれん)による眼瞼下垂の治療は、当然、原因疾患に対する治療としてのボトックス注射が第一選択であります。

眼瞼痙攣(眼瞼けいれん)は、原因が不明であるため、予防できるものではありません。

このように、偽眼瞼下垂の予防に関しては、原因が多岐にわたっているため、一概に予防できると言うことができません。

1-3.後天性眼瞼下垂は予防できるの?

後天性眼瞼下垂は、後天的な原因により筋肉(眼瞼挙筋)の動きがきちんと伝わらなくなる(=筋力のロスがおこる)ためにおこります。

基本的なこととして、筋肉の力というのは、筋肉(眼瞼挙筋)→腱(眼瞼挙筋腱膜)→骨格(瞼板)と伝わっていきます。

イメージしづらいと思いますので、例え話にしてみますと、有名なマリオネット人形に例えることができます。

操作されている人形が瞼板(けんばん)であり、吊り上げている紐(ひも)が眼瞼挙筋腱膜、そして、人形を操作する手が眼瞼挙筋となります。

眼瞼下垂の瞼は、

  • (眼瞼挙筋の筋力不足):人形の重さに対して手の筋力が足りていない場合
  • (腱膜構造の破損):吊り上げている人形(瞼板)と紐(眼瞼挙筋腱膜)との接続が外れてしまったり、伸びて緩くなってしまっている場合

とに分けられます。

ちなみに、後者の紐(ひも)の破損、つまり、眼瞼挙筋腱膜が断裂していたり、瞼板から外れている場合には、先に述べたように手術でしか直すことしか出来ません。

一方で、人形を操作する手の筋力不足なら、それを自分で鍛えることで眼瞼下垂の改善が期待できます

腱膜性眼瞼下垂の特徴についてワンポイント

腱膜性眼瞼下垂の原因として問題となるのは、瞼板と腱膜の接着部分です。

実は瞼板と筋肉の接着部分は強くなく、イメージするなら、フカヒレのような無数の繊維でできたシート(腱膜)をネジで固定しているのではなく、単純に接着剤で接着しているイメージです。

退行性(加齢性)眼瞼下垂は、このシートの接着が、少しずつ目を擦ることなどの外的な要因で外れていくことで起こります。

退行性(加齢性)眼瞼下垂になっている方は、痩せている方に多いと言えます。

それは、眼窩脂肪が眼瞼挙筋や眼瞼挙筋腱膜を外力から守るクッション材の役割をしている眼窩脂肪が少ないことが多いために損傷を受けることが多いと考えることができるからです。

結果として、サンケンアイと呼ばれる瞼の窪んでる人をみると、退行性(加齢性)眼瞼下垂だと簡単に診断できたりします。

手術は単純に眼瞼挙筋腱膜を瞼板に再度固定し直すことで比較的容易に治るのですが、長期間外れた状態でいる眼瞼挙筋は、時間と共に薄くなり脆弱化してしまいます(挙筋機能の低下)。

ご存知の通り、人の体は歳を重ねるごとに全身の筋肉が減っていき、筋力が落ちていくのですが、眼瞼挙筋も同様で、年齢と共に痩せていく形になります。

この眼瞼挙筋の菲薄化は、高齢者の眼瞼下垂手術が難しい理由の一つとも言えます。

挙筋機能が低下してしまった重度の眼瞼下垂では、もはや予防する段階ではなく、治療となります。

結果として、眼瞼下垂症が出始めたら、眼瞼挙筋機能が残存している早期に眼瞼下垂手術を行うことが望まれます。

1-4.眼瞼下垂の重症度分類

前項で述べたように、一旦、重度の眼瞼下垂(がんけんかすい)になると予防するということが難しくなるため、軽度のうちから予防するという考え方が非常に大事だと言えます。

眼瞼下垂(がんけんかすい)の程度は、瞼を意識して最大限瞼を持ち上げることで簡単に重症度の判定がセルフチェックできます。

また、専門的には、具体的にMRDを測定し、重症度を客観的には判定しております。

下の図のように、MRDは、簡単に定規で測定できるものです。

眼瞼下垂のセルフチェックなど自己診断について、もっと知りたい方は、こちらのブログ記事を覗いてみてください。

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2.眼瞼下垂の効果的な予防法

日常生活での眼瞼下垂の予防において、重要なこと。

それは、まぶたを上げる際に大切な役割を担う「瞼板」につながる「挙筋腱膜」という薄くて堅い膜がゆるんだり、挙筋腱膜と瞼板の結合部分が外れたりしないことです。

瞼(まぶた)への物理的な刺激を避けることが非常に重要となります。

つまり、過剰な力がかからないようにしないと、スポーツ外傷で起こる アキレス腱断裂のように、眼瞼挙筋腱膜の断裂が起こってしまうからです。

そして、一旦完全に外れて重度の眼瞼下垂となってしまうと、手術によって断裂を直すしか方法がありません。

では、先ずは、眼瞼下垂の予防するためには、「どのように眼瞼挙筋腱膜を壊さないようにするのか?」を説明し、次の項で「眼瞼挙筋を鍛えるのか?」ということを説明していきます。

2-1.まぶたのマッサージは逆効果!!

まぶたを直接、強くこするようなマッサージは、眼瞼挙筋腱膜へのダメージになるので、逆効果となります。

さらには、皮膚のリガメント(ファシア)を痛める可能性もあり、皮膚もタルミにも繋がり、眼瞼下垂が悪化すると言えます。

また、目がかゆいときに手指でまぶたをこすらないことも同様に大事です。

アトピー患者さんは眼瞼下垂症が多く合併することから、アレルギー症状や皮膚のかぶれなどで、どうしてもかゆい場合もあるかと思いますが、我慢できず、目を擦ってしまい、眼瞼下垂を進行させる前に、眼科を受診し適切な治療を受けましょう。

適切に薬剤を使用することで、痒みをコントロールをし、まぶたをこすることを必ず避けるようにいたしましょう。

かゆみの原因である炎症反応を抑え込む点眼液、内服、眼軟膏などを使用するのが一番ですが、点眼以外の方法としては、痒みのコントロールには冷却することも有効です。

また、洗顔後に目を拭くときにもタオルなどでこすらないような注意が必要です。

その他には、アイメイクを落とす時にも強い力をかけてはいけませんし、できればアイメイク自体がまぶたに悪影響があると考えてください。

加えて、過度なつけまつ毛やエクステも、瞼を重くし、まぶた(眼瞼挙筋腱膜)に負担をかけてしまいます。

2-2.アイプチは、眼瞼下垂の原因になることも!!

少し前になりますが、人気番組「ためしてガッテン」で、眼瞼下垂の手軽な改善方法として、アイプチ・アイテープを利用して、二重にすることが提案されておりました。

確かに、日本人、特に高齢の方は眼瞼の皮膚が弛んでいる人が多く、皮膚の弛みをアイプチ・アイテープの「糊(のり)」を使用して、余った皮を二重にして処理することで、眼瞼下垂が表向き改善すると言えます。

先の「マッサージは厳禁!!」という項でも触れましたが、皮膚は無理に引っ張ったりしていると、リガメント(ファシア)が弛んで、伸びてしまいます。

加えて、瞼の皮膚は、非常に薄く、敏感なので、アイプチやアイテープの糊(のり)成分で、皮膚がかぶれてしまい、そして、慢性アレルギー性皮膚炎を引き起こしてしまい、結果として、眼瞼下垂を引き起こしてしまう可能性があるので、注意が必要です。

短期的に、眼瞼下垂の改善方法としては、非常にアイプチやアイテープは魅力的な方法ですが、その改善効果を強く自覚できるのであれば、トラブルを起こす前に、眼瞼下垂を検討された方が良いと考えております。

2-3. 日焼けに注意し、適切なスキンケアが必要

紫外線・乾燥によって「角質肥厚」が起こり、眼瞼下垂症の原因となります。

角質肥厚の原因は、肌へのさまざまな刺激。肌には刺激を受けると角質を厚くすることでダメージを防ごうとするはたらきがあります。

刺激を受け続けると、肌には異物の侵入・刺激をガードしようとする防御反応が強く働くため、結果として角質肥厚が起こるわけです。

そして、角質肥厚を起こした眼瞼は、同然、分厚くなり、眼瞼下垂が強くなります。

2-4. コンタクトレンズの付け外しにも注意が必要!!

最近、コンタクトレンズを長年使用されている方に、眼瞼下垂が多いことが知られるようになってきました。

いわゆる、コンタクトレンズ性眼瞼下垂です。

コンタクトレンズを付けていると、コンタクトレンズが瞼の裏から機械刺激で眼瞼挙筋腱膜に直接、負担をかけていることが原因という説もあります。

さらに、付け外しの際にも、瞼を強く引っ張ることで負担をかけていることも原因としても多いとも考えられます。

したがって、コンタクトレンズを入れる際や外す際には、上まぶたを無理に指で持ち上げたりせずに、できるだけ下まぶたを引いて着脱するようにしましょう。

また、加えて、なるべくメガネを併用して長時間のコンタクトレンズ使用を避け、コンタクトレンズが瞼の裏を刺激する負担を減らすようにします。

最後に、コンタクトレンズのタイプをハードからソフトに変えるだけでも眼瞼挙筋腱膜への負担が減ります。

それだけでも、眼瞼下垂が改善したケースもあります。

特に、ハードコンタクトレンズは、外す際にまぶたを引っ張ることで外すことが多いからです。

できれば、先に触れたようにハードコンタクトレンズの外す際には、写真のようにして上下で瞼を挟み込むように外すようにしましょう。

さらには、取り外し専用の吸盤を使うと、より眼瞼下垂の悪化を抑えることができますので、出来るだけ早くに実践しましょう。

尚、この取り外し用の吸盤は、コンタクトレンズ販売店で購入することができます。

最近、お笑いコンビ「日本エレキテル連合」の中野聡子さんが、自身のInstagramで、コントでテープメイクを繰り返したことで“重度の眼瞼下垂”になっていることを明かしました。

これは、度重なる挙筋腱膜への物理的な負担が眼瞼下垂症を引き起こす具体的な事例だとも言えます。

2-5. パソコンなどのVDT作業にも注意!!

仕事でパソコンのモニタを長時間見つめる人も、まぶたの開け閉めと関わる目の周囲の筋肉や腱に疲労や緊張などの影響を及ぼします。

定期的に目をモニタから離したり、目を休めるケアを心がけましょう。

目だけでなく顔全体の緊張や体の疲労を残さないようにすることも眼瞼下垂の予防につながります。

次に、まぶたの開け閉めと関わる「眼瞼挙筋(がんけんきょきん)」を鍛えるのに効果的なトレーニングをご紹介します。

3.効果的な眼瞼下垂予防トレーニング

眼瞼挙筋腱膜に損傷がない場合の眼瞼下垂症の原因として、瞼を上げる筋肉の主役である眼瞼挙筋の筋力の衰えが考えられます。

眼瞼挙筋が衰えると、前頭筋(額の筋肉)を使うようになり、ますます眼瞼挙筋が使われなくなり、退化してしまいます。

一流の体力を持った宇宙飛行士が長らく宇宙に滞在して地球に戻ると、筋力が落ちてしまうのと同様に、眼瞼挙筋も使わなくなると、段々と筋肉が衰えてしまい筋力が落ちてしまうと考えられます。

これは、医学的には、廃用症候群と呼ばれる状態です。

実際に、高齢の方の手術を行うと分かるのですが、眼瞼下垂が発症して長期間経っていると、キチンと使ってないことで眼瞼挙筋が萎縮し筋力が低下してます。

その場合、眼瞼下垂手術を行っても、眼瞼挙筋腱膜と瞼板の接合を修復しても瞼が上がりにくいことがあります。

このような状態を挙筋機能の低下と言います。

挙筋機能が低下してしまうと、将来、眼瞼下垂手術を行って、眼瞼挙筋腱膜の位置を修正したとしても、開瞼が悪く、手術が上手くいかなくなります。

「廃用症候群」とは、病気やケガなどで身体を動かせない状態が続き、過度の安静や日常生活の不活発に伴って生じる身体的・精神的諸症状の総称です。

すなわち、身体を過度に動かさないこと(不動immoblization、低運動inactivity、臥床bedrestなど)により生じる二次的障害と言えます。

重力に抵抗して働く筋肉(抗重力筋)に強く起こりやすいとされます。

最大筋力の20%未満の活動では筋萎縮や筋力低下が起こりやすいとされています。眼瞼挙筋も抗重力筋の一つと考えて差し支えありません。

したがって、普段から、前頭筋に頼らない瞼の挙上を行うことが非常に大事となります。

そこで、眼瞼挙筋の筋力をトレーニングを普段から取り入れられると眼瞼下垂の予防につながります。

3-1.眼瞼下垂予防トレーニング(眼瞼挙筋トレーニング)

まず、目を静かに閉じ、眉を下げることを意識して額の力を抜きます。
左右の眉毛が動かないよう、額全体を手のひらで押さえる。
両目をカッと限界まで大きく見開いて5秒キープする。
ゆっくり目を閉じてリラックスする。

この(1)~(4)を1セットとし、1日に数回繰り返しましょう。

習慣化することで、眼瞼挙筋の衰えを防ぐのに効果を発揮します。

4.眼瞼下垂予防注射で予防する

眼瞼挙筋トレーニングを毎日、キチンと行う習慣を形成できれば、一番良いのですが・・・・

毎日のトレーニングが難しいとお考えの人は、ボツリヌス菌の毒素注射(ボトックス注射)を使った方法もあります。

毒素というと、ビックリされる方もいらっしゃると思いますが、疾患によっては保険適応にもなっている れっきとしたお薬となります。

ボトックスはボツリヌス菌が作り出す毒素で、筋肉の動きを一時的に止める働きがあります。

つまり、ボトックスを注射されると、その部分の筋肉は、2〜3ヶ月程度、動きにくくなります。

そこで、このボトックスを額に注射することで、額の筋肉(前頭筋)が動きにくくなり、前頭筋に頼らない眼瞼挙筋主体の瞼の挙上を行う状態となります。

その状態であれば、前述のトレーニングをしなくても、簡単に自然と眼瞼挙筋を鍛えることになります。

(注1)額にボトックスを打つと、眼瞼下垂が強く出る方もいらっしゃいます。それは、眼瞼挙筋の機能が少ない・・・つまりは、眼瞼下垂手術適応の方だと言えます。したがって、ボトックスを注射する前には、主治医にしっかりと相談されることを必要となります。

(注2)この場合のボトックス注射は、自由診療となり、保険が効きません。手技料金が医療機関により異なりますので、事前に確認が必要となります。

5.眼瞼下垂手術で予防する

これまで、眼瞼下垂を手術しないで治すことは出来ないにしても、予防することについて、このブログ記事では、しっかり説明をさせて頂きました。

眼瞼下垂というのは、ある意味、眼瞼挙筋腱膜の緩み(ゆるみ)と皮膚の弛み(たるみ)、瞼の重み(おもみ)が原因となります。

そして、人は、歳をとると、まぶたのゆるみ・たるみ・おもみというのは悪化していきます。

こうした状態になる前に、敢えて、眼瞼下垂手術を行うことで、挙筋腱膜の前転固定で”ゆるみ”を改善させ、皮膚切除で”たるみ”を取り、眼窩脂肪除去・眼輪筋切除で”おもみ”を改善させれば、アンチエイジング効果が期待できます。

早期に手術を行えば、たるむ皮膚を取り除き、ゆるむ腱膜の固定を行い、重い瞼の厚みを取り除くため、老けて変化するものがない状態とも言えるからです。

つまり、究極の眼瞼下垂の予防方法は、眼瞼下垂手術だったりします。

だからと言って、眼瞼下垂手術自体について、当院としては緊急性の高い手術ではないと考えていることから、ことさらに眼瞼下垂手術を無責任にオススメすることはしておりません。

ただ、当院オリジナル眼瞼下垂手術方法:TKD切開・ファシアリリース法を行うようになってから、成功率は非常に高いものとなりました。

そういうこともあり、眼瞼下垂の予防という観点から、早いうちに眼瞼下垂手術を行うことで、積極的に行う要素もあるのではないか?と考えるに至りました。

眼瞼下垂手術を行うと、加齢によって変化する老いの要素の歯止め(アンチエイジング)にになります。

先に述べたように、将来、弛んでしまう皮膚を取り除き、重くなる脂肪を除去し、緩むべき腱膜を固定することは、すなわち、老化のスピードをゆっくりにするという意味で、アンチエイジング手術、若返り手術と言えます。

もちろん、眼瞼下垂手術を行うことで、老いという加齢の変化を完全に止められはしませんが、眼瞼下垂手術を受けない場合よりも、圧倒的に、老いのない状態を維持できます。

そして、大事なのは、加齢性変化が進んでしまってから眼瞼下垂手術を行うよりも、変化がない状態(年齢)で手術を行った方が、手術のリスクも少なく、仕上がりも少ないからです。

100%成功する手術は、この世にはありませんが、条件を調整することで、より100%に近づけることはできます。

当院の眼瞼下垂手術は、長い時間と症例の中で、工夫の積み重ねて、出来上がったモノです。

その最たるもるものが、当院が提唱するファシアリリース法に基づく眼瞼下垂手術です。

6.眼瞼下垂の原因についての新しい考え方(概念):ファシアについて

Fascia(ファシア)とは、身体の全ての神経・筋肉・血管・臓器・骨・腱を覆って、それらを繋げて包む結合組織のことをいいます。

すなわち、身体の中にある、あらゆる組織を繋げているものです。

線維性結合組織を意味するファシアは、動かないことや使いすぎによって、癒着したり、伸長性が低下したり、刺激に敏感になったりして、痛みや可動域制限など症状を起こすことが知られています。

そして、ファシアに、痛みの起点、トリガーポイントがあると分かっており、そこに、物理的な負担がかかると痛みの信号が出てきます。

眼瞼下垂により、目の奥の痛みなどが発生しやすいのは、ファシアに原因があるとも考えることができます。

ファシアリリースで、痛みのトリガーポイントであるファシアに物理的なテンションがかかることを防ぐことができ、眼瞼下垂に多く見られる瞼の痛みが和らぐとも言えます。


眼瞼下垂の原因として、さきほど、まぶたのゆるみ・たるみ・おもみに触れましたが、当院では、眼瞼下垂の原因を考える上での新しい概念として、”可動制限”という考え方も取り入れております。

眼瞼下垂は、眼瞼挙筋の動きが硬くなることも大きな原因の要素になるという考え方です。

眼瞼下垂手術とは、皮膚を切開し、瞼を上げる筋肉(眼瞼挙筋)の腱である眼瞼挙筋腱膜を露出させ、糸で瞼板軟骨に止め直す手術のことです。

この手術操作で、眼瞼下垂は治ると一般的に考えられており、手術を行われております。

しかしながら、この腱膜だけを止め直すことさえしていれば、全ての眼瞼下垂が簡単に治るというわけではないと当院は考えております。

それは、瞼が上がりにくくなっている原因が、決して、眼瞼挙筋腱膜の不具合だけでなく、先に述べた様に、瞼(まぶた)のたるみ、おもみがあり、さらには、可動制限が加わっているという考え方です。

そして、それらの要因が複雑に絡み合って、瞼が上がりにくくなっている大きな要素となっている場合には、単純な挙筋腱膜への操作だけで治るわけではないと言えるわけです。

当院での眼瞼下垂手術症例 (40代 男性)

眼瞼下垂症:術前
眼瞼下垂手術中のデザイン確定時
手術名称眼瞼下垂手術(TKD切開・ファシアリリース)
健康保険適用。局所麻酔下で、手術時間:両眼30分
手術内容TKD切開で狭めの二重設定し、余剰皮膚・眼輪筋切除に加えて加えて、ファシアリリースを行いつつ、眼窩脂肪を除去除去。眼瞼挙筋腱膜を前転させ、瞼板に固定。デザイン上の左右差が無いことを確認した確認したところ。この後、皮膚の縫合を行い終了。
料金健康保険適用3割負担で自己負担顎は約5万円
起こりうる合併症開瞼不良(兎眼)・左右差・術後術後ドライアイ・内出血・創傷治癒遅延

特に、生まれながら、瞼が分厚く、皮膚の余剰が多く奥二重が多い日本人の場合、この傾向が顕著だと言えます。

優秀な眼形成外科医なら、皮膚を切除することで皮膚のタルミを、眼窩脂肪、ROOF、眼輪筋を切除・除去することで瞼(まぶた)のおもみを直すことは出来ます。

しかしながら、一般的に、それらの操作は非常に難しいモノとされております。

したがって、眼窩脂肪除去、さらにはROOF切除という手技を含めた眼瞼下垂手術は非常に難しい手術となるために、保険外手術、つまりは自由診療による美容手術(自費手術)として高額になる場合が多いようです。

(当院では、それらのことをキチンと行った眼瞼下垂手術でも、基本的に、保険手術で行っております。)

そして、当院の眼瞼下垂手術では、さらに進んで、動きの固さともいうべき筋肉の動きの引っ掛かり、可動制限を取り除くというオリジナルの考え方に基づいて、眼瞼下垂手術を行っております。

例えば、一般的に、筋肉は、加齢によって、硬くなっていき、動きが渋くなり、拘縮していきます。

動きが固くなった筋肉は柔軟体操でほぐせますが、それは、筋肉の硬さはファシアと呼ばれるコラーゲン結合組織による拘縮が原因だと分かっております。

つまり、柔軟体操、マッサージにより、ファッシアがほぐれる(ファシアリリース)ため、筋肉の引っ掛かりが柔らかくなり、可動域が増えるというわけです。

6-1. ファシアリリース法とは

さて、ここで質問です!!

運動前に、準備運動として、身体のストレッチをすると思いますが・・・なぜでしょうか?

その答えは、明瞭ですが、固くなった筋肉をほぐして、柔らかくすることで、筋肉や関節の怪我を予防することだからだと言えます。

この柔軟体操で柔らかくなるのは、筋肉そのものではなくて、ファシアと呼ばれる筋肉の周りを構成する筋膜をほぐしていると言えるのです。

瞼は、皮膚、眼輪筋、眼窩隔膜、眼窩脂肪、眼瞼挙筋腱膜、瞼板軟骨などの非常に多くの組織がミルフィーユのように多層構造となっております。

そして、それらがズレないように接着させる滑り止めみたいなものがファシアだと言えます。

つまり、眼瞼下垂症の原因についての新しい概念:ファシア理論というのは、眼瞼下垂症の方は、眼瞼挙筋と眼瞼挙筋腱膜が、ファシアによって、眼窩脂肪に固着しているため、まぶたを上げる際の引っ掛かって可動制限の原因となっているという考え方です。

したがって、眼窩脂肪と眼瞼挙筋をしっかりリリース(剥がす)ことで、瞼の動きの引っ掛かり(可動制限)を解除することで、無理のない眼瞼下垂症手術が可能となりました。

まぶたが十分開く状態なのに、やたらと、まぶたが重い、引っかかると感じる方は、眼窩脂肪が多く、そして、ファシアによる眼窩脂肪の眼瞼挙筋への癒着が酷いという印象があります。

そして、そういうタイプの方が通常の眼瞼下垂症手術を受けても、目は開くようになったが、目の重さが解消されていないと術後に「まだ瞼が重い」と訴えられるケースがあります。

当院としては、眼瞼下垂症手術を行う際には、まぶたが重いと感じる方ほど、当院オリジナルのTKD切開・ファシアリリース法をお勧めしております。

ちなみに、和田アキ子さんに見られたことで有名となったる眼瞼下垂症手術後の三角目、テント目のトラブルは、このファシアが強い場合に起こりやすいことは、ほとんど知られておりません。

ファシアリリースを行い、眼瞼挙筋(腱膜)をしっかりフリーにして、挙筋腱膜を柔らかく前転をすることで、自然なアーチの形のまぶたになりやすいと言えます。

(記事内の文章・イラスト・表などは無断転載禁止)

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