眠そうな目は眼瞼下垂が原因かも!手術で改善可能
「目が重く眠そうな印象に見える」「二重のラインが以前より広くなった」このようなお悩みがある方は、眼瞼下垂を発症している可能性があります。
眼瞼下垂は、加齢や生活習慣などによって、まぶたを持ち上げるための筋肉や組織が衰え、目をうまく開けられなくなる状態です。
進行すると、まぶたが垂れ下がって眠そうな表情になり、実際の年齢よりも老けて見られてしまうおそれがあります。
この記事では、眠そうな目と眼瞼下垂の関係について解説しました。
眼瞼下垂かどうか確認する方法や、眠そうな目の改善方法などについても触れていますので、眠そうに見えてしまう印象の目でお悩みの方はぜひ参考にしてください。
眠そうな目は眼瞼下垂が原因の可能性があります
眼瞼下垂とは、まぶたが垂れ下がって目を開きにくくなる疾患です。
加齢に伴い、まぶたを上げる筋肉である「眼瞼挙筋(がんけんきょきん)」が衰えたり、瞼板との結合部分である「挙筋腱膜(きょきんけんまく)」がゆるんだりするために発症します。
また、目を強く擦る行為やコンタクトレンズの長期装着、アイプチの使用など、日常生活のなかでまぶたに大きな負担がかかることも眼瞼下垂を招く原因です。
まぶたが下がると、眠そうに見えたり目つきが悪くなったりと、外見上の問題が発生する場合があります。
眼瞼下垂になると眠そうな目になるのはなぜ?
眠そうな目に見えるのは、眼瞼下垂になるとまぶたを上げにくくなり、皮膚が瞳孔(黒目)に被さってしまうためです。
眼瞼下垂の程度にもよりますが、一般的に瞳孔の一部〜半分以上が隠れた状態になると外見が大きく変化します。
また、眼瞼下垂による二重ラインの変化も、眠そうな表情になる原因の一つです。
眼瞼下垂は眼瞼挙筋が衰えている状態のため、眼瞼挙筋の上にある眼窩脂肪(がんかしぼう)をうまく支えられません。
その結果、眼窩脂肪が上後方に引っ張られてまぶたがくぼみ、三重になったり二重の幅ラが薄くなったりして目元の印象が変わってしまいます。
ただし、眼瞼下垂が原因だと一概にはいえない
「眠そうな目」は眼瞼下垂の代表的な症状ですが、ほかに原因がある可能性も否定できません。
たとえば、加齢に伴うまぶたのたるみによって眼瞼皮膚弛緩症(がんけんひふちかんしょう)を引き起こし、眠そうな目に見えるケースがあります。
眼瞼皮膚弛緩症は、年齢を重ねて皮膚のコラーゲンやエラスチンが減少するために生じる、偽眼瞼下垂症の一種です。
皮膚がたるんで目を開きにくくなり、目元の印象も変化するため眼瞼下垂と間違えやすいものの、眼瞼挙筋に問題はありません。
そのほか、老化によってまぶたの脂肪が少なくなり、二重の幅が広くなったり三重になったりして、眠そうな印象を与える場合もあります。
眼瞼挙筋が直接かかわっていない場合は、眼瞼下垂手術を受けても改善は期待できず、それぞれの原因に合わせた治療が必要です。
眼瞼下垂のその他の症状
眼瞼下垂になると、まぶたが下がって眠そうな目に見えるだけではなく、日常生活にさまざまな悪影響を及ぼすおそれがあります。
- 視界が狭くなる
- 目が疲れやすくなる
- 肩こりや頭痛が生じる
- 額のしわが増える
視界が狭くなる
まぶたが垂れ下がることで、特に上方の視野が狭くなります。階段を踏み外したり、信号を見逃したりするなど、日常生活で危険な場面に遭遇しやすくなります。
重度の眼瞼下垂の場合、視野全体が狭くなって周辺視野も欠ける場合があり、周囲の状況を把握しにくくなり、事故や怪我のリスクが高まります。
また、視野が狭いと一度に読める文字数が減ったり、画面全体が見えにくくなったりするため、読書やパソコン作業にも支障が出ます。
目が疲れやすくなる
眼瞼下垂を発症するとまぶたが垂れ下がるため、無意識に額の筋肉を使ってまぶたを上げようとします。
この額の筋肉の過剰使用が目の周りの筋肉の疲労や緊張を引き起こし、目の疲れにつながります。
また、まぶたが十分に閉じないため、涙が蒸発しやすく、目が乾燥しやすくなります。目の乾燥は、目の疲れや異物感、かすみ目などの症状を引き起こします。
さらに、目の焦点調節機能の低下も目が疲れやすくなる原因となります。
まぶたが垂れ下がることで視界が遮られ、ピントを合わせづらくなり目の焦点調節機能が低下し、目の疲れを引き起こします。
目の疲れを放置すると、精神的なストレスが増すだけではなく、入眠障害や食欲不振、集中力の低下など、体にさまざまな悪影響を及ぼすため注意が必要です。
肩こりや頭痛が生じる
眼瞼下垂の方は、顎を突き出し、頭を後ろに傾けてものを見る傾向があります。
これにより、姿勢が悪くなって首や肩に負担がかかり、肩こりや頭痛につながります。
ただし、眼瞼下垂はあくまで肩こりや頭痛の原因の一つであり、必ずしも眼瞼下垂手術で改善するわけではありません。
また、眼瞼下垂によりミュラー筋の緊張が続くために、交感神経が刺激され、肩こりや頭痛が生じると考える学説もあります。
額のしわが増える
額の横じわが増えることも、眼瞼下垂の方に多く見られる症状です。
眼瞼挙筋ではなく、額の筋肉である前頭筋を使ってまぶたを上げようとするためです。
無意識に眉毛を上げ、額に力が入る状態が続くと、徐々に額のしわが定着して老け顔の原因となってしまいます。
眼瞼下垂かどうか確認する方法は?
眼瞼下垂かどうかをチェックする方法として、もっとも広くおこなわれているのがMRD(Margin Reflex Distance)の測定です。
MRDは瞳孔(黒目)の中央部から上まぶたの縁までの距離を指し、数値が低いほど眼瞼下垂の症状が重いとされています。
医学的な診断基準としても用いられており、MRDが3.0〜3.5mm以下になると眼瞼下垂と診断されるのが一般的です。
代償期はMRDの数値が低く見積もられるケースも
額の筋肉を使ってまぶたを上げていると、眼瞼下垂であっても目の開きが正常に見える場合があります。
この状態が眼瞼下垂の「代償期(だいしょうき)」です。
代償期は、実際には目の開きが悪いものの、MRDは正常な数値を示すケースがあり、隠れ眼瞼下垂とも呼ばれています。
普段から眉を上げてものを見ている方や、額に深いしわがある方は、隠れ眼瞼下垂の可能性もあります。
MRDの数値によっては、眼瞼下垂の診断を否定される場合もあるため注意が必要です。
当院では、眼瞼下垂の代償作用を考慮し、額の筋肉が動かないようにMRDの測定をおこなっています。
眼瞼下垂の症状があり眼科を受診したものの、診断がされなかった方は、ぜひ一度ご相談ください。
MRDのセルフチェック法
眼瞼下垂かどうかを確認するには、眼科で診察を受けるのがベストですが、自己診断も可能です。
スマートフォンのカメラ機能と定規を用いてチェックします。
- 椅子に座ったら、顔がしっかりと写るようにスマートフォンをスタンドに立てかけます。
- インカメラの撮影モードにして、タイマーを10秒に設定しましょう。
- スマートフォンの画面を確認しながら、目を閉じた状態で、眉下から定規を下に固定します。
- このとき、代償作用を抑えるために、額の力を抜くことが大切です。
- ここでスマートフォンの撮影ボタンを押します。(タイマー10秒)定規を指で押さえながら、眉下をできるだけ持ち上げないように、ゆっくりと目を開けてください。
- もう片方の手の指で、眉下が上がらないよう抑えておくとやりやすくなります。
- 瞳孔(黒目)の位置を正面にした状態で写真を撮影します。
- 撮影した画像を拡大し、瞳孔の中央からまぶたの縁までの距離(MRD)を測定しましょう。
- MRDが3.5mm以下であれば、眼瞼下垂が疑われます。
眼瞼下垂が原因の眠そうな目を改善するには
眼瞼下垂は手術によって改善できます。
軽度であれば、まぶたへの刺激を避けたり、眼瞼挙筋を鍛えたりすることで症状を緩和させ、進行を防げる可能性があります。
しかし、眼瞼下垂を根本的に治すためには手術を受ける必要があります。
眼瞼下垂手術にはいくつかの方法があり、重症度に応じて選択されます。
手術方法 | 特徴 |
---|---|
眼瞼挙筋前転法 | まぶたを切開したあと、挙筋腱膜を引き出して前転させ、瞼板に再固定する方法。軽度〜中等度の眼瞼下垂に選択される。 |
眼瞼挙筋短縮法 | まぶたを切開し、挙筋腱膜を短く切ってから瞼板に再固定する方法。眼瞼挙筋の機能が少ない中等度〜重度の場合に有効だが、ミュラー筋を傷つける可能性が高く注意が必要。 |
前頭筋吊り上げ術 | 眉毛の生え際を切開したあと、人工の糸やゴアテックス、太腿の筋膜などを用いて前頭筋と瞼板をつなぐ方法。眼瞼挙筋の機能不全がある場合に適応される。 |
眉下切開法 | 眉の下の皮膚を切除し、縫合する方法。眉毛の生え際に傷が残りやすい。 |
埋没式眼瞼挙筋短縮法 | 切らない眼瞼下垂手術。まぶたの裏から挙筋腱膜と瞼板を糸で固定する。保険適用はなく、全額自己負担。 |
数ある手術方法のなかでも、もっとも一般的かつ安定した仕上がりが期待できるのが眼瞼挙筋前転法です。
ゆるんだ挙筋腱膜を自然な位置で瞼板に再固定することで、目を開けやすくなるとともに、眠そうな目が改善されます。
当院では、眼瞼挙筋前転法に独自のテクニックを組み合わせた「TKD切開+ファシアリリース法」をおこなっています。
まつ毛の根元に近いラインを基準に皮膚を切開するため、傷跡が目立ちにくいほか、不自然な二重になる心配もありません。
また、挙筋腱膜と眼窩脂肪をつなぐ繊維組織であるファシアをリリース(解除)する手法により、負荷の少ない状態でのタッキング(前転)が可能です。
まとめ
眠そうな目に見えるのは、眼瞼下垂が原因の可能性があります。
また、視界の狭さや目の疲れ、肩こり・頭痛、額のしわなども眼瞼下垂の代表的な症状です。
眼瞼下垂は命にかかわる病気ではありませんが、悪化するとまぶたが大きく垂れ下がり、老けた印象を与えてしまいます。
さらに、視界が悪くなって怪我や事故につながったり、慢性的な健康トラブルを引き起こしたりするリスクもあります。
眼瞼下垂が疑われる方は、早めに眼科で診察を受け、症状に応じた治療を受けましょう。
眠そうな目と眼瞼下垂の関係についてよくある質問
- 眠そうな目と眼瞼下垂はどう関係していますか?
-
眼瞼下垂は上まぶたが下がって目が十分に開かない状態で、眠そうな目の印象を与える主な原因の一つです。
そのほか、疲労やストレス、アレルギーなどによる目の腫れや、目の下のクマなども眠そうな印象を与える原因になります。
- 眠そうな目が眼瞼下垂だと判断するポイントは何ですか?
-
上まぶたが目の上部を覆っていて、目を大きく開けにくい場合は眼瞼下垂の可能性が高いです。疲れているときだけでなく常に眠そうに見える場合は要注意です。
- 眼瞼下垂による眠そうな目は、美容上の問題だけですか?
-
美容上の問題だけでなく、視野が狭くなることで日常生活に支障をきたす場合もあります。重症になると機能的な問題が生じます。
- 眠そうな目が眼瞼下垂かどうか自分で判断できますか?
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自己判断は難しい場合があります。眠そうな印象が続く場合は、眼科医に相談して専門的な診断を受けることをおすすめします。
- 眠そうな目が眼瞼下垂だと分かったら、どうすればいいですか?
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眼瞼下垂の治療は主に手術です。まずは眼科医などの専門医に相談して、症状の程度や原因を診断してもらい、治療方針を決めましょう。
眼瞼下垂は何科を受診すべきか – 眼科・形成外科どっち?美容外科のデメリットとは
- 眼瞼下垂の手術で、眠そうな印象は改善できますか?
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手術治療により眠そうな印象は大幅に改善できます。目が大きく開くようになり、明るい印象になります。
- 片目だけ眠そうな印象の場合も、眼瞼下垂が原因ですか?
-
片目だけ眼瞼下垂が生じることはあります。左右差がある場合は、特に眼瞼下垂の可能性を疑う必要があります。
- 眼瞼下垂の症状が軽い場合でも、手術をしたほうがいいですか?
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症状が軽く、日常生活に支障がない場合は必ずしも手術が必要というわけではありません。ただし、将来的に症状が進行する可能性があるため、定期的に経過観察することをおすすめします。
- 眼瞼下垂による眠そうな目は、視力にも影響しますか?
-
眼瞼下垂が重症化すると、上まぶたが瞳孔にかかって視野が狭くなることがあります。これによって視力や視機能が低下する場合があります。
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