眼瞼下垂の再発率・再手術率 – 何度もなるの?もとに戻る可能性は
まぶたが重く、開けにくくなる「眼瞼下垂」。
眼瞼下垂は手術によって改善できますが、もとに戻ってしまわないかどうか不安を感じる方もいるのではないでしょうか。
実は眼瞼下垂手術を受けたあとでも、再発する可能性はあります。
本記事では、眼瞼下垂の再発率・再手術率や、何度も眼瞼下垂になったり、もとに戻る可能性はあるのかどうか、再発の予防方法について詳しく解説していきます。
再発を完全に防ぐ方法はありませんが、生活習慣の見直しやトレーニングにより再発のリスクを軽減できるため、ぜひ参考にしてください。
眼瞼下垂は何度もなるもの?再発率・再手術率
眼瞼下垂は、一度治療を受けても再発する可能性があり、完全には予防できません。
韓国で行われた、1991年から2014年までに韓国の三次紹介病院で眼瞼下垂手術を受けた 2,328人の患者の調査では、以下のように再手術率の報告があります。
最初の手術から1年、2年、3年後に、先天性眼瞼下垂患者の9.8%、11.1%、15.7%、後天性眼瞼下垂患者の8.2%、9.5%、10.4%が再手術を受けた。
LEE, Youn Gon, et al. Clinical and demographic characteristics of blepharoptosis in Korea: A 24-year experience including 2,328 patients. Korean Journal of Ophthalmology, 2018, 32.4: 249-256.
https://synapse.koreamed.org/articles/1099726
また、再手術率は時間の経過とともに増加し、先天性眼瞼下垂症と後天性眼瞼下垂症の両方の症例において、3回以上の手術を受けた患者の割合は、5%未満であったことも報告されています。
再発・再手術率は約1割
日本での再発率・再手術率の明確なデータはありませんが、再発や過矯正、見た目に満足できなかったケースも含めると、約1割(約10人に1人)が再手術を受けていると考えられています。
一般的な眼瞼下垂手術では、まぶたの皮膚を切開したあと、ゆるんだ挙筋腱膜(眼瞼挙筋と瞼板結合している薄い膜)を折りたたんで瞼板に再固定します。
手術後はしっかりと固定されているためまぶたの開きが良くなりますが、徐々に挙筋腱膜がゆるんだり外れたりして眼瞼下垂を引き起こす場合があります。
とくに、挙筋機能が少なく、手術前の眼瞼下垂の程度が強かった人や、後天性よりも先天性の眼瞼下垂の人は、再発しやすいと言えます。
術前の挙筋機能が少ない場合は、再手術になりやすいと言えます。
眼瞼下垂手術後にもとに戻る理由
眼瞼下垂が手術後にもとに戻るのは、長い時間かけて徐々に戻ってしまう場合は、老化や生活習慣により、眼瞼挙筋の機能が低下したり、手術で固定させた挙筋腱膜が再びゆるんだりするためだと言えます。
また、手術が適切におこなわれておらず、短期間でもとの状態に戻ってしまうケースもありますが、眼瞼下垂症の改善により、術後眉毛下垂が起こり、皮膚が被って来てしまった場合もあります。
加齢に伴い眼瞼挙筋が衰えた
人は歳を重ねるとともに筋力が落ちていきます。
眼瞼挙筋も同様、加齢に伴い衰えていくため、手術で治療したあとも、まぶたを上げる力が徐々に弱くなるおそれがあります。
また、老化によって上まぶたの皮膚がたるみやすくなることも眼瞼下垂の再発につながる原因です。
眼瞼挙筋の機能は正常であっても、たるみによりまぶたがうまく上がらず、視野が狭くなる場合があります。
眼瞼下垂手術を受けたあと、すぐに再発するケースはほとんどありませんが、若い頃に手術を受けて長い期間が経過している方は注意しましょう。
まぶたに負担がかかる習慣を続けた
眼瞼下垂を引き起こす要因として、まぶたへの物理的な刺激が挙げられます。
たとえば、コンタクトレンズを長期的に使用していたり、花粉症やアトピー性皮膚炎によりまぶたを擦る習慣があったりすると、挙筋腱膜へのダメージが蓄積して眼瞼下垂を招くおそれがあります。
こうした習慣を見直さなければ、挙筋腱膜と瞼板の結合がゆるみ、再発するリスクが高まるため注意が必要です。
そのほか、アイプチやアイテープの過度な使用、パソコンやスマホによる目の酷使、強い打撲なども再発の原因となります。
手術の効果がもたなかった
眼瞼下垂手術の方法によっては、効果が長続きせずに短期間でもとに戻ってしまう場合があります。
とくに、ミュラー筋(眼瞼挙筋と瞼板をつないでいる筋組織)を操作する埋没式の手術は、切開式の手術と比べて安定感がありません。
縫い合わせた状態が体になじみ、引き上げられたまぶたがもとに戻るケースが多く見られます。
また、挙筋前転法や挙筋短縮法のような切開式の眼瞼下垂手術であっても、永久的な効果は得られないと覚えておきましょう。
医師の技術不足により挙筋腱膜が適切な位置に固定されておらず、再発につながる可能性も考えられます。
適切に手術をされていたとしても、術後の前頭筋の緩みにより、術後眉毛下垂が発生し、皮膚弛緩症が発生している場合もあります。
眼瞼下垂手術の効果は何年もつのか
眼瞼下垂手術の効果は、約10〜15年もつといわれています。
ただし、元々の眼瞼下垂の程度や手術方法、生活習慣、年齢などによって個人差があるため一概にはいえません。
先述したとおり、埋没式よりも切開式の手術のほうが持続性に優れています。
手術を受ける際は、カウンセリングで術後のイメージをよく確認し、効果が続きやすい方法を選ぶとよいでしょう。
手術件数や施術時間、再手術率(手術の成功率)を比較して医療機関を選ぶことも重要なポイントです。
さらに、まぶたにダメージを与えないような生活を心がければ、効果が長続きしやすくなります。
再発の予防はできる?
加齢による筋力の衰えは止められないため、残念ながら眼瞼下垂の再発を完全に防ぐのは困難です。
しかし、日常生活のなかで、まぶたにできるだけ負担をかけないように注意すれば、眼瞼下垂の進行を遅らせる効果が期待できます。
まぶたに刺激を与える行為を避ける
目を強く擦ったり、引っ張ったりする行為を控え、まぶたに物理的な刺激を与えないようにしましょう。
花粉症やアトピー性皮膚炎により、目にかゆみを感じても、できるだけ擦らないようにしてください。
また、アイプチやアイテープ、つけまつげの長時間にわたる使用も控えたほうがよいでしょう。
取り外すときにまぶたへ負担がかかるほか、糊(のり)に含まれる成分が肌への刺激となり、かぶれや肌荒れを引き起こすおそれもあります。
さらに、目の疲れをとったり目の開きを良くしたりするために、まぶたをマッサージする方もいますが、マッサージは眼瞼下垂の予防にはなりません。
かえって挙筋腱膜にダメージを与え、再発のリスクが高まってしまいます。
コンタクトレンズの付け外しに気をつける
コンタクトレンズを付けるときや外すときに、まぶたを強く引っ張らないように注意してください。
下まぶたを引いて付け外し、上まぶたはできるだけ持ち上げないようにするとよいでしょう。
また、コンタクトレンズ(とくにハードコンタクトレンズ)を付けていると、まぶたの裏から挙筋腱膜に直接刺激を与えるおそれもあります。
そのため、家では眼鏡を使用するなどして、コンタクトレンズの装着時間をできるだけ短くするのがおすすめです。
ハードコンタクトレンズを着用している方は、ソフトコンタクトレンズに変更するだけでもまぶたへの負担を抑えられる可能性があります。
パソコンやスマホの使用を控える
パソコンやスマホ、タブレットなどの画面を長時間見つめていると、まばたきの回数が減り「VDT症候群」を引き起こす危険性があります。
VDT症候群になると、ドライアイや眼精疲労、目のかすみ、視力低下などの症状が表れ、眼瞼下垂が再発する原因となります。
定期的に画面から目を離し、目を休ませるように意識してください。
紫外線対策と保湿ケアを心がける
紫外線や乾燥によるまぶたの角質肥厚も、眼瞼下垂を招く原因の一つです。
角質肥厚が起こると、肌が硬く・分厚くなり、まぶたが下がりやすくなります。
外出時は日焼けに注意するほか、保湿ケアを念入りにおこない、健やかな肌を維持しましょう。
眼瞼挙筋を鍛えるトレーニングを取り入れる
眼瞼挙筋は使わないと萎縮し、筋力が衰えてますます眼瞼下垂が再発しやすくなります。
そこで、眼瞼挙筋を鍛えるトレーニングを取り入れて、挙筋機能の低下を防ぎましょう。
目を静かに閉じ、眉を下げるように意識して額の力を抜きます。
左右の眉毛が動かないように額全体を手のひらで押さえます。
両目を大きく見開いて、5秒キープします。 ゆっくりと目を閉じてリラックスしましょう。
1〜4を1セットとして、1日に数回おこなってください。
ボトックス注射
ボトックス(ボツリヌス菌の毒素)には、筋肉の動きを一時的に止める役割があります。
額にボトックスを注射すると、額の筋肉である前頭筋を動かしにくくなるため、眼瞼挙筋を使ってまぶたを上げるようになります。
眼瞼挙筋が無意識のうちに鍛えられ、眼瞼下垂の再発予防につながるでしょう。
ただし、眼瞼挙筋の機能が大きく低下している場合、額にボトックスを打つと眼瞼下垂の症状が強く出るおそれがあります。
ボトックス注射を打つ際は、主治医とよく相談したうえで検討してください。
眼瞼下垂手術は2回目でも受けられるの?
眼瞼下垂手術は、基本的には何度でも受けられます。
手術の方法は1回目と同様ですが、2回目のほうが難易度は高いとされています。
なぜなら、1回目の手術によって組織内部に瘢痕が形成されており、本来の組織を見つけにくい状態になっているためです。
とくに、1回目の手術で出血が多いと瘢痕ができやすく、きれいなまぶたに修正するのが難しくなります。
内部の瘢痕の状態によっては、思いどおりの仕上がりにならなかったり、再手術自体を断られたりするケースもあります。
万が一再発した場合でも、再手術をスムーズに受けられるよう、初回の眼瞼下垂手術を受ける医療機関は慎重に選びましょう。
まとめ
眼瞼下垂が再発する原因や予防するためのポイントについて解説しました。
眼瞼下垂は何度もなる可能性があり、症状が重い場合や、長い年月が経過している場合は再発のリスクが上がります。
また、日本では眼瞼下垂の再発率・再手術率の明確な統計は出ていませんが、手術を受けた人の約1割が再手術をおこなっていると考えられています。
再発を防ぐためには、治療したあともまぶたに負担をかけない生活を心がけ、眼瞼挙筋を意識して鍛えましょう。
2回目の手術は可能ですが、瘢痕や癒着がひどいときれいな仕上がりになりにくいほか、身体にも負担がかかってしまいます。
そのため、はじめて手術を受ける際は、できるだけ効果が長く続き、再手術の必要がなくなるように、実績が豊富で信頼のできるクリニックを選ぶようにしてください。
名古屋のフラミンゴ眼瞼・美容クリニックでは、眼瞼下垂のスペシャリストである高田尚忠医師がすべての手術を担当し、患者様の負担を軽減しながら短時間で手術をおこないます。
眼瞼下垂の症例は累計2万眼瞼以上の手術経験実績があります。
静岡県浜松市の高田眼科・東京亀戸駅のあさ美皮フ科亀戸駅前でも高田医師による眼瞼下垂手術を受けられます。
眼瞼下垂の診察・治療は健康保険適用が可能です。また、保険適用外となりますが、他院の眼瞼下垂手術後の修正手術にも対応しています。
眼瞼下垂の再発や再手術に関する悩みをお持ちの方は、ぜひ一度当院にご相談ください。メールでの相談もお受けしております。
眼瞼下垂の再発・再手術でよくある質問
- 眼瞼下垂の再発率はどのくらいですか?
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日本での再発率・再手術率の明確なデータはありませんが、再発や過矯正、見た目に満足できなかったケースも含めると、約1割(約10人に1人)が再手術を受けていると考えられています。
- 再手術が必要になる原因は何ですか?
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手術時の技術的な問題や、筋肉の作用が時間とともに弱まること、または手術で挙筋腱膜と瞼の縫合が正しく行われなかったことなどが原因で起こり得ます。また、不適切な手術方法を用いたり、手術に習熟していない医師による手術が原因で再発することもあります。
- 眼瞼下垂の再手術の成功率はどのくらいですか?
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再手術の成功を左右する要因としては、前回の手術内容のうち、ミューラー筋の操作や上眼瞼挙筋腱膜の短縮が重要です。再手術では、これらの要素を考慮し、前回の手術による癒着や手術操作によって変化した挙筋腱膜を見つけ出し、適切な修正を行う必要があります。
したがって、眼瞼下垂の再手術の成功率は、手術を行う医師の技術や経験、患者の個々の状態、手術方法によって異なり、一概には言えません。
- 子供の場合、再手術の可能性は大人より高いですか?
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一般的に、子供の先天性眼瞼下垂の場合、筋肉や腱膜の発達に関連する問題が原因であることが多いです。これらの状態は成長とともに変化する可能性があるため、再手術が必要になるケースもあります。
参考文献
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