赤ちゃんの眼瞼下垂と弱視|受診先・検査・手術のタイミングを眼形成外科医が解説

髙田 尚忠

「生まれた赤ちゃんの片方のまぶたが下がっている」「健診でまぶたのことを言われた」。このページでは、赤ちゃんの眼瞼下垂で一番大切な「弱視」の心配と、どこを受診し、何を確認してもらえばよいかをまとめます。

  • 弱視に注意が必要:生まれつきの眼瞼下垂の子どもでは、約7人に1人に弱視がみられ、一般の子どもの約5倍にあたります1。
  • まぶたの高さだけでは判断できない:瞳孔が見えていても、乱視や斜視から弱視になることがあります。定期的な視力と屈折(度数)の検査が欠かせません2,3。
  • まず視力と屈折の検査を:子どもの目を診る眼科で、定期的に検査を受けます。高田眼科(浜松)でも、乳幼児の視力・屈折の検査と弱視の経過観察を行っています。視線をふさぐ重い下垂で乳幼児期の手術が必要な場合は、基幹病院で行われます。当院の手術は小学校高学年からです。

執筆:髙田 尚忠(高田眼科 院長/眼科医・眼形成外科) 最終更新:2026年10月

赤ちゃんの眼瞼下垂で、まず知っておきたいこと

生まれつきの眼瞼下垂(先天性眼瞼下垂)は、まぶたを上げる筋肉(眼瞼挙筋)が十分に育っていないために起こります。米国で地域の子ども全員を40年間追った調査では、目以外に異常のないタイプが、生まれてくる赤ちゃんの約840人に1人にみられ、その96%は片目だけでした4。原因と見分け方は先天性眼瞼下垂とはで解説しています。

一番大切なこと見た目より「視力の発達」

赤ちゃんの時期は、目で物を見ることで視力が育つ時期です。この時期の課題は、まぶたの形よりも、視力がきちんと育っているかを確かめることです。

自然経過成長しても自然には治らない

筋肉そのものが育っていないため、成長とともにまぶたが上がってくることは期待できません。慌てて手術を決める必要はありませんが、眼科で経過をみていくことが大切です。

全身のチェックほかの病気が隠れていることも

米国のこども病院で中等度以上の先天性眼瞼下垂の子ども84人を調べた報告では、35%に遺伝や神経などの病気が見つかりました3。小児科と眼科の両方で診てもらうと安心です。

なぜ弱視が心配なのか

弱視とは、視力が育つ時期にくっきりした像を見られなかったために、眼鏡をかけても視力が十分に出ない状態です。米国眼科学会の弱視の診療指針は、眼瞼下垂を弱視の危険因子の一つに挙げ、見つかった時点で一度は詳しい眼科検査を受けるよう勧めています5。

弱視がみられた子どもの割合

一般の子ども約3%
地域の調査14.8%
24研究まとめ22.7%
手術を受けた子37.6%

地域の調査は米国で目以外に異常のない先天性眼瞼下垂の子ども81人1、24研究まとめは2,589人の分析2、手術を受けた子は台湾の病院で片目の手術を受けた226人の手術前の値6。病院の報告ほど重い子どもが多く、割合が高くなります。

台湾の全国の保険データでは、眼瞼下垂のある子ども1,799人を、ない子ども7,187人と比べています。弱視になりやすさを示す値(ハザード比)は13.45で、乱視も5.93と、どちらも高くなっていました7。

片目だけの眼瞼下垂ほど、弱視に注意が必要です。

米国の地域調査では、弱視は1例を除いて全員が片目の眼瞼下垂でした1。よく見える目ばかりを使うため、下がっている側の視力が育ちにくくなります。米国眼科学会の指針も、片目がふさがれたときの視力の低下は、両目のときより大きくなりやすいとしています5。

弱視の原因は、まぶただけではありません

眼瞼下垂の子どもの弱視には、大きく3つの原因があります。米国の地域調査では、弱視の約半数はまぶたが視線をふさいだことだけが原因で、残りは乱視などの屈折の異常や斜視が原因でした1。

原因1まぶたが瞳孔をふさぐ

まぶたが瞳孔にかぶさり、像がとどかない状態です。米国のこども病院の報告では、この型の弱視は平均1歳5か月ごろと早い時期に見つかりました3。

原因2乱視・左右の度数の差

まぶたが角膜(黒目の表面)を押して、乱視が強くなることがあります。こちらの弱視は平均5歳ごろと遅れて見つかりました3。

原因3斜視

先天性眼瞼下垂の子どもの約5人に1人(19.6%)に斜視がみられます2。目の位置がずれると、ずれた側の視力が育ちにくくなります。

強い乱視(1.5D以上)がみられた割合:片目の重い先天性眼瞼下垂の子ども
下がっている目反対の目

強い乱視

下垂側51%
反対側13%

中国のこども病院で、2歳未満で手術を受けた子ども39人の手術前の値(51.3%と12.8%)8

瞳孔が見えていれば大丈夫、とは限りません

米国のこども病院の報告では、弱視があるかどうかは、まぶたの高さ(瞳孔の中心からまぶたの縁までの距離)とは関係しませんでした。著者らは、まぶたの高さより視力の検査が弱視を見つける一番の手がかりだとしています3。最初の検査で問題がなくても、乱視や斜視が後から出てくることがあるため、定期的な検査が勧められています1,2。

こんな様子があれば、早めに眼科へ

生まれつきのまぶたの下がりに気づいたら、症状がなくても一度は眼科で検査を受けてください5。次のような様子があるときは、特に早めの受診が必要です。

早めに受診まぶたが瞳孔にかかっている

正面を見たとき、まぶたが瞳孔の中心までかぶさっている、または瞳孔がほとんど見えない。

早めに受診目の位置がずれて見える

片方の黒目が内や外、上下にずれている。写真で黒目に映る光の位置が左右で違う。

気づいたら相談あごを上げて見ている

見えにくさを補うしぐさです。ただし、このしぐさがあれば弱視にならない、というわけではありません6。

ほかの病気の確認まぶた以外にも気になる点がある

瞳孔の大きさが左右で違う、目の動きが悪い、口を動かすとまぶたが動く、日によって下がり方が変わる、など。

まぶたが下がる原因と危険なサイン

口の動きにつれてまぶたが動く場合はマーカスガン現象、日によって下がり方が変わる場合は重症筋無力症のページもご覧ください。

生まれつきではなく、急にまぶたが下がった場合

それまで左右差がなかったのに急にまぶたが下がった場合は、神経などの病気の可能性があります。様子を見ずに、その日のうちに医療機関を受診してください。

どこを受診する? 検査の流れ

  1. かかりつけの小児科・乳幼児健診で相談
    まぶたの下がりを伝え、眼科への紹介を受けます。全身の病気がないかも小児科で確認してもらえます。
  2. 子どもの目を診る眼科を受診
    視力や斜視の検査を行う視能訓練士がいる眼科、またはこども病院・大学病院などの眼科です。高田眼科(浜松)でも、乳幼児の視力・屈折の検査と弱視の経過観察を行っています。
  3. 視力と屈折の検査
    年齢に合わせた方法で視力を調べます。調節を休ませる目薬をさしてから、乱視や左右の度数の差を測ります5,1。
  4. 斜視・目の動きと、まぶたの検査
    目の位置や動き、まぶたが瞳孔をどのくらいふさいでいるかを確認します。
  5. 定期的に経過をみる
    問題がなくても、視力が育つ時期は定期的に検査を続けます。乱視や斜視は後から出てくることがあるためです2。
髙田尚忠医師
髙田尚忠医師

乳幼児期は小児眼科・基幹病院で

当院に先天性眼瞼下垂でご相談に来られるのは、軽度から中等度の方や、すでに手術を受けた後の方が多いです。

重い先天性眼瞼下垂のお子さんは、出産後の産科や小児科の健診で指摘され、早い段階で基幹病院で対応されることがほとんどです。赤ちゃんのうちは、まず眼科で視力の発達を見てもらってください。

弱視の治療と、まぶたの手術を急ぐとき

米国眼科学会の診療指針では、弱視の治療は次の順で行います5。

  1. 視線をふさいでいる原因を取り除く
    まぶたが視線をふさぎ、そのままでは弱視の治療が進まない場合は、まぶたの手術を行います5。
  2. 眼鏡で度数を合わせる
    乱視や左右の度数の差を眼鏡で補正します。弱視の治療の最初の一歩です5。
  3. よく見える目を隠す(遮閉訓練)
    アイパッチなどでよく見える目を隠し、弱視の目を使わせます。中等度の弱視なら1日2時間から始めるのが一般的です5。

米国のこども病院の報告では、弱視のあった子どもの73%が、遮閉訓練で改善しました3。一方、視線がふさがれて起きた弱視(主な原因は生まれつきの白内障)について、複数の臨床試験をまとめる分析(コクランレビュー)が行われましたが、条件を満たす比較試験は1件も見つかりませんでした。どの治療法がよいかを示す質の高い根拠は、まだないのが現状です9。

赤ちゃんのうちに、まぶたの手術を行う場合

トルコの病院の報告では、重い下垂がまぶたで瞳孔をふさいでいる場合、視線がふさがれて起こる弱視を防ぐため、できるだけ早い手術が勧められています10。乳幼児期の手術は全身麻酔で行い、おでこの筋肉とまぶたを糸や人工の素材でつなぐ「吊り上げ術」が選ばれることがよくあります。

ただし、一時的に視線をあけることが主な目的で、成長とともに再び下がることが少なくありません。中国のこども病院で2歳未満に吊り上げ術を受けた53人では、まぶたの位置が保たれていた割合は、1年後に63%、1年半後に33%でした。24人が3歳以降に2回目の手術を受けています8。吊り上げ術については前頭筋吊り上げ術とはをご覧ください。

手術の後も、弱視の治療は続きます

台湾の病院で片目の先天性眼瞼下垂の手術を受けた226人を、1年以上追った研究があります6。

37.6%手術前の弱視
→
25.7%手術と弱視治療の後も
残った弱視

弱視が残りやすかったのは、斜視がある、手術前から弱視がある、乱視が強い子どもでした。手術の年齢では、3歳未満と6歳を超えてからの手術で弱視が残りやすく、関係の強さを示す値(オッズ比)は2.79でした6。手術の最適な時期は研究によって意見が分かれ、3歳までの手術が望ましいとする中国の報告もあります11。

また、まぶたの高さが大きく変わると、乱視の度数も変わることがあります12,8。手術の後は眼鏡の度数を見直し、弱視の治療と定期検査を続けることが大切です。

よくある質問

赤ちゃんのまぶたは、成長すれば上がってきますか。

生まれつきの眼瞼下垂は、自然に治ることは期待できません。まぶたを上げる筋肉が育っていないことが原因のためです。手術を急ぐかどうかは、視力の発達をみて眼科で判断します。

話せない赤ちゃんでも、視力の検査はできますか。

年齢に合わせた方法で調べられます。物を目で追うか、片目を隠したときに嫌がるかなどを確かめ、目薬をさして乱視や度数の左右差を測ります5。

まぶたの手術をすれば、アイパッチはいらなくなりますか。

手術の後も弱視の治療が必要なことがあります。台湾の研究では、手術と治療の後も約4人に1人に弱視が残りました6。眼科の指示どおりに続けてください。

テープや目薬でまぶたを上げることはできますか。

生まれつきの眼瞼下垂を治す目薬やテープはありません。大人のまぶたを上げる目薬(アップニークミニ)も、子どもや先天性眼瞼下垂での効果と安全性は確かめられていません。詳しくは小学生・中学生・高校生の眼瞼下垂をご覧ください。

親がまぶたが下がっていると、赤ちゃんにも起こりますか。

家族に同じ症状がある場合もありますが、多くは遺伝と関係なく起こります。詳しくは眼瞼下垂は遺伝する?で解説しています。

高田眼科で、赤ちゃんの眼瞼下垂を診てもらえますか。

当院の手術は、局所麻酔で受けられる小学校高学年からです。乳幼児の視力・屈折の検査と弱視の経過観察は、高田眼科(浜松)で行っています。乳幼児期の手術が必要な場合は、基幹病院での手術をご案内します。将来の手術についてのご相談もお受けしています。

高田眼科の考え方

赤ちゃんの時期に優先すべきなのは、まぶたの形ではなく視力の発達です。高田眼科(浜松)では、乳幼児の視力・屈折の検査と弱視の経過観察を行っています。視線をふさぐ重い下垂で早期の手術が必要な場合は、全身麻酔での手術ができる基幹病院で受けていただくのが適切と考えています。

当院では、小学校高学年以降のお子さんに、局所麻酔で、吊り上げ術を使わずに眼瞼挙筋を前に引き出して固定する手術を行っています。乳幼児期に吊り上げ術を受けた方の、成長後の手術のご相談もお受けしています。手術の方法と費用は先天性眼瞼下垂の手術、年齢ごとの考え方は眼瞼下垂手術は何歳から?をご覧ください。

赤ちゃん・お子さんのまぶたが気になる方へ

高田眼科(浜松)では、乳幼児の視力・屈折の検査と弱視の経過観察を行っています。小学校高学年以降のお子さんの手術と、乳幼児期に手術を受けた方の再手術のご相談もお受けしています。

高田眼科(浜松)〒435-0052 静岡県浜松市中央区天王町字諏訪1981-3
イオンモール浜松市野 1F
053-466-5551
フラミンゴ眼瞼・美容クリニック(名古屋)〒460-0003 愛知県名古屋市中区錦2丁目11-27
TH錦ビル 6階
052-201-9222
執筆:髙田 尚忠(たかだ なおただ)
高田眼科 院長。岡山大学医学部卒業。眼科医・眼形成外科医として眼瞼下垂手術を専門とし、関連クリニックを含め年間2,000件以上の眼瞼手術に携わっています。

参考文献

PubMed・Cochrane Libraryに収載された論文と米国眼科学会(AAO)の診療指針をもとに作成しています。文献1・2・5・6・8は全文、それ以外は抄録を確認しています。

  1. Griepentrog GJ, Diehl N, Mohney BG. Amblyopia in childhood eyelid ptosis. Am J Ophthalmol. 2013;155(6):1125-1128.e1. doi:10.1016/j.ajo.2012.12.015
  2. Wang Y, Xu Y, Liu X, et al. Amblyopia, strabismus and refractive errors in congenital ptosis: a systematic review and meta-analysis. Sci Rep. 2018;8(1):8320. doi:10.1038/s41598-018-26671-3
  3. Stein A, Kelly JP, Weiss AH. Congenital eyelid ptosis: onset and prevalence of amblyopia, associations with systemic disorders, and treatment outcomes. J Pediatr. 2014;165(4):820-824.e2. doi:10.1016/j.jpeds.2014.06.053
  4. Griepentrog GJ, Diehl NN, Mohney BG. Incidence and demographics of childhood ptosis. Ophthalmology. 2011;118(6):1180-1183. doi:10.1016/j.ophtha.2010.10.026
  5. Cruz OA, Repka MX, Hercinovic A, et al. Amblyopia Preferred Practice Pattern®. Ophthalmology. 2023;130(3):P136-P178. doi:10.1016/j.ophtha.2022.11.003
  6. Chen YH, Huang PW, Tsai YJ. Original research: factors related to persistent amblyopia after surgical correction in unilateral congenital blepharoptosis. BMC Ophthalmol. 2025;25(1):330. doi:10.1186/s12886-025-04169-7
  7. Hsia NY, Wen LY, Chou CY, et al. Increased risk of refractive errors and amblyopia among children with ptosis: a nationwide population-based study. J Clin Med. 2022;11(9):2334. doi:10.3390/jcm11092334
  8. Tan Y, Wang X, Fu J, et al. Amblyopic astigmatism characteristics and surgical outcomes in younger children with severe congenital ptosis after frontalis suspension surgery. BMC Ophthalmol. 2023;23(1):54. doi:10.1186/s12886-023-02804-9
  9. Antonio-Santos A, Vedula SS, Hatt SR, Powell C. Occlusion for stimulus deprivation amblyopia. Cochrane Database Syst Rev. 2020;3(3):CD005136. doi:10.1002/14651858.CD005136.pub4
  10. Oral Y, Ozgur OR, Akcay L, et al. Congenital ptosis and amblyopia. J Pediatr Ophthalmol Strabismus. 2010;47(2):101-104. doi:10.3928/01913913-20100308-08
  11. Wu X, Zhang J, Ding X, et al. Amblyopia and refractive status in congenital ptosis: the effect and timing of surgical correction. Ann Plast Surg. 2021;87(1):49-53. doi:10.1097/SAP.0000000000002677
  12. Owji N, Khalili MR, Bazrafkan H, Heydari M. Long-term outcome of refractive errors in patients with congenital blepharoptosis who have undergone ptosis surgery. Clin Exp Optom. 2022;105(7):715-720. doi:10.1080/08164622.2021.1973344
このブログの執筆者
髙田尚忠
髙田尚忠
高田眼科 院長|フラミンゴ美容クリニック/銀座Jクリニック/あさ美皮フ科 眼瞼手術担当
岡山大学医学部卒業後、郡山医療生活協同組合 桑野協立病院などの様々な医療機関を勤務し、現在は高田眼科の院長を務めつつ、関連クリニックの名古屋のフラミンゴ眼瞼・美容クリニック、銀座のJ clinic、亀戸のあさ美皮フ科においても、眼瞼下垂手術を中心に年間2,000件以上の眼瞼手術に携わっています 「見え方(視機能)」と「日常の快適さ」を回復することを第一に、診察では原因(加齢・コンタクト・体質・既往手術など)を丁寧に整理し、必要な治療を分かりやすく説明すること心がけています。 このブログでは、眼瞼下垂の症状、治療選択、術後経過で不安になりやすいポイントなどを、専門医の立場からできるだけ具体的に発信しています。
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