眼瞼下垂手術は何歳から?治療の年齢制限について

お子さんに眼瞼下垂の症状がみられたり、若い人でまぶたの開きが悪かったりして、何歳から眼瞼下垂手術を受けるべきかお悩みではありませんか。
眼瞼下垂手術は、基本的には何歳からでも受けられますが、眼瞼下垂の程度や健康状態によって手術が推奨される年齢は異なります。
症状が軽度の場合は、あまり早い年齢で手術を受けるのではなく、経過を観察したほうがよいケースもあるため注意が必要です。
この記事では、眼瞼下垂手術は何歳から受けられるのか、治療に年齢制限はあるのかについて詳しく解説していきます。
眼瞼下垂手術は何歳から受けられる?
結論からいうと、眼瞼下垂手術に年齢制限はありません。
乳幼児から高齢者の方まで手術を受けられます。
ただし、眼瞼下垂の重症度によって、手術に適したタイミングは異なるため、担当医とよく相談することが大切です。
また、健康状態に問題がある場合、手術を受けられない可能性もあります。
弱視が疑われる場合は3歳以降の手術が一般的
眼瞼下垂手術は何歳からでも受けられますが、先天性の眼瞼下垂で視力に影響を及ぼすおそれがある場合でも、弱視の診断が可能となる3歳以降まで待つのが一般的です。

弱視とは、片目または両目の視力の発達が阻害される状態であり、生まれつき眼瞼下垂があると弱視になりやすいといわれています。
(眼瞼下垂では目の開きが悪くなるため、光をうまく取り入れられず弱視につながります。)
視力は、3歳ごろまでに急速に発達し、8〜10歳ごろに完成します。
この時期に弱視があると、視力の発達が途中で止まってしまうおそれがあるため、早めに治療を受けなければいけません。
一方で、一般的に視力検査が可能となるのは3歳以降であり、それ以前に弱視かどうかを診断するのは困難です。
そのため、眼瞼下垂がある場合は、3〜8歳ごろまでの期間に定期的な診察を受け、弱視の発生を注意深く観察したうえで手術の時期を検討する必要があります。
英国における大規模調査(Scoppettuolo et al., 2008)によると、眼瞼下垂手術を受けた患者の年齢中央値は70歳でした。60歳以上の患者が全体の72.6%を占めており、高齢者に多い手術と言えます。
一方で、先天性眼瞼下垂の場合は幼少期から手術が検討されます。Bagheri et al.(2007)の研究では、先天性眼瞼下垂の手術患者の平均年齢は7.2歳でした。
手術を受けずに成長を待つケースも
軽度の眼瞼下垂で、弱視の疑いがない場合は、急いで手術を受ける必要はありません。
顔の成長が落ち着く思春期(14歳ごろ)以降まで待ってから手術を検討するのも選択肢の一つです。

早い年齢で手術をすると、成長に伴い顔つきが変化して左右差が出てしまい、修正手術が必要となるケースがあるからです。
再手術のリスクを減らすためにも、視力に影響を与えない程度の眼瞼下垂であれば、成長を待ったほうがよいでしょう。
なお、当院ではまぶたの状態を診察し、本人と両親の理解を得たうえで、顔つきの変化や再発のリスクなどを総合的に判断して小学校高学年で手術を行う場合もあります。
小学校高学年以降になれば、多くの場合は局所麻酔による手術が可能となるため身体への負担を軽減できるほか、手術を受ける医療機関の選択肢も広がります。

当院の場合は、少なくとも中学生ぐらいからの手術をお勧めしておりますが、
実際には、小学6年生ぐらいのお子様から手術を行っているのが現実です。
眼瞼下垂手術の種類

眼瞼下垂手術にはいくつかの種類があり、もっとも広くおこなわれているのが「挙筋前転法(タッキング)」です。
挙筋前転法(タッキング)
まぶたの皮膚を切開したあと、ゆるんだ挙筋腱膜を前転(タック)させて瞼板に再固定し、縫合します。
交感神経に支配されているミュラー筋を傷つけないため合併症のリスクが低く、安定した効果が期待できる施術方法です。
挙筋短縮法
そのほか、ゆるんだ挙筋腱膜を短くカットする「挙筋短縮法」は、まぶたをあげる力が非常に弱い場合に選択されます。
前頭筋吊り上げ術
また、重度の眼瞼下垂の場合は、前頭筋と瞼板を人工の糸やゴアテックス、太ももの筋膜などでつなぐ「前頭筋吊り上げ術」も選択肢となるでしょう。
当院の眼瞼下垂手術
挙筋短縮法は、場合によっては行うことがありますが、前頭筋吊り上げ術は、自然な仕上がりにならなかったり、瞼の変形・過矯正になったりするリスクがあるため、当院では基本的に対応していません。
当院では、挙筋前転法に、オリジナルの術式であるTKD切開・ファシアリリースを組み合わせた手術(TKDファシア剥離)をおこなっています。
TKDファシア剥離は、ダウンタイムを短縮しながら、より自然な二重の仕上がりを実現できる眼瞼下垂手術です。
TDK切開・ファシアリリースについて、詳しくはこちらの記事をご覧ください。



眼瞼下垂手術の保険適用に年齢制限はなし
眼瞼下垂手術の保険適用を決めるにあたって、年齢制限はありません。
眼科や形成外科で診察・検査を受け、眼瞼下垂と認められれば、年齢にかかわらず保険適用による手術を受けられます。
保険適用になる条件

眼瞼下垂手術が保険適用になるかどうかの明確な基準はなく、医師に判断が委ねられています。
基本的には、MRD-1(Marginal Reflex Distance)の指標を用いて診断がおこなわれます。
視線を前方に向けた状態で、上まぶたの縁から瞳孔の上縁までの距離を測定する方法です。
個人差はありますが、正常な状態では2.5〜4.5mmが一般的で、3.0〜3.5mm以下の場合に眼瞼下垂と診断されます。
-0.5mm以下であれば、重度の眼瞼下垂と診断されます。
そのほか、眼瞼下垂の症状によって日常生活に支障がでているかどうかも重要な判断ポイントです。
たとえば、視界が遮られる、頭痛や肩こりが生じる、眼精疲労が起こるなどの症状がある場合は、眼瞼下垂と診断される可能性が高いです。
自由診療での手術も可能
生活に支障をきたすほどの症状がみられず、眼瞼下垂と診断されなかった場合は保険が適用されないため、自由診療での治療となります。
また「二重になりたい」「二重の幅を変えたい」など、審美目的で手術を受けたい場合も保険適用での手術は基本的に受けられません。
美容クリニックでおこなっている自由診療は全額自己負担となるため、金銭的な負担は大きくなりますが、顔全体のバランスや二重の細かいデザインに関する要望には応えてもらえます。
保険適用の眼科下垂手術では、瞼を開きやすくすることを目的とする手術であるため、本人の希望のデザインに合わせていくことまで、術者が責任を負うことはありません。
結果として、希望する二重の幅になっていなかったりして、思いどおりの仕上がりにならないケースも。
そのため、審美的なこだわりが強い方は、美容外科や美容クリニックの自由診療による手術を検討するのも選択肢のひとつとなります。
ただ、保険診療の眼瞼下垂手術では仕上がりに全く考慮がないかというと、多くの保険診療主体の眼瞼下垂症専門クリニックにおいて、そんなことはありません。
また、眼瞼下垂手術は、眼瞼下垂手術を行う医師の専門性が手術の成功率に影響を与えます。
美容外科医は、眼科医ほど眼瞼下垂手術に特化した専門性を持っていない場合があり、術後合併症のリスクが高くなる可能性や、術後フォローアップが不足している場合もあります。
眼瞼下垂手術は、専門性の高い眼科医によって行われることが望ましいと考えておりますので、眼瞼下垂でお悩みの方は、まずは専門医のいる眼科への受診を推奨いたします。

眼瞼下垂症を治すには、眼瞼挙筋腱膜への手術操作が必要であります。
逆に、単純な二重切開手術においては、単に、二重まぶたになるように切開線、言い換えれば、二重の溝を作る手術と言えます。
したがって、眼瞼挙筋の調整の分、手術としての技術的な難易度は眼瞼下垂症手術の方が高いと言えます。
眼瞼下垂手術の費用相場
保険適用で治療する場合には、眼瞼下垂手術の費用は全国一律です。
ただし、手術の方法によって費用が異なるほか、保険の内容で自己負担率が変わります。
手術方法 | 費用目安(3割負担の場合) |
---|---|
挙筋前転法 | 片眼:21,600円、両眼:43,200円 |
挙筋短縮法 | 片眼:21,600円、両眼:43,200円 |
前頭筋吊り上げ術(筋膜移植) | 片眼:55,590円、両眼:111,180円 |
上記の費用に加えて、短期滞在基本料や検査代、麻酔代、術後の診察代、薬剤代が約2万〜3万円別途でかかります。
なお、自由診療の場合は相場が30万~100万円と、クリニックによって幅があります。
眼瞼下垂になる年齢は?若くてもなるの?
眼瞼下垂になるもっとも大きな原因は加齢であり、女性では40歳以降、男性では50歳以降に発症するケースが多くみられます。
しかし、子どもや若い人に発症しないわけではありません。
眼瞼下垂には先天性のものと後天性のものがあります。
先天性眼瞼下垂は、主に眼瞼挙筋の発育不良によりまぶたを開ける力が弱い状態であり、出生時または生後1年以内に認められます。
また、後天性眼瞼下垂は、10代や20代の若い人であっても、生活習慣やまぶたへの刺激が要因となり発症する可能性があります。
- 加齢による眼瞼挙筋の衰え
- コンタクトレンズ(とくにハードコンタクト)の長期装着
- まぶたに刺激を与える行為(目を強くこする、引っ張るなど):花粉症、アトピー性皮膚炎など
- スマートフォンやパソコンの長時間使用
このように、若くても眼瞼挙筋になるリスクはあるため、まぶたにできるだけ負担がかからないように注意して生活することが大切です。
また、眼瞼下垂を自力で治すのは難しく、基本的には手術を受けなければ改善できません。
「まぶたが重く感じる」「視野が狭くなった」など、眼瞼下垂の症状がみられる場合は早めに医療機関で受診しましょう。
若い人(小学生・中学生・高校生)の眼瞼下垂については、こちらの記事でも詳しく解説していますので参考にしてください。

まとめ
この記事では、眼瞼下垂手術の年齢制限や保険適用の条件について解説しました。
年齢制限はなく、医師から眼瞼下垂と認められれば何歳からでも手術が可能です。
ただし、眼瞼下垂の程度や健康状態などによって手術に適したタイミングが異なるため、経過を観察し、医師とよく相談したうえで手術を検討してください。
また、眼瞼下垂手術は基本的に保険適用となりますが、日常生活に支障がない軽度の場合や、審美的な目的で手術を受ける場合は保険適用外となるため注意しましょう。
名古屋のフラミンゴ眼瞼・美容クリニックでは、累計2万眼瞼以上の手術経験実績があり、小さなお子さまからお年寄りの方まで、丁寧できめ細かい治療を提供します。
眼瞼下垂のスペシャリストである高田尚忠医師がすべての手術を担当し、患者様の負担を軽減しながら短時間で手術をおこないます。
また、静岡県浜松市の高田眼科、東京亀戸駅のあさ美皮フ科亀戸駅前でも、高田医師による眼瞼下垂手術が可能です。
目やまぶたについて少しでも気になることがあれば、ぜひお気軽にご相談ください。
眼瞼下垂手術が受けられる年齢についてよくある質問
- 眼瞼下垂手術を受けるのに最適な年齢はありますか?
-
一般的に、眼瞼下垂手術は症状が現れ、日常生活に支障をきたし始めた時点で検討されます。年齢よりも症状の程度が重要です。
- 子供も眼瞼下垂手術を受けられますか?
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はい、先天性の眼瞼下垂や、幼少期に発症した場合は、子供でも手術を受けられます。ただし、成長に伴う変化を考慮する必要があります。
- 眼瞼下垂手術に年齢制限はありますか?
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明確な年齢制限はありませんが、麻酔の適応や、手術のリスクと利点を考慮して、医師と相談の上で決定します。
- 思春期の子供が眼瞼下垂手術を受けるのは適切ですか?
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症状が顕著で、日常生活や学業に支障をきたす場合は、思春期でも手術を検討できます。ただし、成長に伴う変化を考慮する必要があります。
- 眼瞼下垂の症状が現れたら、すぐに手術を受けるべきですか?
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症状の程度によって異なります。軽度の場合は経過観察が可能ですが、重度の場合は早期の手術が推奨されます。
- 片目だけ眼瞼下垂の症状がある場合、片目だけ手術を受けられますか?
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はい、片目だけの手術も可能です。ただし、左右差が気になる場合は、両目の手術を検討することもあります。
- 眼瞼下垂手術を受けた後、再び手術が必要になることはありますか?
-
加齢による変化や術後の経過によって、再手術が必要になる場合があります。
- 眼瞼下垂手術の費用は年齢によって異なりますか?
-
一般的に、年齢による費用の差はありません。ただし、保険適用での治療を行う場合、その方が加入している医療保険により、自己負担額が異なります。
参考文献
SCOPPETTUOLO, Elizabetta, et al. British Oculoplastic Surgery Society (BOPSS) National Ptosis Survey. British journal of ophthalmology, 2008, 92.8: 1134-1138.
BAGHERI, Abbas, et al. A randomized clinical trial of two methods of fascia lata suspension in congenital ptosis. Ophthalmic Plastic & Reconstructive Surgery, 2007, 23.3: 217-221.
BATTU, Vijay K.; MEYER, Dale R.; WOBIG, John L. Improvement in subjective visual function and quality of life outcome measures after blepharoptosis surgery. American journal of ophthalmology, 1996, 121.6: 677-686.