眼瞼下垂と埋没法 – 違いや取れる可能性など手術ができる・できないまで含めすべて解説
眼瞼下垂とは、目を開けたときにまぶたが正常な位置よりも下がる病気です。
進行すると、視界が狭くなったり目が疲れやすくなったりと、日常生活に支障をきたすおそれがあるため、適切な治療を受ける必要があります。
眼瞼下垂に対するもっとも確実な治療法は眼瞼下垂術です。
一方で、「埋没法でも眼瞼下垂を改善できる」との情報を目にしたことがある方もいるのではないでしょうか。
眼瞼下垂術と二重埋没法では、目的や効果が大きく異なります。
埋没法は二重のラインを形成し、より魅力的な目元にする美容整形手術であるため、眼瞼下垂の治療はできません。
本記事では、眼瞼下垂術と埋没法の違いについて詳しく解説します。
手術ができる・できないを含め、同時施術が可能かどうかや、埋没法が眼瞼下垂症に与える影響などもまとめましたので、眼瞼下垂の治療を検討している方はぜひ参考にしてください。
眼瞼下垂と埋没法の違い
眼瞼下垂術と埋没法の違いについて、以下3つの観点から違いを解説します。
- 施術方法や効果
- ダウンタイム
- 値段
眼瞼下垂術と埋没法のどっちが良いかは一概にはいえず、それぞれにメリットとデメリットがあります。
ただし、眼瞼下垂の改善(目の開きの改善)が目的であれば、眼瞼下垂術が適しています。
施術方法や効果の違い
眼瞼下垂術とは、まぶたを持ち上げる筋肉(眼瞼挙筋)を短くしたり、余分な皮膚を切除したりしてまぶたを開きやすくする治療法です。
さまざまな術式がありますが、もっとも一般的なのは「眼瞼挙筋前転法」です。まぶたの皮膚を切開したあと、挙筋腱膜を前転して瞼板に固定させ、まぶたの開きを良くします。
また、基本的にはまぶたを切開して施術をおこないますが、皮膚を切らない埋没式の眼瞼下垂手術に対応しているクリニックもあります。
糸でまぶたの裏側の筋肉を縫い縮めることで、緩んだ挙筋腱膜を瞼板に引き寄せ、まぶたを開きやすくします。
ただし、切開を伴う眼瞼下垂術のほうが、より確実に症状を改善する効果が見込めます。持続性にも優れており、将来元に戻る心配はほとんどありません。
そして、埋没法では、術者の感覚的な部分で盲目的に行われる施術のため、手術結果のばらつきが非常に大きいと言えます。
そのため、誤って位置に糸が埋没されると、ミュラー筋を刺激するなどしてしまい、術後眼瞼痙攣を引き起こしてしまうことがあります。
以下に、眼瞼下垂手術の主な術式をまとめました。
施術方法 | 特徴 |
---|---|
挙筋腱膜前転法 | ゆるんだ挙筋腱膜を折りたたんで瞼板に再固定する方法。もっとも広くおこなわれている眼瞼下垂術。 |
挙筋短縮法 | 眼瞼挙筋を短くして瞼板に縫合する方法。眼瞼挙筋の機能が残されている場合に実施される。 |
埋没式挙筋短縮法 | 皮膚に小さな穴を形成し、眼瞼挙筋を糸で結んでまぶたを引き上げる方法。切らない眼瞼下垂とも呼ばれている。 |
眉下切開/眉上切開 | 眉下、または眉上の皮膚を切除してまぶたの開きを良くする方法。まぶたのたるみによる眼瞼下垂が生じている場合に効果的。 |
前頭筋吊り上げ術(筋膜移植) | 太ももや頭部などの筋肉を使用し、まぶたと前頭筋をつないで眉毛の動きによりまぶたを上げる方法。眼瞼挙筋がほとんど機能していない場合に実施される。 |
一方、二重埋没法は、まぶたの内側を細い糸で数カ所縫い留め、きれいな二重のラインをつくる美容整形手術です。
眼瞼挙筋に糸をかける「挙筋法」と、まぶたの中にある瞼板に糸をかける「瞼板法」の2種類に分けられます。
皮膚を切らずに治療する点では埋没式の眼瞼下垂術と似ていますが、目的や施術方法が異なります。
ダウンタイムの違い
眼瞼下垂と埋没法のダウンタイムの目安は以下のとおりです。
ダウンタイム | |
---|---|
眼瞼下垂(切開式) | 2〜3週間 |
眼瞼下垂(埋没式) | 1〜2週間 |
二重埋没法 | 1〜2週間 |
眼瞼下垂術のダウンタイムは施術方法によって異なり、一般的にはまぶたの皮膚を切開する場合は腫れが強く出るため、ダウンタイムが長引く傾向があります。
2〜3週間ほどは腫れや痛み、むくみなどが続くでしょう。また、傷口が完全にふさがり、安定するまでには約2〜3カ月かかります。
一方、皮膚を切らない埋没式の眼瞼下垂術は肌への負担が少なく、腫れや赤みは3〜7日程度でおさまります。
内出血が出るケースもありますが、2週間ほどで落ち着くでしょう。自然な目元になるまでには、約1カ月かかると考えておいてください。
二重手術の埋没法も同様に、強い腫れやむくみが出るのは1〜2週間程度です。手術から1カ月ほど経つと、二重のラインが安定してきます。
値段の違い
眼瞼下垂術と二重埋没法の大きな違いは、保険が適用されるか否かです。
症状の程度、条件にもよりますが、眼瞼下垂症と診断された場合は基本的に保険適用となり、3割以下の自己負担額で治療を受けられます。
ただし、皮膚を切らない埋没式挙筋短縮法は保険適用の対象ではなく、自由診療となります。
以下の表に、眼瞼下垂手術と埋没法の値段の違いをまとめました。
【眼瞼下垂手術(両目)の料金目安】
施術方法 | 保険適用(3割負担) | 自由診療 |
---|---|---|
挙筋腱膜前転法 | 43,200円 | 約35万〜60万円 |
挙筋短縮法 | 43,200円 | 約35万〜60万円 |
埋没式挙筋短縮法 | なし | 約15万〜30万円 |
眉下切開/眉上切開 | 36,040円 | 約50万〜80万円 |
前頭筋吊り上げ術(筋膜移植) | 111,180円 | 約80万〜120万円 |
【二重埋没法(両目)の料金目安】
二重埋没法は、病気の治療ではなく審美目的でおこなう手術であるため、保険は適用されません。
施術方法 | 自由診療 |
---|---|
二重埋没法 | 約10万〜20万円 |
眼瞼下垂術は眼科・形成外科・美容外科のどこでも受けられますが、二重埋没法は基本的に美容外科で対応していることが多いです。
自費治療の場合は料金がクリニックごとに大きく異なり、糸をかける数や箇所によっても変わってきます。
保険診療の眼瞼下垂術と比べて料金は高額となるものの、「目元をより大きく見せたい」「二重のラインを自由にデザインしたい」など、さまざまな希望に応えてもらえる点はメリットです。
眼瞼下垂と埋没法の同時施術について
眼瞼下垂術と二重埋没法は、同時に施術可能です。
眼瞼下垂術は、あくまでもまぶたの開きにくさの改善を目的としています。そのため、一般的にはきれいな二重になる保証はありません。
眼瞼下垂術と二重埋没法の併用によりまぶたを開きやすくするとともに、二重のラインやバランスを調整でき、より理想的な目元に仕上がる場合もありますが、眼瞼下垂術の方法によっては併用が難しいため医師への確認が必要です。
また、同時に施術するのではなく、まずは眼瞼下垂手術でまぶたの下垂を改善し、状態が落ち着いてから埋没法で二重幅を調整したほうがよい場合もあります。
眼瞼下垂術がきれいな二重になる保証はない、と述べましたが、当院では保険診療における眼瞼下垂手術で一番自然な二重幅とは?という課題を常に考えております。
どうしても、ご自身の好みのデザインを優先することを希望される場合には、自由診療で対応させていただいております。
詳しくは下記記事もご覧ください。
眼瞼下垂術後に埋没法はできる?
眼瞼下垂術の施術方法によっては、手術後でも埋没法で二重の幅を調整することは可能です。
埋没式の眼瞼下垂術後に、二重埋没法をおこなうのは問題ありません。
しかし、眼瞼下垂術で皮膚を切開しており、手術の跡が目立っていたり、二重のラインが深く食い込んでいたりすると、埋没法によって不自然な目元になってしまうケースがあります。
眼瞼下垂の人が埋没法をするとすぐ取れるって本当?
眼瞼下垂症の程度にもよりますが、まぶたの皮膚が下がっていると埋没法が取れやすくなることがあります。
まぶたを上げる役割を持つ眼瞼挙筋が弱っているため、埋没法で糸をかけても十分な力で二重を形成できません。
また、二重になったとしても、強度が弱く糸がゆるみやすくなってしまいます。
そのため、まずは眼瞼下垂術で眼瞼挙筋を短縮させ、まぶたの開きを良くすることが推奨されます。
埋没法の経験者は眼瞼下垂術ができないの?
過去に埋没法で二重を形成していても、ほとんどの場合は問題なく眼瞼下垂手術を受けられます。
ただし、以下のようなケースでは眼瞼下垂手術が困難となるおそれがあるため注意が必要です。
- 埋没法で幅広の二重を形成している
- 特殊な留め方により埋没法の糸が抜けない
埋没法で形成した二重の幅が広い場合、眼瞼下垂手術でまぶたを切開すると、より幅広の二重ができてしまい不自然になるケースがあります。
また、眼瞼下垂手術で皮膚を切開する際には、通常埋没法の糸を抜去しますが、特殊な留め方をしていたり、糸の素材が特殊であったりすると簡単には抜けません。
その結果、眼瞼下垂手術をスムーズにおこなえなくなるおそれがあります。
埋没法の経験者が眼瞼下垂手術を受ける際は、事前に医師と相談し、処置を受けることが大切です。
埋没法で眼瞼下垂が悪化する?治る?
結論からいうと、埋没法は眼瞼下垂を悪化させる、もしくは治る直接的な原因にはなりません。
ただし、適切な施術がおこなわれていないと、眼瞼挙筋に負荷がかかり、眼瞼下垂が悪化してしまうおそれがあります。
また、埋没法によって目が大きく見えるようになることで、眠そうな印象が改善される可能性はあります。
しかし、埋没法はあくまでもきれいな二重を形成する美容整形手術です。まぶたは上がらないため、眼瞼下垂の治療にはつながりません。
そのため、仕上がりなど審美的な部分にコダワリがある方の場合には、病院選びの際、自由診療のメニューがあるか?どうか?を確認されると良いと考えます。
埋没法の挙筋法は眼瞼下垂になりやすいって本当?
前述のとおり、二重整形の埋没法は、糸をかける位置によって挙筋法と瞼板法に分けられます。
「挙筋法」「瞼板法」それぞれのメリット・デメリットは以下のとおりです。
メリット | デメリット | |
---|---|---|
挙筋法 | ・より自然な二重を形成できる ・幅広の二重にも対応可能 ・糸が取れにくい ・糸が眼球に触れるリスクが少ない | ・仕上がりが医師の技術力に左右される ・ダウンタイムが長引きやすい ・加齢や体調の変化により糸がゆるみやすい |
瞼板法 | ・挙筋法よりも簡単かつ短時間で手術できる ・医師による仕上がりの差がほとんどない | ・糸によって眼球が傷つくおそれがある ・幅広の二重ラインには向いていない |
挙筋法は、まぶたを持ち上げる眼瞼挙筋に糸をかける手法です。瞼板法と比べて、自然で美しい目元に仕上がるメリットがあります。
一方で、眼瞼挙筋に負担がかかりやすいことから、瞼板法よりも眼瞼下垂になるリスクが高いとされています。
たしかに、眼瞼挙筋がダメージを受けると、眼瞼下垂につながるのは事実です。
しかし、眼瞼挙筋に負荷がかかるのは、糸をきつく留めすぎた場合や、幅が広すぎる二重にした場合です。
一般的な方法で施術をおこなっていれば、挙筋法で眼瞼下垂になるリスクはほぼないでしょう。
トラブルを防ぐためには、挙筋法の症例が多く、豊富な経験を持つ医師を選ぶよう気をつけていただきたいです。
フラミンゴ眼瞼・美容クリニックは、眼瞼下垂専門科と美容皮膚科の併設クリニックです。年間2,000件を超える眼瞼下垂手術を手がけている眼科医、高田 尚忠医師による診察・治療を保険診療で受けられます。
当院オリジナルのTKD切開法は、傷跡が目立ちにくく、自然な二重に仕上がる眼瞼下垂手術です。どの医療機関を受診するか迷われている方は、ぜひ一度当院にご相談ください。
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