眼瞼下垂の基礎知識

眼瞼下垂症の合併症:術後 眼瞼痙攣(眼瞼けいれん)に悩んでいる人へ

Dr.髙田

一昨日は、2件の他院の修正手術のご相談をいただきました。

お二人とも、「術後の結果に満足できず、前医に対して不信感を持ってしまっており、なんとかならないのか?」

というご相談でした。

全くの偶然で、びっくりしました。

症状をまとめると、

  1. 二重が広くハッキリしすぎていて、女性らしくない(ちなみに、お二人とも女性でした。)。
  2. 術後、光がまぶしくて、また、明るいところでの まばたきの回数が増えた。目を開けていられない。
  3. 下眼瞼の眼輪筋切除術を勧められたが、眼瞼下垂症手術の修正なのに、下眼瞼(下まぶた)の手術を提案されるのは意味がわからない。

というものでした。

当院で行った手術の結果とは違う、独特の雰囲気のある術後の結果でしたので、すぐに想像がつきました。

このケースについて、少し思うことがありましたので、ブログの記事とさせていただきました。

眼瞼下垂症手術は、術者により様々なアプローチがあり、個々のこだわり・・・手術概念があります。

当院の特徴は、出来るだけ、眼瞼挙筋前転法で対応しようとするということです。 

眼瞼挙筋前転法の特徴は、修正手術になった場合に、修正が他の手術方法(眼瞼挙筋短縮法、ミュラー筋タッキング、ミュラー筋リリース、前頭筋吊り上げ術・・・)と比べて、修正手術が非常に容易といえると考えてるからです。

加えて、そのほかの手術方法よりも、特段の理由がない限り、見た目の不具合、機能的な不具合が少ない、言い換えれば、自然な瞼の構造により近い状態になるからであり、眼瞼挙筋前転法で問題を感じることがないからです。

さらに敢えて言うならば、眼瞼下垂症手術において、ファーストチョイスとして、ミュラー筋に侵襲を与える手術は、可能な限り避けるべきだと考えております。

したがって、ミュラー筋を触る可能性のある眼瞼挙筋短縮法、ミュラー筋タッキング、ミュラー筋リリースは、最初に選択肢に入れることは、当院では基本ありません。

眼瞼挙筋前転法においても、前転法(タッキング)でも、眼瞼挙筋腱膜とミュラー筋を同時にタッキングすることになるので、侵襲性が高いとしている考え方もあります。

それ対しての反論としては、当院は、ミュラー筋と眼瞼挙筋腱膜の接着を剥がす侵襲性の方が、眼瞼挙筋腱膜とミュラー筋と同時にタッキングする侵襲よりも強いと思うからです。

さて、どうして、ミュラー筋に侵襲を与える可能性の高い手術を避けるべきなのか??(ミュラー筋への侵襲性を抑えるべきなのか??)

ABOUT ME
高田 尚忠
高田 尚忠(たかだ なおただ)
高田眼科 院長 |ひとみ眼科 / フラミンゴ美容クリニック 眼瞼手術担当医師
所属学会:日本眼科学会、日本形成外科学会、日本眼形成再建外科学会
岡山大学医学部卒業後、横浜形成外科の二木 裕先生に師事。 郡山医療生活協同組合 桑野協立病院などの様々な医療機関を勤務し、 現在は高田眼科の院長を務める。 眼科医と形成外科医の知識と、これまでの豊富な眼瞼手術の術者としての経験をもとに、2022年においては年間2,000件超える眼瞼下垂症手術を手がけております。 2022年3月より、名古屋市内の伏見駅近くのフラミンゴ眼瞼・美容クリニックを開院。

ミュラー筋に侵襲を与える可能性の高い手術を避けるべき理由

①ミュラー筋を使った眼瞼下垂症の術後の見た目が自然でないように思うからです。

 瞼には、まぶたの動きを司る筋肉は4つあります。

それは、眼瞼挙筋、ミュラー筋、前頭筋、眼輪筋です。

眼瞼下垂症手術で大事なのは、眼瞼挙筋とミュラー筋となります。

眼瞼挙筋は動眼神経と呼ばれる神経によりコントロールされており、意識的に動かすことができます。つまり、目を開けようと意識した際に動かせる筋肉です。

ちなみに、前頭筋、眼輪筋も随意運動ができる筋肉となります。(目を閉じる、眉を上げる・・・)

しかしながら、ミュラー筋は交感神経という神経の支配の筋肉で、意識的に動かせる筋肉ではありません。

交感神経は、自律神経ですので、意識して自由に働かせることはできません。

つまり、興奮したり、ストレスを感じた際などに、自動的に働いてくる神経ですので、ミュラー筋というのは、ビックリした時や興奮した時に、”目を見開く”際に動いてくれる、感情に司って働く筋肉です。

したがって、他院の眼瞼下垂症の手術症例を観た際に感じる違和感というのは、ミュラー筋を触っている際に特に感じます。

つまり、「目力の強い」「男らしい」「怖い」・・・・そんなイメージです。

もちろん、眼瞼挙筋も引っ張りしすぎる場合にも、気をつけないといけませんが・・・・

つまり、眼瞼下垂症手術で重要視すべきなのは、術後の見た目の自然さだと考えるから、不自然になりやすいミュラー筋を触る手術は行わないようにすることです。

②ミュラー筋に侵襲を与えることで、眼瞼下垂症術後の眼瞼痙攣(眼瞼けいれん)を引き起こす可能性があるからです。

話を最初に戻しますが・・・ 

今回相談にこられたお二人は、まさに、このミュラー筋を使った眼瞼下垂症手術後の患者さんだったからです。

つまり、前医の眼瞼下垂症手術によって、ミュラー筋に負担をかけられてしまったため、結果として眼瞼痙攣(眼瞼けいれん)が出現してしまったと解釈できます。

確かに、ミュラー筋の異常により眼瞼痙攣(眼瞼けいれん)が発生する可能性を指摘され、手術を取り入れている施設があります。

他院の修正を多く経験していると、そういった施設の術後において、術後眼瞼けいれんを引き起こしている事例を経験いたします。

くわえて、当院の眼瞼下垂症手術後においては、術後眼瞼けいれんは経験しない事例です。

さて、眼瞼痙攣(眼瞼けいれん)において、通常は、ボツリヌス注射(ボトックス注射)が第一選択とされておりますが、

選択される手術方法として、ミュラー筋を瞼板からリリースする方法と眼輪筋を広範囲で切除する方法があります。

今回の事例において、前医の先生が修正手術(下眼瞼眼輪筋切除)を勧められた経緯としては

前医の先生の見解

今回の眼瞼下垂症手術において、ある意味、ミュラー筋の緊張を取る手術を行ったワケなので、眼瞼痙攣(眼瞼けいれん)は治るはず。

したがって、ミュラー筋のリリースで治らないほどの難治性の眼瞼痙攣(眼瞼けいれん)を眼瞼下垂症手術前から持っている症例と言える。

したがって、難治性の眼瞼痙攣(眼瞼けいれん)であるのであればボツリヌス注射(ボトックス注射)の適応はなく、広範囲眼輪筋切除術を選択するしかないので、下眼瞼の眼輪筋切除術を行うしかない。

とある施設で眼瞼下垂症手術を受けられ、眼瞼痙攣(眼瞼けいれん)になり、その後、何故か?下眼瞼の手術を勧められ、手術を受けたら、ゴルゴ13の主人公のような顔にエックスのような傷が残ってしまい苦労されている患者さんの修正手術を行った経験もあります。

加えて、その方は度重なる手術の結果、上眼瞼が硬い瘢痕組織で覆われており、当然、眼瞼挙筋、眼輪筋、ミュラー筋などの組織が全て瘢痕組織になってしまっており、眼瞼下垂症に加えて、兎眼(目が閉じない)状態になってしまっており、修正手術に苦労しましたが、それでも改善はしたが、治ったとはとてもいえない状態でした。

それに対する当院の答えは、

 「当院の見解」

今回出現した術後眼瞼痙攣(眼瞼けいれん)は、前医によるミュラー筋への侵襲(障害)が原因であるので、それに対する対応が必要。

ただし、修正手術ですので、難症例となる可能性が高いです。

まずは、眼瞼痙攣(眼瞼けいれん)を抑えるためにも、ボツリヌス注射(ボトックス注射)を行い、一旦様子をみる。

注射の結果判定を行う2週間後において、もう一度、診察を行うこととし、その際に、修正手術を行う決心がついていらっしゃったら、修正手術を計画するというものでした。

 そして、選択すべき修正手術の内容は、・・・・・。

TKD切開法

二重のラインが少し広すぎるので重瞼ライン修正術(TKD切開法)を行う。

そのことで前医の傷が半年も立つのに赤いので、それも直すことができる。

瘢痕組織の除去

前医の手術によって形成された瘢痕組織を出来るだけ丁寧に、しっかり除去

埋没糸の完全除去を目指す

おそらく、ミュラー筋に負担をかけるような埋没糸があれば、全て除去する。

術後の瞼の不定愁訴の多くが、手術中に残された埋没糸による刺激が原因だったりいたします。

適切で自然な開瞼が得られるように、挙筋腱膜と瞼板軟骨との固定

しっかり露出させた眼瞼挙筋腱膜、ミュラー筋を状況に応じて固定する。

皮膚縫合

自然な二重になるように縫合をおこなう。

個人的には、眼瞼下垂症手術は緊急性がある疾患ではありません。

一部のクリニックでは、「うつ病」「緊張型頭痛」「肩こり」「顎関節症」「歯槽膿漏」等になる危険性がある・・・ので、

眼瞼下垂症手術を検討した方が良いという考え方があります。

確かに、個人的には、緊張型頭痛、肩こりの改善を認める症例は多く出会いますし、

患者さんから「肩こり・頭痛が激しいことも手術を決めた理由です。」と言われることはあります。

それに対する当院の答えとしては、「確かに、眼瞼下垂症手術を行えば、肩こり・頭痛が治る(おさまる)ことは期待できますが、実際にやってみないと分かりません。

診断としては、手術適応のある眼瞼下垂症ですので、手術させていただきますが、あくまで、瞼を上がりやすくして、視界を広げるためです。」とお答えするようにしております。

うつ病については、眼瞼下垂症手術を見た目のコンプレックスの解消が動機の患者さんであれば、手術によりコンプレックスが解消することで、悩みがなくなるという意味で、プラスに働くのかもしれません。

逆にいうと、手術の結果、不安神経症がひどくなり、うつ病になってしまった患者さんを診察することはあります。

つまりは、今回、当院にご相談にこられたお二人の患者さんのような、他院修正手術の症例の方に多いように思います。

術後、安らかな気持ちで過ごして頂くために、当院は、きちんとした術前説明、術中のデザインの確認、そして、出来るだけ、自然な見栄えになるような手術の工夫:TKD切開法、ファシアリリース法などは勿論、ミュラー筋への負担を出来るだけかけないような前転縫合を考え実施しております。

眼瞼下垂症手術には、様々な方法があります。

当院で行われている手術よりも優れた方法がないというわけではありませんが、多くの患者さんに可能な限り満足していただけるように努力を重ねております。

例えば、術後の経過の際には、出来るだけオープンクエスチョンで経過をご本人に尋ねるようにしております。 

オープンクエスチョンとは、具体的には「手術の経過は、如何ですか?気になることはないですか?」というような質問のやり方で、「手術の後は痛くないですか!?」のような「はい」「いいえ」で答えるようなクローズクエスチョンではないように気をつけております。

もちろん、ついうっかり、クローズクエスチョンで聞いてしまっている場合もありますが・・・、気をつけて、問題を聞き出していくスタイルです。

どんな手術であれ、完璧なものはありません。完璧であろうと努力することはお約束できます。

他院で手術を受けてしまって、術後の結果に不満がおありであれば、是非、当院にご相談していただければ・・・・と思います。

- 【眼瞼下垂】延べ2万眼瞼以上の手術経験 -
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