眼瞼下垂の基礎知識

眼瞼下垂は遺伝する?確率や生まれつき・子供の眼瞼下垂の特徴と原因

Dr.髙田

生まれたときから、まぶたの開きが悪い眼瞼下垂を発症している場合、視力に影響したり、姿勢が悪くなったりと、子供の発達に支障をきたすおそれがあります。

両親のどちらかが眼瞼下垂症である場合、生まれてくる赤ちゃんに遺伝してしまうのか不安になる方もいるでしょう。

この記事では、眼瞼下垂は遺伝するのか、遺伝の確率や、子供の眼瞼下垂の特徴と原因を解説しています。

治療のタイミング手術方法の種類などについても掲載しているので、眼瞼下垂の遺伝や、お子さんの眼瞼下垂で不安のある方は参考にしていただければと思います。

眼瞼下垂は遺伝的要素があるか

子供のまぶた

眼瞼下垂は、生まれつき上まぶたが開きにくい状態である「先天性眼瞼下垂」と、大人になるにつれて症状が表れる「後天性眼瞼下垂」の2種類に分けられます。

このうち、遺伝的要素が影響する可能性があるのは、先天性眼瞼下垂です。

遺伝の確率

先天性眼瞼下垂の一部は、常染色体優性遺伝によって起こるといわれています。

単純性先天性眼瞼下垂症に罹患した14人の患者からなる発端者とその家族について、5世代にわたり調査した研究では、以下のように報告があります。

我々は、5世代にわたる27人のメンバーからなる家族を報告し、そのうち14人が先天性単純性眼瞼下垂症を患っていました。 11 例は片側性、3 例は両側性眼瞼下垂でした。

PAVONE, Piero, et al. Clinical heterogeneity in familial congenital ptosis: analysis of fourteen cases in one family over five generations. Pediatric neurology, 2005, 33.4: 251-254.
https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0887899405002547

家族に先天性眼瞼下垂の人がいる場合、生まれてくる赤ちゃんに遺伝する確率は、そうでない家系よりも高いといえます。

しかし、先天性眼瞼下垂の多くは、家族に眼瞼下垂の人がいるかどうかにかかわらず、偶発的に発症します。

先天性眼瞼下垂を患っている人の約80%は、片目のみに認められる片眼性(一側性)であり、その大半が遺伝とは無関係です。

また、妊娠中のトラブルが影響する可能性もほとんどないといわれています。

なお、常染色体優性遺伝によって起こる先天性眼瞼下垂は、両眼性(両側性)であるケースも多く見られます。

先天性眼瞼下垂は何人に1人? 

海外では、先天性眼瞼下垂の有病率に関する研究が積極的におこなわれています。

米国で実施された、眼瞼下垂の疫学に関する研究によると、先天性眼瞼下垂の推定有病率は約842人に1人です1)

また、英国でおこなわれた後ろ向き研究では、対象となる小児眼科クリニックで治療された眼瞼下垂症の約14%が、先天性のものであったという結果が報告されています2)

生まれつき(先天性)・子供の眼瞼下垂の特徴と原因

新生児

生まれつきまぶたを上げる力が弱い先天性眼瞼下垂は、正面を向いた際にまぶたが瞳孔(黒目)を覆っている状態です。

通常、先天性眼瞼下垂は出生時または生後1年以内に認められ、片目もしくは両目(約80%が片眼性)に以下の症状が表れます。

  • まぶたが正常な位置よりも下がっている
  • まぶたがうまく開かない
  • 視野が狭くなる
  • 眉を上げて目を開けようとする
  • あごを上げてものを見ようとする
  • 片目がずれて向いている(斜視)

眼瞼下垂の程度には個人差があり、まぶたが瞳孔に少しかかる軽度のものから、瞳孔を完全に覆う重度のものまであります。

先天性眼瞼下垂の主な原因は、眼瞼挙筋の発育不全です。

また、眼瞼挙筋を支配している動眼神経の機能障害や、他の疾患の影響で発症する場合もあります。

ただし、何が原因でこれらの機能障害が生じるのか、眼瞼下垂の発症メカニズムはいまだ解明されていません。

眼瞼挙筋の発育不全

眼瞼挙筋とは、まぶたを持ち上げる役割をもつ筋肉です。

眼瞼挙筋

先天性眼瞼下垂の約9割は、生まれつき眼瞼挙筋が未発達、または機能障害を起こしている状態の「単純性眼瞼下垂(たんじゅんせいがんけんかすい)」であるとされています。

まぶたを持ち上げる力が弱い、もしくはまったくないため、目を開けられず眼瞼下垂になってしまいます。

動眼神経の機能障害

動眼神経の障害によって生じる疾患を「先天性動眼神経麻痺(せんてんせいどうがんしんけいまひ)」といいます。

先天性動眼神経麻痺も、眼瞼下垂を引き起こす原因の一つです。

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動眼神経は、眼球を動かす筋肉を支配している神経です。

眼球を内側に向ける「内直筋」、上下に向ける「上直筋」「下直筋」、外方向に回転させる「下斜筋」をコントロールしています。

さらに、まぶたを上げる眼瞼挙筋と、瞳孔を調節する「瞳孔括約筋(どうこうかつやくきん)」も支配しています。

開眼や眼球運動をおこなうために重要な役割を果たす神経であるため、生まれつき動眼神経に障害があると眼瞼下垂になりやすくなるのです。

他の疾患の影響

先天性眼瞼下垂は、ほかの眼疾患や全身疾患が関連しているケースもあります。

疾患名特徴
マーカスガン現象口を開くときに上まぶたが勝手に上がる。弱視を合併するケースが多い。
ホルネル症候群先天性の交感神経障害。ミオシス(瞳孔が小さい)顔面の発汗低下、眼瞼下垂の症状が表れる。
重症筋無力症全身の筋肉が落ちる疾患。まぶたを上げる筋肉にも影響をおよぼし、眼瞼下垂の原因となる場合がある。

子供(赤ちゃん)の眼瞼下垂症の診断について

赤ちゃんの眼瞼下垂の見分け方は、主に以下のような観察ポイントから判断します。

  1. 瞼の位置: 正常な状態では、上まぶたは瞳の上1〜2mm程度に位置しています。それ以下になると眼瞼下垂の可能性があります。
  2. 視線の追従: 赤ちゃんが物を見るとき、眼瞼下垂があると頭を後ろに反らせて視線を上げることが多いです。
  3. 瞼の動き: 瞼が閉じたり開いたりする動きが遅い、または一方向に偏っている場合も眼瞼下垂の可能性があります。

これらの観察を行う際、特に注意が必要なのは、赤ちゃんの場合、成長とともに瞼の位置や動きが変わることがあるため、一度の観察だけで判断せず、長期的な観察が必要となります。

また、これらの観察ポイントに該当する場合でも必ずしも眼瞼下垂であるとは限りません。疑わしい場合は、早めに眼科医に相談することをおすすめします。

そして、子供が軽度の眼瞼下垂を持っている場合、以下のような症状が見られることがあります。

目を開けるのが難しい:

子供は、眼瞼下垂により、上眼瞼が重く感じ、目を開けるのが難しいと感じることがあります。これは特に、朝起きたときや集中力が必要な時に顕著になることがあります。

頭を後ろに傾けて見る:

子供が視界を確保するために、頭を後ろに傾けたり、眉を上げるような動作を行うことがあります。これは、上眼瞼が下がって視野が遮られることを補うための無意識の動作です。

頻繁に目をこする:

眼瞼下垂により、目に異物感を感じることがあります。その結果、子供は頻繁に目をこするようになることがあります。

視力の低下:

重度の眼瞼下垂では、廃用性弱視により視力の低下が見られることがあります。しかし、軽度の眼瞼下垂でも、長期間放置すると視力に影響を及ぼす可能性がありますので、注意が必要です。

これらの症状が見られた場合、眼科医への相談をおすすめします。早期に適切な治療を行うことで、視力の低下を防ぐことが可能です。

治療はいつから開始できる?

先天性眼瞼下垂は、早期治療が重要です。

手術を受けるにあたって年齢制限はとくにありませんが、多くの場合は3歳以降におこないます。

※ただし、眼瞼下垂の重症度によって、手術に適した年齢は異なります。

症状が軽度であれば、成長とともに改善が見られ、手術が必要なくなる可能性もあります。

先天性眼瞼下垂と診断されたら、定期的に診察を受けて経過を観察し、医師の指示に従うようにしましょう。

視力に影響する場合は早期治療が必要

赤ちゃんの目の検査

生まれたばかりの赤ちゃんは、視力が発達しておらず、ものをはっきりと見れません。

生後1か月から3歳ごろまでに、視力は著しく発達します。そして、6歳ごろには大人とほぼ同じ視力になります。

先天性眼瞼下垂を患っていると、視力の発達に影響をおよぼし、弱視や斜視を招きかねません。

そのため、重度の眼瞼下垂で視野が大きく妨げられている場合は、早期の手術が必要です。

クリニックによっては、1歳ごろからの手術をおこなっています。

まぶたがある程度開き、ものを見ようとする様子があれば、定期的な診察により視力の発達を観察し、3歳以降に手術をおこなうのが一般的です。

軽度であれば思春期まで待つ

視力への影響が見られず、早期治療が必要ないと判断された場合は、思春期(14歳ごろ)以降の手術が推奨されます。

成長途中の段階で手術を受けると、顔つきが変化したあとに再手術が必要となる可能性があるためです。

また、子供の眼瞼下垂手術は細かいデザインを配慮しなければならず、高い技術を必要とします。

そのため、審美的な観点で見ると、思いどおりの仕上がりにならないおそれがあります。

さらに、小学校高学年ごろまでは、基本的に全身麻酔下での手術が必要となり、大きな医療機関でしか受けられません。

思春期以降であれば、顔の成長がある程度落ち着いているため、細かなデザインがしやすくなるメリットがあります。

局所麻酔を使用でき、身体への負担も抑えられます。

※当院では、まぶたの状態を診察し、本人と保護者さまの手術に対する理解を確認したうえで、小学校高学年で手術をおこなう場合もあります。

先天性眼瞼下垂の手術方法

先天性眼瞼下垂の主な手術には、「挙筋前転法」「挙筋短縮法」「前頭筋吊り上げ術」があります。

手術方法特徴
挙筋前転法ゆるんだ眼瞼挙筋腱膜を折りたたんで瞼板に再固定する。
挙筋短縮法眼瞼挙筋腱膜を短くして瞼板に縫い付ける。
前頭筋吊り上げ術(筋膜移植)前頭筋と瞼板の間に腱を移植する。

眼瞼下垂手術のもっとも一般的な方法は「挙筋前転法」です。

しかし、先天性眼瞼下垂の場合は挙筋前転法や挙筋短縮法では十分な改善が見込めない可能性があり、多くのケースで前転筋吊り上げ術(筋膜移植)が選択されます。

当院オリジナルのTKDファシアリリース(剥離)法

前頭筋吊り上げ術(筋膜移植)は、先天性眼瞼下垂の治療に有効である一方、三角眼(三角目)になりやすく、成長に伴いまばたきの動きが不自然になるおそれがあります。

当院では、筋膜リリースの概念を取り入れた当院オリジナルの挙筋前転術「TKDファシアリリース法」を行っています。

眼瞼挙筋と眼窩脂肪は、結合組織であるファシアによって接着しており、眼瞼挙筋の動きが制限されています。

そこで、ファシアを剥離して眼窩脂肪を除去し、眼瞼挙筋の動きをスムーズにすることで、眼瞼下垂の改善が可能です。

さらに、まつ毛に近い二重ラインを切開する「TDK切開法」との組み合わせにより、身体への負担を抑えながら自然な仕上がりを目指せます。

TKDファシアリリース法であれば、筋膜移植をおこなわなくても良く、ダウンタイムの軽減にもつながります。

ファシアリリースについて、詳しくは下記の記事をご覧ください。

眼瞼下垂症の新しい当院オリジナル手術:ファシアリリース(剥離)法 前編
眼瞼下垂症の新しい当院オリジナル手術:ファシアリリース(剥離)法 前編
眼瞼下垂症の新しい当院オリジナル手術:ファシアリリース(剥離)法 後編
眼瞼下垂症の新しい当院オリジナル手術:ファシアリリース(剥離)法 後編

まとめ

眼瞼下垂は遺伝する可能性はありますが、家族に眼瞼下垂の人がいるからといって必ず遺伝するわけではありません。

むしろ、遺伝とは関係なく眼瞼下垂を発症するケースのほうが多いとされています。

生まれつきまぶたが上がりにくい先天性眼瞼下垂である場合、程度によっては早期の治療が必要です。

医師の診察を定期的に受け、経過を注意深く観察しながら、手術が必要かどうかを判断しましょう。

眼瞼下垂の遺伝・子供の眼瞼下垂でよくある質問

Q
眼瞼下垂は遺伝しますか?

一部の先天的な眼瞼下垂は遺伝する可能性がありますが、すべてが遺伝するわけではありません。

Q
先天的眼瞼下垂の確率はどのくらいですか?

先天的眼瞼下垂の正確な発生率は明確ではありませんが、一般的には比較的まれです。

米国で実施された、眼瞼下垂の疫学に関する研究によると、先天性眼瞼下垂の推定有病率は約842人に1人です。1)

Q
生まれつきの眼瞼下垂を示す兆候は何ですか?

まぶたの明らかな垂れ下がりや、目を開けるのに苦労する様子が見られます。

Q
親が眼瞼下垂である場合、子供も眼瞼下垂になる確率はどのくらいですか?

遺伝的要因が関与する場合、確率は上がりますが、必ずしも発症するとは限りません。

Q
子供の眼瞼下垂に気づいたら、どうすればいいですか?

早期に眼科専門医に相談することをお勧めします。

Q
子供の眼瞼下垂の治療法はありますか?

状況に応じて手術が推奨される場合があります。

Q
先天的眼瞼下垂と後天的眼瞼下垂の違いは何ですか?

先天的眼瞼下垂は出生時から存在し、主に筋肉の異常が原因です。後天的眼瞼下垂は生後に発生し、加齢によるもの、皮膚のたるみ、筋肉のゆるみなど、様々な原因が考えられます。

Q
眼瞼下垂の子供に対する日常生活での注意点は?

目を過度にこする行為を避け、定期的な眼科診察を受けさせてください。

参考文献

1) Wasserman BN, Sprunger DT, Helveston EM. Comparing the etiology of pediatric blepharoptosis in the United States to a global cohort: A retrospective multi-institutional analysis. J AAPOS. 2003;7(6):378-383.

2) Lyons CJ, MacEwen CJ, Young JD. A 10-year review of pediatric ptosis surgery in a single-center population: Incidence, associated conditions, and surgical outcomes. British Journal of Ophthalmology. 2004;88(3):361-364.

PAVONE, Piero, et al. Clinical heterogeneity in familial congenital ptosis: analysis of fourteen cases in one family over five generations. Pediatric neurology, 2005, 33.4: 251-254.

目に関する悩みで困ったら、まずは専門医に相談してみてください。

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このブログの執筆者
髙田 尚忠
浜松市の高田眼科を拠点に、眼瞼下垂症を中心としたまぶたの診療・手術を専門に行っています。 「見え方(視機能)」と「日常の快適さ」を回復することを第一に、診察では原因(加齢・コンタクト・体質・既往手術など)を丁寧に整理し、必要な治療を分かりやすく説明することを心がけています。 このブログでは、眼瞼下垂の症状、治療選択、術後経過で不安になりやすいポイントなどを、専門医の立場からできるだけ具体的に発信しています。
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