先天性眼瞼下垂とは?原因・見分け方・視力への影響と治療|セルフチェック付き

先天性眼瞼下垂は、まぶたを上げる筋肉(眼瞼挙筋)が生まれつき十分に育っていないために、まぶたが下がっている状態です。
- 生まれてくる赤ちゃんの約840人に1人にみられます。
- ほとんどが片目だけで、目以外に異常のないタイプです。
- 視力の発達に影響することがあり、乳幼児期は小児眼科・基幹病院で経過をみます。
- 当院では小学校高学年以降の方に、吊り上げ術を使わない手術を行っています。
先天性眼瞼下垂とは:頻度と特徴
生まれたとき、または生後1年以内に気づかれる眼瞼下垂を、先天性眼瞼下垂と呼びます。
米国で40年間にわたり地域の子ども全員を追跡した調査では、次のことが分かっています1)。
片目だけの場合は、左目に起こることが多く(68%)、ご家族にも子どもの頃からの眼瞼下垂があった方は12%でした1)。遺伝については眼瞼下垂は遺伝する?で詳しく解説しています。
原因とタイプ
先天性眼瞼下垂は、大きく2つに分かれます
もっとも多いのは、まぶた以外に明らかな異常を伴わない 「単純先天性眼瞼下垂」です。 一方で、眼球運動や顔貌、全身の病気などを伴うタイプもあります。
単純先天性眼瞼下垂
まぶたが下がっている以外に、目や体の明らかな異常を伴わないタイプです。 先天性眼瞼下垂の8割以上を占めるとされています1)。
主な原因は、まぶたを持ち上げる 眼瞼挙筋の形成不全です。 筋肉の一部が、正常な筋線維ではなく線維組織や脂肪組織に置き換わっているため、 まぶたを上げる力が弱くなります。
下を向いたときにも上まぶたが十分に下がらず、 左右のまぶたの位置に差が目立つことがあります。
眼球運動や全身の症状を伴う先天性眼瞼下垂
先天性眼瞼下垂のなかには、まぶたの下がりだけでなく、 眼球運動や顔貌、神経・筋肉の異常などを伴うものがあります。
マーカスガン現象
口を開けたり物を噛んだりすると、 下がっているまぶたが連動して動くのが特徴です。
詳しく見る眼瞼裂狭小症候群
両目の眼瞼下垂に加えて、 目の横幅が狭いなど特徴的な顔貌を示します。 遺伝性の場合もあります。
詳しく見る先天性動眼神経麻痺
まぶたの下がりだけでなく、 眼球の動きにも制限がみられることがあります。
詳しく見るそのほかの合併型
外眼筋線維症、筋疾患、まぶたの腫瘍など、 ほかの病気に関連して眼瞼下垂がみられることがあります。
詳しく見る先天性眼瞼下垂では、まぶたの形だけでなく、 視力発達・眼球運動・左右差・合併症の有無 を確認することが重要です。
先天性か後天性かを見分けるセルフチェック
生まれつきの眼瞼下垂かどうかを確認するポイント
大人になってから受診される方では、 「生まれつきなのか、後からまぶたが下がったのか」 が分からないことがあります。 次の項目に当てはまるほど、 先天性眼瞼下垂の可能性が高くなります。
先天性眼瞼下垂を疑う6つのポイント
子どもの頃の写真でも、同じ側のまぶたが下がっている
幼少期から同じ左右差が確認できれば、 生まれつきの眼瞼下垂を考える重要な手がかりになります。
下を向くと、下がっている側のまぶたが高い位置に残る
先天性眼瞼下垂では、眼瞼挙筋が伸びにくいため、 下を向いても上まぶたが十分に下がらず、 反対側より高い位置に残ることがあります。
上を向いても、目の開きがあまり変わらない
まぶたを持ち上げる眼瞼挙筋の働きが弱い場合、 視線を上に向けても上まぶたの動きが小さいことがあります。
下がっている側は、二重の線がない・または薄い
眼瞼挙筋の発達やまぶたへの付着状態によって、 二重のラインが目立ちにくいことがあります。
眉を上げたり、あごを上げたりして見るクセがある
見えにくさを補うために、 無意識に眉を上げたり、あごを上げたりしていることがあります。
片目だけまぶたが下がっている
先天性眼瞼下垂は片眼にみられることも多く、 左右差が受診のきっかけになることがあります。
このような場合は、先天性以外の原因も考えます
これらの症状がある場合は、神経や筋肉など、 別の病気による眼瞼下垂を除外することが重要です。
まぶたが下がる原因と危険なサイン →視力の発達への影響
子どもの視力は、物を見ることで育ちます。視力が育つ時期にまぶたが瞳をふさいでいたり、強い乱視があったりすると、眼鏡をかけても視力が出にくい「弱視」になることがあります。
一般の子どもの弱視は約3%なので、先天性眼瞼下垂ではその5〜7倍にあたります2)3)。弱視は、ほぼすべて片目だけの眼瞼下垂で起きていました2)。
大切なのは、弱視の原因が「まぶたが瞳を隠すこと」だけではない点です。瞳が見えていても、乱視や左右の度数の差から弱視になることがあります2)3)。最初の診察で見つからなくても後から出てくることがあるため、定期的な屈折検査が勧められています2)3)。
視力が育つ時期の評価と、弱視の治療(眼鏡、遮閉訓練、必要な場合の早期手術)は、出生後から小児眼科や基幹病院で行われます。お子さんのまぶたが気になる場合は、まずかかりつけの小児科・眼科にご相談ください。

当院に先天性眼瞼下垂症でご相談に来られるのは、どちらかというと先天性眼瞼下垂症では軽度〜中等度の方、もしくは、既に手術を行って後の方が多いです。
重度の先天性眼瞼下垂症の方は、出産後の産科や小児科の定期検診で指摘され、乳幼児だということもあり、早い段階で基幹病院で対応されることが殆どだからです。
治療の考え方
先天性眼瞼下垂は、点眼薬やトレーニングでは改善せず、治療は手術になります。
手術の時期
| 時期 | 考え方 |
|---|---|
| 乳幼児期 | 視力の発達に影響する場合に、基幹病院で全身麻酔の手術が検討される |
| 小学校高学年〜 | 局所麻酔で手術が受けられる。当院の手術はこの年齢から |
| 成人 | 年齢を問わず受けられる |
詳しくは眼瞼下垂手術は何歳から?をご覧ください。
手術の方法
一般には、筋肉の力が残っていれば眼瞼挙筋を使う手術、力が乏しければ筋膜や人工素材でおでこの筋肉とつなぐ「吊り上げ術」が選ばれます。
当院では、重度の先天性眼瞼下垂でも吊り上げ術は原則行わず、眼瞼挙筋を前に引き出して固定する「挙筋前転」で対応しています。考え方、論文での成績、リスクは先天性眼瞼下垂の手術で解説しています。
手術の前に知っておいていただきたいこと
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 目の閉じにくさ | 術後の数か月は目が閉じにくくなる。当院の経験では、ほとんどの方が時間とともに改善する |
| 二重まぶた | 手術で二重になる、二重の幅がそろう、とは限らない |
| 反対側のまぶた | 手術後に反対側が下がって見えることがあり、追加の手術で整える場合がある |
| 費用 | 当院では自由診療。片眼35万円(税込・麻酔費用を含む)、ほかに検査・診察・薬剤などで1万5,000円程度 |
年代別のご案内
| こんな方 | ご覧いただきたいページ |
|---|---|
| 小学生・中学生・高校生のお子さん | 若い人の眼瞼下垂 |
| 大人になるまで手術を受けてこなかった方、他院で吊り上げ術を勧められた方 | 大人の先天性眼瞼下垂 |
| 片目だけ下がっていて、原因が分からない方 | 片目だけまぶたが下がる原因 |
よくある質問
- 成長すれば自然に治りますか?
- 眼瞼挙筋の形成不全が原因のため、成長とともに自然に治ることは期待できません。
- 大人になってからでも手術できますか?
- できます。年齢の上限はありません。当院では笑気麻酔を併用し、局所麻酔で行います。
- 子どもは何歳から手術できますか?
- 当院では、局所麻酔で手術を受けられる小学校高学年からとしています。
- 親が先天性眼瞼下垂だと、子どもにも遺伝しますか?
- 単純先天性眼瞼下垂で、家族にも同じ症状があった方は12%と報告されています1)。多くは遺伝と関係なく起こります。
まとめ
- 先天性眼瞼下垂は、眼瞼挙筋の形成不全で起こり、約840人に1人にみられます。
- ほとんどが片目だけで、目以外に異常のないタイプです。
- 弱視は約7人に1人にみられ、乱視や斜視が原因のこともあります。
- 乳幼児期の評価と治療は、小児眼科・基幹病院で行われます。
- 当院では小学校高学年以降の方に、吊り上げ術を使わない挙筋前転の手術を行っています。
参考文献
- Griepentrog GJ, Diehl NN, Mohney BG. Incidence and demographics of childhood ptosis. Ophthalmology. 2011;118(6):1180-3. doi:10.1016/j.ophtha.2010.10.026
- Griepentrog GJ, Diehl N, Mohney BG. Amblyopia in childhood eyelid ptosis. Am J Ophthalmol. 2013;155(6):1125-1128. doi:10.1016/j.ajo.2012.12.015
- Wang Y, Xu Y, Liu X, Lou L, Ye J. Amblyopia, Strabismus and Refractive Errors in Congenital Ptosis: a systematic review and meta-analysis. Sci Rep. 2018;8(1):8320. doi:10.1038/s41598-018-26671-3
目に関する悩みで困ったら、まずは専門医に相談してみてください。
「目が開けにくくなった」「まぶたが瞳にかかって視界が狭い」「眠そうと言われる」 そんなお悩み、放っておかずに一度ご相談ください。
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