先天性眼瞼下垂の治療「単純性眼瞼下垂」
単純性眼瞼下垂の治療について
「眼瞼下垂(がんけんかすい)」の約90%を占めるといわれる「単純性眼瞼下垂」です。
単純に眼瞼下垂のみの症状で、それ以外の異常を伴いません。
単純性眼瞼下垂の手術方法については、
という眼瞼下垂の主な3つの手術方法を通してそれぞれブログ記事で、ご説明しています。
特にまぶたを上げるときに重要な役割を果たす上眼瞼挙筋(じょうがんけんきょきん)の発達障害などにより、生まれつき目を大きく開けることが困難な先天性眼瞼下垂となります。
多くの手術を行ってきましたが、単純性の先天性眼瞼下垂症の場合は、解剖学的に上眼瞼挙筋の繊維化を認め、その結果、硬くて伸びにくくなっております。
また、眼瞼自体の結合組織 ファシアが発達しているため、手術においては、それらの処理が非常に大事だと考えております。
ファシアについては、高田院長の眼瞼下垂ブログ記事:眼瞼下垂症の新しい手術概念:ファシアリリース(剥離)法 をご覧になってください。
では、先天性の場合、いつ手術を行うのか?については、子どもにとっての手術の時期は慎重に考える必要があります。
ただ、その前に重要なステップとなるのが、眼瞼下垂の診断です。大人の眼瞼下垂では、”上まぶたの縁から黒目の中央部の距離”などの測定によって診断をいたしますが、子どもの場合は、静止していることが困難なために正確な眼瞼下垂 の診断を下すことが困難なこともあります。
その際には、写真を使って判断すると良いように思います。
今では、スマートフォン等で、子供の写真や動画を撮ることは容易となっており、診断の大事な手がかりとなります。
診察の前に準備しておくと診断の助けとなります。
判断の要素としては、まぶたの左右対称かどうか、眉毛やアゴの位置などから判断を行うことになりますが、症状によっては手術の必要がないこともあります。
また、斜視で片目を閉じる癖がついているために眼瞼下垂と間違われる場合などもあるため、診断は慎重に行ってもらうことが大切です。
さらに、「先天性動眼神経麻痺(せんてんせいどうがんしんけいまひ)」など、ほかの眼瞼下垂症との区別も必要になります。
手術について
単純性眼瞼下垂の具体的な治療方法は、ブログ記事:[先天性眼瞼下垂]の症状「単純性眼瞼下垂」でもご説明しています。
当院では、先天性眼瞼下垂症に対して、ファシアリリース(剥離)法を行うことで、前頭筋吊り上げ術(筋膜移植)に頼らない手術を行っております。
当院で行っているファシアリリース法による手術にしても、前頭筋吊り上げ術(筋膜移植)にしても、先天性眼瞼下垂症の場合、術後の兎眼のリスクは伴います。
実は、先天性眼瞼下垂症において、眼瞼挙筋の発達が弱いため、それに対しての拮抗筋である眼輪筋の発達も弱いと言えます。
つまり、眼瞼下垂症手術は、「瞼(まぶた)を開きやすくする手術」と言える。一方で、「瞼(まぶた)を閉じにくくする手術」とも言えます。
しかしながら、手術後数ヶ月もすると、段々と、眼輪筋の機能が上がってきて、目が閉じられるようになると経験的に言えますが、それまでの期間のドライアイ症状、角膜障害の症状に対してのヒアルロン酸点眼などの点眼治療が必要になりますので、注意が必要です。
手術の時期は、できる限り早期に行う立場から思春期前まで待つという考え方まで多様ですが、当院では思春期まで待ってから行うようにしております。
単純性の先天性眼瞼下垂症の場合、視線を下を向いている際には、かろうじて目が開いているため、先天性眼瞼下垂症の患者様は、通常はアゴを上げて見えています。
したがって、乳幼児のうちに先天性眼瞼下垂に対して手術を行わなくても、視機能が正常に発達していることがほとんどだからという観点からです。
つまり、アゴや眉毛を上げて物を見る行為は、正常な視機能の発達にもつながります。
視力の発達が健全かどうかを注意しながら成長を見守流ことが必要となりますので、思春期まで手術をしないにしても、定期的な眼科検診を行う必要性があります。
思春期(概ね、小学校高学年ぐらい)になれば、手術に関する説明をある程度、理解することができるという背景もあります。
幼児の眼瞼下垂症手術では、全身麻酔で手術することが多いため、不安に思われる方もいらっしゃるかと思います。
大人の場合には、手術する部位のみの痛みをとる局部麻酔だけで十分なのですが、子供の場合には、手術中に受ける恐怖心などを考えると全身麻酔が必要となるケースとなります。
しかしながら、幼児といえども、全身麻酔下での眼瞼下垂症手術は、お勧め出来ない要素があります。
それは、全身麻酔下では、眼瞼下垂症で大事なデザインの確認が出来ないからです。
結果として、幼児の眼瞼下垂症は、出来るだけ、局所麻酔が可能となる思春期ぐらいまで待つのが良いように思います。
加えて、全身麻酔の場合、麻酔を専門に行う医師(麻酔科医)の関与が必要となり、その場合には、麻酔科医の在籍している規模の大きい医療施設での手術に限られます。
最近、全身麻酔よりも軽い笑気麻酔を用いることで、当院の眼瞼下垂症の手術適応年齢は下げております。
しかしながら、それでも手術を行うためには、眼瞼下垂の治療の必要性などをご本人が理解していることが前提となってきます。
若い人(小・中・高校生)の方の眼瞼下垂については、下記も参考にしてください。