眼瞼下垂の基礎知識

先天性眼瞼下垂とは?原因・見分け方・視力への影響と治療|セルフチェック付き

髙田 尚忠

先天性眼瞼下垂は、まぶたを上げる筋肉(眼瞼挙筋)が生まれつき十分に育っていないために、まぶたが下がっている状態です。

このページの要点
  • 生まれてくる赤ちゃんの約840人に1人にみられます。
  • ほとんどが片目だけで、目以外に異常のないタイプです。
  • 視力の発達に影響することがあり、乳幼児期は小児眼科・基幹病院で経過をみます。
  • 当院では小学校高学年以降の方に、吊り上げ術を使わない手術を行っています。

先天性眼瞼下垂とは:頻度と特徴

生まれたとき、または生後1年以内に気づかれる眼瞼下垂を、先天性眼瞼下垂と呼びます。

米国で40年間にわたり地域の子ども全員を追跡した調査では、次のことが分かっています1)。

842人に1人目以外に異常のない「単純先天性眼瞼下垂」の出生時の頻度
約9割子どもの眼瞼下垂のうち、生まれつきのものが占める割合(89.7%)
96%単純先天性眼瞼下垂のうち片目だけの割合(両目は4%)

片目だけの場合は、左目に起こることが多く(68%)、ご家族にも子どもの頃からの眼瞼下垂があった方は12%でした1)。遺伝については眼瞼下垂は遺伝する?で詳しく解説しています。

原因とタイプ

先天性眼瞼下垂の分類

先天性眼瞼下垂は、大きく2つに分かれます

もっとも多いのは、まぶた以外に明らかな異常を伴わない 「単純先天性眼瞼下垂」です。 一方で、眼球運動や顔貌、全身の病気などを伴うタイプもあります。

1
もっとも多いタイプ

単純先天性眼瞼下垂

✓

まぶたが下がっている以外に、目や体の明らかな異常を伴わないタイプです。 先天性眼瞼下垂の8割以上を占めるとされています1)。

なぜ、まぶたが上がりにくい?

主な原因は、まぶたを持ち上げる 眼瞼挙筋の形成不全です。 筋肉の一部が、正常な筋線維ではなく線維組織や脂肪組織に置き換わっているため、 まぶたを上げる力が弱くなります。

特徴

下を向いたときにも上まぶたが十分に下がらず、 左右のまぶたの位置に差が目立つことがあります。

先天性か後天性かを見分けるセルフチェック

大人になってから気づいた方へ

生まれつきの眼瞼下垂かどうかを確認するポイント

大人になってから受診される方では、 「生まれつきなのか、後からまぶたが下がったのか」 が分からないことがあります。 次の項目に当てはまるほど、 先天性眼瞼下垂の可能性が高くなります。

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CHECK POINT

先天性眼瞼下垂を疑う6つのポイント

01

子どもの頃の写真でも、同じ側のまぶたが下がっている

幼少期から同じ左右差が確認できれば、 生まれつきの眼瞼下垂を考える重要な手がかりになります。

02
特徴的なサイン

下を向くと、下がっている側のまぶたが高い位置に残る

先天性眼瞼下垂では、眼瞼挙筋が伸びにくいため、 下を向いても上まぶたが十分に下がらず、 反対側より高い位置に残ることがあります。

03

上を向いても、目の開きがあまり変わらない

まぶたを持ち上げる眼瞼挙筋の働きが弱い場合、 視線を上に向けても上まぶたの動きが小さいことがあります。

04

下がっている側は、二重の線がない・または薄い

眼瞼挙筋の発達やまぶたへの付着状態によって、 二重のラインが目立ちにくいことがあります。

05

眉を上げたり、あごを上げたりして見るクセがある

見えにくさを補うために、 無意識に眉を上げたり、あごを上げたりしていることがあります。

06

片目だけまぶたが下がっている

先天性眼瞼下垂は片眼にみられることも多く、 左右差が受診のきっかけになることがあります。

!
注意

このような場合は、先天性以外の原因も考えます

夕方になると悪化する 時間帯によって症状が変化する
物が二重に見える 眼球運動の異常を伴っている
急にまぶたが下がった 短期間で症状が出現した

これらの症状がある場合は、神経や筋肉など、 別の病気による眼瞼下垂を除外することが重要です。

まぶたが下がる原因と危険なサイン →
関連記事 まぶたが下がる原因と危険なサインを見る → 自分で確認する 眼瞼下垂のセルフチェック方法を見る →

視力の発達への影響

子どもの視力は、物を見ることで育ちます。視力が育つ時期にまぶたが瞳をふさいでいたり、強い乱視があったりすると、眼鏡をかけても視力が出にくい「弱視」になることがあります。

約7人に1人単純先天性眼瞼下垂の子どもで弱視がみられた割合(14.8%、地域全体の調査)2)
約半数そのうち、まぶたが瞳をふさぐことだけが原因だった割合。残りは屈折異常や斜視が原因2)
22.7%24の研究をまとめた解析での弱視の割合。乱視は22.2%、斜視は19.6%3)

一般の子どもの弱視は約3%なので、先天性眼瞼下垂ではその5〜7倍にあたります2)3)。弱視は、ほぼすべて片目だけの眼瞼下垂で起きていました2)。

大切なのは、弱視の原因が「まぶたが瞳を隠すこと」だけではない点です。瞳が見えていても、乱視や左右の度数の差から弱視になることがあります2)3)。最初の診察で見つからなくても後から出てくることがあるため、定期的な屈折検査が勧められています2)3)。

乳幼児期の評価は小児眼科・基幹病院で
視力が育つ時期の評価と、弱視の治療(眼鏡、遮閉訓練、必要な場合の早期手術)は、出生後から小児眼科や基幹病院で行われます。お子さんのまぶたが気になる場合は、まずかかりつけの小児科・眼科にご相談ください。
髙田尚忠医師
髙田尚忠医師

当院に先天性眼瞼下垂症でご相談に来られるのは、どちらかというと先天性眼瞼下垂症では軽度〜中等度の方、もしくは、既に手術を行って後の方が多いです。

重度の先天性眼瞼下垂症の方は、出産後の産科や小児科の定期検診で指摘され、乳幼児だということもあり、早い段階で基幹病院で対応されることが殆どだからです。

治療の考え方

先天性眼瞼下垂は、点眼薬やトレーニングでは改善せず、治療は手術になります。

手術の時期

時期考え方
乳幼児期視力の発達に影響する場合に、基幹病院で全身麻酔の手術が検討される
小学校高学年〜局所麻酔で手術が受けられる。当院の手術はこの年齢から
成人年齢を問わず受けられる

詳しくは眼瞼下垂手術は何歳から?をご覧ください。

手術の方法

一般には、筋肉の力が残っていれば眼瞼挙筋を使う手術、力が乏しければ筋膜や人工素材でおでこの筋肉とつなぐ「吊り上げ術」が選ばれます。

当院では、重度の先天性眼瞼下垂でも吊り上げ術は原則行わず、眼瞼挙筋を前に引き出して固定する「挙筋前転」で対応しています。考え方、論文での成績、リスクは先天性眼瞼下垂の手術で解説しています。

手術の前に知っておいていただきたいこと

項目内容
目の閉じにくさ術後の数か月は目が閉じにくくなる。当院の経験では、ほとんどの方が時間とともに改善する
二重まぶた手術で二重になる、二重の幅がそろう、とは限らない
反対側のまぶた手術後に反対側が下がって見えることがあり、追加の手術で整える場合がある
費用当院では自由診療。片眼35万円(税込・麻酔費用を含む)、ほかに検査・診察・薬剤などで1万5,000円程度

年代別のご案内

こんな方ご覧いただきたいページ
小学生・中学生・高校生のお子さん若い人の眼瞼下垂
大人になるまで手術を受けてこなかった方、他院で吊り上げ術を勧められた方大人の先天性眼瞼下垂
片目だけ下がっていて、原因が分からない方片目だけまぶたが下がる原因

よくある質問

成長すれば自然に治りますか?
眼瞼挙筋の形成不全が原因のため、成長とともに自然に治ることは期待できません。
大人になってからでも手術できますか?
できます。年齢の上限はありません。当院では笑気麻酔を併用し、局所麻酔で行います。
子どもは何歳から手術できますか?
当院では、局所麻酔で手術を受けられる小学校高学年からとしています。
親が先天性眼瞼下垂だと、子どもにも遺伝しますか?
単純先天性眼瞼下垂で、家族にも同じ症状があった方は12%と報告されています1)。多くは遺伝と関係なく起こります。

まとめ

  • 先天性眼瞼下垂は、眼瞼挙筋の形成不全で起こり、約840人に1人にみられます。
  • ほとんどが片目だけで、目以外に異常のないタイプです。
  • 弱視は約7人に1人にみられ、乱視や斜視が原因のこともあります。
  • 乳幼児期の評価と治療は、小児眼科・基幹病院で行われます。
  • 当院では小学校高学年以降の方に、吊り上げ術を使わない挙筋前転の手術を行っています。

参考文献

  1. Griepentrog GJ, Diehl NN, Mohney BG. Incidence and demographics of childhood ptosis. Ophthalmology. 2011;118(6):1180-3. doi:10.1016/j.ophtha.2010.10.026
  2. Griepentrog GJ, Diehl N, Mohney BG. Amblyopia in childhood eyelid ptosis. Am J Ophthalmol. 2013;155(6):1125-1128. doi:10.1016/j.ajo.2012.12.015
  3. Wang Y, Xu Y, Liu X, Lou L, Ye J. Amblyopia, Strabismus and Refractive Errors in Congenital Ptosis: a systematic review and meta-analysis. Sci Rep. 2018;8(1):8320. doi:10.1038/s41598-018-26671-3

目に関する悩みで困ったら、まずは専門医に相談してみてください。

「目が開けにくくなった」「まぶたが瞳にかかって視界が狭い」「眠そうと言われる」
 そんなお悩み、放っておかずに一度ご相談ください。

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医師または専門スタッフが、あなたの症状に合わせてご案内いたします。

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このブログの執筆者
髙田尚忠
髙田尚忠
高田眼科 院長|フラミンゴ美容クリニック/銀座Jクリニック/あさ美皮フ科 眼瞼手術担当
岡山大学医学部卒業後、郡山医療生活協同組合 桑野協立病院などの様々な医療機関を勤務し、現在は高田眼科の院長を務めつつ、関連クリニックの名古屋のフラミンゴ眼瞼・美容クリニック、銀座のJ clinic、亀戸のあさ美皮フ科においても、眼瞼下垂手術を中心に年間2,000件以上の眼瞼手術に携わっています 「見え方(視機能)」と「日常の快適さ」を回復することを第一に、診察では原因(加齢・コンタクト・体質・既往手術など)を丁寧に整理し、必要な治療を分かりやすく説明すること心がけています。 このブログでは、眼瞼下垂の症状、治療選択、術後経過で不安になりやすいポイントなどを、専門医の立場からできるだけ具体的に発信しています。
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