筋肉の病気による眼瞼下垂(筋原性眼瞼下垂)|ミオパチー・筋ジストロフィーの見分け方と手術を眼形成外科医が解説

両方のまぶたが、何年もかけて少しずつ下がってきた。目の動きが悪い、飲み込みにくい、家族にも同じ症状の人がいる。こうした場合、まぶたを上げる筋肉そのものが弱る病気が隠れていることがあります。筋肉の病気による眼瞼下垂(筋原性眼瞼下垂)の種類、見分け方、手術の考え方を解説します。
- 筋肉の病気でも眼瞼下垂は起こる:代表的なのは、ミトコンドリア病(慢性進行性外眼筋麻痺・カーンズ・セイヤー症候群)、眼咽頭型筋ジストロフィー、眼咽頭遠位型ミオパチー、筋強直性ジストロフィーです。
- 手術でまぶたを上げることはできる:研究をまとめると、1回の手術で上がった割合は80〜96%でした。
- ただし、上げ方には注意が必要:目を閉じる力も弱いことが多いため、角膜を守れる高さに控えめに上げ、病気の進行による再手術も見込んで計画します。
執筆:髙田 尚忠(高田眼科 院長/眼科医・眼形成外科) 最終更新:2026年10月
筋肉の病気による眼瞼下垂(筋原性眼瞼下垂)とは
まぶたは、眼瞼挙筋という筋肉が、その先の腱(すじ)である挙筋腱膜を介して瞼板を引き上げることで開きます。眼瞼下垂の多くは、加齢などで腱膜が瞼板から外れたり伸びたりする「腱膜性眼瞼下垂」です。一方、筋原性眼瞼下垂では、眼瞼挙筋そのものが病気で弱っていきます1,2。
神経と筋肉のつなぎ目の病気である重症筋無力症も、まぶたや目の動きに症状が出ます。夕方に悪くなるなど、1日の中で症状が変わるのが特徴です。詳しくは「重症筋無力症による眼瞼下垂」をご覧ください。生まれつき、まぶたの下がりと目の動きの制限がある場合は「先天性外眼筋線維症」も参考にしてください。
眼瞼下垂を起こす主な筋肉の病気
細胞のエネルギーを作るミトコンドリアの異常で、両目のまぶたと目の動きが少しずつ悪くなります。89人の研究では、目の症状だけの人が42%、ほかの症状を伴う人が48%、心臓の伝導障害などを伴うカーンズ・セイヤー症候群が10%でした3。浜松医科大学の研究では、7人中5人で目が前に出る変化(眼球突出)がみられました4。
慢性進行性外眼筋麻痺カーンズ・セイヤー症候群
40〜50代ころから、両目のまぶたの下がりと飲み込みにくさが少しずつ進みます。手足では、太ももや肩など体に近い筋肉が弱りやすく、その割合は8割でした5,2。
眼咽頭型筋ジストロフィー1977年に日本で初めて報告された病気で、患者さんの多くが東アジアから報告されています。まぶたと飲み込みに加えて、手先や足首など体から遠い筋肉が弱るのが特徴です5。
眼咽頭遠位型ミオパチー握った手が開きにくい(筋強直)のが特徴です。スペインの42人の研究では、半数にはっきりした眼瞼下垂があり、平均47歳の時点で36%がすでに白内障の手術を受けていました6。
筋強直性ジストロフィー(大人)先天性筋強直性ジストロフィー
眼咽頭型は眼咽頭型筋ジストロフィー、眼咽頭遠位型は眼咽頭遠位型ミオパチー。国内で疑われて遺伝子が確認された例。いずれもまれな病気で、2019年以降に原因遺伝子が相次いで見つかりました5
こんなときは、筋肉の病気を疑います
カーンズ・セイヤー症候群では、心臓の検査が大切です
心臓の電気の伝わり方が悪くなり、突然失神したり、心停止に至ったりすることがあります。報告のほとんどで、まぶたや目の動きの症状が心臓の症状より先に出ていました8。若いころからまぶたが下がり、目の動きも悪い方は、心電図の検査を受けてください。
筋肉の病気でも、まぶたの手術はできる?
できます。ただし、目標は「視界を確保すること」です。
筋肉の病気では目を閉じる力も弱いことが多く、上げすぎると角膜が乾いて傷つきます。そのため、複数の研究で意図的に控えめに上げる方針がとられていました2。
27の研究をまとめた総説。ミトコンドリア病(慢性進行性外眼筋麻痺)97眼、重症筋無力症(参考)125眼、眼咽頭型筋ジストロフィー652眼2
手術方法は、まぶたを上げる力で選ぶ
残っている挙筋の力を生かして、腱膜や筋肉を瞼板に固定し直します。挙筋の力が強いほど成功しやすく、ある研究では成功率が42.8%から100%まで変わりました9。
眼瞼挙筋前転法まぶたと額の筋肉をつないで、額の力でまぶたを上げます。慢性進行性外眼筋麻痺では7割、眼咽頭型筋ジストロフィーでは6割の手術でこの方法が選ばれていました2。
前頭筋吊り上げ術手術中に調べた40人のうち72.5%で、まぶたを補助的に上げるミュラー筋にも病気の変化がありました。ミュラー筋と腱膜を合わせて前転すると、腱膜だけより上がりやすいと報告されています10。
手術で注意すること
手術を受けるまでの流れ
よくある質問
筋肉の病気そのものは治りますか。
現在、筋肉の病気そのものを治す治療は確立していません。原因遺伝子の発見が続いており、治療法の研究が進められています5。まぶたの下がりは、手術で視界を広げることができます。
手術をしても、また下がりますか。
病気が進むと、再び下がることがあります。そのため、角膜を守ることを優先して控えめに上げ、必要に応じて再手術を検討します2。
手術は保険が使えますか。
視界が狭くなるなど、生活に支障がある眼瞼下垂と診断されれば、保険診療の対象です。ただし、まぶたを上げる力が大きく失われている場合など、手術の方法によっては自費診療となることがあります。詳しくは診察時にご説明します。
普通の眼瞼下垂と、どう見分けるのですか。
まぶたを上げる力、目の動き、飲み込みや手足の症状、家族歴を確認します。加齢による眼瞼下垂では、まぶたを上げる力は保たれていることがほとんどです。
高田眼科の考え方
筋肉の病気による眼瞼下垂でも、まぶたを上げる力が残っていれば、眼瞼挙筋前転法を基本に手術を行います。目を閉じる力や目の乾きを事前に確認し、角膜を守れる高さに調整します。病気の診断や全身の管理は、脳神経内科などの専門医と連携して進めます。
まぶたの下がりと、目の動きや飲み込みが気になる方へ
まぶたの下がりの原因を見きわめ、全身の状態に合わせた治療方針をご提案します。
参考文献
PubMed収載論文をもとに作成しています。文献2・5は全文、それ以外は抄録を確認しています。
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