眼瞼下垂の基礎知識

眼瞼下垂手術の「糸」で仕上がりは変わる|糸の違い・再発との関係を専門医が解説

髙田 尚忠

眼瞼下垂症手術では、どの術式を選択するかが重要であることは言うまでもありませんが、それと同じくらい重要なのが、どのような糸を、どの部位に、どの太さで、どのように縫うかという点です。

手術の結果は、単に「良い糸を使っているかどうか」で決まるものではなく、糸の特性を理解したうえで、適切な縫い方と調整が行われて初めて、仕上がりの自然さや長期的な安定性に繋がります。

近年、「細い糸を使って頂けますか?」という質問を受けることも増えています。しかし、糸の色だけに注目してしまうと、本質的に重要な部分が見えなくなってしまいます。

このページでは、

  • 眼瞼下垂症手術で糸が使われる部位
  • 透明な糸を使用するメリット・デメリット
  • 見落とされがちな「糸の太さ(6-0 / 7-0)」の意味
  • 保険診療と自費診療(自由診療)での糸の使い分け
  • 眉下切開における糸と手技の重要性

について、眼瞼下垂症手術における糸の役割を整理しながら、糸の太さ、縫合の考え方、再発との関係等に触れながら、専門的な立場からできるだけ分かりやすく解説します。


眼瞼下垂症手術で「糸」を使用するパートは大きく2つあります

眼瞼下垂症手術では、糸は主に二つの場面で使われます。ひとつは眼瞼挙筋前転法などにおける瞼板固定、もうひとつは皮膚縫合です。

そして、眉下切開の場合には、真皮埋没縫合と皮膚縫合という形で役割が分かれます。

これらはすべて同じ「糸」ではありますが、求められる役割はまったく異なります。

そのため、糸の太さや性質、縫合の仕方を場面ごとに考える必要があります。

眼瞼下垂症手術で使用する糸は、それぞれの選択の意味があり、すべて同じ目的で使われているわけではありません。

① 眼瞼挙筋前転法における糸

  • 挙筋腱膜と瞼板を固定するための糸(瞼板固定)
    ➡️ 瞼板固定では、まぶたの開きを長期的に支えるための強度と安定性が最優先されます。
  • 皮膚を閉じるための糸(皮膚縫合):
    ➡️ 皮膚縫合では、傷をきれいに治すことに加えて、二重ラインのきっかけを適切な位置に作るという役割も担っています。

② 眉下切開における糸

  • 真皮縫合に使用する糸:
    ➡️ 理想的な縫合糸の条件は、すべりがよくてほどけにくく、組織反応が少なく溶ける。
  • 表層の皮膚縫合に使用する糸
    ➡️ 傷跡が残らないように、糸の跡がつかない太さ、盛り上がるように縫える強度が必要。

それぞれの工程で、
糸に求められる役割・強度・太さは異なります。


眼瞼挙筋前転法における「瞼板固定の糸」

眼瞼挙筋前転法は、眼瞼下垂症手術の中核となる術式です。

この手術では、挙筋腱膜を瞼板のどこに、どの程度の張力で固定するかが、まぶたの開きや左右差、そして長期的な安定性を左右します。

つまり、ここの部分に問題があると、せっかく眼瞼下垂手術をしたのに、眼瞼下垂症が再発してしまうからです。

保険診療で行う眼瞼下垂症手術では、瞼板固定と皮膚縫合のいずれにも6-0の太さの糸を使用しています。

この太さは、必要十分な強度と再現性を確保できるバランスの取れた選択です。保険診療だからといって仕上がりを軽視しているわけではなく、安定性と安全性を最優先した結果としての選択です。

一方、自費診療では、より細やかな仕上がりを目指すため、糸の使い分けを行っています。

瞼板固定については、固定力と耐久性を重視し、保険診療と同様に6-0の糸を使用しますが、皮膚縫合では7-0のより細い糸を用います。

これにより、皮膚への侵襲を抑え、傷の目立ちにくさや仕上がりの繊細さを高めています。

この手術では、
挙筋腱膜を瞼板のどの位置に、どの強さで固定するかが、
まぶたの開き・左右差・安定性を決定づけます。

糸に求められる条件

瞼板固定に使用する糸には、以下の条件が必要です。

  • 組織親和性が高いこと
  • 経年劣化が少ないこと
  • 結び目が解けにくいこと

とくに眼瞼は、
瞬きや眼球運動によって常に動く部位であり、
結紮の安定性が非常に重要です。


糸の太さが仕上がりに与える影響

糸の太さは、仕上がりに直接関わる重要な要素です。

細い糸は組織へのダメージが少なく、触知感や違和感が出にくいという利点がありますが、強度には限界があります。

逆に太い糸は固定力が高く安定しやすい反面、結び目や糸の存在感が出やすくなります。

眼瞼下垂症手術では、どちらか一方が正解ということはありません。

重要なのは、固定する部位や求められる役割に応じて、適切な太さを選択することです。

とくに、術中に微調整を繰り返す必要がある症例では、糸が調整に耐えうること、結紮後に緩まないことが重要になります。

保険診療における糸の考え方(眼瞼挙筋前転法)

保険診療で行う眼瞼下垂症手術では、

  • 瞼板固定
  • 皮膚縫合

両方に、6-0(6号)の太さの糸を使用しています。

  • 必要十分な強度があること
  • 安定した固定が可能であること
  • 保険診療として再現性と安全性が高いこと

を重視した選択です。

保険診療であっても、仕上がりの自然さと安定性を犠牲にすることはありません。


自費診療(自由診療)における糸の使い分け ― 太さを変える意味

自費診療(自由診療)では、同じ糸をすべての工程に使うのではなく、部位ごとに太さを使い分けています。

瞼板固定の糸

  • 6-0(6号):(直径 約0.085mm)
    → 固定力と耐久性を最優先

皮膚縫合の糸

  • 7-0(7号):(直径 約0.065mm)
    → より細く、皮膚への侵襲を抑える

皮膚縫合では、

  • 傷をきれいに治すこと
  • 二重のラインの「きっかけ」を正しい位置に作ること

が重要です。

糸が太すぎると、結び目や糸の存在感が出やすくなり、逆に細すぎると強度が不足します。

自費診療(自由診療)では、皮膚縫合に7-0を用いることで、傷の目立ちにくさと仕上がりの繊細さを高めています。


皮膚縫合は「二重ラインを作る工程」でもあります

皮膚縫合は「傷を閉じる」だけではありません

皮膚縫合は、単に皮膚を寄せて閉じるための工程ではありません。

眼瞼下垂症手術においては、将来的な二重ラインの形成に大きく関わる重要な工程です。

皮膚縫合に必要なのは、創部を安定させるための強度と、二重のきっかけとなるラインを適切な位置に作るためのテンションです。

このバランスが崩れると、切開線が不自然に盛り上がったり、二重ラインが安定せず三重瞼のような仕上がりになったりすることがあります。

したがって、皮膚縫合の糸には、

  1. 皮膚を確実に寄せて治癒させる強度
  2. 二重ラインが形成されるための適切なテンション

の両方が必要です。

この強度が不足すると、

  • 切開線が盛り上がる
  • 二重のきっかけとなる線が形成されない
  • 結果として三重瞼のような仕上がりになる

ことがあります。

そのため、自費診療(自由診療)では皮膚縫合に7-0の糸を用い、強度を確保しつつも、できるだけ繊細に縫合を行っています。

皮膚縫合の糸選びと縫合精度は、見た目の完成度に直結するからです。

高田尚忠医師
高田尚忠医師

実は、眼瞼下垂症手術、特に、眼瞼挙筋前転法においての皮膚縫合に使用する糸は、細ければ細いほど良いわけではありません。

この手術の結果の安定性において、手術の傷跡(術創)が二重の折り目にキチンとなることが非常に重要で、細すぎる縫合糸だと強度不足になるからです。

つまり、細い糸だと傷が綺麗に治りすぎて、逆に、手術が上手くいかないというジレンマになります。


眉下切開における糸の選択と手技の重要性

眉下切開では、真皮埋没縫合と皮膚縫合がそれぞれ異なる役割を果たします。

真皮縫合では、傷がしっかりと治癒するまで、一定のテンションを維持することが重要です。

そのため、6-0の吸収糸を使用し、結紮中に弛みにくい形状のものを選択しています。

皮膚縫合では、傷が凹まないよう、わずかに盛り上がる程度に皮膚を寄せることが求められます。

ここでは糸の太さだけでなく、針の通し方や糸のかけ方、結び方といった形成外科的な基本手技の完成度が、最終的な仕上がりを大きく左右します。

そういった眉下切開の縫合についてのコダワリについては、下記のブログへ

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眼瞼下垂の手術と「眉下切開(アイリフト)」の違い
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真皮埋没縫合の糸

  • 6-0の吸収糸を使用
  • 結んでいる途中で弛みにくい形状のものを選択

傷がしっかり治癒するまで、一定のテンションを維持することが重要です。

皮膚縫合の糸

  • 7-0の糸を使用
  • 傷が凹まず、わずかに盛り上がるよう丁寧に縫合

眉下切開では、

  • 糸の種類
  • 針の通し方
  • 糸のかけ方
  • 結び方

といった、形成外科としての基本手技の完成度が、仕上がりを大きく左右します。


当院で使用している糸の素材について

眉下切開の真皮縫合に用いる吸収糸を除き、
当院で使用している糸はすべて、
河野製作所のASFLEXアスフレックス)を使用しています。

アスフレックスは本来、血管縫合用として開発された糸ですが、

  • 組織親和性
  • 結紮の安定性
  • 経年劣化の少なさ

といった点において、
眼瞼下垂症手術に使用する糸として、素材的に非常に優れている
と考えています。

1) 長期的な“不活性”=固定位置が「時間で変わりにくい」設計思想

ASFLEXはPVDF(ポリビニリデンフルオライド)を用いた非吸収糸で、生体内での品質劣化がほとんどなく、長期的不活性を特徴としています。

眼瞼下垂手術において腱膜を瞼板へ固定した“その位置”は、手術直後は仮固定という状態ですが、術後は「創傷治癒+瘢痕化」で最終形に完全に固定化され落ち着きます。

その間に糸側の特性が不安定だと、固定の「遊び」や「緩み」に見える要素が増えがちです。

糸が長期に安定している”ことは、材料という変数を減らすことができるという意味で相性が良いです。

2) 組織反応が最小限=「浮腫・硬さ・違和感」の因子を増やしにくい

組織反応を最小限に抑えることも特徴として挙げられます。
まぶたは薄く、腱膜~瞼板周囲は術後反応が目立ちやすい場所なので、異物反応が強い糸だと、

  • 触れる硬さ
  • 局所の違和感
  • しこり様の反応(肉芽など)
    に繋がり得ます。

その意味で、“反応が出にくい方向の糸”は、眼瞼下垂手術のように「仕上がりの質感」まで評価される手術で、メリットとして働きやすいです。

3) 平滑性が高い=瞼板周囲の“余計な組織損傷”を増やしにくい

ASFLEXは平滑性(滑り)と組織通過性が特徴であり、通糸する際に組織損傷を最小限にすることができます。

瞼板固定は「狙った層を正確に拾う」ことが重要で、運針時に引っかかりが強い糸・針だと、薄い組織を余計に裂いたり、意図せず層がズレたりしやすい。

通りの良さ=操作の再現性が上がりやすく、手術結果の安定に寄与します。

4) 結節抗張力・張力残存力が高い=「結び目と固定の安定」を取りに行ける

メーカーは結紮抗張力(結節抗張力)や張力残存力の高さを挙げ、従来の合成非吸収糸よりスムーズな滑り下ろしと適度なコシ、と説明しています。

眼瞼下垂の瞼板固定で使用する縫合しにおいて重要なのは、「糸そのものの強度」以上に、

  • 結び目が緩みにくい(ノットセキュリティ)
  • 固定点がズレない(張力が保たれる)
  • 微調整して最終固定しても“決まる”(操作性)

の3点です。

この方向性の特性を持つ糸は、左右差の詰め微調整(仮固定→確認→最終固定)を丁寧にやる術者ほど、メリットを引き出しやすいタイプです。


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透明な糸は「自費診療のオプション」として使用しています

透明な糸は、
保険診療では使用せず、自費診療(自由診療)におけるオプションとして使用しています。

透明な糸は視認性が低く、
抜糸が非常に難しいため、
高度な技術と経験が必要です。

その一方で、

  • ダウンタイム中に糸が目立たない
  • 術後の外見的ストレスが少ない
  • 日常生活への復帰がしやすい

といった大きなメリットがあります。

ダウンタイムをできるだけ楽に過ごしたい方にとって、有効な選択肢の一つと考えています。

高田尚忠医師
高田尚忠医師

眼瞼下垂症手術において、ダウンタイムが短いことが特に患者様から求められることだと思います。

当院としても、これまで様々な工夫を凝らして、手術を進化させてきました。

どうしても、皮膚を切開することが基本となる眼瞼下垂症手術においては、抜糸を行うまで、日常生活の中で糸が見えてしまうことが最大の障壁だと思います。

患者様からのお問い合せの内容でも、時々、溶ける糸で縫って欲しいとご要望を頂くことがあります。

実は、医療の常識として、溶ける糸(吸収糸)で縫うと、余計に傷が汚くなってしまうので縫うことはありません。

溶ける糸(吸収糸)というのは、自然と溶けるのではなく、体の免疫反応・加水分解で溶けるものなので、吸収糸で皮膚を縫うと、飛び出している部分はなかなか溶けず、物理刺激になり、傷の炎症を誘発してしまいます。

また、糸が溶けるとしても、免疫反応により、炎症反応が出てしまうからです。

やはり、術後、傷をキレイに治すためのコツは、傷口(医学的には、創というのですが・・)の炎症を出来るだけ少なくし、早く炎症反応を終わらせることにあります。


まとめ ― 糸は仕上がりを支える重要な要素の一つ

眼瞼下垂症手術において、
糸は非常に重要な要素ですが、
糸の名前や色だけで仕上がりが決まることはありません。

重要なのは、

  • どの部位に
  • どの素材の糸を
  • どの太さで
  • どの強さで
  • どのように調整しながら固定するか

という、総合的な判断と手技です。

透明な糸は万能ではありませんが、
適切に使い分けることで、
仕上がりやダウンタイムの質を高めることができます。

高田尚忠医師
高田尚忠医師

かつては、8-0(約0.045mm)、さらに、細い9-0(直径 約0.035mm)を使用し、皮膚縫合の糸を限界まで細くするようなチャレンジをしてきました。

細ければ、細いだけ、縫合の際に、糸が引っ掛かったりすると、切れてしまったり、ちょっとした空気の流れや静電気で、なびいたりするので、縫うのが非常に難しくなりますので、縫合技術の限界までのチャレンジでしたが、費用対効果などを考え、今では使用しておりません。

当院のブログをご覧になられて、私のことを眼瞼下垂症の名医だと仰って受診される方がいらっしゃいますが、実は、私自身は、むしろ、「迷医」だとも思っております。

それは、眼瞼下垂症手術の最適解を探して、いつも迷いながらも手術を行い続けているからです。

当院では、手術内容について、日々、見直しを重ねて、よりトラブルの少ない手術を探し求めております。

目に関する悩みで困ったら、まずは専門医に相談してみてください。

「目が開けにくくなった」「まぶたが瞳にかかって視界が狭い」「眠そうと言われる」
 そんなお悩み、放っておかずに一度ご相談ください。

当院への眼瞼下垂症手術のご相談は、LINEから簡単にご予約いただけます。
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このブログの執筆者
髙田 尚忠
髙田 尚忠
高田眼科 院長|フラミンゴ美容クリニック/銀座Jクリニック/あさ美皮フ科 眼瞼手術担当
岡山大学医学部卒業後、郡山医療生活協同組合 桑野協立病院などの様々な医療機関を勤務し、現在は高田眼科の院長を務めつつ、関連クリニックの名古屋ののフラミンゴ眼瞼・美容クリニック、銀座のJ clinic、亀戸のあさ美皮フ科においても、眼瞼下垂手術を中心に多くの年間2000件以上の手術を行っています。「見え方(視機能)」と「日常の快適さ」を回復することを第一に、診察では原因(加齢・コンタクト・体質・既往手術など)を丁寧に整理し、必要な治療を分かりやすく説明すること心がけています。 このブログでは、眼瞼下垂の症状、治療選択、術後経過で不安になりやすいポイントなどを、専門医の立場からできるだけ具体的に発信しています。
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