円錐角膜とは?症状・原因・検査・治療について

円錐角膜とは
円錐角膜とは、角膜が徐々に薄くなって前方へ突出し、不正乱視や近視、視力低下などを起こす角膜疾患です。
思春期から若年成人期に発症することが多く、左右差を伴いながら両眼に生じることがあります。
初期の円錐角膜では、眼鏡の度数が頻繁に変わる、乱視が強くなる、光がにじむ・まぶしく感じるといった症状から始まることがあります。
進行すると眼鏡だけでは十分な視力が得られなくなり、ハードコンタクトレンズなどによる視力矯正が必要になる場合があります。
また、円錐角膜の進行が確認される場合には、角膜クロスリンキングによって進行を抑える治療が検討されます。
さらに進行した症例では、角膜内リングや角膜移植などが選択肢となることもあります。
このページでは、円錐角膜の症状・原因・検査方法・進行の評価から、コンタクトレンズ、角膜クロスリンキング、角膜移植などの治療について、眼科医が分かりやすく解説します。
この記事の著者

名前 / Name
高田 尚忠(たかだ なおただ)
高田眼科 院長|ひとみ眼科 / フラミンゴ美容クリニック 眼瞼手術担当医師
岡山大学医学部卒業後、郡山医療生活協同組合 桑野協立病院などの様々な医療機関を勤務し、現在は高田眼科の院長を務める。2022年3月より、名古屋市内の伏見駅近くのフラミンゴ眼瞼・美容クリニックを開院。
円錐角膜の症状
円錐角膜では、角膜の中心が薄くなり円錐状に突出します。
角膜は、眼球の前面を覆う透明な膜で、カメラのレンズのような働きをしています。このレンズの形状が変形してしまうため、視力低下や視界が歪むなど、様々な症状が起こります。
- 視力低下が徐々に進む
- まぶしさや光の散乱が増加する
- 角膜の中心部分が突出する
ゆっくりと視力の低下が進む

円錐角膜の最も特徴的な症状として、ゆっくりと悪化していく視力の低下が挙げられます。
病気の初期段階ではわずかな視力の変化を感じる程度ですが、症状が進むにつれて近視と乱視がはっきりと表れるようになります。
近視化は、遠くの物が見えにくくなる状態を指します(一般的にいう「目が悪くなる」状態です)。
一方、乱視は物がぼやけたり、ぶれて何重にも見えたりするような状態です。
一般的な乱視とは異なり不規則で複雑な性質を持ち、通常の眼鏡やソフトコンタクトレンズを使っても、上手く見えるようにはならないケースが多いと言えます。
まぶしさの増加と光の異常な散乱
円錐角膜になると、初期の段階からまぶしさ(専門用語で羞明と呼びます)を感じやすくなります。これは角膜の形が変わり、目の中で光が散乱することが原因です。
光が伸びてまぶしく見える現象(グレア)が起きたり、直接光を見ていなくても強い不快感を感じたりするなど、昼夜を問わず持続的なまぶしさに悩まされる場合があります。

角膜の突出
円錐角膜では角膜の真ん中~やや下が薄くなるため、内側からの圧力に耐えられなくなり、円錐状に出っ張ってしまいます。
初期ではほんのわずかな角膜の形状変化ですが、病気が進むと、眼球を横から見ただけでも突出が分かるようになります。
これにより、コンタクトレンズの度数が合わなくなる、カーブが変わりレンズが外れやすくなる、角膜とレンズが擦れ痛みが現れるなどの症状も現れてきます。

円錐角膜の原因
円錐角膜の原因究明は日々進んでいますが、いまだ完全な解明には至っていません。
現時点では、環境や行動、全身性の病気や遺伝などの要素が組み合わさって起こると考えられています5)。
発症の原因と考えられるもの

目をこする習慣
目をこする癖や、繰り返し強くこする習慣がある人では、 円錐角膜との関連が指摘されています。
アレルギー
とくにアトピー性皮膚炎などのアレルギー疾患を持つ人では、 円錐角膜がみられることがあります。
全身性の病気
エーラス・ダンロス症候群やダウン症など、 一部の全身性疾患との関連が知られています。
ほかの眼疾患
角膜ジストロフィの一部や、レーベル先天性黒内障などの 眼疾患に伴ってみられることがあります。
遺伝的な要因
家族内で複数の人に発症する例は多くありませんが、 遺伝的な素因が関与していると考えられています。
ホルモンとの関連
思春期に発症・進行する例が多いことなどから、 ホルモン環境との関連も研究されています。
これらが単独で円錐角膜を引き起こすという意味ではありません。 円錐角膜は、遺伝的要因と環境要因などが複雑に関与して発症すると考えられています。

【角膜ジストロフィとの違いについて】
角膜が濁ったり、視力が低下したりする病気には、円錐角膜以外にもさまざまな角膜疾患があります。
その代表の一つが「角膜ジストロフィ」です。円錐角膜は主に角膜の形状が変化する病気ですが、角膜ジストロフィは角膜の特定の層に異常な物質が沈着したり、角膜内皮などに異常が生じたりする病気です。
似たような「見えにくさ」があっても原因は異なるため、角膜の状態を詳しく検査することが重要です。
▶ 角膜ジストロフィの種類・原因・治療について詳しくはこちら
https://gankenkasui.takada-ganka.com/corneal-dystrophy/
円錐角膜と関連する他の病気
アトピー性皮膚炎や花粉症、アレルギー結膜炎の既往歴がある人は目のかゆみからこする行動につながりやすく、円錐角膜を発症する人も多くいます。
また、エーラス・ダンロス症候群やダウン症、僧帽弁逸脱症の人にも多い傾向があります。
| 病名 | 円錐角膜との関連 |
|---|---|
| アトピー性皮膚炎 | 顔やまぶたにも症状が現れやすく、かゆみによって目をこする行動が繰り返されることで、 角膜に慢性的な機械的刺激が加わります。 こうした目をこする習慣は、円錐角膜の発症や進行に関与すると考えられています。 |
| アレルギー疾患 | アレルギー性結膜炎などでは、目のかゆみから頻繁に目をこすりやすくなります。 このような機械的刺激が、円錐角膜の発症・進行に関与する可能性があります。 また、喘息などのアレルギー疾患との関連も報告されています。 |
| エーラス・ダンロス症候群 | 結合組織の異常を特徴とする遺伝性疾患で、 関節の過可動性や皮膚の過伸展などがみられます。 結合組織の脆弱性を背景として、円錐角膜との関連が報告されています。 |
| ダウン症 | ダウン症では、一般人口と比較して円錐角膜の合併頻度が高いことが知られています。 視力低下や乱視がみられる場合には、角膜形状の評価が重要になることがあります。 |
| 僧帽弁逸脱症 | 心臓の僧帽弁が左心房側へ突出する疾患です。 円錐角膜との関連を報告した研究がありますが、 その関連性については研究によってばらつきがあります。 |

円錐角膜の患者さんを診察していると、アレルギーによる目のかゆみがあり、日常的に目をこすっている方も少なくありません。
円錐角膜では「目をこすらないこと」も非常に大切です。かゆみがある場合には、アレルギー性結膜炎そのものを治療しておきましょう。
▶ アレルギー性結膜炎について詳しくみるhttps://gankenkasui.takada-ganka.com/perennial-allergic-conjunctivitis/
関連する目の病気
角膜ジストロフィやレーベル先天性黒内障の人は、円錐角膜を合併するケースがあります。
角膜が濁る遺伝性・進行性の病気の総称。濁りの現れる層や形状などによって多数の病型に分けられ、症状も異なる。
すべての角膜ジストロフィで合併するわけではありませんが、「後部多形性角膜ジストロフィ」という病型では、水疱状や帯状の病変とともに円錐角膜を認める例が多くみられます。
見た目には異常がないものの、重度の視力障害や眼振(眼球の揺れ)などがみられる病気。出生時~生後数カ月以内に発症する。
円錐角膜の検査・診断方法
円錐角膜の診断では、スリットランプ検査や視力検査などを基本とし、さらに細かな角膜の形状検査が必要です。
- 問診・視力検査:症状の確認、近視や遠視、乱視などを調べる
- スリットランプ検査:角膜の状態を確認する
- 角膜トポグラフィ検査:角膜の形状を測定する
問診・視力検査
視力や屈折状態を調べる際には、「オートレフケラトメーター」という機器を使用します。
この検査では近視や乱視などの度数だけでなく、角膜のカーブ(角膜曲率)も測定できます。
円錐角膜では角膜が前方へ突出するため、角膜のカーブが通常より急になったり、強い乱視が現れたりします。
そのため、一般的な眼科診療で行うオートレフケラトメーターの測定結果から異常に気づき、円錐角膜の診断につながることも少なくありません。
ただし、この検査だけで確定診断することはできないため、円錐角膜が疑われた場合には、角膜形状解析や角膜断層解析、角膜厚測定などを追加して詳しく調べます。


円錐角膜の方は、自覚症状なく乱視が進むケースが多いです。
そして、コンタクトレンズ(特にソフトコンタクト)や眼鏡をかけても十分に視力が出ない人も少なくありません。
そのことが円錐角膜の診断のきっかけとなることもあります。
スリットランプでの観察
スリットランプ(細隙灯顕微鏡)検査では、角膜の形や厚さの変化、濁りの有無などを調べていきます。
典型的な円錐角膜では、角膜の真ん中が薄くなって突き出ているのが分かります。
円錐角膜が進行すると、細隙灯顕微鏡検査や外観上、特徴的な所見がみられることがあります。代表的な所見を以下に示します。
| 進行例でみられる所見 | 所見の特徴 |
|---|---|
| Fleischer ring (フライシャーリング) | 角膜上皮下にみられる 輪状のヘモジデリン沈着 |
| Vogt’s striae (フォークトストリエ) | 角膜深層にみられる 細い線状のしわ |
| Munson sign (マンソン徴候) | 下方視した際にみられる 下眼瞼のV字状突出 |
| 急性角膜水腫 | Descemet膜の破綻などにより生じる 急激な角膜実質の浮腫 |
角膜トポグラフィ検査
円錐角膜のごく初期の段階では、角膜の突出が少ないために通常の乱視と誤診されることもあります。
角膜トポグラフィは初期の円錐角膜でも敏感に検出できる検査であり、角膜の表面の形を細かく分析し、山や谷のある地図の等高線のような図を作ります。
円錐角膜では中心部~やや下方に屈折力が大きな箇所があり、形状が不正です。

角膜トモグラフィ・角膜厚検査
円錐角膜の診断や進行評価では、角膜前面だけでなく、角膜後面の形状や角膜厚を評価することも重要です。
角膜トモグラフィでは角膜の前面・後面の形状や角膜厚分布を立体的に解析でき、初期の円錐角膜や進行の評価に役立ちます。
特に、角膜の最薄部の変化や前面・後面の突出、角膜曲率の変化などを経時的に比較することで、円錐角膜が進行しているかどうかを判断します。
円錐角膜は進行する?
円錐角膜では、発症しやすい年齢や進み方、左右差などに一定の傾向があります。 まずは全体像をわかりやすく整理すると、次のようになります。
思春期から若年成人にかけて見つかることが多いですが、より高い年齢で発症することもあります。
若いほど進みやすい傾向がありますが、年齢とともに進行が緩やかになることがあります。
左右差はあっても、最終的には両眼にみられることが一般的です。
片方の目のほうが強く進むことがあり、見え方に左右差を感じることがあります。
ポイント: 円錐角膜は「若い時期に見つかりやすい」「左右差が出やすい」「長い経過の中で進行をみていく」 という特徴があります。そのため、角膜形状解析や角膜厚の定期的な確認が重要です。
円錐角膜は、そのほとんどが10~20代頃に発症する傾向がある病気ですが、なかには50代になってから発症した例もあります1)。
円錐角膜は若年者ほど進行しやすく、年齢とともに進行が緩やかになる傾向があります。ただし、進行の程度や時期には個人差があり、成人以降も進行することがあります。
そのため、角膜形状解析や角膜厚などを定期的に測定し、経時的な変化を確認することが重要です2)。
両目ともに症状が出るのが一般的で、片方の目だけ発症したであっても、そのうち50%が16年以内にもう片方の目にも症状が現れ、最終的に片目のみ円錐角膜の人は数%とされています3)。
症状が進行すると起こる合併症
- 瘢痕形成
- 角膜急性水腫
円錐角膜が進むと起こる合併症には、瘢痕形成と急性水腫があります。
1つ目の瘢痕形成は、いわゆる傷跡です。角膜実質にある繊維の膜に小さい裂け目ができ、傷跡になり角膜に濁りが現れます。
コンタクトレンズ装用者では、瘢痕形成がみられる頻度が高いです4)。
2つ目の角膜急性水腫は、角膜内に水が溜まって急に白く濁る状態です。上から4番目の層であるDescemet(デスメ)膜が断裂し、房水が角膜内に溜まるために起こります。
角膜急性水腫は急激な視力低下が特徴であり、通常は6~10週間ほどで自然に寛解します。

円錐角膜の治療について
円錐角膜の治療は、大まかに言えば、「視力を改善する治療」と「進行を抑える治療」に分けて考えますが、正解には、以下の4つの分類で考えます。
見え方を改善する
眼鏡、ハードコンタクトレンズ、
スクレラルレンズなど
進行を抑える
角膜クロスリンキング
角膜形状・視機能を改善する
角膜内リングなど
重症例に対する外科治療
DALK、PKPなどの角膜移植
円錐角膜治療についての最新の国際的なコンセンサスについて
2026年版では128名の眼科医が参加し、診断、staging、進行判定、クロスリンキング、視機能改善、角膜移植などを扱っています。
Global Consensus on Keratoconus and Ectatic Diseases – Edition 2(PubMed)
円錐角膜の初期に行う治療
- 眼鏡・ソフトコンタクトレンズ:初期段階での視力を矯正する
- ハードコンタクトレンズ:中程度以上になると必要
- 特殊なデザインのレンズ:症状が進行した場合でも有効
- 角膜内リング:角膜中央部の屈折力を変化させる治療法
角膜の突出が少ない段階、視力低下や乱視が軽い段階では、眼鏡やコンタクトレンズで視力の矯正を行います。
ただし、対症療法は、円錐角膜の進行を止めたり出っ張りを元に戻したりするような治療法ではありません。
コンタクトレンズによる視力矯正
眼鏡やコンタクトレンズ

初期で症状が軽いときは、眼鏡やソフトコンタクトレンズを使用して視力を矯正できる人も多くいます。
ただし、症状が進行するにつれて、ハードコンタクトレンズの使用が必要になるケースが多いです。
ハードコンタクトレンズは、不規則な形状をした角膜表面を覆ってより滑らかな光学面を形成するため、円錐角膜で起こる不正乱視も矯正できます。
円錐角膜用ハードコンタクトレンズ:特殊なデザインのレンズ
特殊なデザインのレンズも開発されており、角膜とレンズのこすれによる痛みを軽減できる、レンズが頻繁に外れてしまうのを防げるなどのメリットがあります。
| レンズの種類 | 特徴 |
|---|---|
| スクレラルレンズ | 直径が大きく、 角膜に直接触れにくい形状のレンズ |
| ピギーバックレンズ | ソフトコンタクトレンズの上にハードコンタクトレンズを重ねる 二重構造 |
| ハイブリッドレンズ | 中央部がハード素材、周辺部がソフト素材 で構成されたレンズ |
| 円錐角膜用コンタクトレンズ | 円錐角膜による角膜の突出や形状に合わせて設計された 特殊なコンタクトレンズ |

角膜内リング
角膜内リング(ICRS)は、その名の通り、角膜内にリングを埋め込む治療方法です。
角膜実質の浅層に半月状のリングを1~2個埋め込み、角膜中央部の屈折力を変化させる(突出を抑えて平坦化させる)効果があるため、乱視が軽減できます。
角膜の突出によりコンタクトレンズの装着が難しくなっていた場合でも、再び装着できるようになるのがメリットです。
また、角膜の強度が増すため、円錐角膜が進むのを遅らせられる可能性があると考えられています。
ただし、リング挿入部の厚みがある程度(400㎛以上)ある人でなければ行えないとかんがえられております。
- ハードコンタクトレンズが再び装着できるようになる
- コンタクトレンズを装着できる時間が伸びる
- コンタクトレンズや眼鏡をつけたときの矯正視力が向上する
円錐角膜の進行を抑えるための治療
- 角膜クロスリンキング:円錐角膜の進行を止める治療法
- 角膜移植:健康な角膜を移植する治療法
円錐角膜の根本的治療として、角膜クロスリンキングと角膜移植の2つが挙げられます。
角膜クロスリンキングは円錐角膜の進行を止める唯一の方法とされていますが、誰でも適応となる訳ではない点に注意が必要です。
一方、角膜移植は他の治療法で思ったような効果が得られなかったり、重度の円錐角膜であったりする場合の最終手段となります。
角膜クロスリンキング

角膜クロスリンキングは、円錐角膜の進行を抑制するための治療方法です。
リボフラビン(ビタミンB2)を点眼し、角膜に365nmの波長の紫外線(UV-A)を照射します。
角膜実質のコラーゲン繊維の架橋を強くして角膜の強度を増し、円錐角膜の進行を抑える仕組みです。
角膜クロスリンキングの主な目的は、円錐角膜によって弱くなった角膜の生体力学的強度を高め、病気の進行を抑えることです。
視力改善そのものを主目的とする治療ではありませんが、治療後に角膜形状や視力が一定程度改善する症例もあります。
若年層の患者さんや、症状の進行が速い症例に対して非常に有効な選択肢となっています。
角膜移植
ハードコンタクトレンズや眼鏡では視力矯正が十分に行えない場合や、重度の円錐角膜、濁りが認められる例には角膜移植を検討します。
主に用いられる方法は、全層角膜移植(PKP)や深層層状角膜移植(DALK)です。
角膜の5つある層のうちどの層まで影響が及んでいるかによって、手術方法を選びます。


【角膜移植について】
円錐角膜が高度に進行し、コンタクトレンズでも十分な視力が得られない場合や、角膜に強い混濁が生じた場合には、角膜移植が検討されることがあります。
角膜移植は円錐角膜だけでなく、水疱性角膜症など、角膜の透明性が失われるさまざまな病気に対して行われる治療です。
「角膜移植とはどのような手術なのか」を知りたい方は、角膜移植が必要になる代表的な疾患についても参考にしてください。
▶ 水疱性角膜症と角膜移植について詳しくはこちら
https://gankenkasui.takada-ganka.com/bullous-keratopathy/
円錐角膜の治療期間
症状や選ぶ治療方法によって円錐角膜の治療期間は大きく変わりますが、基本的には数カ月から数年にわたる根気強い管理が必要です。
治療方法により治療期間は変わる
円錐角膜の治療後に視力や角膜の状態が安定するまでの期間は、治療方法によって異なります。以下はおおよその目安です。
特に、角膜クロスリンキングを受けた後は3〜6カ月程度で回復し、角膜移植をした際は1年以上経過を見ていく必要があります。
| 治療方法 | 目安となる期間 |
|---|---|
| 眼鏡・コンタクトレンズ | 継続して使用 |
| 角膜クロスリンキング | 3〜6カ月程度で回復 |
| 角膜移植 | 1年以上経過を見る |
定期的な診察が大切です
- 病気と分かった直後:1〜2カ月ごとに診察
- 状態が落ち着いてきたら:3〜6カ月ごとに診察
円錐角膜の治療では定期的な通院がとても大切であり、状況に合わせて1~6カ月ごとの診察を推奨しています。
定期的な検診では、病気の進み具合を確認し、必要があれば治療計画を変更していきます。
円錐角膜の治療のデメリットについて

円錐角膜の治療方法は複数ありますが、どの方法にも副作用やデメリットが存在します。
- コンタクトレンズ:感染症、角膜の傷、症状の悪化
- 有水晶体眼内レンズ:一時的な見えにくさ、光の見え方の変化、レンズが合わない、感染症、出血
- 角膜クロスリンキング:一時的な痛み、見えにくさ、角膜の濁り、感染症
- 角膜移植:拒絶反応、感染症、緑内障、見え方の回復が遅れる、乱視が残る
コンタクトレンズを使う際の注意点
円錐角膜でコンタクトレンズを使用する場合は、感染や角膜障害を防ぐため、正しい装用方法と定期的な眼科受診が大切です。
| 注意点 | 対応策 |
|---|---|
| 角膜の感染症 | 手をよく洗い、レンズを清潔に管理する |
| 角膜の傷 | 装用時間を守り、違和感がある場合は無理に使用しない |
| 症状の悪化 | 定期的に眼科を受診し、角膜の状態を確認する |
角膜クロスリンキング治療のリスク
- 一時的な痛み、異物感
- ほやけ、見えにくさ
- 角膜の濁り(ヘイズ)
- 感染症のリスク
クロスリンキング治療では、治療直後に一時的に見えにくさを感じたり、角膜の濁りが現れたりすることがあります。
一般的に6カ月以内には改善していくものの、不定愁訴になってしまうこともあります。
また、まれに感染症になる危険性もあるため、治療後の経過観察が大切です。
角膜移植手術の合併症
- 拒絶反応
- 手術後の感染症
- 緑内障(術後のステロイド点眼薬による)
- 見え方の回復が遅れる
- 乱視が残る
角膜移植手術のリスクのうち、拒絶反応(移植した角膜を身体が異物と判断して排除しようとしてしまう状態)は最も心配な合併症の一つです。
また、手術後には感染症や緑内障が起こる可能性もあります。
円錐角膜の治療費・保険適用

円錐角膜の治療には、保険適用のものと保険適用外のものがあります。
具体的な費用については、選択する治療法によって数万~100万円と大きな幅があります。
保険適用となる治療・自費治療
- 円錐角膜の診察・検査 視力検査、細隙灯顕微鏡検査、必要に応じた角膜形状解析など
- 円錐角膜に対するハードコンタクトレンズの処方 診察・検査は保険診療となる場合がありますが、レンズ代は原則として自費です
- 角膜移植 医学的適応がある場合、手術や入院治療は健康保険の対象となります
- 眼鏡・コンタクトレンズの購入費 原則として健康保険の対象外です
- 角膜クロスリンキング 円錐角膜の進行抑制を目的とする治療で、一般に自費診療です
- 角膜内リング 角膜形状の改善を目的とした治療で、一般に自費診療です
- 海外ドナー角膜に関する費用 角膜の輸入費用など、保険診療とは別に費用が必要となる場合があります
※保険適用の範囲や費用は、治療内容・医療機関・使用する医療機器や材料によって異なる場合があります。 実際の治療前に医療機関へご確認ください。
眼鏡やコンタクトレンズのほとんどは自費治療となりますが、円錐角膜用コンタクトレンズの一部に保険適用となるものもあります。
角膜移植は国内の角膜を用いる際には保険適用となりますが、海外からの輸入角膜は保険適用外です。
角膜リングや有水晶体眼内レンズ、角膜クロスリンキングといった手術は自費治療で、全額が自己負担となります。
治療にかかる費用の目安
| 治療方法 | 費用・保険適用の目安 |
|---|---|
| 眼鏡 | 自費 レンズの度数や種類、フレームによって費用が異なります |
| コンタクトレンズ | 原則としてレンズ代は自費 円錐角膜用ハードコンタクトレンズやスクレラルレンズなど、 レンズの種類によって費用が大きく異なります |
| 角膜クロスリンキング | 自由診療 両眼 約30〜44万円程度 術式や術前・術後検査を含む範囲によって医療機関ごとに異なります |
| 角膜内リング(ICRS) | 自由診療 両眼 約60〜110万円程度 使用するリングや手術方法によって費用に大きな差があります |
| 角膜移植 | 保険診療となる場合があります 術式、自己負担割合、入院期間、ドナー角膜に関する費用などによって 実際の自己負担額が異なります |
上記は一般的な目安です。自由診療の料金は医療機関によって大きく異なります。 また、角膜移植では健康保険、高額療養費制度の適用状況や入院内容などによって 自己負担額が変わります。実際の費用は治療を受ける医療機関でご確認ください。
円錐角膜の治療費は、病気の進行度や治療方法によって大きく異なります。
初期の円錐角膜では、眼鏡やコンタクトレンズによる視力矯正が中心となります。
眼鏡やコンタクトレンズの購入費用は原則として自費で、特に円錐角膜用ハードコンタクトレンズやスクレラルレンズなどの特殊なレンズでは、種類や製品によって費用が異なります。
円錐角膜の進行を抑える目的で行う角膜クロスリンキングは、現在の日本では一般に自由診療です。
国内の医療機関では、両眼でおおむね30〜44万円程度の料金設定がみられますが、術式や検査・術後診察をどこまで含むかによって料金は異なります。
角膜内リング(ICRS)も自由診療で、国内では両眼60万円程度から100万円を超える設定まであり、医療機関や使用するリング、手術方法によって費用差が大きい治療です。
円錐角膜が高度に進行し、コンタクトレンズで十分な視力が得られない場合や、強い角膜混濁が生じた場合には、角膜移植が検討されることがあります。
角膜移植は術式や治療内容によって保険診療となる場合がありますが、自己負担割合、入院期間、ドナー角膜に関する費用などによって実際の負担額が異なるため、一律の金額で示すことは困難です。
なお、ICL(有水晶体眼内レンズ)は円錐角膜そのものを治療したり、進行を止めたりする治療ではありません。 円錐角膜の状態が安定している一部の症例で、残存する近視や乱視の矯正を目的として検討されることがあります。

自由診療の料金や保険適用の範囲は医療機関によって異なります。
治療を検討する際には、治療内容だけでなく、術前検査・術後診察・薬剤費などが料金に含まれているかも含めて確認してください。
障害者総合支援法
円錐角膜は障害者総合支援法の対象疾患で、条件を満たす場合にコンタクトレンズが補装具として支給されます。
所得に応じて自己負担の上限が異なり、市民税非課税世帯で0円、市民税課税世帯(所得割45万円未満)で37,200円です。
コンタクトレンズの購入前に申請が必要で、申請から支給決定までには日数がかかるなどの注意点もありますので、詳しい内容は各自治体にお問い合わせください。
眼瞼下垂症と円錐角膜との関係性
眼瞼下垂では、下がった上まぶたが角膜に持続的な圧力を加えるため、角膜の形状や乱視に影響することがあります。
実際、先天性眼瞼下垂では、眼瞼下垂が強いほど角膜に「円錐角膜に似た形状変化」がみられたという報告があります。
一方で、眼瞼下垂そのものが円錐角膜を直接発症させることが証明されているわけではありません。円錐角膜では目をこする習慣など、より強い機械的刺激が重要なリスク因子と考えられています。
また、円錐角膜の患者さんではハードコンタクトレンズを長期間使用することが多く、その長期装用が眼瞼下垂の原因になることもあります。
このため、眼瞼下垂と円錐角膜は「まぶたから角膜への影響」と「円錐角膜治療からまぶたへの影響」という、双方向の関係を持つ可能性があります。

別の切り口で言えば、円錐角膜も眼瞼下垂症も、アトピー性皮膚炎などの慢性炎症などで常習的に目を擦ることが多い方に見られやすいと個人的には感じています。
円錐角膜についてよくある質問
円錐角膜の治療や進行について、 患者さんからよくいただくご質問をまとめました。
Q 円錐角膜は治る?進行を止めることはできますか?
円錐角膜によって変形した角膜を完全に元の状態へ戻すことは、現在の治療では簡単ではありません。 一方で、進行している円錐角膜では、角膜クロスリンキングによって進行を抑えることが期待できます。
また、視力低下や不正乱視に対しては、眼鏡、ハードコンタクトレンズ、スクレラルレンズなどを用いて 見え方を改善します。進行した症例では、角膜内リングや角膜移植などが検討されることもあります。
大切なのは、現在進行しているかどうかを角膜形状解析や角膜厚などの検査で確認し、 病状に応じて適切な治療を選択することです。
Q 円錐角膜は失明する病気ですか?
円錐角膜だけが原因で完全に視力を失うことは一般的ではありません。 ただし、進行すると角膜の変形や不正乱視が強くなり、 眼鏡では十分な視力が得られなくなることがあります。
さらに重症化すると、角膜混濁や急性角膜水腫などによって大きく視力が低下する場合があります。 そのため、若年者や角膜形状の変化が認められる場合には、定期的な検査によって進行を確認することが重要です。
現在はコンタクトレンズ、角膜クロスリンキング、角膜移植など複数の治療選択肢があるため、 早期に診断し、病期に応じた管理を行うことが大切です。
Q 円錐角膜ではコンタクトレンズが必要ですか?
必ずしもすべての円錐角膜でコンタクトレンズが必要になるわけではありません。 初期で乱視や近視が軽い場合には、眼鏡で良好な視力が得られることもあります。
ただし、円錐角膜が進行すると角膜の形が不規則になり、 通常の眼鏡では補正しにくい不正乱視が強くなることがあります。 この場合には、ハードコンタクトレンズやスクレラルレンズなどを用いることで、 視力が改善することがあります。
なお、コンタクトレンズは主に見え方を改善するための治療であり、 円錐角膜そのものの進行を止める治療ではありません。
Q 円錐角膜は何歳まで進行しますか?
円錐角膜は、一般的に思春期から若年成人期に発症し、 若い年齢ほど進行しやすい傾向があります。
年齢とともに進行が緩やかになるケースは多いものの、 「何歳になれば必ず進行が止まる」と一律に決めることはできません。 成人以降でも進行する症例があります。
そのため、年齢だけで判断するのではなく、 角膜トポグラフィや角膜トモグラフィ、角膜厚などを定期的に測定し、 過去の検査結果と比較して進行の有無を確認することが重要です。
Q 円錐角膜と乱視は何が違うのですか?
乱視は、目に入った光が一点に集まりにくくなり、物がぼやけたり二重に見えたりする状態のことです。 一方、円錐角膜は、角膜が薄くなり前方へ突出していく角膜疾患です。
円錐角膜が進行すると角膜の形が不規則になるため、 通常の乱視よりも眼鏡で補正しにくい不正乱視を生じることがあります。
「乱視が急に強くなった」「眼鏡を作り直しても見えにくい」 「左右の見え方に大きな差がある」といった場合には、 通常の乱視だけではなく円錐角膜などの角膜疾患が隠れていないか確認することが重要です。
Q 円錐角膜があるとレーシックやICLは受けられますか?
円錐角膜がある場合、角膜を削って近視や乱視を矯正する レーシックなどの角膜屈折矯正手術は、一般的に適応になりません。
角膜を削ることで角膜の強度が低下し、角膜拡張が悪化する可能性があるためです。 明らかな円錐角膜だけでなく、円錐角膜が疑われる角膜形状の場合にも慎重な評価が必要です。
一方、ICLは角膜を削らずに眼内へレンズを挿入する手術ですが、 円錐角膜があれば誰でも受けられるというわけではありません。 円錐角膜の進行が安定しているか、角膜の状態、屈折の安定性などを総合的に評価する必要があります。
近視や乱視の矯正手術を検討する場合には、事前に角膜トポグラフィや角膜トモグラフィなどで 角膜形状を詳しく確認することが重要です。
参考文献
1)Tenkman L.R., Price M.O., Price F.W. Keratoconus onset after age 50. J Refract Surg. 2012;28:436–438.
2)Michel Millodot, Ilya Ortenberg, Karen Lahav-Yacouel, Shmuel Behrman. Effect of ageing on keratoconic corneas. J Optom. 2016 Apr-Jun; 9(2): 72–77.
3)Li X., Rabinowitz Y.S., Rasheed K., Yang H. Longitudinal study of the normal eyes in unilateral keratoconus patients. Ophthalmology. 2004;111:440–446.
4)Barr J. T., Wilson B. S., Gordon M. O., et al. Estimation of the incidence and factors predictive of corneal scarring in the Collaborative Longitudinal Evaluation of Keratoconus (CLEK) study. Cornea. 2006;25(1):16–25.
5)Gordon-Shaag A, Millodot M, Shneor E, Liu Y. The genetic and environmental factors for keratoconus. Biomed Res Int. 2015;2015:795738.
6)Sharif K.W., Casey T.A., Coltart J. Prevalence of mitral valve prolapse in keratoconus patients. J. R. Soc. Med. 1992;85(8):446–448.
RABINOWITZ, Yaron S. Keratoconus. Survey of ophthalmology, 1998, 42.4: 297-319.
ROMERO-JIMÉNEZ, Miguel; SANTODOMINGO-RUBIDO, Jacinto; WOLFFSOHN, James S. Keratoconus: a review. Contact Lens and Anterior Eye, 2010, 33.4: 157-166.
SANTODOMINGO-RUBIDO, Jacinto, et al. Keratoconus: An updated review. Contact Lens and Anterior Eye, 2022, 45.3: 101559.
SUGAR, Joel; MACSAI, Marian S. What causes keratoconus?. Cornea, 2012, 31.6: 716-719.
EDWARDS, Matthew; MCGHEE, Charles NJ; DEAN, Simon. The genetics of keratoconus. Clinical & experimental ophthalmology, 2001, 29.6: 345-351.
VAZIRANI, Jayesh; BASU, Sayan. Keratoconus: current perspectives. Clinical ophthalmology, 2013, 2019-2030.
KYMES, Steven M., et al. Quality of life in keratoconus. American journal of ophthalmology, 2004, 138.4: 527-535.
DAVIDSON, A. E., et al. The pathogenesis of keratoconus. Eye, 2014, 28.2: 189-195.
KOK, Yee Onn; TAN, Grace Feng Ling; LOON, Seng Chee. keratoconus in Asia. Cornea, 2012, 31.5: 581-593.
ESPANDAR, Ladan; MEYER, Jay. Keratoconus: overview and update on treatment. Middle East African journal of ophthalmology, 2010, 17.1: 15-20.







