眼瞼下垂と自律神経の関係について― 本当に関係はあるのか?医学的に分かっていること・分かっていないこと ―

2026年2月4日 修正・更新
「眼瞼下垂は自律神経の乱れが原因ですか?」
「自律神経失調症と言われたのですが、まぶたの下がりと関係がありますか?」
当院の外来では、このようなご質問を受けることが少なくありません。
インターネット上でも「眼瞼下垂 自律神経」「自律神経失調 まぶた」などの検索が多く見られます。
結論からお伝えすると、眼瞼下垂と自律神経の関係については、現時点で明確な因果関係が医学的に証明されているわけではありません。
しかし、「まったく無関係」と言い切れるほど単純な話でもない、というのが現在の医学的な立ち位置です。
このページでは、
・眼瞼下垂とは何か
・自律神経とは何か
・両者が「関係しているのでは?」と考えられる理由
・医学的に分かっていること、分かっていないこと
を、できるだけ分かりやすく整理して解説します。
眼瞼下垂とはどのような状態か
眼瞼下垂とは、まぶたを持ち上げる力が弱くなり、目が十分に開かなくなる状態を指します。
見た目の変化だけでなく、視野が狭くなる、目が疲れやすい、頭痛や肩こりが出やすいなど、日常生活に影響を及ぼすことも少なくありません。
原因としては、加齢による眼瞼挙筋の変性、コンタクトレンズの長期使用、過去の手術、炎症、先天的な要因などが知られています。
多くの場合は「筋肉や腱膜といった構造的な問題」が中心となります。
自律神経とは何をしている神経なのか
自律神経は、私たちが意識しなくても体を調整してくれている神経のことです。
自律的に働き、心拍、血圧、体温、発汗、胃腸の動き、睡眠などを24時間コントロールしています。
自律神経は大きく分けて、活動時に優位になる交感神経と、休息時に働く副交感神経があります。
つまり、自律神経は、活動時に優位となる「交感神経」と、夜間やリラックス時に優位となる「副交感神経」が交互に働いてバランスを保ち、呼吸、体温、代謝、排泄、消化などの生命維持に欠かせない機能を調節しています。
このバランスが崩れた状態を、一般的に「自律神経失調症」と呼ぶことがあります。
ただし、「自律神経失調症」という言葉は診断名というよりも、症状の集合体として使われることが多く、非常に幅の広い概念です。

自律神経のバランスが乱れると?自律神経失調症とは
交感神経と副交感神経のどちらかが優位となったり、両方の働きが弱まったりして自律神経のバランスが崩れると、心身にさまざまな不調をもたらします。
- 不眠
- 疲労感
- 頭痛
- 肩こり
- ほてり
- 食欲不振、吐き気
- 動悸(どうき)
- 息切れ
- 冷え
- 胃痛
- 下痢、下痢
- 耳鳴り
- 頻尿、残尿感
- 気分の落ち込み
- イライラ
- 焦り
- 不安感
- 焦燥感
- 興味関心の低下

自律神経が乱れたときに引き起こされる、上記の症状を統合して「自律神経失調症」と呼びます。
自律神経失調症は正式な病名ではなく、あくまで交感神経と副交感神経のバランスが崩れている「状態」です。
頭痛や動悸といった身体的な症状のほか、イライラや不安などの精神的な症状が見られる場合もあります。
自律神経の乱れを放置していると、血圧が上がり、生活習慣病の一つである高血圧になるリスクが高まるため注意が必要です。
血圧が慢性的に高い状態は、動脈硬化を引き起こし、脳梗塞や心筋梗塞、がんなどの重篤な疾患を招きかねません。
自律神経失調症の主な原因
先述したとおり、自律神経失調症は交感神経と副交感神経のバランスが崩れるために生じますが、その原因は多岐にわたります。
眼瞼下垂だけではなく、ストレスや生活習慣、環境の変化など、さまざまな要因がからみあって生じます。
- 過度のストレス
- 生活リズムの乱れ
- 体質(低血圧や虚弱体質など)
- 性格(ストレスに弱い)
- 環境の変化(気温の変化、職場の異動、引越しなど)
- 女性ホルモンの影響
自律神経失調症の症状はさまざまで、ほかの病気と区別しにくいため、自分で判断することは困難です。

自律神経失調症の身体的な症状、精神的な症状は、眼瞼下垂症の症状と重なる部分が多いと言えます。
だからといって、眼瞼下垂症と自律神経失調症が関係しているという考えるのは、早計ではないかと考えます。
眼瞼下垂と自律神経が関係していると言われる理由

眼瞼下垂と自律神経の関係が語られる背景には、ミュラー筋という小さな筋肉の存在があります。
ミュラー筋は、まぶたをわずかに持ち上げる補助的な筋肉で、交感神経の支配を受けています。
このため、「自律神経、特に交感神経の働きが低下すると、まぶたが下がるのではないか」と考えられることがあります。
また、眼瞼下垂によって常に目を見開こうと無意識に力が入り続けることで、疲労やストレスが蓄積し、自律神経のバランスに影響を与えるのではないか、という仮説もあります。
ただし、これらはあくまで理論的な説明や臨床的な推測の域を出ていません。

ミュラー筋の収縮による眼瞼の開瞼幅は、1-2mm程度と考えられております。
逆に言えば、ミュラー筋が完全に駄目になったとしても、1-2mm程度の眼瞼の下がりにしかならないと考えます。
やはり、手術適応が必要となるような進行した眼瞼下垂症の原因として、ミュラー筋を考えるのは難しく、眼瞼挙筋による腱膜性眼瞼下垂症を原因と考える方が自然だと思っております。
医学的に分かっていること・分かっていないこと
現時点での医学的な結論としては、
一般的な眼瞼下垂が、自律神経失調症の直接的な原因になると証明された研究はありません。
一部の神経疾患や全身疾患では、眼瞼下垂と自律神経症状が同時に現れることがありますが、それは「同じ病気の一症状として起こっている」のであって、眼瞼下垂そのものが自律神経を乱しているとは限りません。
一方で、眼瞼下垂による視野障害や慢性的な眼精疲労、生活の質の低下が、結果としてストレスを増やし、体調不良や睡眠障害につながる可能性は否定できません。
つまり、
・直接的な因果関係は証明されていない
・間接的に体調や生活リズムへ影響する可能性はある
というのが、現時点で最も正確な表現です。

眼瞼挙筋の機能が低下して眼瞼下垂になると、まぶたを上げようとしてミュラー筋が過剰に収縮する。
その結果、交感神経が緊張した状態が続き、自律神経のバランスが慢性的に崩れてしまう。
しかしながら、非常に小さな筋肉であるミュラー筋が緊張したぐらいで、体全体の自律神経のバランスが大きく崩れてしまうというのは、論理的に難しいと思っております。
眼瞼下垂手術で自律神経症状は改善するのか
「眼瞼下垂手術をすると、自律神経の症状も良くなりますか?」「自律神経症状の改善のために、他院で手術を勧められたのですが、大丈夫でしょうか?」という質問もよくあります。
これについても正直にお伝えすると、眼瞼下垂手術は自律神経を治療する手術ではありません。
手術によって自律神経そのものが直接改善する、という医学的根拠がありません。
ただし、視野が広がり、目の緊張が取れ、日常生活が楽になることで、結果的に「体が楽になった」「疲れにくくなった」「頭痛が減った」と感じる方がいらっしゃるのも事実です。
これは自律神経が治ったというより、生活の負担が軽減されたことによる二次的な変化と考えるのが妥当だと当院は考えてます。
また、手術方法によっては、ミュラー筋を傷つけてしまい、かえって自律神経症状を悪化させることが指摘されています。

自律神経の症状が強い場合に大切な考え方
もし、動悸、めまい、強い不安感、睡眠障害などの症状が主である場合は、眼科だけで判断するのではなく、内科や神経内科、心療内科などと連携して評価することが重要です。
眼瞼下垂があるからといって、すべての体調不良をそれだけで説明しようとするのは、かえって遠回りになることがあります。
ましては、自律神経改善のために、眼瞼下垂手術を行うことは、もっての論外だと感がております。

まとめ:眼瞼下垂と自律神経の関係を正しく理解するために

眼瞼下垂と自律神経の関係については、インターネット上でさまざまな情報が見られますが、
医学的には「はっきり分かっていないことが多い」というのが正直なところです。
当院では、
・眼瞼下垂として治療すべき状態なのか
・他の病気が隠れていないか
・手術が本当に必要か
を慎重に見極めた上で診療を行っています。
不安を感じた場合は、自己判断せず、まずは専門医に相談することをおすすめします。

まずは眼科への受診を推奨
頭痛、肩こり、不眠などの自律神経症状でお悩みの場合、これらの症状が眼瞼下垂と関連している可能性を調べるには、重症度やほかの疾患の有無などを詳しく確認するために、まずは眼球の細かい検査が可能ですので、ぜひ、高田眼科を受診ください。
眼科で行える評価
- 眼瞼下垂の診断と程度の評価
- 視野検査による影響の確認
- 眼精疲労など、目の問題との関連性チェック
高田眼科では、視力検査、眼瞼挙筋機能検査、視野検査などを行い、眼瞼下垂の重症度や他の疾患の有無などを詳しく確認することができます。
眼瞼下垂と自律神経失調症の関係についてよくある質問
- 眼瞼下垂は自律神経失調症の原因になりますか?
-
直接的な原因とは言い切れませんが、眼瞼下垂によるミュラー筋の過剰収縮が交感神経を慢性的に緊張させ、自律神経のバランスを崩す可能性があります。また、視野狭窄によるストレスも自律神経に影響を与える可能性があります。
- 眼瞼下垂手術で自律神経症状は改善しますか?
-
眼瞼下垂を改善することで、ミュラー筋の過剰収縮が軽減され、交感神経の緊張状態が改善する可能性があります。また、視野改善によるストレス軽減で症状が和らぐ可能性もあります。ただし、効果には個人差があります。
また、眼瞼下垂手術は主に視野の改善と外見の回復を目的としており、直接的に自律神経症状を改善するものではありません。
- 眼瞼下垂と頭痛には関連がありますか?
-
眼瞼下垂による目の疲労が頭痛を引き起こす可能性はありますが、必ずしも直接的な関連があるわけではありません。
- 眼瞼下垂と自律神経失調症の両方の症状がある場合、どの診療科を受診すべきですか?
-
まずは眼科で眼瞼下垂の診断を受け、その後神経内科で自律神経失調症の評価を受けることをお勧めします。
- 眼瞼下垂と自律神経失調症の関連性について、最新の研究はありますか?
-
この分野の研究は継続的に行われていますが、現時点で直接的な関連性を示す決定的な証拠は限られています。
目に関する悩みで困ったら、まずは専門医に相談してみてください。
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参考文献
MATHIAS, Christopher J. Autonomic diseases: clinical features and laboratory evaluation. Journal of Neurology, Neurosurgery & Psychiatry, 2003, 74.suppl 3: iii31-iii41.
PHILLIPS, Lara, et al. Pediatric ptosis as a sign of treatable autonomic dysfunction. American journal of ophthalmology, 2013, 156.2: 370-374. e2.






