結膜疾患

翼状片

Dr.髙田

翼状片とは、結膜が異常に増殖して、白目の一部が黒目の方に伸びていくように見える疾患です。

めずらしい病気ではなく、「世界で推定12%の発生率」との報告もあります1)

初めのうちは、痛みやかゆみなどの目立った症状がとくにない方も多いですが、進行性のもので、放っておくと視力低下や失明の危険もあるので注意が必要です。

この記事では、翼状片の症状、原因、治療法を解説します。

この記事の著者

Dr.高田尚忠(高田眼科 院長|ひとみ眼科 / フラミンゴ美容クリニック 眼瞼手術担当医師)

名前 / Name  
高田 尚忠(たかだ なおただ)
高田眼科 院長|ひとみ眼科 / フラミンゴ美容クリニック 眼瞼手術担当医師
岡山大学医学部卒業後、郡山医療生活協同組合 桑野協立病院などの様々な医療機関を勤務し、現在は高田眼科の院長を務める。2022年3月より、名古屋市内の伏見駅近くのフラミンゴ眼瞼・美容クリニックを開院。

所属:日本眼科学会日本形成外科学会日本眼形成再建外科学会

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高田 尚忠
高田 尚忠(たかだ なおただ)
高田眼科 院長 |ひとみ眼科 / フラミンゴ美容クリニック 眼瞼手術担当医師
所属学会:日本眼科学会、日本形成外科学会、日本眼形成再建外科学会
岡山大学医学部卒業後、横浜形成外科の二木 裕先生に師事。 郡山医療生活協同組合 桑野協立病院などの様々な医療機関を勤務し、 現在は高田眼科の院長を務める。 眼科医と形成外科医の知識と、これまでの豊富な眼瞼手術の術者としての経験をもとに、2022年においては年間2,000件超える眼瞼下垂症手術を手がけております。 2022年3月より、名古屋市内の伏見駅近くのフラミンゴ眼瞼・美容クリニックを開院。

翼状片の病型

翼状片

翼状片は片目だけ発症する人もいれば、両目とも発症する人もいますし、左右の目で異なる病型の人もいます。

病型に関わらず、主な特徴は「進行する、鼻側での発症が多い、年齢が上がれば有病率も上がる」の3つです。

翼状片の病型と特徴

翼状片はいくつかの病型に分けられ、分類の仕方が専門家たちによって複数提案されていますが、ここでは分かりやすい病型を選び、まとめています。

翼状片の病型2)

病型進行度特徴
グレード1初期翼状片は半透明の組織で構成されている。 白目の部分に血管が見える状態。 周囲の正常な結膜血管と比較して、血管が拡張しているのが主な特徴。
グレード2軽度翼状片の血管密度が増加して、ピンク色の組織になる。 半透明で白目の部分が透けて見える。
グレード3中等度翼状片の色は赤くなり、血管が曲がりくねっている状態。 白目の血管と、翼状片の血管の区別がつかない。
グレード4重度広範囲にわたって赤い組織になる。 翼状片の部分が白色に変化して、白目を完全に覆い隠している状態。

グレードが上がるにつれて翼状片の先端部分が目の中心へと伸び、増殖した組織が分厚くなる半透明から白色に変化する充血が強くなる、といった変化がみられます。

翼状片の再発率

翼状片が厄介なのは「再発リスクがある」点で、30代前半までの若い人ほど再発の可能性が高いです。

術後何年経っても再発する可能性がありますが、ほとんどの再発は手術後3~6カ月以内に起こるとも言われています3)

再発を阻止するための治療や処置を行っても、再発リスクはゼロにはなりません。

翼状片の症状

翼状片

翼状片には異物感充血かすみ目などさまざまな症状があり、人によっては日常生活に影響を及ぼす可能性があります。

初期や軽度では軽い充血や異物感程度にとどまりますが、進行するにつれて深刻な症状が現れる場合がほとんどです。

翼状片が疑われるような症状がみられる場合は、できるだけ早く眼科を受診しましょう。

翼状片が引き起こす主な症状

ここでは、一般的な5つの症状を解説します。

  1. 異物感: 目に何かが入っているようなゴロゴロとした不快感。翼状片が目の表面の感覚神経に影響を及ぼすために起こる症状。
  2. 目の充血: 白目の部分が赤くなる。翼状片の刺激による結膜の炎症や血管が拡張するのが原因。
  3. かすみ目: 視界がぼやける、焦点が合わなくなる。翼状片が角膜の曲率を変えるため起こる症状。
  4. 光の眩しさ: 光に敏感になり、日光や明るい光に「眩しい」と感じやすくなる。翼状片が、光の屈折率を調整している角膜の角度調整を妨げるのが原因。
  5. 涙の増加: 涙がよく出るようになる。翼状片による目への刺激に対して、涙腺が過剰に反応するために起こる症状。

このほか、目の乾きやかゆみ、痛みを感じる場合もあります。

翼状片の症状の進行とその影響

翼状片の症状の進行とその影響

翼状片では、増殖した組織が角膜に近づけば近づくほど、不快感がとくに強くなる傾向があります。

病状の進行度と症状

病状の進行度症状の種類病型
初期軽い充血グレード1
軽度異物感、充血グレード2
中等度かすみ目、眩しさグレード3
重度視力低下、乱視グレード4

翼状片が進行して黒目の部分を覆うと、視力低下や乱視の症状のほかに、まぶたと眼球が癒着して目が動かしにくくなる場合があります。

翼状片の進行スピードは年単位ではありますが、早めに受診すればしただけ症状を抑えられますし、今後の治療計画も立てやすくなります。

翼状片の原因

翼状片の原因

翼状片の原因は、現時点でその詳細は分かっていません。

ただ、紫外線や乾燥、風や砂ぼこりなどの外的刺激が翼状片を引き起こしていると考えられています。

翼状片の原因
  1. 紫外線に長時間あたる
  2. 目の乾燥
  3. 風や砂ぼこりなどの刺激
  4. 遺伝的要因
  5. コンタクトレンズの不適切な使用

主な原因は紫外線が一般的

翼状片は慢性的な炎症と考えられていて、原因としてもっとも一般的に知られているのが、紫外線です。

事実として、翼状片の発生には地域差があり、紫外線が強い地域では発生率が高くなります4)5)6)7)

また、目が乾燥するような環境に長時間さらされる、風や砂ぼこりなどの刺激が加わる、コンタクトレンズの不適切な使用などによっても、目の保護機能の低下・目の表面の損傷や炎症が起こり、翼状片を発症する可能性が考えられます。

さらに、海外におけるいくつかの調査では「翼状片には遺伝との関連性がある」との報告がされています8)9)10)

海外で翼状片は「サーファーの目」としても知られています。職業や生活されている地域、ご自身のライフスタイルが原因に関わる場合があります。

翼状片の検査・チェック方法

翼状片の検査・チェック方法

翼状片が疑われる場合、下記のような検査を行い診断を確定します。

翼状片の検査方法

眼科での翼状片検査は、一般的に下記3つの方法で行います。

眼科での検査
  • 視力検査
  • スリットランプ検査
  • 角膜トポグラフィ

視力検査

視力検査では、翼状片が視力に影響を与えていないかどうかを確認します。

スリットランプ検査

スリットランプ(細隙灯顕微鏡)は、細い光束を目に照射し、顕微鏡で眼球のほぼすべての構造を観察できる機械です。

イスに座っていただき機器に顎を乗せ、医師が目に光を当てながら顕微鏡をのぞき込み検査するものです。

基本的かつ汎用性の高い検査方法ですので、眼科を受診した経験のある方はイメージが湧きやすいのではないでしょうか。

スリットランプ検査では、結膜が増殖している位置、大きさ、角膜への影響を見ていきます。

角膜トポグラフィ

角膜トポグラフィは、角膜の形状を詳細に分析する検査です。

コンピューター分析によって角膜全体の各部位の屈折力を測定する装置で、角膜表面の形状異常を最も敏感に検出できるメリットがあります。

翼状片の影響で角膜が歪むと、角膜乱視※が起きてしまいますので、角膜トポグラフィでの角膜形状のチェックが重宝されます。

※角膜乱視とは、角膜の歪みが原因で起こる乱視を指し、翼状片で起こるのは、このタイプです。

翼状片の自己チェック方法

翼状片の自己チェック方法

明らかに大きい翼状片や、自覚症状がある翼状片であればご自身でも分かりやすいのですが、初期段階の小さなものでは自覚症状が少ないケースが多いです。

ここでは、簡単に実践できる自己チェック方法をご紹介します。

翼状片の自己チェック方法
  1. 目の赤みや腫れの確認: 鏡を使って、目の白目部分に赤みや腫れがないか定期的にチェックします。
  2. 視力の変化の注意: 日常生活で遠くのものが見えにくい、曇って見える、など視力に異変がないかを確認します。
  3. 異物感の確認: 目に違和感やゴロゴロとした異物感がある・目が痛むときは、翼状片が原因の可能性があります。

もしも、ご自身でチェックを行い翼状片やその他の疾患が考えられるときは、早めに眼科を受診しましょう。

翼状片の治療方法と治療薬について

翼状片の治療方法と治療薬について

翼状片は進行性のものですので、早めの受診と定期的な眼科受診は必須ですが、無症状であればすぐに治療を行わなくとも問題はありません。

ただし、何らかの症状が出ているようであれば、治療を行う必要性が出てきます。

翼状片の治療には、大きく分けて「点眼薬治療」と「外科手術」の2種類があります。

翼状片の点眼薬治療

初期や軽度の翼状片の一般的な治療では、ステロイド点眼薬を用いて炎症を抑えます。

(クリニックによっては抗アレルギー剤の点眼薬を使用するケースもあります。)

ただし、点眼薬治療では翼状片が縮小したり、根治したりはしません。

点眼薬治療は、あくまでも目の充血や異物感などを抑える目的で使用されます。

翼状片に使用される点眼薬

抗炎症薬ケトロフェン(ケトプロフェン)、フルメトロン(プレドニゾロン)など
抗アレルギー薬オロパタジン(オロパット)など
人口涙液ヒアルロン酸ナトリウム(ヒアレイン)など

翼状片の外科手術

翼状片の外科手術

翼状片が中等度や重度まで進行していて、大きく見た目に影響している場合や、視力に影響が出ている場合に選択される治療法は、外科手術が適応です。

翼状片の外科手術は、点眼による局所麻酔をしたうえで行います。

手術に要する時間は15~20分程度となり、一般的な手術の流れとしては、翼状片の部分(病変部)を切除し、結膜弁または羊膜を移植します。

翼状片手術の内容

病変部の切除:通常は、病変部分を切除したうえで結膜弁移植や羊膜移植を行います。単純な切除手術だけで結膜弁移植や羊膜移植をしないと、再発率が高いまま(80%以上)との報告があります11)

結膜弁移植:結膜弁移植を細かく分けると2種類です。翼状片を切除した際の欠損部を引き寄せて縫合する「有茎弁移植」と、眼球上方または下方の健常結膜片を欠損部に縫合する「遊離弁移植」です。どちらの方法を選ぶかは、症状や医師の判断によります。

羊膜移植:切除部分に、お腹の中の赤ちゃんを包む膜である「羊膜」を移植する方法です。初めての翼状片手術ではほぼ行われませんが、再発した際には、翼状片を切除して欠損部した部分に羊膜をかぶせるように移植するケースがあります。

再発予防として、組織の異常増殖を抑えるマイトマイシンC(抗がん薬)を術中に塗布する、手術後に放射線治療を行う、といった場合もあります。

翼状片の手術後も角膜混濁が残り、視力低下が伴うときは、角膜の異常のある層のみを移植する「表層角膜移植」が行われます。

手術後の抜糸

手術後には抜糸をする場合と、しない場合があり、抜糸の有無は縫合に使う糸の種類によります。

抜糸あり:1週間~10日後の結膜が癒着したタイミングで抜糸をする。

抜糸なし:時間の経過によって自然に溶けたり脱落したりするタイプの糸を使用する。

手術後の注意点

翼状片の手術後の目は、炎症や感染が起こりやすい状態ですので、触れない、清潔を心掛けるなど以下の3点に気をつけて過ごしましょう。

翼状片の手術後の注意点

  • 術後の感染を防ぐため、傷口に触れないようにする
  • 傷口から滲出液が出るときは、清潔なガーゼで拭き取る
  • 紫外線対策を徹底する

翼状片の治療期間

翼状片の治療期間

翼状片を取り除く手術は、点眼薬治療と比べると治療期間は短くなる傾向があります。

ただし、手術後も炎症を抑える点眼薬治療を行ったり、再発の有無を確かめるためにも定期的な検診を受けたりと、継続して根気強く通院しなければなりません。

翼状片治療の目安となる期間

翼状片の治療期間は進行度により異なりますが、目安は数週間~数カ月です。

  • 薬物療法: 薬物療法は、数週間~数カ月間続けていただきます。症状の改善に応じて、薬の量や使用頻度を調整します。
  • 外科手術: 手術後の回復期間は、小さなものでは約2~3週間です。重度な翼状片の場合では1~2カ月程度で違和感が徐々になくなり、目の赤みも目立たなくなります。
  • 維持療法: 翼状片の再発を防ぐための維持療法は、長期間にわたって継続していただきます。

セルフケアと治療期間の管理

セルフケアと治療期間の管理

翼状片の治療期間をなるべく短くするには、患者さん自身のセルフケアや管理も大切です。

翼状片の治療中に気をつけていただくこと

  • 定期的な診察を受ける
  • 治療中は医師の指示を守る
  • 生活習慣を見直す

治療中は定期的に診察を受け、医師の指示を守ってください。

また、大きなストレスがかかるほど生活に制限をかける必要はありませんが、無理のない範囲で生活習慣を見直して、目を保護するようにしましょう。

薬の副作用や治療のデメリットについて

薬の副作用や治療のデメリットについて

翼状片だけでなく、ほかの疾患でも言えることですが、治療方法によっては副作用や特定のデメリットがあります。

翼状片治療の一般的な副作用

翼状片治療の種類別の一般的な副作用は、以下の通りです。

点眼薬治療目の刺激、乾燥、眼圧の上昇、視力変化
外科手術手術部位の痛み、充血、異物感、眼脂(目やに)、視力影響、感染リスク

点眼薬治療では目の刺激感や乾燥感が起こる可能性があり、稀に眼圧の上昇や視力変化が伴うときがあります。

一方、手術では一時的な目の痛み、充血や異物感、眼脂(目やに)などが副作用として挙げられ、ごく稀ではありますが視力への影響、感染リスクがある場合もあります。

治療中は副作用の有無を確認しながら、万が一副作用が認められる場合には、医師と相談しながら対応していきます。

翼状片治療のデメリット

  • 重度の翼状片は治療期間が長い(1~2カ月程度)
  • 定期的に診察や治療に通っていただく必要がある
  • 手術後は回復するまで時間がかかる

翼状片の症状が見られる場合は継続して経過を観察しますので、定期的な受診が必要です。

また、とくに重度の翼状片(大きなもの)では、治療に長期間かかる傾向があります。

手術後は約1週間後の抜糸まで目に違和感があり、日常生活に影響する可能性があるほか、治るまでには1~2カ月かかるのが一般的です。

副作用やデメリットについて、不安に感じる点があれば、担当医に相談するようにしましょう。

保険適用について

保険適用について

日本においての翼状片治療は、点眼薬治療と外科手術のどちらも保険適用になります。

年齢や所得によって異なりますが、保険が適用される場合、翼状片の手術にかかる費用は5000円から4万円程度が目安です。

生命保険など任意加入の保険では、翼状片手術に対して給付金が支払われる場合があるので、加入している保険会社に確認するようにしましょう。

参考文献

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