流行性角結膜炎(はやり目)とは|症状・潜伏期間・感染・治療を眼科医が解説

流行性角結膜炎(epidemic keratoconjunctivitis:EKC)は、一般に「はやり目」と呼ばれる、アデノウイルスによる感染力の強い結膜炎です。
強い充血、まぶたの腫れ、涙、目やに、ゴロゴロする異物感などが現れ、最初は片眼だけでも、数日して反対の眼にも症状が出ることがあります。
多くは時間とともに改善しますが、一部では角膜に炎症が及び、結膜炎が治ったあともかすみ・まぶしさ・視力低下が続くことがあります。
この記事では、流行性角結膜炎の症状、潜伏期間、感染経路、検査、治療、学校や仕事への復帰時期について、眼科医がわかりやすく解説します。
流行性角結膜炎(はやり目/EKC)で最初に知っておきたいこと

流行性角結膜炎(はやり目)で最初に知っておきたいこと
まず押さえておきたい5つのポイントをまとめました。
原因
主にアデノウイルスによる感染です。
潜伏期間
感染してから症状が出るまで、一般に7〜14日程度です。
発症のしかた
片眼から始まり、数日して反対の眼にも症状が出ることがあります。
治療
標準的な特効薬はなく、感染対策と眼の状態に応じた治療が基本です。
注意したい角膜病変
角膜に炎症が及ぶと、結膜炎が改善したあともかすみ・まぶしさ・視力低下が残ることがあります。
流行性角結膜炎(はやり目)とは
流行性角結膜炎は、アデノウイルスによって起こる急性の角結膜炎です。
「はやり目」という名前の通り、人から人へ広がりやすく、家庭内だけでなく、学校、職場、医療施設などで集団感染を起こすことがあります。
アデノウイルスによる結膜炎にはさまざまな臨床像がありますが、流行性角結膜炎は比較的炎症が強く、角膜病変を合併しやすいタイプです。
近年の日本では、HAdV-54をはじめ複数のアデノウイルス遺伝子型による流行性角結膜炎が報告されています。
流行性角結膜炎の主な症状

流行性角結膜炎では、突然、眼の充血や異物感などが現れます。
- 白目やまぶたの裏が赤くなる
- まぶたが腫れる
- ゴロゴロする、異物感がある
- 眼が痛い
- 涙が多くなる
- 水っぽい目やにが出る
- 光をまぶしく感じる
一般には片眼から始まり、数日遅れて反対の眼にも症状が現れることが多く、両眼が同時に発症するケースは少数です。

眼科での診察では、最初に濾胞や耳前リンパ節も確認します!!
診察では、まぶたの裏側にみられる濾胞と呼ばれる小さな隆起や、耳の前にあるリンパ節の腫れ・圧痛などを確認します。
炎症が強い場合には、まぶたの裏側に白い膜のような偽膜が形成されることもあり、非常に重要な診断の手掛かりとなります。

流行性角結膜炎の潜伏期間はどのくらい?
流行性角結膜炎は、アデノウイルスに感染してすぐに症状が出るわけではありません。
潜伏期間は一般に7〜14日程度です。
そのため、「今日会った人から今日うつった」とは限らず、症状が出る1〜2週間ほど前の接触が感染のきっかけになっている場合があります。
家族や職場などで流行性角結膜炎が発生している場合には、現在症状がなくても、その後に充血や目やにが出てこないか注意してください。
流行性角結膜炎はどのように感染する?
流行性角結膜炎で特に重要なのが接触感染です。
感染した人の涙や目やにに含まれるアデノウイルスが手指や物に付着し、それを触った手で自分の眼を触ることで感染が広がります。
流行性角結膜炎の感染が広がりやすいもの
- 手指
- タオルやハンカチ
- 枕や寝具
- 洗面所
- ドアノブなど頻繁に触れる場所
- 点眼薬
- コンタクトレンズやレンズケース
- 眼に触れる医療器具
アデノウイルスは感染力が強いため、眼を触ったあとの手指を介して、家庭内や集団生活の場で感染が広がることがあります。

新型コロナウイルス感染症の流行期には、インフルエンザ患者数が著しく減少したことが広く知られていますが、臨床現場ではアデノウイルスによる結膜炎についても同様の傾向が強かったのが印象的でした。
実際、流行性角結膜炎を含むアデノウイルス感染症の受診患者は明らかに少なく、感染対策の徹底や人と人との接触機会の減少が、飛沫・接触感染を主体とする各種ウイルス感染症の発生動向に大きな影響を与えていた可能性が考えられます。
家族に感染させないためにできること
流行性角結膜炎を家族にうつさないために
流行性角結膜炎は感染力が強いため、治療と同じくらい 家庭内で感染を広げないことが重要です。
こまめに手を洗う
眼を触ったあとは、石けんと流水で手を洗いましょう。
眼を触らない
できるだけ眼を触ったり、こすったりしないようにします。
タオルを共有しない
タオルやハンカチは家族と共用しないようにしてください。
点眼薬を共有しない
家族であっても、同じ点眼薬を使い回さないようにします。
よく触る場所を清潔に
洗面所やドアノブなど、手が触れやすい場所にも注意しましょう。
コンタクトレンズは相談を
使用中のレンズやレンズケースについては、眼科医に相談してください。
点眼容器の先端が、まぶた・まつ毛・眼球に触れないようにしてください。 点眼の前後にも手を洗いましょう。
眼科ではどのような検査をする?
流行性角結膜炎の診断では、検査結果だけではなく、症状、結膜・角膜の所見、発症からの日数、周囲の流行状況などを総合して判断します。
細隙灯顕微鏡検査

細隙灯顕微鏡を使い、結膜の充血や濾胞、偽膜の有無に加えて、角膜まで炎症が及んでいないかを確認します。
視力検査
角膜に炎症が及ぶと視力が低下することがあるため、必要に応じて視力を確認します。
アデノウイルス迅速抗原検査

結膜や涙液から検体を採取し、アデノウイルス抗原の有無を短時間で調べる検査があります。
重要なのは、迅速抗原検査が陰性でもアデノウイルス感染を完全には否定できないことです。
発症からの日数、採取できたウイルス量、検査キットの感度などによって、実際には感染していても陰性になる場合があります。
そのため、検査結果だけではなく、眼科医が実際の結膜・角膜所見と経過を確認することが重要です。
流行性角結膜炎の治療方法
流行性角結膜炎では、現在のところアデノウイルスそのものを確実に排除する標準的な特異的抗ウイルス薬は確立していません。
そのため治療では、まず感染拡大を防ぎながら、結膜や角膜の炎症の程度に応じて必要な治療を行います。
すべての患者さんに抗菌薬やステロイド点眼が必要なわけではありません。 眼所見を確認しながら、症状に応じた治療と感染対策を行います。
角膜の表面に高度な傷がある場合には、二次的な細菌感染を防ぐ目的で、 短期間の抗菌点眼薬を使用することがあります。
抗菌薬はアデノウイルスそのものを治療する薬ではありません。
偽膜形成や強い炎症、角膜病変などがみられる場合には、 眼所見を確認しながらステロイド点眼を検討することがあります。
ステロイド点眼には眼圧上昇などの副作用があり、 急性期にはウイルス排出を遅らせる可能性も指摘されています。 そのため、自己判断で使用・中止する薬ではありません。
ヨード系製剤を使用するケース
急性期のアデノウイルス不活化を目的として、ヨード系点眼が選択肢となる場合もあります。
ただし、すべての患者さんに行う標準治療という位置づけではなく、病状や薬剤の特徴を踏まえて眼科医が判断します。
流行性角結膜炎はどのくらいで治る?
充血、まぶたの腫れ、目やになどの結膜炎症状は、多くの場合2〜3週間程度で改善していきます。
ただし、経過には個人差があり、炎症が強い場合や偽膜を形成した場合には症状が長引くことがあります。
また、結膜炎が改善しても、角膜に炎症や混濁が残ると、かすみやまぶしさが数週間から数か月以上続くことがあります。
そのため、「充血がなくなった=完全に治った」とは限りません。
はやり目が治ったあとも「かすむ」場合があります
流行性角結膜炎では、炎症が結膜だけでなく角膜に及ぶことがあります。
発症後しばらくして角膜に多発性角膜上皮下浸潤(MSI)が生じると、結膜炎が改善したあとも、次のような症状が続くことがあります。
- 目がかすむ
- 光がまぶしい
- 視力が戻らない
- 物がにじんで見える
角膜上皮下浸潤は、単純にアデノウイルスが増殖し続けている状態ではなく、ウイルス抗原に対する免疫反応が関与する病変と考えられています。
角膜病変の時間経過、角膜混濁、ステロイド治療、長引く場合の治療については、別記事で詳しく解説しています。
▶ 流行性角結膜炎後の角膜混濁|はやり目の後遺症について詳しく見る

流行性角結膜炎の感染性期間|いつまで人にうつる?
流行性角結膜炎は感染力が強く、特に充血、涙、目やになどの急性結膜炎症状が続いている時期には、周囲への感染に注意が必要です。
ただし、「発症から○日経過すれば必ず感染しない」というように、一律の日数だけで感染性を判断することはできません。
過去の報告では、発症後しばらくの間、結膜からアデノウイルスが検出されることがあります。
症状の程度や経過には個人差があるため、学校や仕事への復帰については、眼科医の診察を受けて判断することが大切です。
流行性角結膜炎|学校・保育園・仕事はいつから行ける?
学校・幼稚園/保育園など
流行性角結膜炎は、学校保健安全法における第三種の学校感染症です。
出席停止期間は、「○日間」と一律に決められているのではなく、医師が感染のおそれがないと認めるまでとされています。
自己判断で登校を再開せず、眼科医や学校の指示に従ってください。
仕事
成人については、流行性角結膜炎を理由とした全国一律の法定休業日数はありません。
ただし、感染力の強い疾患であるため、症状が強い時期の出勤は職場内感染につながる可能性があります。
特に医療、介護、保育など、多くの人と接触する職種では慎重な判断が必要です。眼の状態、仕事内容、勤務先の規定などを踏まえて、主治医と相談してください。
高田眼科では結膜だけでなく角膜まで確認します
流行性角結膜炎では、単に「充血しているか」「アデノウイルス検査が陽性か」だけを確認すればよいわけではありません。
高田眼科では、細隙灯顕微鏡を用いて、次のような所見を確認します。
- 結膜の充血や濾胞
- 偽膜形成の有無
- 角膜上皮障害
- 角膜上皮下浸潤(MSI)
- 角膜混濁
特に、「充血や目やには治ったのに見えにくい」「以前より光がまぶしい」という場合には、角膜病変が残っていないか確認することが重要だと考えております。
迅速抗原検査が陰性であっても、検査結果だけで流行性角結膜炎を否定せず、症状や眼所見、発症からの経過を含めて総合的に判断します。
充血や目やにが改善したあとも、見えにくさやまぶしさが続いている場合は、角膜に炎症や混濁が残っている可能性があります。
気になる症状がある方は、お気軽にご相談ください。
こんな場合は眼科を受診してください
こんな場合は眼科を受診してください
はやり目と思っていても、角膜炎などによって視力に影響が出ている場合があります。
突然、強い充血が出た
急に白目が強く赤くなった場合は、原因を確認することが大切です。
まぶたが大きく腫れている
炎症が強い場合には、眼瞼の腫れが目立つことがあります。
強い痛み・まぶしさがある
結膜だけでなく、角膜に炎症が及んでいる可能性があります。
家族や職場ではやり目が流行している
周囲に感染者がいて症状が出た場合には、早めに眼科へ相談してください。
- 視力が低下した
- 充血が治ったあとも、かすみが続いている
- 物がにじむ、光を強くまぶしく感じる
これらの症状がある場合には、流行性角結膜炎に伴う 角膜上皮障害や角膜上皮下浸潤、角膜混濁が残っていないか確認することが重要です。
流行性角結膜炎(はやり目)のよくある質問
Q はやり目は片目だけのこともありますか?
はい。むしろ流行性角結膜炎では、最初は片眼から発症し、 数日して反対の眼にも症状が現れる経過がよくみられます。
Q 潜伏期間はどのくらいですか?
一般に7〜14日程度です。 そのため、症状が出る1〜2週間ほど前の接触が感染のきっかけになっていることがあります。
Q アデノウイルス検査が陰性なら、はやり目ではありませんか?
いいえ。迅速抗原検査が陰性でも、アデノウイルス感染を完全には否定できません。 眼所見や症状、発症からの日数、周囲の流行状況などを含めて判断します。
Q 抗菌薬を使えば早く治りますか?
抗菌薬は細菌に対する薬であり、アデノウイルスそのものを治療する薬ではありません。 高度な角膜上皮障害などで二次的な細菌感染を防ぐ必要がある場合に、 短期間使用することがあります。
Q 学校にはいつから行けますか?
流行性角結膜炎は第三種の学校感染症で、 「○日休めばよい」という一律の基準ではありません。 医師が感染のおそれがないと判断するまで出席停止となります。
Q はやり目が治ったのに目がかすむのはなぜですか?
流行性角結膜炎では、結膜炎が改善したあとも 角膜上皮下浸潤や角膜混濁が残り、 かすみやまぶしさが続くことがあります。
流行性角結膜炎後の角膜混濁について詳しく見るまとめ
流行性角結膜炎(はやり目)は、アデノウイルスによって起こる感染力の強い角結膜炎です。
感染後7〜14日程度の潜伏期間を経て、充血、まぶたの腫れ、涙、目やに、異物感などが現れ、片眼から始まって数日後に反対の眼へ広がることがあります。
現在のところアデノウイルスそのものを確実に排除する標準的な特異的抗ウイルス薬はなく、急性期には感染拡大を防ぐことが重要です。治療は結膜や角膜の状態に応じて行います。
また、結膜炎が改善したあとも、角膜上皮下浸潤や角膜混濁によって、かすみやまぶしさが長く続く場合があります。
「はやり目が治ったのに見え方が戻らない」「視力が低下した」という場合には、結膜だけでなく角膜まで眼科で確認することが大切です。
流行性角結膜炎は、結膜の症状が改善したあとも角膜の炎症によってかすみやまぶしさ、見えにくさが続くことがあります。
目の症状が気になる方や、治ったあとも見え方に違和感が残っている方は、 お気軽にご相談ください。
症状について相談する参考文献
- ウイルス性結膜炎診療ガイドライン作成委員会.ウイルス性結膜炎診療ガイドライン(2025年版).日眼会誌. 2025;129:1145-1183. DOI: 10.60330/nggz-2025-038.
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- Meyer-Rüsenberg B, Loderstädt U, Richard G, Kaulfers PM, Gesser C. Epidemic keratoconjunctivitis: the current situation and recommendations for prevention and treatment. Dtsch Arztebl Int. 2011;108:475-480. PMID: 21814523.
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