眼瞼下垂の基礎知識

眼瞼下垂症手術のダウンタイムを究極的に短くするために気をつけるべきこと。時系列ごとで説明します!

Dr.髙田
ABOUT ME
高田 尚忠
高田 尚忠(たかだ なおただ)
高田眼科 院長 |ひとみ眼科 / フラミンゴ美容クリニック 眼瞼手術担当医師
所属学会:日本眼科学会、日本形成外科学会、日本眼形成再建外科学会
岡山大学医学部卒業後、横浜形成外科の二木 裕先生に師事。 郡山医療生活協同組合 桑野協立病院などの様々な医療機関を勤務し、 現在は高田眼科の院長を務める。 眼科医と形成外科医の知識と、これまでの豊富な眼瞼手術の術者としての経験をもとに、2022年においては年間2,000件超える眼瞼下垂症手術を手がけております。 2022年3月より、名古屋市内の伏見駅近くのフラミンゴ眼瞼・美容クリニックを開院。

眼瞼下垂手術後のダウンタイムについて

多くの眼瞼下垂症手術を行っていると、術後、結果的に腫れが強く出てしまうこともあれば、ほとんど腫れが出ないこともあったりと様々です。

言い換えると、ダウンタイムが長引いてしまうケースと、短くて済むケースと別れます。

どんな人でも、眼瞼下垂手術後において、「普通の生活を行って支障がなくなるまでの期間」、つまり「ダウンタイム」と呼ばれる時期が少ない方が嬉しいはずです。

今回は、このダウンタイムを短くするために、眼瞼下垂手術を受けられた方が行うべきこと、逆に、行うべきではないことを説明していきたいと思います。

以下のアドバイスに従っていただければ、眼瞼下垂症手術に限らず、美容外科などで受けられた二重埋没法や二重切開手術、クマ取り手術などの眼瞼手術後の社会復帰が早くなり、患者さん本人も、その家族も、そして、術者もハッピーになれると思います。

あわせて読みたい
眼瞼下垂症の術後のダウンタイム経過を時系列写真で説明いたします!!
眼瞼下垂症の術後のダウンタイム経過を時系列写真で説明いたします!!

ひたすら冷却・安静にすること!!(手術当日〜2日後)

まず、手術の当日〜2日目までは、出来るだけ血圧を上げない、血流を良くしない、体温を上げないという考えで、必ず、安静にしておいてください

血圧が上がると、血流が良くなり、結果として、傷口からの出血する可能性が上がりますし、最悪は、止まらなくなり、翌日、止血するための処置、再縫合が必要になることもあります。

また、術後の腫れというのは、炎症反応により、組織が浮腫んでしまうことです。

この炎症反応は、言い換えれば化学反応と言えます。

化学反応は、小学校の頃に習ったのと同じで、基本的に温めると反応が進み、冷やすと反応は緩やかになります。

つまり、手術後で一番大事なことは、いかに傷口を冷やすことが出来るか?にかかっております。

しっかり、冷やすことで、炎症反応は少なくなり、結果として腫れません。

それも、眼瞼手術後の術後早期に冷やしていただくことが肝要で、温めることはもっての外です。

たとえば、手術当日にお湯に浸かるなどの入浴は、絶対に行わないでください。

やはり、手術後数日間は、低めの温度のシャワーを短時間にしておくのがベストだと言えます。

湯船に浸かれば、体は温まります・・・そうすると、先に述べたように、血圧が上がり、血流が良くなり、手術の創(きず)が炎症がひどくなります。

運が悪いと、せっかく止まっていた出血が再開し、一晩中、止まらなくなることもあります。

当院は、県外の方を日帰りで手術することが多いのですが、できれば、手術当日は、長時間の移動はせず、近隣のホテルに宿泊していただいた上で、冷やしていただくことを推奨しております。

諺(ことわざ)に、『鉄は熱いうちに打て』という言葉がありますが、『傷口は腫れる前に冷やせ』です。

いったん、腫れてしまってから冷やしても意味がないのです。

傷口の冷却にあたっては、当院では、メオアイスというアイスマスクを使っていただいております。

このメオアイスを使うことで、効率的に冷やすことが出来ますので、メオアイスを採用してから、格段にダウンタイムが短くなったことは今でも覚えてます。(尚、高田院長は、このメオアイスの開発にあたってのアドバイザーでした。)

もし、メオアイスがない場合には、保冷剤をガーゼで包んで、優しく傷口の上から当てて、冷やして頂くと効果的だと思いますが、「熱さまシート」や「冷えピタ」などの冷却ゲルシートは実際には、全く冷却効果はなく意味がないので、お気をつけください。

内服をきちんと服用する(術後3ヶ月間)

手術後3ヶ月間、当院の場合、トラネキサム酸(トランサミン)という内服を処方しております。

これは、傷の赤みを抑え、ケロイドになることを抑える目的で処方しておりますので、これをしっかり飲むことが大事となります。

外用薬をきちんと塗布すること(術後翌日〜抜糸後2日目(術後16日目))

あとは、ステロイド軟膏の塗布も術後2日目から抜糸後2日目(術後16日目)まで、しっかり傷口に塗っていただくこと。

最近では、怪我の治療として、傷口を軟膏でベタベタにした状態でサランラップで巻いて、創傷治癒を早める治療法(サランラップ療法)をきっかけに、傷口を綺麗に治すために、モイストヒーリング療法と呼ばれる方法が主流となっております。

単純に言えば、できるだけ、かさぶたを作らずに、傷口を湿潤な状態に保つことが重要だということです。

今では、モイストヒーリング用の絆創膏もありますが、眼瞼の場合には、そういった医療用資材が使えないため、代わりに、ステロイド眼軟膏を使います。

ステロイド眼軟膏で、ベタベタさせた状態、湿潤になった状態にし、傷口を乾かさないようにすることで、傷口の治癒を助けることが大事です。

しかしながら、軟膏は、目の中に入っても大丈夫なのですが、軟膏の油分で視界がボヤけてしまうことがネックになりますが、我慢して塗って頂くことが大事になります。

傷口を触ったり・抑えたり・引っ張ったり・マッサージをしない
(術後当日〜術後3ヶ月目〜それ以降も)

術後当日〜術後3ヶ月目まで、眼瞼下垂症は美容的な要素が強い手術ですので、この手術を受けられる患者様のキャラクターとして、傷口を鏡を見ながら、触ったり、引っ張ったりすることです。

炎症反応は、化学反応と先ほど述べましたが、化学反応を亢進させる要素として、混ぜること、つまり、傷口を揉んだりすると、炎症物質が混ざり、より炎症反応が強くなります。

したがって、出来るだけ触らずに、そっとしておくことが大事になります。

傷口の炎症反応が長引いたり、傷が微小に開いたりすると、ケロイド(瘢痕)の状態になり、二重ラインが崩れたり、余計に美的要素が台無しになってしまいます。

残念なことに、一旦、ケロイド状態になってしまうと、対応方法としては、自然寛解を待つか、ステロイド注射と行うか、手術でケロイド組織を切除しかなくなり、非常に治療が困難を極めます。

この状態になると、術者も患者本人も不幸なので、最大限、傷口を触らないことに注力してください。

加えて、眼瞼下垂の手術をした後、目を触ったり、弄ったり、擦ったりすることが多い方は、眼瞼挙筋腱膜の固定/ミュラー筋たんキングの固定の埋没糸が外れるリスクが高いと言えます。

そして、外れることが多いのか?と言われたら、あまりありませんが、外れてしまった方は、得てして、目をいじる人が多いと考えております。

埋没糸による固定は、当院の場合、術後に糸に対する違和感・異物反応が出るのを防止するために、1箇所止めが最近では基本としております。

(ただし、1点留めで、テント(三角目)、吊り目になったりするようであれば、収まりを付けるために、2−3点で留めることはあります。)

当然、細い糸だけで固定している状態です。術後数ヶ月して、固定された部分が傷の治癒による瘢痕で癒着、接着され安定して行くイメージです。

特に、術後早期に、瞼に強い外力を加えたら、外れることはあります。
したがって、術後の管理は非常に重要だったりしますし、外れたら、再手術となりますので注意が必要です。

術後の定期検査をきちんと受けること(手術後〜)

眼瞼下垂症の術後の仕上がりを左右する要素として、8割程度は術者の手術内容によるもので、意外にも、2割程度は、術後の管理によるものです。

術後の管理が悪ければ、せっかくの良い内容の手術も、結果として台無しになってしまうわけです。

当院では、非常に多くの眼瞼下垂症手術を手がけてきましたが、患者様のキャラクターにより、手術結果が変わることを経験します。

それは、神経質過ぎてもいけませんし、雑過ぎてもいけません。

推奨される術後の管理をキッチリ行えるタイプの方が一番結果が良いように思います。

例えば、神経質すぎる方は、仕上がりにこだわりを持ち過ぎて、術後、ことあることに手鏡を持って、傷を眺め、押さえてみたり、引っ張ってみたりと繰り返し、せっかくの手術が崩れさせ台無しにされてしまうパターンもあります。

雑な方は、論外だと思いますが、軟膏を塗らない、傷口をすぐに濡らしてみたり、傷口の上を化粧してみたり、コンタクトを許可を得ずに使用してみたり・・・枚挙に遑がありません。

大事なことは、傷口に悪そうなことは絶対に行わない。気になることは、主治医に問い合わせて、確認されると良いと思います。

術後の管理を大事にしてる外科医ほど、術後の診察を頻繁に行っていると言えます。

やりっぱなしにせず、しっかりと術後の管理を行うことは、眼瞼下垂症手術に限らず、どんな手術でも術後管理は、非常に大事なことです。

当院では、手術翌日、手術1週間後、手術2週間後(抜糸)、手術1ヶ月後、手術2ヶ月後、手術3ヶ月後と細かく診察を行うこととしております。

手術の経過において、ご本人が感じられることは、日々変化していきます。そして、疑問も含め、要望も出てきます。

そのことに対して、キチンとお答えしながら、術後の管理に注力をすることが大事で、それらを含めて、患者さん一人一人に向き合っていくからこそ最高の眼瞼下垂症手術だと考えております。

当院からすれば、多くの眼瞼下垂症手術を受けてくださった患者様の1人です。

患者様からすれば、人生で経験をしたことのない眼瞼下垂症手術を受けた状態です。

そのことを常に考えながら、対応をするつもりで、最近は、術後の対応に力を入れております。

県外の方の場合、先ず、手術の翌日に傷口の確認をすることは、必ず、診させていただいております。

つまり、県外の方でも手術の翌日、ガーゼを外して、傷口の状態の確認が必須となります。

したがって、宿泊は、基本的に一泊が必要と考えております。

その後は、2週間後の抜糸、そして、1〜2ヶ月後の経過の診察を一度必ずお願いしております。

通院可能な方の場合には、先に述べたように細かく診察をさせて頂き、アフターフォローをお願いしております。

やはり、細やかに診察・確認を行った方が経過が良いですので、ご理解くださると幸いです。

Q &A:

眼瞼下垂手術後のダウンタイムの期間はどのくらいか

術後の経過(ダウンタイム)については、個人差も多く、文章では一概に言えませんから、説明が難しい部分があります。

また、その個人差に加えて、手術方法によっても、ダウンタイムが異なります。

例えば、眉下切開手術(アイリフト手術)は、当然、傷は露出しているため、目立ちますが、腫れ自体は少なく、通常の眼瞼下垂症手術や、二重全切開手術などと比べて、短いと言えます。

そして、埋没法については、基本的に、二重切開法などと比べて、短いと言えますが、意外に、腫れる場合もあるため、切らないから腫れないとも言い切れませんので、注意が必要です。

いずれにせよ、人から見て、ほとんど指摘されなくなるには、最低1ヶ月程度はかかると考えております。

行動制限(運動、洗顔、洗髪、飲酒、お化粧など)は、最短でも1〜2か月程度経ってからとなります。

この辺りは、人により、傷の治りが異なることから、期間は前後します。

したがって、特に経過に問題なければ、半年の時間があれば問題ないと考えますが、結果を保証して行う手術ではないので、注意が必要です。

眼瞼下垂手術後の過ごし方~仕事はいつから行ける?

お仕事の内容などの普段の活動を伺いながら、直接、ご説明させて頂くことにしております。

ただ、概ね、事務作業であれば、3〜4日後から可能だと考えております。

接客業の場合は、それなりに目立ってしまう場合もありますので、抜糸までは難しいと思います。

ある程度、見えても平気だという人は、1週間以内のお休みで対応していることが多いように思います。

例えば、黒縁メガネ(眼鏡)を使用するなどで工夫することでも、カバーできる部分もあります。

あわせて読みたい
眼瞼下垂症手術の仕事復帰までの期間は、どれぐらい?術後写真でも解説!!上手な誤魔化し方は?
眼瞼下垂症手術の仕事復帰までの期間は、どれぐらい?術後写真でも解説!!上手な誤魔化し方は?

眼瞼下垂手術後のダウンタイムが長くなり、腫れがひかないと感じたときは ?

眼瞼下垂症手術のダウンタイムは、まれに、長くなってしまうケースがあります。

残念ながら、長くなってしまうと、二重の幅が過剰な瘢痕形成により広くなり過ぎてしまったり、二重ラインが取れたり、歪んだりする可能性があります。

厚紙の折り紙では、綺麗な鶴が折れないように、眼瞼下垂症の二重なども、創部が固くなってしまうと不自然な仕上がりになってしまうのが現状です。

そうなった場合には、その瘢痕が柔らかくなるまでの相当な期間がかかりますし、難しい場合には、瘢痕組織を切除し、やり直した方が良い場合もあります。

腫れが引かず、ダウンタイムが長くなってきていると感じた場合には、

  • 傷をやたらと触ったり、引っ張ったり、擦ったりしていないか?
  • 指定された内服薬・外用薬を使用できているか?
  • 冷却をしっかり出来ているか?

を再度見直してください。

手術の結果が気になって、鏡を何度も、長時間見るようなことが習慣付いてしまっているようだと危険信号です。

左右差はある?

基本的には、ダウンタイム初期の時期においては、目に開きは悪く、また、二重幅が広くなったりします。

そして、同じ手術を両眼に行っても、同じダウンタイムになるわけでもありませんので、術後早期においては、左右差があったとしても、特に問題はありません。

それよりも、むしろ、早期の左右差を問題視して、すぐに、修正手術を行うことのほうが愚策です。

なぜなら、待てば治るかもしれないのに、リオぺというリスクを犯すからです。

つまり、ダウンタイム中の修正手術は、手術中の定量が難しく、きちんと結果を出すのが難しいからです。

術後3ヶ月ぐらいまで左右差が強かったのが、術後6ヶ月ぐらい経って、その左右差がなくなったというケースも経験します。

そういったこともあり、術後の左右差がある場合は、少なくとも3ヶ月程度は、様子をみることが基本だと考えております。

最後に

眼瞼下垂手術の術後の仕上がりを左右する要素として、術者の手術内容によるものだというのは、もちろんなのですが、その後の術後管理で、手術の結果を100点にも、30点にもしてしまうものなので、十分に注意を払って頂きたいと考えております。

眼瞼下垂手術に限らず、どんな外科手術においても、術後の経過の良さ=ダウンタイムの短さは、手術内容がポイントとなることには異論が出ることはないかと思います。

ダウンタイムが短い手術とは、単純に手術時間が短いことが一番の条件となってきます。

手術時間が短くすると単純に言っても、そのためには卓越した技術と、豊富な経験が必要であることは当たり前ですが、それよりも、常日頃から、より早くしようとする意識を持っているか?が一番大事です。

早くしようとする意識を持つことができるのは、その医師が早い手術こそが結果を良くする一番のコツだと分かっているからです。

しかしながら、手術時間を短くすることを意識することを持つことは、どんな医師でも行っていると思いますが、究極的に短くすることを考えている医師は少ないです。

例えば、傷口を縫合する操作一つ取ってみても、私の場合は、無駄がないように意識しています。

つまり、ただ、早いという尺度だけで、手術を行っているわけではありません。

眼瞼下垂症手術に求められるのは、速さ・丁寧さ・正確さのバランスが伴って、初めて、安定して平均的に早い手術になります。

一流のスシ職人の握り方のように、無駄のない洗礼された動作・所作にこそ、手術の仕上がりと共に、ダウンタイムが短くなると考えております。

具体的には、当院の眼瞼下垂手術は、両眼で25分〜40分でほとんどの手術が終わります(平均30分です)。

そこには、瞼の腫れぼったさへの対応、例えば、皮膚切除、眼輪筋切除、ROOF脂肪の処理、ファシアリリース、眼窩脂肪の処置、左右差の微調整、丁寧な縫合も含めてのお話です。

手術時間のばらつきは、手術の滞りではなく、単純に瞼の条件です。

つまり、腫れぼったい方は、薄い瞼の人よりも作業量が増えるので長くなるだけのことです。

外勤先である浜松労災病院では、総合病院ですので、そういった病院の決め事として手術予定時間を宣言してから手術を行うことになってます。

実は、勤め始めた当初は、突然、手術室に割り込んできた名も知らない開業医でしたから・・・手術場の看護師さん達からは怪訝そうにされてました。

宣言した時間通りに、長すぎることもなく、短すぎることもなく、予定通りに手術を終わらせ続けることが、手術場の看護師さん達の信用に繋がりました。

今では、その看護婦さん達から、眼瞼下垂症手術をお願いされるようにもなりました^^

ダウンタイムを短いことを希望されるのであれば、是非、病院選びにおいて、ダウンタイムに気を配っている先生、そして、手術時間が早くて、手術内容がしっかりしたところを選ぶべきだと考えております。

当院の眼瞼下垂症手術をお知りになりたい方は、こちらの記事も合わせてお読みください。

あわせて読みたい
最速の眼瞼下垂症手術(両眼:30分)はダウンタイムも少ない。
最速の眼瞼下垂症手術(両眼:30分)はダウンタイムも少ない。
- 【眼瞼下垂】延べ2万眼瞼以上の手術経験 -
- 【眼瞼下垂】延べ2万眼瞼以上の手術経験 -
記事URLをコピーしました