基本の話

「眼瞼下垂ってなに?どんな病気?」自覚症状、セルフチェック方法、手術の判断基準について解説します。

※2021.2.10 内容を更新


 ■「眼瞼下垂ってなに?どんな病気?」とは?


 眼瞼下垂症に悩む女性の画像

 眼瞼下垂(がんけんかすい)とは読んで字の如く、まぶたが垂れ下がる状態、つまり、まぶたが通常の位置より下がり、目が開けづらくなるような状態のことを眼瞼下垂(がんけんかすい)といいます。

したがって、瞼(まぶた/目蓋)を引き上げる構造に異常が発生し、結果として、瞼(まぶた)を上げようとしても瞼が上がらなくなる状態のことです。

人の体というのは、脳からの命令が神経を介して伝わり、筋肉が動き、そして、筋肉の力が、腱を介して、骨に伝わり動きます。

まぶたに置き換えると、脳→動眼神経→眼瞼挙筋→眼瞼挙筋腱膜→瞼板(軟骨)→まぶた と伝わることとなります。

つまり、眼瞼下垂症というのは、この経路の何処かで障害が起きてしまい、瞼が上がらなくなることとなります。

神経系統に異常が出るパターン、腱膜に異常が出るパターン、筋肉系統に異常が出るパターン、瞼(まぶた)の皮膚などに異常が出るパターンに分かれます。

一番多いのが、筋肉系統の眼瞼挙筋腱膜に異常がでるパターンです。つまり、眼瞼挙筋腱膜と瞼板軟骨との接着が外れてしまったり、眼瞼挙筋腱膜が過剰に伸びてしまったり、断裂したりする状態で、後天性腱膜性眼瞼下垂症と呼びます。

これは、スポーツ外傷で、よく見受けられるアキレス腱断裂みたいもので、アキレス腱も複数本あるので、少し切れたとしても問題がないように、眼瞼挙筋腱膜も部分的に断裂をしていって、断裂が激しくなりに連れて、眼瞼下垂症も重症化するイメージです。

後天性というのは、年齢を重ねることで段々と進んでくる状態と言えますが、生まれながら、瞼(まぶた)が上がりにくい状態のことを先天性眼瞼下垂症と言います。

また、瞼の皮膚の余剰、目を閉じる筋肉(眼輪筋)による不調などによって引き起こされる眼瞼下垂症を偽眼瞼下垂症(ぎがんけんかすいしょう)と分類されます。

眼瞼下垂症によって、引き起こされる身体的異常は、視野の狭窄化に伴う視力の低下、ドライアイ、眼精疲労、肩こり・頭痛などの慢性疲労症状などが挙げられます。


■隠れ眼瞼下垂 [代償性眼瞼下垂とは?]


MRDの測定方法の画像 眼瞼下垂症の診断について、もの凄く難しいように思えますが、実は、意外に単純で、物差し一つで、ある程度の診断の見通しが出来たりします。

(※最終的な診断行為というのは、医師が行うものではありますので、その点はご理解をください。)

先ず、眼瞼下垂症の医学的な診断基準は、目安として”MRD(margin-reflex distance)”が3.5mm以下になった場合と定められています。

これは、“上まぶたの縁と黒目の中央部の距離”がおよそ3.5mm以下になったら、眼瞼下垂と診断される”ことを意味します。

正常に目が開いている場合でも、黒目の上の方に上まぶたが少しかかっていて、”上まぶたの縁と黒目の中央部の距離”は3.5~4.0mm程度です。

軽度の眼瞼下垂では、上まぶたは瞳孔にかかり、この場合の距離は1.5mm前後、中程度では0.5㎜前後。重症になると上まぶたが瞳孔をふさぎ、距離の数値はマイナスとなります。

しかしながら、人間の身体は、よく出来ていて、眼瞼挙筋などに問題が発生し、まぶたが上がらなくなったら、前頭筋(ぜんとうきん)というオデコ(額)の筋肉を使って、眉を上げることで、眼瞼挙筋の働きを助け、一見して眼瞼下垂症がないような状態になります。

これを眼瞼下垂症の代償期といいます。

これは、いわゆる「隠れ眼瞼下垂症」と言える状態です。

代償期の眼瞼下垂症においては、MRDは、実際の病態よりも、少なく見積もられた数値となってしまうので注意が必要です。

前頭筋の働きによる眼瞼下垂の代償作用は強く、眼瞼下垂症が重度になってきて、初めて、MRDによって、眼瞼下垂症の診断が可能となるようなケースも多々あります。

ちなみに、眼瞼下垂症の伴う代表的な付随症状のほとんどが、この代償の働き、前頭筋の過緊張によって引き起こされるものだと言えます。

肩こり・頭痛・眼精疲労などの症状で眼瞼下垂症を疑って、眼科を受診したものの、代償期の眼瞼下垂症だったため、瞼(まぶた)が下がってないということで診断を否定されることもあり得ます。

そこで、眼瞼下垂手術を行うかどうかを考える上でも、代償を考慮に入れた眼瞼下垂の診断が大事になるわけです。

代償期を加味した眼瞼下垂症のの自己診断・セルフチェック方法


 眼瞼下垂症の代償とは、前頭筋の働きで眼瞼下垂症を軽減する状態ですので、前頭筋の働きが関与しなかった場合の瞼の挙がり幅(MRD)を測定することで調べられます。
そのやり方を提示しましょう。(参照:ひとみ眼科のどの手術方法がおすすめ?美容外科手術との違いなど眼瞼下垂手術の全て教えます!

眼瞼下垂症の自己診断で使用するのは、iphoneなどのスマートフォンのカメラ機能と物差しです。

 

STEP.1:


眼瞼下垂セルフチェックの画像

 

 洗面所などの鏡の前に立ち、定規を眉から垂らすように指先を固定します。

代償作用を抑えるという意味で、額の力を抜くことを意識して、必ず目を閉じた状態で行ってください。

 

STEP.2:


眼瞼下垂症セルフチェックの画像
定規で押さえつつ、眉を出来るだけ持ち上げないように、そっと目を開けてください。

眼瞼下垂症がある方は眉が上がろうとするので、しっかり指で眉を固定しましょう。

 

STEP.3:


眼瞼下垂セルフチェックの説明画像

 STEP.2の状態を維持しながら、スマートフォンの写真機能で、洗面所の鏡で確認しながら、瞳(黒目のこと)の位置を正面にした状態で写真を撮影。

STEP.4:


 撮影した画像をスマートフォンで表示し、拡大して、瞳の中心から瞼の縁までの距離を確認。

瞳の中心から、瞼の縁までの距離 marginal reflex distance(MRD)を用います。眼瞼下垂症を診断する際には大事な要素となります。

さきに、説明しましたが、MRDの正常値は3.5mm以上となりますが、眼瞼下垂症の方ではMRDが3.5mm以下になった状態になります。

一般的に、MRDが3.5mmから瞳孔上縁までを軽度、瞳孔上縁からMRDが-0.5mmまでを中等度、MRD:-0.5mm以下を重度と分類します。

つまり、先ほどのスマートフォンで撮影した写真から測定できるMRDから、ご自身が眼瞼下垂症なのかを判断することができます。

そして、眼瞼下垂は、片側の目のみに現れる「片眼性(へんがんせい)」と、両目共に出る「両眼性(りょうがんせい)」がありますが、一般的には、左右差はあっても両眼性のパターンが多いため、手術は両眼に対して行い治療することが多いです。

■「眼瞼下垂」手術の判断基準について


眼瞼下垂に悩む方から、「どの程度から手術の適応となるのですか?」と質問をいただきます。

高田眼科(ひとみ眼科)としては、眼瞼下垂(がんけんかすい)が軽度であっても、眼瞼下垂症特有の症状に悩まされており、かつ、眼瞼下垂手術により改善される見込みがあるのであれば、手術適応とさせて頂いております。

ただし、眼瞼下垂症手術は、あくまで最終手段であり、術前の診察、手術の説明等を行った上で、手術のメリットだけでなく、デメリットも理解して頂いた上で選択すべきだと考えております。

■「眼瞼下垂」の代表的な症状


眼瞼下垂症の代表的症状のリスト


眼瞼下垂になると、まぶたが下がるため、物が見えにくくなります。また、まぶたが下がることによって、周囲からはいつも眠たそうな表情にみえてしまいます。

目が開きにくく、まぶたが重いと感じて上げるのが難しくなると、代償によって、まぶたを上げようとするために額に力が入ります。

すると、眉毛が高く上がったり、おでこに深いシワがよってしまうことも。

まぶたを動かす筋肉も関係しているため、二重まぶたの幅が広がったり、まぶたが三重になって、メイクをする際にアイライナーがうまくひけないこともあります。

また、視野が狭くなるため、アゴを上げて周囲や下の方を見るようになり、動作も不自然になります。このような見た目だけの問題だけでなく、眼精疲労や頭痛、肩こりを引き起こすこともあります。

 

■眼瞼下垂症の意外に盲点になる症状:睡眠障害



メラトニンとセロトニンの分泌の図

日本においては約5人に1人が、不眠の症状で悩んでいるとされています。

不眠症は、小児期や青年期にはまれですが、20~30歳代に始まり加齢とともに増加し、中年、老年と急激に増加します。

不眠症の原因には、心理的な要因、身体的な要因、薬理的な要因、環境的な要因など、さまざまなものがあります。

意外なことに思われるかもしれませんが、眼瞼下垂症は、睡眠障害の原因となり得ると言えます。

それは、光によって、覚醒ホルモンであるセロトニンと睡眠ホルモンであるメラトニンの分泌がコントロールされているからです。

人は、目に光をしっかり浴びることで、脳を覚醒させることが出来ます。

それは、光刺激により、睡眠ホルモンであるメラトニンの分泌がリセットされ、覚醒ホルモンであるセロトニンが分泌されるからです。

睡眠障害の治療として、起床時に、しっかりと光を浴びることを推奨されているのは、このホルモンサイクルに対してプラスに働くと考えられているからです(高照度光照射療法)。

つまり、眼瞼下垂症になると、常に、瞳孔に瞼が被さってる状態になるため、光が網膜に十分届かなくなり、メラトニン分泌優位な状態になります。

メラトニンが分泌されると体温が低下し、人間は睡眠の体制に入り、眠くなります。

眼瞼下垂症になると、睡眠障害がひどくなり、仕事や勉強などの集中力の低下などに繋がります。

夜の長距離の運転、深夜の受験勉強の際、眠気を覚まそうと、瞼を擦って、目を見開くようなことをしたことはありませんか??

人は瞼をしっかりと見開くことで、覚醒状態を維持しやすくなることを本能的にわかっているからです。

眼瞼下垂症を治療することで、睡眠障害が治り、1日の活動性が上がるということは、特段、当たり前のことだと考えます。

 

■「眼瞼下垂」のタイプと原因


 眼瞼下垂は、先ず、大きく3つに分られます。

 生まれつきの「先天性眼瞼下垂」と、大人になってから何らかの原因でまぶたが下がる「後天性眼瞼下垂」に分類されますが、
まぶたを上げる筋肉や腱には異状がないけれども、瞼が下がってるようにみえる「偽眼瞼下垂(ぎがんけんかすい)」というタイプのものもあります。

偽眼瞼下垂は、眼瞼挙筋や眼瞼挙筋腱膜に異常がないということもあり、それぞれの原因に対応した治療が必要となります。


眼瞼下垂症の種類のリスト
眼瞼下垂の原因は、まぶたを動かす神経に何らかの異常が生じた場合、または、まぶたの筋肉に異常がある場合、さらにまぶたの一部である「挙筋腱膜(きょきんけんまく)」の異常が原因で起こる場合の3つに大きく分けられます。

神経性の眼瞼下垂症については、糖尿病による一時的な外眼筋麻痺(罹患神経は動眼神経より外転神経や滑車神経の方が多い)による眼瞼下垂症、重症筋無力症による眼瞼下垂症、脳動脈瘤による動眼神経麻痺が原因の眼瞼下垂症などが代表的となります。

これらは、通常に行われる眼瞼下垂症手術では治らず、それぞれの原因疾患へのアプローチが必要となります。

腱膜性眼瞼下垂症については、花粉症やコンタクトレンズを使うときなどに、まぶたを強くこする行為がずっと続くだけで、眼瞼下垂症になってしまうので、注意が必要です。

眼瞼下垂症については、詳しい原因や程度により、それぞれにふさわしい治療法・手術方法があります。

 


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