コンタクトレンズ、特にハードコンタクトレンズを外した直後に、眼鏡をかけたら、なんだか、見え方がボヤけたという経験はないでしょうか?
角膜というのは、透明なドーム状の形をしておりますので、実は、眼球において、非常に重要なレンズだと言えます。
その形が変わることにより、眼球自体の屈折の状態、つまりは、度数が変化します。
つまり、コンタクトレンズの圧迫により、一時的に角膜浮腫(むくみ)が起こるために,角膜の厚さ,角膜の曲率半径などの角膜の形が変化し、屈折状態が一時的に変化することをスペクタクルブラー現象と呼んでおります。
コンタクトレンズ装用者に対する眼鏡処方を行う際に、裸眼の状態で過ごしていただいて、スペクタクルブラー現象の影響を無くしてから眼鏡処方を行わなければなりません。
通常、スペクタクルブラー現象は、数十分〜数時間でなくなり、角膜の形は、元の状態に戻ります。
同じようなことは、眼瞼下垂症手術においても、角膜の形状変化というのは、考慮に入ればければならない要素だったりします。
瞼が角膜を抑える力を眼瞼圧(がんけんあつ)というのですが、眼瞼下垂手術を行うと、この眼瞼圧が変化することで、角膜の形が術前と変化する可能性があります。
近視・乱視などの眼の屈折状態が変化して、見えやすくなることもあれば、逆に、見にくくなることがあります。
しかしながら、眼瞼圧による視力の変化は、多くの眼瞼下垂手術を執刀してきた経験上、個人的には非常に少ないと考えております。
むしろ、コンタクトレンズ装用者が腱膜性眼瞼下垂になることが多いこともあり、コンタクトレンズ装用者が眼瞼下垂手術を受けると、暫くコンタクトレンズを付けられない期間が続くことになります。
結果として、コンタクトレンズの中断によって角膜の形に強く影響を及ぼしていたコンタクトレンズの圧迫の要素がなくなり、スペクタクルブラー現象がおこり、見え方が変わる可能性もあります。
眼瞼下垂症手術による眼瞼圧の変化による視力の変化ではなく、単純なコンタクトレンズによるスペクタクルブラー現象である可能性が強いです。
ただ、眼瞼下垂症を受けた方の中には、術後の視力変化を訴える患者さんが多いのは事実です。
しかしながら、眼瞼下垂症手術は、瞼を対象とした手術であって、眼球を手術するわけではないことから、術後に視力が大きく落ちると考えることはないと考えております。
視力が落ちたとしても、一過性であると言えます。
また、眼瞼下垂症手術後には、傷口に眼軟膏を塗布する形になるのですが、その眼軟膏が目の中にも入ってしまい、眼表面に軟膏成分による油膜が張ってしまうことで、ボヤけてしまい、視力低下を訴える方が多いので注意が必要です。
抜糸した後には、軟膏も中止できるので改善が見込めるので、問題がありません。
さて、白内障手術やレーシック手術などの屈折手術と眼瞼下垂手術を予定している場合、眼瞼下垂手術をまず先に行うべきなのか? それとも、屈折手術を先に行うべきなのか?の問題があります。
この疑問の答えについては、先に、屈折手術を行ってしまうと、眼瞼下垂症手術によって、視力が変わってしまうので、先に眼瞼下垂症手術を行うべきだという意見もあります。
しかしながら、白内障手術やレーシック手術などの屈折手術に限らず、眼科の手術の多くは、手術中に目をつぶってしまわないように開瞼器という手術器具を使用します。
ただ、無理な開瞼器の使用により、眼瞼挙筋腱膜を傷つけてしまい、術後眼瞼下垂症を引き起こす可能性があります。
したがって、先に、屈折手術を行った方が良いと言える一面も一概に、どちらを先にやった方が良いのかは答えがありません。