眼瞼下垂とおでこのしわ:関連性と治療方法
おでこにしわがあると、老けた印象を与えたり、不機嫌に見えがちです。
定着してしまった深いしわは、セルフケアでの改善が難しく、加齢によるものだからと諦めている方もいるのではないでしょうか。
実は、おでこにしわができる原因は加齢だけではありません。
乾燥や紫外線、表情のクセなど多岐にわたり、眼瞼下垂もしわを引き起こす原因の一つです。
本記事では、眼瞼下垂になるとなぜおでこのしわができやすくなるのかについて、関連性を詳しく解説していきます。
おでこのしわ改善に効果が期待できるボトックス注射や、眼瞼下垂手術についてもまとめましたので、治療を検討する際の参考にしてください。
おでこのしわは眼瞼下垂が原因?
眼瞼下垂とは、まぶたを上げる力が弱くなり、目をうまく開けられなくなる疾患です。
年齢を重ねるほどに目立ちやすくなるおでこのしわですが、実は眼瞼下垂が原因となっている可能性もあります。
眼瞼下垂による目の開きにくさはおでこのしわの原因の一つ
眼瞼下垂になるとまぶたの開きが悪くなるため、ものを見るときに目を大きく見開いたり、眉毛を上げたりするクセがつきやすくなります。
その結果、無意識のうちにおでこの筋肉(前頭筋)に力が入り、しわが寄りやすくなるのです。
おでこのしわは「加齢に伴う皮膚のたるみ」や「一重まぶたによる表情のクセ」などによっても増える場合があり、眼瞼下垂のみが原因ではありません。
しかし、眼瞼下垂の方はおでこのしわができやすく、若くてもしわが目立つケースもあるため、早期の診断・治療が大切です。
眼瞼下垂が原因でできるおでこのしわの特徴
一口におでこのしわといっても、原因やしわのでき方によっていくつかのタイプに分かれます。
おでこのしわの種類 | 特徴 | 主な原因 |
---|---|---|
表情じわ・クセじわ | 筋肉の動きによってできるしわ。おでこのほか、目尻や眉間にも現れやすい | 表情のクセによる前頭筋の収縮 |
深いしわ・大じわ | 肌のハリがなくなり、くっきりとしたしわが定着している状態 | 加齢や紫外線による肌の弾力低下、たるみ |
乾燥小じわ | 皮膚の表面にできる浅いしわ。ちりめんじわとも呼ばれる | 肌の乾燥、紫外線、摩擦 |
眼瞼下垂が原因でできるおでこのしわは、表情じわ・クセじわの一つです。
本来、目を開けるときには眼球の上側にある「眼瞼挙筋」を使いますが、眼瞼下垂になると眼瞼挙筋の働きが弱くなります。
前頭筋を使って無意識に眉毛を上げて目を開こうとするため、おでこにしわが寄り、次第に定着してしまいます。
また、加齢に伴い肌にハリがなくなり、表情筋も衰えると、ますますしわが元に戻りにくくなるため注意が必要です。
ボトックス注射を打つ前に眼瞼下垂でないかチェックを
ボトックスには、筋肉の収縮を抑える作用があり、前頭筋の動きによって引き起こされるおでこのしわを目立たなくする効果が期待できます。
しかし、眼瞼下垂の症状がある方へのボトックス注射は注意が必要です。
先述したとおり、眼瞼下垂は眼瞼挙筋の機能が低下している状態であり、まぶたを十分に開けるためには前頭筋の力が必要です。
そのため、ボトックス注射によって前頭筋の働きを弱めてしまうと、前頭筋を使って目を開ける行為が困難となり、眼瞼下垂の症状が悪化するおそれがあります。
おでこのしわをボトックス注射で改善したいと考えている方は、眼瞼下垂になっていないかどうかを確認しましょう。
眼瞼下垂の手術方法とおでこのしわへの効果
眼瞼下垂が原因のおでこのしわを改善するためには、眼瞼下垂を治療して根本的な原因を取り除く必要があります。
眼瞼下垂手術にはいくつかの術式があり、症状の程度にあわせて選択されます。
眼瞼下垂手術の種類
眼瞼下垂手術は、眼瞼挙筋の機能がある程度残されている場合は「挙筋前転法」や「挙筋短縮法」が行われます。
一方、眼瞼挙筋がほぼ機能していない場合に選択されるのが「前頭筋吊り上げ術」です。
医療機関によっては、メスを使わない「埋没法」の眼瞼下垂手術を選択できる場合もありますが、一般的には切開を伴う方法が用いられます。
挙筋前転法
挙筋前転法は、もっとも一般的な眼瞼下垂手術です。
まぶたの皮膚を切開したあと、挙筋腱膜を瞼板から引き出し、前転させて瞼板に再固定します。
軽度の眼瞼下垂に有効な術式であり、術後の腫れが少なく再発もしにくいメリットがあります。
挙筋短縮法
まぶたを切開したあと、伸びてしまった挙筋腱膜を短く切断して瞼板に固定する方法です。
まぶたの表側から挙筋腱膜を切除する「経皮法」と、裏側から切除する「結膜法」があります。
挙筋短縮法は、挙筋前転法では改善が見込めない重度の眼瞼下垂に有効な術式ですが、ミュラー筋を傷つけやすい点に注意が必要です。
前頭筋吊り上げ術
おでこの筋肉である前頭筋と瞼板をつなぎ、眉毛の動きによってまぶたを開ける方法です。
吊り上げ材料には、大腿筋肉や側頭筋肉などの自家組織、またはゴアテックスやシリコンなどの人工素材が用いられます。
前頭筋吊り上げ術は、先天的にまぶたを上げる力が非常に弱い場合や、加齢による重度の眼瞼下垂に適用される術式です。
しかし、まばたきが不自然になったり、目が閉じなくなる兎眼(とがん)が起こったりするリスクがあるため、手術を受ける際には十分な検討が必要です。
眼瞼下垂の手術について、詳しくは下記の記事を参考にしてください。
眼瞼下垂治療後のボトックス注射はOK
眼瞼下垂手術によってまぶたを開きやすくすれば、前頭筋の力で目を開こうとするクセが治り、おでこのしわが薄くなる効果が期待できるでしょう。
ただし、長い期間をかけて刻まれた深いしわは、眼瞼下垂を治療するだけでは完全に消えないおそれがあります。
眼瞼下垂手術後もおでこのしわが気になる場合は、ボトックス注射を検討してみてください。
また、ボトックス注射以外に、ヒアルロン酸注入やレーザー治療、再生医療などの治療法もあります。
まずは根本原因である眼瞼下垂を治療したうえで、おでこのしわの改善・予防を目指しましょう。
治療にかかる費用・保険適用について
眼瞼下垂は、視野が狭くなって視機能に影響を及ぼす疾患であるため、基本的には保険適用による治療を受けられます。
手術方法 | 手術費用(3割負担) |
---|---|
挙筋前転法 | 21,600円(片眼) |
挙筋短縮法 | 21,600円(片眼) |
前頭筋吊り上げ術 | 55,590円(片眼) |
上記の手術費用のほかに、短期滞在手術基本料や診察代、薬代などで2〜3万円の追加料金がかかります。
保険適用になる条件
手術方法にもよりますが、眼瞼下垂であると診断されれば、基本的には保険適用での治療が可能です。
眼瞼下垂の明確な診断基準はないものの、多くの医療機関では、上まぶたが瞳孔の大部分を覆っている場合に眼瞼下垂と診断されます。
また、前頭筋を使ってまぶたを上げているかどうかも眼瞼下垂を判断する基準です。
ただし、修正手術の場合や審美的な要望がある場合など、保険が適用されず自由診療となるケースもあるため、事前に医師とよく相談してください。
眼瞼下垂手術の保険適用については、こちらの記事でも詳しく紹介しています。
まとめ
本記事では、眼瞼下垂とおでこのしわの関係性について解説しました。
眼瞼下垂は、おでこのしわができる原因の一つです。
眼瞼下垂になると眼瞼挙筋が衰え、前頭筋を使ってまぶたを上げようとするため、おでこにしわが寄りやすくなります。
目を開くときに眉毛を上げるクセがある方は眼瞼下垂が疑われるため、眼科の受診をおすすめします。
眼瞼下垂手術により目の開きにくさが改善されれば、おでこのしわが目立たなくなる効果が期待できるでしょう。
眼瞼下垂とおでこのしわの関連性・治療法に関するよくある質問
- 眼瞼下垂がおでこのしわを引き起こすのはなぜですか?
-
眼瞼下垂により、眉を上げる筋肉に負担がかかり、その結果おでこに横じわができやすくなります。
- 眼瞼下垂の治療でおでこのしわは改善しますか?
-
多くの場合、眼瞼下垂の治療により眉を上げる筋肉の負担が減り、おでこのしわが改善します。
- おでこのしわがある場合、眼瞼下垂の可能性はどのくらいありますか?
-
おでこのしわの原因は様々ですが、特に眉を上げる動作が習慣化している場合は、眼瞼下垂の可能性が高いです。
- 眼瞼下垂の治療をせずに、おでこのしわだけを治療することは可能ですか?
-
可能ですが、根本的な原因である眼瞼下垂を治療しない限り、おでこのしわが再発する可能性が高いです。
- 治療費用は保険適用になりますか?
-
単なる美容目的ではなく、機能的な問題がある場合は保険適用になる可能性があります。
参考文献
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