慢性進行性外眼筋麻痺(CPEO)の眼瞼下垂|診断と手術
両目のまぶたが何年もかけて少しずつ下がり、目の動きも悪くなっていく。この経過をたどる病気が「慢性進行性外眼筋麻痺」です。進み方がゆっくりで左右差も少ないため、生まれつきの眼瞼下垂や重症筋無力症と間違われやすい病気です。眼形成外科医の立場から、症状、診断、まぶたの手術を解説します。
- ミトコンドリアの病気で、まぶたと目を動かす筋肉が弱くなる:多くは30歳ころまでに始まり、何年もかけて両目に進みます。
- 診断がつくまでに時間がかかる:ある研究では78%が最初は別の病気と診断され、半数以上が診断の前にまぶたの手術を受けていました。
- 手術でまぶたは上がるが、控えめに上げる:目を閉じる力も弱くなるため、角膜を守れる高さにとどめます。再手術が必要になることもあります。
- 心臓の検査を一度は受ける:一部の方は、心臓の合併症を伴うカーンズ・セイヤー症候群にあたります。
執筆:髙田 尚忠(高田眼科 院長/眼科医・眼形成外科) 最終更新:2026年10月
慢性進行性外眼筋麻痺とは
細胞の中でエネルギーを作るミトコンドリアの働きが落ち、まぶたを上げる筋肉と、目を動かす筋肉が少しずつ弱くなる病気です。英語の頭文字からCPEOとも呼ばれます。多くは30歳ころまでに始まります1。患者数は3万人に1人程度とされ、女性にやや多いと報告されています2。
目の症状だけの人と、全身に症状が出る人がいる
原因は、ミトコンドリアDNAの一部が大きく欠けたものが63%、複数か所が欠けたものが26%、1文字の変化が7%でした3
20歳までに発症し、網膜の変化と心臓などの異常を伴うものは「カーンズ・セイヤー症候群」と呼ばれます。
まぶたと目の症状
浜松医科大学の報告では、7人のうち5人に眼球の突出がみられました。この研究では、唾液や頬の粘膜からも、原因となるミトコンドリアDNAの欠失が見つかっています4。
診断がつくまでに、時間がかかる
56%の人が、診断がつく前にまぶたの手術を受けていました2
まぶたの手術
手術でまぶたを上げることはできます。目標は、視界を確保できる高さまでの控えめな矯正です1。
上げすぎると目が閉じにくくなり、角膜が傷つきます。病気が進むと、また下がってくることもあります。
手術の方法
手術の成績
黒目の中心より下
黒目の中心より上
上まぶたを上げると同時に下まぶたも持ち上げる方法を、32人64眼に行った研究です。黒目の中心から上まぶたの縁までの距離は、手術直後は3.4mmで、その後少し下がりました。9つのまぶたで再手術(上がり不足5、上がりすぎ4)が行われ、角膜の傷が続いたのは3眼でした6。
院長コメント:当院では、眼瞼挙筋前転法を基本としています
まぶたを上げる力、目を閉じる力、目の乾きを手術前に確認し、角膜を守れる高さに調整します。前頭筋吊り上げ術は当院では行っていません。必要と判断した場合は、対応できる施設をご紹介します。
よくある質問
何科を受診すればよいですか。
診断は脳神経内科、まぶたの手術は眼科・眼形成外科です。まぶたの相談で眼科を受診し、そこから脳神経内科へ紹介される流れが一般的です。
子どもに遺伝しますか。
原因となる遺伝子の変化の種類によって異なります。最も多いのは、ミトコンドリアDNAの一部が大きく欠けたタイプです3。遺伝については、遺伝子の検査の結果をもとに、脳神経内科や遺伝カウンセリングでご相談ください。
手術をしても、また下がりますか。
病気が進むと、また下がることがあります。報告によっては、再手術が39%に及んでいます1。上げすぎを避けるため、最初から控えめに上げることも理由の一つです。
手術は保険が使えますか。
基準を満たす後天性の眼瞼下垂は、保険診療の対象です。まぶたを上げる力が、生まれつきの眼瞼下垂と同じくらい大きく失われている場合は、自費診療になります。詳しくは「眼瞼下垂手術の費用」をご覧ください。
高田眼科の考え方
両目のまぶたが何年もかけて下がり、目の動きも悪い方では、手術の前に原因を確かめることを大切にしています。筋肉の病気による眼瞼下垂の全体像は「筋肉の病気による眼瞼下垂」をご覧ください。
ゆっくり進むまぶたの下がりと、目の動きの悪さが気になる方へ
まぶたの下がりの原因を見きわめ、全身の状態に合わせた治療方針をご提案します。
参考文献
PubMed収載論文をもとに作成しています。文献1・2・7は全文、それ以外は抄録を確認しています。
- Park RB, Akella SS, Aakalu VK. A review of surgical management of progressive myogenic ptosis. Orbit. 2023;42(1):11-24. doi:10.1080/01676830.2022.2122514
- Karimi N, Ghahvehchian H, Keyhani A, et al. Type and frequency of misdiagnosis and time lag to diagnosis in patients with chronic progressive external ophthalmoplegia. J Ophthalmic Vis Res. 2024;19(3):334-339. doi:10.18502/jovr.v19i3.13998
- Rodríguez-López C, García-Cárdaba LM, Blázquez A, et al. Clinical, pathological and genetic spectrum in 89 cases of mitochondrial progressive external ophthalmoplegia. J Med Genet. 2020;57(9):643-646. doi:10.1136/jmedgenet-2019-106649
- Takeda Y, Suzuki H, Hosono K, et al. Clinical and molecular genetic characteristics of chronic progressive external ophthalmoplegia in Japanese patients. Jpn J Ophthalmol. 2022;66(3):314-319. doi:10.1007/s10384-022-00920-5
- Kabunga P, Lau AK, Phan K, et al. Systematic review of cardiac electrical disease in Kearns-Sayre syndrome and mitochondrial cytopathy. Int J Cardiol. 2015;181:303-310. doi:10.1016/j.ijcard.2014.12.038
- Karimi N, Kashkouli MB, Tahanian F, et al. Long-term results of palpebral fissure transfer with no lower eyelid spacer in chronic progressive external ophthalmoplegia. Am J Ophthalmol. 2022;234:99-107. doi:10.1016/j.ajo.2021.07.027
- Weitgasser L, Wechselberger G, Ensat F, et al. Treatment of eyelid ptosis due to Kearns-Sayre syndrome using frontalis suspension. Arch Plast Surg. 2015;42(2):214-217. doi:10.5999/aps.2015.42.2.214







