ステレストとは?近視の進行を抑える眼鏡の効果と、点眼・コンタクトとの違い

「眼鏡を作り替えても、子どもの近視が進んでしまう」。そんな悩みに対して、見え方の矯正に加え、近視の進行を抑えることを目指した眼鏡レンズが研究されています。
そのひとつが、高度非球面レンズレット(HAL)技術を採用した「ステレスト」です。米国と中国の臨床試験で、通常の単焦点眼鏡に比べて近視の進行と眼軸の伸びを抑える結果が報告されています。
高田眼科では、ステレスト取り扱いメガネ店と連携し、診察・処方から眼鏡の販売につなげる体制の準備を進めています。
この記事では、研究で分かっている効果と、リジュセアミニや近視進行抑制のソフトコンタクトレンズとの違いを解説します。
いつものメガネを替えるだけで、
近視の進み方が変わる。
ステレストは、見え方を整えながら、近視が進むスピードをゆるやかにすることを目指して作られたメガネレンズです。目薬をさす必要も、眼に何かを入れる必要もありません。朝かけて、夜はずす。それだけです。
執筆:高田眼科 院長 髙田 尚忠(眼科医)
米国の臨床試験(2年間)で
71%
通常のメガネより近視の進みが少なかった
効果を引き出す目安
12時間以上/日
起きている間は、ほぼかけたまま
追跡データ
5年
長く使い続けた結果が報告されている
この記事でわかること
- ステレストが普通のメガネとどう違うのか
- 臨床試験で確かめられた効果と、その読み方
- 目薬(リジュセアミニ)やコンタクトレンズとの選び分け
- 高田眼科での処方から、メガネができるまでの流れ
ステレストは、普通の眼鏡と何が違う?
普通の近視用メガネは、遠くをはっきり見せるためのものです。見え方は良くなりますが、近視が進むこと自体は止められません。
ステレストは、レンズの中心で遠くをはっきり見せながら、そのまわりに並んだ1021個の小さなレンズが、眼球に「これ以上伸びなくていい」という合図を送るように設計されています。
図1 近視が進む=眼球が後ろへ伸びること
近視のない眼
ピントが網膜にぴったり合う
近視の眼
眼球が伸びた分、ピントが手前にずれてぼやける
図2 ステレストレンズのつくり(正面から見た模式図)
- 1中心:見るための部分
普通のメガネと同じように、遠くをはっきり見せます。 - 2まわり:近視の進行を抑える部分
1021個の小さなレンズが、11本の輪になって並んでいます。ここが普通のメガネにはない部分です。 - 輪の部分でも、小さなレンズのすき間を通して普通に見えます。外から見た印象は、通常のメガネとほとんど変わりません。
図3 普通のメガネとステレスト、光の届き方の違い
普通のメガネ
周辺のピントが網膜の後ろへ
→ 眼球が後ろへ伸びやすい
ステレスト
網膜の手前に「光の帯」ができる
→ 伸びを抑える合図になる
- ●緑の線:中心を通る光 どちらのメガネでも網膜に届き、はっきり見えます。
- ●オレンジ:まわりを通る光 普通のメガネでは網膜の後ろ側にピントが合いやすく、これが眼球を後ろへ伸ばす刺激になると考えられています。ステレストは小さなレンズでこの光を網膜の手前に集め、厚みのある光の帯を作ります。
いずれも仕組みをわかりやすくするための模式図で、実際の形や比率とは異なります。ステレストは、すでにある近視を治したり、メガネを不要にしたりするものではありません。
通常の単焦点眼鏡は、近視によってぼやける遠くの像を見やすくするためのものです。
ステレストは、それに加えて、眼球の前後の長さである「眼軸長」の伸びを抑えることを目指した設計になっています。
レンズの中心部で鮮明な見え方を確保しながら、周囲に配置した小さなレンズレットによって、網膜の手前に一定の広がりを持つピントのずれをつくります。この光学的な働きを近視進行抑制に利用します。[1]
臨床試験で、どのくらいの効果があった?
ステレストに使われている技術(HAL)は、複数の国で、通常のメガネと比べる試験が行われています。子どもにも検査をする人にも、どちらのメガネかわからないようにして比べた、信頼性の高い方法の試験です。
米国の試験:6〜12歳の159人を2年間追跡
近視の進み(度数)
71% 少ない
通常のメガネの約3分の1以下
眼球の伸び
53% 少ない
通常のメガネの約半分
度数でいうと、2年間でメガネの度数2〜3段階分の差です。通常のメガネの子が2〜3回レンズを強くする間、度数がほとんど変わらなかった、というイメージです。
海外の試験:5年間使い続けた結果
中国では8〜13歳の子どもを対象に試験が行われ、2年間で同じように進行が抑えられました。その後も使い続けた子どもを5年目まで追跡した報告では、通常のメガネを使い続けた場合の推計と比べて、およそ3年分の近視の進行を防いだ計算になり、強度近視まで進む子も少なかったとされています。
この追跡では、3年目から通常のメガネをステレストに替えた子どもでも、その後の進行がゆるやかになりました。途中から始めても意味があるということです。
近視進行抑制用メガネ全体の中での位置づけ
近視の進行を抑えるメガネの試験23件をまとめた解析では、HALレンズは、眼球の伸びを抑える効果が最も大きいグループに入っていました。
数字の読み方について
「71%」は、71%のお子さんの近視が止まったという意味ではありません。試験に参加した子ども全体の平均で、進んだ量が71%少なかったという意味です。かけていても近視が進むお子さんはいますし、効果には個人差があります。5年間の結果は、通常のメガネの実測値ではなく推計と比べたものです。また、これらの研究にはメーカーが関わっているものが含まれます。
使い続けるうえで大切なこと
海外の試験では、1日12時間以上かけていた子どものほうが、効果が大きかったことがわかっています。12時間以上かけた子では、2年間で抑えられた度数がメガネ4段階分ほどに達しました。
12時間というのは、朝起きてから夜寝るまで、ほぼかけたままという長さです。学校だけ、授業中だけでは足りません。
続けるための工夫
- 朝、顔を洗ったらかける。お風呂と寝るとき以外ははずさない
- フレームがずれると効果も見え方も落ちるため、ゆがんだら早めに調整する
- 運動用にバンドを付ける、予備を用意するなど、はずす理由を減らす
メガネがずり落ちたまま使っていると、レンズの中心が瞳からずれてしまいます。お子さんの顔に合ったフレーム選びと調整は、効果を出すための大切な一部です。
安全性と、見え方について
メガネですので、眼に直接触れることも、薬の成分が体に入ることもありません。米国の試験でも、レンズが原因の眼のトラブルは1件も報告されず、メガネをかけたときの視力は通常のメガネと変わりませんでした。
かけ始めに知っておきたいこと
- かけ始めの数日は、視界のまわりが少しぼやけるように感じることがあります。多くは1〜2週間で慣れます。
- 横目で見るより、顔ごと向けて見るほうが楽です。
- 慣れない、見えにくい、頭が痛いといった症状が続くときは、度数やフレームの調整が必要な場合があります。我慢せずにご相談ください。
慣れるまでの期間には個人差があります。階段や自転車など、足元や周囲の確認が必要な場面では、慣れるまで特に注意してください。
目薬・コンタクトレンズとの違いと選び方
近視の進行を抑える方法は一つではありません。どれが一番かではなく、そのお子さんが毎日続けられるのはどれかで選びます。
| ステレスト(メガネ) | リジュセアミニ(目薬) | 近視進行抑制コンタクト | |
|---|---|---|---|
| 毎日すること | 起きている間かける | 寝る前に1滴 | 朝入れて夜はずす |
| 向いている子 | すでにメガネをかけている/眼に触れるのが苦手 | メガネを長時間かけるのが難しい/スポーツが多い | 自分で清潔に扱える/メガネなしで過ごしたい |
| 気をつけること | かける時間が短いと効果が下がる | まぶしさが出ることがある | 眼の感染症を防ぐ衛生管理が必要 |
| 視力の矯正 | これ1本でできる | 別にメガネが必要 | これでできる |
それぞれの研究は対象の年齢や期間が違うため、「何%抑えた」という数字を並べて優劣を決めることはできません。
目薬と一緒に使うと、もっと効く?
別の種類の近視進行抑制用メガネを使った海外の研究では、0.025%のアトロピン点眼にメガネを加えると、1年間の眼球の伸びがさらに小さくなりました。一方、コンタクトレンズに薄い濃度の目薬を足しても上乗せ効果がなかったという研究もあります。
つまり、足せば必ず効果が増えるわけではありません。当院では、まず一つの方法で経過を測り、進行が速いお子さんに組み合わせをご提案しています。
ステレストが向いているお子さん
- 近視と診断され、これからメガネを作る、または作り替える
- 毎年のように度が進んでいる
- 目薬を毎晩続けられるか不安がある
- コンタクトレンズはまだ自分で扱えない
- 目薬を使っているが、もう一歩対策を加えたい
どうせメガネを作るなら、最初の1本、あるいは次の作り替えのときが切り替えのタイミングです。近視は始まるのが早いほど強くなりやすいため、小学校低学年で近視が見つかったお子さんほど、早めにご相談いただく意味があります。
高田眼科での処方から、ステレスト眼鏡ができるまで
ステレストは、眼科での検査と処方をもとに、認定を受けたメガネ店で作るレンズです。当院は近隣眼鏡店と連携してご案内します。
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高田眼科で診察・検査
調節をゆるめる目薬を使って正確な度数を測り、眼球の長さ、眼の病気の有無を確認します。視力低下の原因が近視以外にないかも、ここで確かめます。
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治療方法のご相談と処方
ステレスト、目薬、その組み合わせのうち、お子さんの生活に合う方法を一緒に決め、メガネの処方箋をお出しします。
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ステレスト取り扱い指定メガネ店でメガネを作る
フレーム選びと、顔に合わせた調整を行います。レンズの中心を瞳の位置に正しく合わせることが大切です。
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高田眼科で定期検査
度数と眼球の長さを定期的に測り、進み方を数字で確認します。進行が速い場合は、目薬の追加などをご提案します。
提供開始の時期とレンズの費用は、決まり次第このページでお知らせします。診察と検査はこれまで通り受けていただけます。
近視進行抑制治療を高田眼科で始めることの意味
近視の進行を抑えるメガネは、作って終わりではありません。効いているかどうかは、視力検査だけではわからないからです。
当院では眼球の長さを定期的に測り、伸び方が年齢相応のペースに収まっているかを確認します。ペースが速ければ、かけ方の見直しや目薬の追加を早めにご提案できます。
メガネ、目薬、生活習慣。どれか一つに頼るのではなく、検査の数字を見ながらその子に合う組み合わせを探していく。それが眼科で近視を管理するいちばんの利点だと考えています。
高田眼科 院長 髙田 尚忠岡山大学医学部卒業/日本眼科学会 会員
ステレストについて、よくある質問
ステレストをかければ、近視は止まりますか?
止まるとはお約束できません。臨床試験で確かめられたのは、通常のメガネに比べて進む量が少なかったということです。かけていても進むお子さんはいるため、定期検査で経過を確認します。
何歳から使えますか?
臨床試験は6〜13歳の子どもを対象に行われています。メガネを一日中かけていられること、近視と診断されていることが目安です。
学校にいる間だけかければよいですか?
それでは足りません。1日12時間以上かけた子どもで効果が大きかったと報告されています。家で本を読むとき、タブレットを見るときこそ、かけておいてほしい時間です。
リジュセアミニを使っています。ステレストに替えたら目薬はやめてよいですか?
自己判断ではやめないでください。目薬を中止すると、その後の進行がやや速まることが報告されています。続けるか、切り替えるか、両方使うかは、検査の結果を見てご相談します。
いつまでかけ続けますか?
近視が進みやすい時期は10代半ばごろまで続きます。進行が落ち着いたことを検査で確認できるまで、続けることをおすすめしています。
度が進んだら、レンズは作り替えが必要ですか?
必要です。度数が合わないメガネでは見えにくく、かける時間が短くなる原因にもなります。成長でフレームが合わなくなった場合も、調整や交換を行います。
大人の近視にも効果がありますか?
眼球の伸びが続いている成長期のお子さんを対象に作られ、試験もその年齢で行われています。成人での効果は確かめられていません。
参考文献
- Spectacle Lenses With Highly Aspherical Lenslets for Myopia Control: A Randomized Clinical Trial. JAMA Ophthalmol. 2026. doi:10.1001/jamaophthalmol.2026.3288
- Bao J, et al. Spectacle Lenses With Aspherical Lenslets for Myopia Control vs Single-Vision Spectacle Lenses: A Randomized Clinical Trial. JAMA Ophthalmol. 2022. PubMed
- Li X, et al. Myopia Control Efficacy of Spectacle Lenses With Aspherical Lenslets: Results of a 3-Year Follow-Up Study. Am J Ophthalmol. 2023. PubMed
- Myopia control efficacy of spectacle lenses with highly aspherical lenslets: results of a 5-year follow-up study. Eye Vis (Lond). 2025. doi:10.1186/s40662-025-00427-3
- Efficacy of spectacle lenses for myopia control: a meta-analysis of randomised controlled trials. Br J Ophthalmol. 2026. doi:10.1136/bjo-2025-327629
- Guemes-Villahoz N, et al. Atropine and Spectacle lens Combination Treatment (ASPECT): 12-month results. Br J Ophthalmol. 2025. PubMed
- Jones JH, et al. Effect of Combining 0.01% Atropine with Soft Multifocal Contact Lenses on Myopia Progression in Children. Optom Vis Sci. 2022. PubMed
- Ohno-Matsui K, et al. Efficacy and Safety of Low-Concentration Atropine in Slowing Myopia Progression in Children in Japan (ORANGE Study). Ophthalmol Sci. 2025. PubMed
- Chua SY, et al. Age of onset of myopia predicts risk of high myopia in later childhood in myopic Singapore children. Ophthalmic Physiol Opt. 2016. PubMed
この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、特定の効果を保証するものではありません。効果には個人差があり、適否は診察と検査のうえで判断します。臨床試験は海外で行われたもので、メーカーが関与した研究を含みます。






