つけまつげと眼瞼下垂 – まぶたに負担をかける原因になる?術後にしても大丈夫?
目元の印象を手軽に変えられるアイテムとして人気の「つけまつげ」。
しかし、つけまつげはまぶたに大きな負担を与え、眼瞼下垂の原因となるおそれがあります。
この記事では、つけまつげがまぶたに負担をかける原因となる理由や、眼瞼下垂の手術後につけまつげをしても大丈夫かどうかなど、つけまつげと眼瞼下垂の関係について解説します。
毎日のようにつけまつげを付けている方や、指で引っ張って取り外している方は、知らない間にまぶたへのダメージが蓄積している可能性があります。
本記事を参考に、ぜひつけまつげの危険性や正しい使用方法を把握してみてください。
つけまつげのまぶたへの負担とは
つけまつげは、まつげの生え際ぎりぎりの部分に接着剤を使って装着する人工のまつげです。
手にのせるとほとんど重みを感じないつけまつげですが、継続的に使用すれば、まぶたに大きな負担がかかるおそれがあります。
つけまつげを付けた状態で目を見開く行為を1年間続けた場合の、まぶたへの負担をみてみましょう。
1年間のまぶたの負担は95kgの物を1cm持ち上げる力と同等
アンファー株式会社がおこなった「まつ毛の負担調査」によると、つけまつげを付けた状態でまぶたを持ち上げる1年分の負担は、95kgのものを1cm持ち上げるほどの力に匹敵します。
さらに、つけまつげをはがすときにまぶたを引っ張る1年分の負担は約26kgで、ブルドッグ1匹を1cm持ち上げる力とほぼ同等です。
少しイメージしづらいかもしれませんが、つけまつげは皮膚が薄いまぶたにとって、かなりの負担になるものといえるでしょう。
毎日のように付けていると、気づかないうちにまぶたにダメージが蓄積し、老化が進行してしまう危険性があります。
つけまつげは眼瞼下垂発症のリスクを高める
眼瞼下垂とは、上まぶたが垂れ下がって目を開けづらくなる状態です。
つけまつげで余計な重みがかかると、まぶたを持ち上げている眼瞼挙筋が弱まり、眼瞼下垂を引き起こすリスクが高まります。
また、つけまつげを外すときに皮膚が引っ張られ、挙筋腱膜が伸びてしまうことも眼瞼下垂を招く原因です。
眼瞼下垂は主に、加齢によって引き起こされる疾患ですが、生活習慣も大きく影響します。
つけまつげの使用によってまぶたに負担がかかる生活を続けていると、若い人でも眼瞼下垂になるおそれがあるため注意しなければなりません。
つけまつげの接着剤もトラブルの原因に
つけまつげの重みや、剥がすときの刺激だけではなく、つけまつげの接着剤の成分が原因で眼瞼下垂やまぶたのトラブルを引き起こす危険性もあります。
つけまつげの接着剤は、ラテックスと呼ばれる天然ゴムで作られたものが多く見られます。
皮膚に直接付けるものであるため、刺激が少なく、ぬるま湯や水ではがしやすい点が特徴です。
また、つけまつげの接着剤は、家庭用品規制法によりホルムアルデヒド※1の含有量が規制されており、安全性は高いといえます。
※1 ホルムアルデヒド:刺激臭があり、無色で可燃性の化学物質。接着剤や塗料、防腐剤などに含まれている。皮膚に接触すると感染症やアレルギーを引き起こす危険性がある。
しかし、まぶたの皮膚は非常に薄くデリケートであり、体質や肌質によっては肌荒れを起こすおそれがあります。
粘着力が強く落ちにくいかどうかを基準に選ぶ方は多くいますが、まぶたへの負担を減らすためにも、配合成分を確認して低刺激な接着剤を使用しましょう。
敏感な目元にも使用しやすい「アルコールフリー」「弱酸性」などの商品を選ぶと安心です。
また、ゴム素材にアレルギー反応を起こす人もいるため、心配であれば「ラテックスフリー」の接着剤を使用するとよいでしょう。
マツエクのほうが負担は少ない?
マツエク(まつ毛エクステ)は、自まつげ1本1本にエクステを付けていく施術です。
まぶたの皮膚に直接付けるわけではないため、つけまつげと比べると肌への負担は抑えられます。
しかし、まぶたに余計な負荷がかかっているのには、マツエクもつけまつげも変わりはありません。
長期にわたりマツエクを装着していれば、徐々に眼瞼挙筋が衰え、まぶたが下がってくる危険性があります。
つけまつげもマツエクも、正しい方法でケアをおこない、負担にならない範囲で続けることが大切です。
マツエクやまつげパーマと眼瞼下垂の関係については、下記の記事も参考にしてください。
眼瞼下垂手術後はつけまつげを付けても良い?
眼瞼下垂手術を受けてから1か月ほど経てば、つけまつげを付けられます。
一般的な眼瞼下垂手術では、二重のラインを切開するため、傷が治るまでにある程度の期間が必要です。
個人差はありますが、強い腫れや内出血などが2週間程度は続きます。また、まぶたの状態が安定するまでには1か月以上かかります。
腫れや内出血が治まり、まぶたの違和感がなくなるまでは、つけまつげの装着は控えてください。
傷が完全に治っていない状態でつけまつげを付けると、感染症や肌トラブルを引き起こすリスクを高めてしまいます。
術後の経過は人によって異なるため、いつからつけまつげを付けても良いかを担当医に確認しておくと安心です。
過度な使用は再発の原因に
先述したとおり、つけまつげは眼瞼挙筋や挙筋腱膜に負担を与え、眼瞼下垂の原因となります。
眼瞼下垂を治療したあとでも、つけまつげを長時間装着する生活を続けていると、再発のリスクが高まるため注意が必要です。
眼瞼下垂手術後はできるだけつけまつげの使用は控え、まぶたに負担がかからないように過ごしましょう。
まぶたに負担をかけにくいつけまつげの使用方法
眼瞼下垂になるリスクを抑えるためには、つけまつげの使用を控えるべきです。
しかし、目元を魅力的に見せてくれるアイテムのため、なかなかやめられない方もいるでしょう。
そこで、まぶたにできるだけ負担をかけないつけまつげの使い方を紹介します。
重ね付けはしない
つけまつげが重いほど、まぶたへの負荷が大きくなり、たるみや眼瞼下垂の原因となります。
そのため、ボリュームを出すためにつけまつげを何枚も重ね付けするのはおすすめできません。
パーティーやイベントなどの特別なシーンでときどき重ね付けするのであれば大きな影響はありませんが、普段使いにはナチュラルで軽いつけ心地のものを1枚のみ付けましょう。
部分用つけまつげを使用する
部分的にカットされている、ハーフタイプやワンポイントタイプのつけまつげがあります。
軽くてまぶたへの負担が少ないほか、接着剤の量も少なく済むため、肌トラブルのリスクを軽減できます。
目尻や目の中心など、なりたいイメージに合わせて毛量を調整でき、失敗しにくい点もメリットです。
フルタイプのつけまつげと比べてボリューム感は出ませんが、まぶたへの負担を減らしたい方に良い方法です。
正しい方法で取り外す
まぶたにしっかりと付いているつけまつげを、無理に引っ張る行為は厳禁です。
正しい方法で丁寧に取り外せば、まぶたや自まつげへの負担を軽減できます。
- ぬるま湯または水に浸したコットンを軽く絞り、目元に15〜30秒当てる。
- 接着剤が柔らかくなったら目尻側からゆっくりと外していく。
粘着力が強く取れにくい場合は、専用リムーバーを使用すると簡単にはがせます。
清潔な状態でお手入れ・保管する
つけまつげを繰り返し使う場合は、お手入れ方法にも注意が必要です。
使用後につけまつげを洗わないと、不衛生な状態となり、まぶたや目の病気につながります。
接着剤や化粧品の汚れを丁寧に落とし、清潔にしてから保管しましょう。
- コットンの上につけまつげを置き、リムーバーを染み込ませた綿棒で毛並みに沿ってなでる。
- ぬるま湯につけまつげを浸す。
- コットンの上につけまつげを置き、水分を取る。
- 清潔なガーゼや布の上に置き、毛並みを整えてよく乾燥させる。
まとめ
つけまつげを付けるとまぶたに余計な重みが加わるため、眼瞼下垂を発症するリスクを高めてしまいます。
接着剤の刺激による肌トラブルにも注意しなければなりません。
また、眼瞼下垂手術後のつけまつげの使用は、最低でも1か月は待つようにしてください。
ただし、眼瞼下垂を再発させないためにも、つけまつげの過度な使用は控えたほうが安心です。
正しい装着方法や外し方、お手入れ方法を守り、上手につけまつげと付き合っていきましょう。
つけまつげと眼瞼下垂の関係についてよくある質問
- つけまつげを長年使用していると、眼瞼下垂になりやすいのでしょうか?
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つけまつげの長期的な使用は、まぶたに負担をかける可能性があります。過度の使用は、眼瞼下垂のリスクを高める要因の一つと考えられています。
- つけまつげを使用する際、どのようなことに気をつければよいでしょうか?
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つけまつげを使用する際は、軽量のものを選び、装着時間を最小限に抑えることが大切です。また、まぶたに優しい接着剤を使用し、就寝前には必ず取り外してください。
- 眼瞼下垂の手術後、つけまつげを使用しても大丈夫でしょうか?
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通常、手術後しばらくの間は、つけまつげの使用を控えるよう推奨されます。腫れや内出血が治まり、まぶたの違和感がなくなるまでは、つけまつげの装着は控えてください。
- つけまつげを毎日使用しても問題ないでしょうか?
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毎日の使用は、まぶたへの負担が蓄積される可能性があります。できるだけ使用頻度を減らし、まぶたを休ませる期間を設けましょう。
参考文献
BRAMBILLA, Elena, et al. Exposure to nail and false eyelash glue: a case series study. International journal of environmental research and public health, 2020, 17.12: 4283.
MIMURA, Tatsuya. Bilateral eyelid erythema associated with false eyelash glue. Cutaneous and Ocular Toxicology, 2013, 32.1: 89-90.
FINSTERER, Josef. Ptosis: causes, presentation, and management. Aesthetic plastic surgery, 2003, 27.3: 193-204.