眼瞼下垂は目薬で治る? 市販薬・緑内障点眼薬を使用するリスク—最新の眼瞼下垂治療薬情報も含めて

2026年1月21日 修正・更新
眼瞼下垂とは、まぶたを上げる力が弱くなり、目を十分に開けられなくなる病気です。
視界が狭くなるほか、目の疲れやかすみなどの症状があらわれる場合もあり、手軽に目薬で改善できないか疑問をお持ちの方もいるのではないでしょうか。
この記事では、眼瞼下垂は目薬で治るのかどうか、市販薬・緑内障点眼薬を使用するリスクについて解説しました。
眼瞼下垂は目薬で改善できる?
結論:従来の市販点眼薬で、根本的に治すことはできません
眼瞼下垂は、まぶたを持ち上げる「眼瞼挙筋」とその腱膜が緩んだり伸びたりすることで生じる病態であり、従来から根治させる治療は手術のみとされてきております。
市販の目薬や緑内障治療薬は、乾燥改善や充血の緩和はできても、眼瞼下垂そのものを改善するものではありません。
むしろ誤った点眼薬の使い方は症状を悪化させる可能性があります。
種類にもよりますが、目薬をさすとうるおいがプラスされ、一時的に視界がはっきりとする場合があるため、眼瞼下垂による目の開きにくさを改善できると考える方もいるでしょう。
しかし、眼瞼下垂は、まぶたを上げる眼瞼挙筋と瞼板をつないでいる「挙筋腱膜」が伸びたり緩んだりするために起こります。
そのため、目薬をさすだけでは根本的な改善にはつながらず、治療するには手術が必要です。
眼科においても、眼瞼下垂の改善を目的として目薬が処方されるケースは基本的にありません。
なお、一時的にまぶたが上がる「ネオシネジン点眼液」と呼ばれる点眼薬もありますが、眼科診療においては、散瞳検査という瞳孔を開いて、眼底を詳しく調べる際に使用する薬剤です。
この散瞳薬の薬理作用には、
Müller筋を刺激 → 筋収縮 → 上眼瞼が1~2mmほど持ち上がる
があり、結果として、ネオシネジン点眼液を使用すると、見た目にも瞼の開きがよくなります。
ただし、これは眼瞼下垂の改善ではなく、眼底を検査する検査薬であり、眼瞼下垂診療領域では、眼瞼下垂症を診断するために使用されるものです。

出典:https://medical.kowa.co.jp/

ネオシネジン点眼液を使用すると、瞼の開きは良くなるのですが、使用すると、瞳孔が開いてしまうので、結果として、眩しくなり、また、近くに物に焦点が合わなくなってしまうので、眼瞼下垂治療薬としては使用できません。
そこで、散瞳させずに、ミュラー筋のみに働く薬剤が、この度、発売となる後天性眼瞼下垂治療薬「アップニーク®ミニ点眼液0.1%」です。
後天性眼瞼下垂を改善する日本初の治療薬が承認
2025年12月22日 日本初!手術以外の新しい治療薬が承認されました。
参天製薬が後天性眼瞼下垂治療薬「アップニーク®ミニ点眼液0.1%」の国内における製造販売承認を取得しました。

アップニーク®ミニ点眼液0.1%は、先ほど、説明したネオシネジンと薬理作用が類似していますが、虹彩散大筋への作用が非常に弱いのが特徴で、散瞳させずに、瞼だけを引き上げることができると言えます。
✔ どんな薬?

出典:https://www.santen.co.jp/medical-channel/
- 一般名:オキシメタゾリン塩酸塩
- 製品名:アップニーク®ミニ点眼液0.1%
- 承認日:2025年12月22日(国内承認)
- 対象:後天性眼瞼下垂
- 製造販売元:参天製薬株式会社
- 特徴:日本で初めての非手術的な眼瞼下垂治療薬として承認された点眼薬です。
従来、眼瞼下垂は手術以外に根本的に治療する方法がありませんでしたが、この製剤はまぶたを挙げる機能に働きかけ、症状を改善する可能性を持つものとして承認されました。
この点眼薬は、まぶたを持ち上げる筋肉(ミュラー筋)を刺激することで、一時的にまぶたの開きを改善する薬です。
つまり、この点眼薬は、まぶたを持ち上げる神経のスイッチを一時的に刺激するお薬です。
しかし、繰り返し使うと体が刺激に慣れてしまい、次第に効きが弱くなることがあります(レセプターのダウンレギュレーション)。
これは「耐性」と呼ばれる自然な反応で、薬の効果が落ちるだけでなく、使用をやめた際に逆に症状が出やすくなることもあります。
そのため、眼瞼下垂症に効果があると認可が降りていますが、実際に使用する場合には、必要なときだけの使用が大切です。

市販の目薬では、眼瞼下垂は治らない。
市販の目薬は、目の乾きや不快感を一時的に和らげるのに効果的ですが、
しかし、先述のとおり、通常の薬局で販売されている目薬を使用しても、アップニークミニ点眼液のような眼瞼下垂は改善できません。
それどころか、市販の目薬を必要以上に使用すると目の不調を引き起こしたりするおそれがあるため注意が必要です。

角膜にダメージを与える
市販の目薬にはさまざまなタイプがありますが、防腐剤や血管収縮剤が含まれている目薬は目に悪影響を及ぼすため、避けるのが賢明です。
| 防腐剤 | ベンザルコニウム、ホウ酸、クロロブタノールなど |
| 血管収縮剤 | 塩酸ナファゾリン、塩酸テトラヒドロゾリン、塩酸フェニレフリンなど |
防腐剤は、目薬を汚染させず、長期間保存するのに有効である一方、過剰に使用すると目の保護機能を低下させて角膜を傷つけてしまうおそれがあります。
角膜に問題がない方であればトラブルが起こる心配はほとんどありませんが、眼瞼下垂の方は防腐剤入りの目薬は控えたほうがよいでしょう。
また、血管収縮剤も市販の目薬の多くに使用されており、結膜の充血を抑える効果があります。
眼瞼下垂になると目が疲れやすくなり、充血する場合があるため、血管収縮剤が含まれた目薬を使用すれば、一時的には症状が改善する可能性があります。
しかし、血管収縮剤を長期にわたり使い続けると、血行が悪くなり、逆に充血を悪化させてしまいかねません。
涙の3層構造が崩れる
涙(涙液)は「油層」「水層」「ムチン層」の3層構造で構成され、それぞれがバランス良く作用して目を保護しています。
| 油層 | 外側にある層。水分の蒸発を防ぐ役割がある |
| 水層 | 中間にある層。角膜や結膜に栄養を届け、細菌への感染を予防する |
| ムチン層 | 目にもっとも近い層。涙が流れ落ちないよう安定させる |
目薬を過剰に使用すると、涙の中にある抗菌成分や油分が流れ出てしまい、目の表面を覆っている3層構造のバランスが崩れてしまうおそれがあります。
その結果、目が乾いて傷つきやすくなり、また、眼瞼の炎症を引き起こし、眼瞼下垂を悪化させるリスクが高まるため注意が必要です。
目薬は、1回につき1滴、1日4〜5回までにとどめることが推奨されています。
市販の目薬を使用する場合は、できるだけ涙に近い成分が含まれているものを選び、正しい使用方法を守りましょう。

もちろん、市販の目薬(OTC医薬品)を適切に使用することは、ドライアイの改善により、瞬目(まばたき)がしやすくなると言えますので、眼瞼下垂に対して、多少はプラスには働くとは言えます。
「まつ毛が伸びる」緑内障治療の点眼薬は眼瞼下垂の原因に

緑内障治療に使われる点眼薬に「プロスタグランジン関連薬(PG製剤)」があります。
緑内障とは、主に眼圧の上昇によって視神経が障害される状態を指します。視野が狭くなるほか、放置すると失明に至るケースもある危険な病気です。
プロスタグランジン関連薬には眼圧を下げて視神経への負担を減らす効果があり、緑内障の治療に使われています。
また、休止期のまつ毛を成長期へと促したり、まつ毛のメラニンを増やして濃くしたりする効果があるのも特徴です。

そのため「まつ毛が伸びる薬(まつ毛貧毛症治療薬)」として販売されているプロスタグランジン関連薬:Glash Vistaという製品ももあります。
- キサラタン
- ルミガン
- タプロス
- トラバタンズ
- レスキュラ など
眼瞼下垂への影響
先ほどの、まつ毛の育毛剤であるGlash Vistaも含めて、プロスタグランジン関連薬の使用は、まぶた周囲のトラブルであるプロスタグランジン関連眼窩周囲症(PAP)を引き起こすおそれがあります。
眼瞼下垂はPAPの代表的な症状であり、緑内障患者の約1〜5%に発症するといわれています。
緑内障点眼薬の一部にはまつげが濃くなる副作用があり、それが「まぶたが上がった?」と誤解されることもありますが、まぶたの筋肉そのものの機能を改善するものではありません。
逆に、眼瞼下垂症を引き起こすことが知られております。

- 眼瞼下垂
- 上眼瞼溝深化
- 下三白眼
- 皮膚や脂肪の萎縮
- 眼球陥凹
- 皮膚の色素沈着
- まつ毛の多毛化、伸長
- 目が充血する
なぜ緑内障治療の点眼薬が眼瞼下垂を招くのか、明確な理由はわかっていませんが、眼瞼挙筋の機能低下と上眼瞼溝深化(じょうがんけんこうしんか)※1 が主な原因と考えられています。
※1 上眼瞼溝深化(Deepening of Upper Eyelid Sulcus;DUES):上瞼がくぼんだ状態になること
PAPによる眼瞼下垂は、両眼に発症しやすく、徐々に進行していくのが特徴です。
PAPによる眼瞼下垂の治療・予防方法
PAPによる眼瞼下垂は、軽度であれば原因となっているプロスタグランジン関連薬の使用量を減らしたり、種類を変えたりすると改善する可能性があります。
また、眼瞼保護剤の点眼薬の使用も有効です。
眼瞼下垂が中等度〜重度の場合は改善が難しいケースが多く、手術が推奨されます。
眼瞼下垂を進行させないためにも、緑内障の点眼薬を使用している方はとくに注意しましょう。
「目を開きにくい」「まぶたが重く感じる」などの症状がみられたら、早めに眼科医に相談してください。

眼瞼周囲炎(PAP)を引き起こしている方は、眼瞼の毛細血管が発達していることが多いため、眼瞼下垂手術を行う際には、出血をしやすいため、確実な止血操作が必要となり、難易度が高いと言えます。
眼瞼下垂手術後のドライアイには点眼を行います
眼瞼下垂手術を受けたあとは、ドライアイが起こりやすくなります。
これは、手術によって下垂していたまぶたが引き上がり、空気に触れる眼球の面積が広くなるからと考えられます。
また、眼瞼下垂手術後の副作用の一つとして、まぶたを閉じにくくなる症状(兎眼)が挙げられます。
寝ている間にもまぶたを完全に閉じきれず、少し開いた状態になるために、目が乾きやすくなるケースも少なくありません。
ドライアイの症状は、術後1〜2か月ほどで落ち着いてくるケースがほとんどです。
しかし、ドライアイを放置していると、視力低下や頭痛、肩こり、角膜の損傷などの不調を引き起こすおそれがあるため注意しなければいけません。
ほとんどのクリニックでは、眼瞼下垂手術後のドライアイ対策として点眼薬を処方しています。

点眼により、目の乾燥を防ぎ、不快感を軽減する効果が期待できます。
なお、市販の目薬は配合成分が異なるため、眼瞼下垂手術後は、医師の許可があるまでは、使用を控えたほうが安心です。
まとめ
本記事では、目薬の眼瞼下垂に対する効果や、新しい眼瞼下垂症治療薬、そして、市販薬・緑内障点眼薬を使用するリスクについて解説しました。
目薬には目にうるおいを与えて乾燥を防いだり、充血を和らげたりする効果がありますが、眼瞼下垂の改善にはつながりません。
間違った方法で目薬を使用すると、かえって眼瞼下垂を進行させてしまうおそれがあるため注意が必要です。
外科手術以外の非侵襲的な治療法として、後天性眼瞼下垂を改善する日本初の治療薬「アップニーク®ミニ点眼液0.1%」が、認可されました。
ただし、手術のように根本的に眼瞼下垂症を治すものではなく、一時的な改善が期待できるものではありません。
また、まつ毛が伸びるといわれている緑内障治療の点眼薬には、眼瞼下垂の原因となるプロスタグランジン関連眼窩周囲症(PAP)を引き起こすリスクがあります。
目の開きにくさや視界の狭さなど、眼瞼下垂の症状があらわれたら、自己判断での目薬の使用は避け、まずは眼科医にご相談ください。
参考文献
FINSTERER, Josef. Ptosis: causes, presentation, and management. Aesthetic plastic surgery, 2003, 27.3: 193-204.
WIJEMANNE, Subhashie; VIJAYAKUMAR, Dhanya; JANKOVIC, Joseph. Apraclonidine in the treatment of ptosis. Journal of the Neurological Sciences, 2017, 376: 129-132.
SWEENEY, Adam R., et al. Topical prostaglandin analog use is associated with increased failure rate of ptosis repair. Ophthalmology, 2020, 127.2: 276-278.
ZOUMALAN, Christopher I.; LISMAN, Richard D. Evaluation and management of unilateral ptosis and avoiding contralateral ptosis. Aesthetic surgery journal, 2010, 30.3: 320-328.
目に関する悩みで困ったら、まずは専門医に相談してみてください。
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