番組で使われていた画像をお借りましたが、この画像でみられる網目状の組織がファッシアで、組織に横ずれや縦ずれの力が働いたときに、動き過ぎないように固定し、その後、元の位置に戻すように復元させる構造物です。
眼瞼の場合、眼輪筋、眼瞼挙筋、ミューラー筋と3つの筋肉が、皮膚や眼窩脂肪、瞼板などの組織を含めて、多くの組織がミルフィーユにような形で折り重なっております。
当然、それらの組織の境界を隔てるような形で、眼窩隔膜や筋膜、結膜、そして、ファッシアが存在しております。
一般的には、眼瞼下垂症の原因とは、眼瞼挙筋腱膜やミューラー筋が瞼板から外れてしまったり、途中で断裂したりすることで発生することと理解されております。
しかしながら、そういった眼瞼挙筋腱膜に異常がないのに、眼瞼下垂症の症状、つまり、瞼の上げ辛さを自覚され、眼瞼挙筋の修正のみの手術を受けられてる方が多くいらっしゃいます。
実は、それらのケースの中に、眼瞼挙筋腱膜の問題ではなく、このファッシアが癒着し、瞼を引き上げることの抵抗が強くなってしまうことで、眼瞼下垂症になっていることがあります。
この場合は、この癒着をしっかり剥がすことを行わないと、無理のない開瞼は可能となりません。
開瞼におけるファッシアの引っ掛かり問題を解決せずに、問題のない眼瞼挙筋腱膜を強く引っ張り上げる前転(タッキング)を行っても上手く治りません。
眼瞼下垂症の術後後遺症で、瞼の引きつり、違和感が長期に続くケースの中には、この癒着を剥がさず、無理やり、問題のない眼瞼挙筋やミューラーを引っ張ることでの引きつりが原因のことがあります。
(術直後〜術後3ヶ月ぐらいの期間の引きつりは、切開創の引きつりが原因で起こりえますが、3ヶ月以上続く場合は、このファシアによる癒着の解放不足が原因であることを考慮に入れるべきだと考えます。)
解剖学的には、眼瞼挙筋(腱膜)と眼窩脂肪との境界面に網目状のコラーゲン組織です。実際には、綿菓子のような蜘蛛の巣状の結合組織です。