眼瞼下垂の基礎知識

後天性眼瞼下垂の治療「後天性動眼神経麻痺」

Dr.髙田

2024年3月18日:更新

ABOUT ME
高田 尚忠
高田 尚忠(たかだ なおただ)
高田眼科 院長 |ひとみ眼科 / フラミンゴ美容クリニック 眼瞼手術担当医師
所属学会:日本眼科学会、日本形成外科学会、日本眼形成再建外科学会
岡山大学医学部卒業後、横浜形成外科の二木 裕先生に師事。 郡山医療生活協同組合 桑野協立病院などの様々な医療機関を勤務し、 現在は高田眼科の院長を務める。 眼科医と形成外科医の知識と、これまでの豊富な眼瞼手術の術者としての経験をもとに、2022年においては年間2,000件超える眼瞼下垂症手術を手がけております。 2022年3月より、名古屋市内の伏見駅近くのフラミンゴ眼瞼・美容クリニックを開院。

後天性動眼神経麻痺による眼瞼下垂:原因、症状、診断、治療の最新情報

眼球を動かす神経「動眼神経」が麻痺すると、眼瞼下垂や眼球運動障害などの症状が現れます。 本記事では、動眼神経麻痺による眼瞼下垂について、詳細な情報と最新治療法、さらに専門医によるアドバイスまでを網羅的に解説します。

1. 動眼神経の役割と麻痺による影響

動眼神経は、眼球を動かす外眼筋6つのうち4つを支配する重要な神経です。具体的には、以下の筋肉を制御します。

  • 内直筋: 眼球を鼻側(内側)に向ける
  • 上直筋: 眼球を上に向ける
  • 下直筋: 眼球を下に向ける
  • 下斜筋: 眼球を外側下方へ回転させる

さらに、瞳孔を調節する「瞳孔括約筋」と、まぶたを上げる「上眼瞼挙筋」も支配します。

動眼神経麻痺になると、眼瞼挙筋が麻痺するため、眼瞼下垂症となります。

動眼神経が麻痺すると、以下の症状が現れます。

  • 眼瞼下垂: まぶたが下垂し、瞳孔が隠れてしまう
  • 眼球運動障害: 眼球を上下左右に動かすのが困難になる
  • 複視:物が二重に見えてしまう
  • 瞳孔不同: 左右の瞳孔の大きさが異なる
  • 調節障害: ピント調節がうまくできない
  • 眼精疲労: 目が疲れる

これらの症状は、日常生活に支障をきたすだけでなく、重大な脳疾患のサインである可能性もあるので、注意が必要となります。

高田 尚忠
高田 尚忠

突然、発症した眼瞼下垂症は、続発性眼瞼下垂の場合が多く、重大な疾患が隠れていることが多いので、本当に注意が必要です。

2. 動眼神経麻痺の原因

動眼神経麻痺の原因は多岐にわたります。主な原因とそれぞれの特徴は以下の通りとなります。

脳動脈瘤: 脳動脈の一部分が膨らんで血管壁が弱くなった状態。破裂するとクモ膜下出血を引き起こし、命に関わる危険性があります。

  • 症状: 眼瞼下垂、眼球運動障害、瞳孔障害、激しい頭痛
  • 検査: CT、MRI
  • 治療: 開頭手術、血管内治療

脳腫瘍: 頭蓋骨内にできる腫瘍。動眼神経を圧迫することで麻痺を引き起こします。

  • 症状: 眼瞼下垂、眼球運動障害、頭痛、視力障害
  • 検査: CT、MRI、脳血管撮影
  • 治療: 手術、放射線治療、化学療法

脳梗塞: 脳血管が詰まったり狭まったりするなどの原因で酸素欠乏や栄養不足になり脳組織が壊死する状態。

  • 症状: 眼瞼下垂、眼球運動障害、片麻痺、言語障害
  • 検査: CT、MRI、脳血管撮影
  • 治療: 血栓溶解療法、抗血小板薬、リハビリテーション

その他: 糖尿病の合併症による神経障害、事故などによる外傷、動眼神経の局所性貧血など

3. 動眼神経麻痺の診断

動眼神経麻痺の診断には、以下の検査が行われます。

  • 視力検査視野検査: 視力低下や視野狭窄などの異常がないかをチェックします。
  • 眼球運動検査: 眼球の動きを観察することで、動眼神経麻痺の有無を判断します。
  • 瞳孔検査: 瞳孔の大きさや反応を観察することで、瞳孔障害の有無を判断します。
  • CT、MRI: 脳動脈瘤、脳腫瘍、脳梗塞などの原因疾患を診断します。
  • 脳血管撮影: 脳血管の状態を詳しく検査します。

4. 動眼神経麻痺の治療

動眼神経麻痺の治療は、原因疾患に対する治療が優先されます。

脳動脈瘤: 開頭手術または血管内治療で動脈瘤を塞栓します。
脳腫瘍: 手術、放射線治療、化学療法などを行います。
脳梗塞: 血栓溶解療法、抗血小板薬、リハビリテーションなどを行います。
その他の原因: 原因疾患に対する治療を行います。

動眼神経麻痺による眼瞼下垂の症状は、手術で改善することが期待できます。
手術方法は、眼瞼挙筋の機能を補強する「挙筋短縮術」や、額の筋肉を利用してまぶたを持ち上げる「前頭筋吊り上げ術」などがあります。

動眼神経麻痺による眼瞼下垂症は、眼瞼挙筋の麻痺が原因となるため、挙筋機能が低下しているため、挙筋短縮術では効果が弱く、前頭筋吊り上げ術の適応となることが多いと言えます。

5. 動眼神経麻痺の最新治療法

近年、動眼神経麻痺の治療法として、以下の新しい治療法が開発されています。

微小脳神経外科手術: 従来の開頭手術よりも低侵襲で、脳へのダメージが少ない手術方法です。

  • ロボット支援手術: ロボットの支援により、より精度の高い手術が可能になります。
  • 電気刺激療法: 動眼神経を直接刺激することで、眼瞼下垂の症状を改善します。
  • 幹細胞治療: 幹細胞を移植することで、動眼神経の再生を促します。

これらの治療法は、まだ研究段階のものもあり、すべての患者さんに適応できるわけではありません。しかし、将来的には、動眼神経麻痺の治療に大きな進歩をもたらすことが期待されています。

6. 動眼神経麻痺の予防

動眼神経麻痺の予防には、以下の点に注意しましょう。

  • 高血圧、糖尿病、脂質異常症などの生活習慣病を管理する
  • 定期的に健康診断を受ける
  • 頭部外傷を避ける

7. まとめ

動眼神経麻痺は、早期発見・早期治療が重要です。
眼瞼下垂に加えて、眼球運動障害などの症状がある場合は、早めに眼科を受診しましょう。

動眼神経麻痺は、日常生活に支障をきたすだけでなく、重大な脳疾患のサインである可能性もあります。

我々、眼科医は、症状や検査結果に基づいて、適切な治療法を提案し、必要に応じて、脳神経外科や内科などの他科と連携して治療を進めていきます。

8. 参考文献

  • 動眼神経麻痺 | 日本眼科学会
  • 動眼神経麻痺 | 日本眼形成外科学会:
  • 動眼神経麻痺 | 脳神経外科 | MSDマニュアル家庭版:
  • 動眼神経麻痺 | 厚生労働省 e-ヘルスネット:
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