結膜疾患

クラミジア結膜炎(封入体結膜炎)

髙田 尚忠

クラミジア結膜炎(封入体結膜炎)(Chlamydia trachomatis conjunctivitis)とは、クラミジア・トラコマチスといった細菌によって引き起こされる眼の疾患です。

感染者の体液が目に触れて発症し、まぶたの腫れや結膜の充血、多量の目やになどの症状が現れます。

感染が進行すると、結膜から角膜に血管が侵入するなどの重篤な症状が現れる可能性があり、視力への影響が考えられる点に注意が必要です。

クラミジア結膜炎は性感染症(STD)の一種であり、性的接触を通じて感染する例が多いですが、感染者の体液がついた手で目をこすったり、分娩時に母親から新生児へ感染する場合があります。

当ページでは、クラミジア結膜炎の症状や原因、治療法について詳しく解説します。

この記事の著者

Dr.高田尚忠(高田眼科 院長|ひとみ眼科 / フラミンゴ美容クリニック 眼瞼手術担当医師)

名前 / Name  
高田 尚忠(たかだ なおただ)
高田眼科 院長|ひとみ眼科 / フラミンゴ美容クリニック 眼瞼手術担当医師
岡山大学医学部卒業後、郡山医療生活協同組合 桑野協立病院などの様々な医療機関を勤務し、現在は高田眼科の院長を務める。2022年3月より、名古屋市内の伏見駅近くのフラミンゴ眼瞼・美容クリニックを開院。

所属:日本眼科学会日本形成外科学会日本眼形成再建外科学会

クラミジア結膜炎は、どんな病気か

クラミジア結膜炎は、結膜に慢性的な炎症を起こす感染症です。
成人では片眼性で始まることが多く、軽い粘液膿性の目やに、充血、異物感、まぶしさなどが
数週間から数か月続くことがあります。

一方、新生児では生後5〜14日前後で発症し、まぶたの腫れや分泌物の増加として気づかれることがあります。
新生児例では眼だけでなく、鼻咽頭や肺に感染が及ぶこともあるため、より慎重な対応が必要です。

クラミジア結膜炎の病型

クラミジア結膜炎とトラコーマは、どちらもChlamydia trachomatis(クラミジア・トラコマチス)という細菌感染が原因ですが、感染経路、流行地域、重症度が異なります

現代の日本で主に性行為や産道感染により発症するのは「成人の封入体結膜炎(クラミジア結膜炎)」や「新生児クラミジア結膜炎」であり、衛生環境が悪く慢性的な炎症が重症化して失明リスクがあるものを「トラコーマ」と呼びます。

比較表

クラミジア結膜炎(成人型、新生児型)とトラコーマの違い

同じ Chlamydia trachomatis が関係する病気でも、成人封入体結膜炎・新生児クラミジア結膜炎・トラコーマでは、感染経路や経過、治療の考え方が異なります。

項目 成人型クラミジア結膜炎
(成人封入体結膜炎)
新生児クラミジア結膜炎 トラコーマ
主な原因菌型 Chlamydia trachomatis の主にD〜K型 多くは母体の性器クラミジア感染に関連するD〜K型 Chlamydia trachomatis のA、B、Ba、C型
主な感染経路 性行為関連感染、手指を介した自家感染 出産時の産道感染 眼や鼻の分泌物との接触、衣類・寝具・タオル、ハエを介した伝播
主な問題となる場面 一般眼科診療でみられる 周産期・新生児診療で問題となる 衛生環境や水・衛生設備へのアクセスが不十分な流行地
経過・発症時期 数週間〜数か月続くことがある 生後5〜14日ごろに発症しやすい 長年の反復感染で慢性化し、瘢痕化が進む
主な症状 充血、目やに、濾胞、異物感、まぶしさ 目やに、まぶたの腫れ、結膜の充血 反復する炎症、瘢痕化、睫毛乱生、角膜障害、視力低下
視力予後・注意点 適切な治療で通常は視力への影響は少ない 早期治療で多くは改善するが、肺炎などの全身合併にも注意が必要 高い
治療の考え方 全身抗菌薬治療が基本 。必要に応じて性感染症の評価も行う 3〜20%の割合でクラミジア肺炎を合併する可能性があるため、点眼だけでは不十分で、全身治療が必要なこともある。 小児科との連携や母体の評価も重要。 抗菌薬に加え、手術、顔面清潔、環境改善 が重要

補足: 成人封入体結膜炎では性器クラミジア感染をあわせて評価し、パートナーの治療も大切です。新生児クラミジア結膜炎では、出生後の点眼だけでは予防として不十分で、妊婦健診でのスクリーニングと適切な治療が重要です。

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成人型クラミジア結膜炎

STD

成人型クラミジア結膜炎は主に性感染症(STD)として発症し、封入体結膜炎(ふうにゅうたいけつまくえん)とも呼ばれます。

尿道炎や子宮頚管炎など、他のクラミジア感染症と同時に発症するケースが多いです。

通常は、目の充血や目やにの増加などの症状が伴います。

封入体とは?

封入体とは、クラミジアが結膜の細胞の中で増えたときに見える細胞内のかたまりのことです。

クラミジアの封入体を示すイラスト

イラスト

結膜の細胞の中でクラミジアが増え、封入体をつくるイメージ図です。

クラミジアの封入体を示す顕微鏡写真風画像

顕微鏡画像

顕微鏡では、細胞の中にある封入体をこのように確認します。

高田尚忠医師
高田尚忠医師

「封入体」という病名の由来としては、クラミジアが結膜の細胞の中で増えると、顕微鏡で“細胞の中に取り込まれたように見える特徴的な塊(封入体)”が見えることから「封入体結膜炎」と呼ばれてきました。

つまり、「封入体」は症状の名前ではなく、細胞の中に見える特徴的な所見を指すことから付けられました。

成人型クラミジア結膜炎の所見

成人型クラミジア結膜炎の眼科所見では、結膜濾胞※2が認められます。

※2 結膜濾胞(けつまくろほう):まぶたの裏に小さなドーム状の隆起が多数できる状態。隆起はリンパ球が増殖したり、集まったりして形成される。主に、ウイルス性結膜炎、アレルギー性結膜炎、成人型クラミジア結膜炎で確認される。

結膜濾胞

クラミジア結膜炎では、小さな多数の濾胞が2~3週間ほどの間に徐々に融合して、巨大になるのが特徴です。

濾胞が大きくなると刺激を感じやすくなり、目のかゆみや痛み、不快感や異物感が増すケースが多くみられます。

新生児クラミジア結膜炎

新生児クラミジア結膜炎は、新生児封入体結膜炎とも呼ばれ、出産時に母親から赤ちゃんに感染する例がほとんどです。

免疫系が未熟な新生児の目に大きな影響を与えるため、分娩時の感染予防が重要です。

発症時期は生後5〜14日ごろが多く、まぶたの腫れや目やにで気づかれます。
ただし、眼だけの問題とは限らず、鼻咽頭や肺にも感染していることがあるため注意が必要です。

注意点: 3〜20%の割合でクラミジア肺炎を合併する可能性があるため、呼吸の状態にも注意が必要となるわけです。

このため、新生児では点眼だけでは不十分で、全身治療が必要です。
標準的にはエリスロマイシン内服が参照され、アジスロマイシンは有効な可能性があるものの、エビデンスはまだ限定的です。

なお、経口エリスロマイシンやアジスロマイシンでは、生後早期の乳児で乳児肥厚性幽門狭窄症との関連が報告されています。
そのため、治療中や治療後に、吐きやすい、哺乳しにくい、元気がないなどの症状があれば、すぐに小児科へ相談が必要です。

新生児クラミジア結膜炎

リンパ組織が未熟な新生児のクラミジア結膜炎では、濾胞の形成がみられませんが、重症では偽膜※3を形成する例があります。

※3 偽膜(ぎまく):結膜の炎症によってにじみ出た液が白色の膜になり、まぶたの裏に付着した状態。

トラコーマ

トラコーマ

トラコーマは、繰り返す感染によって発症する慢性の病型です。

トラコーマも同じ Chlamydia trachomatis による感染症ですが、主にA、B、Ba、C型によって起こります。


眼や鼻の分泌物との接触、衣類・寝具・タオル、ハエなどを介して感染し、何度も感染を繰り返すうちに結膜瘢痕化、眼瞼内反、睫毛乱生が起こり、角膜が傷ついて視力低下や失明につながります。

発展途上国の6歳までの子どもで感染が多くみられ、進行すると角膜の損傷や視力の低下、失明を招く可能性があります。

そのため、トラコーマは世界的にみると重要な感染性失明原因であり、WHOは手術、抗菌薬、顔面清潔、環境改善を組み合わせたSAFE戦略を推進しています。

これは、一般的な成人封入体結膜炎とは別の公衆衛生上の問題として考えるべき病気です。

ちなみに、日本では1950年以前に蔓延していましたが、近年は新規患者がほぼ確認さておらず、高齢者の陳旧例※1のみです2)

※1 陳旧例(ちんきゅうれい):発症からすでに年月が経過して症状が進行したもの。

トラコーマ

トラコーマの眼科での所見では、角膜パンヌス※4が認められます。

※4 角膜パンヌス:本来血管がない角膜(黒目の表面を覆う透明な膜)に、血管が侵入してくる現象。

また、角膜が白濁して透明性を失う症状も見られ、視力の低下や失明のリスクがあります。

角膜が白濁して透明性を失う症状

クラミジア結膜炎の主な症状

症状の目安

クラミジア結膜炎では、一般的な結膜炎と似た症状が出ることがあります。 ただし、充血や目やにがなかなか治らない違和感が長く続く場合には、 クラミジア感染が関係していることがあります。

1

見た目で気づきやすい症状

クラミジア結膜炎の見た目の症状を示すイラスト。白目の充血、目やに、まぶたの腫れ
  • 白目の充血
  • 目やにが続く
  • まぶたの腫れ
2

自覚しやすい違和感などの症状

クラミジア結膜炎の自覚症状を示すイラスト。異物感、ゴロゴロ感、まぶしさ
  • 異物感
  • ゴロゴロする感じ
  • まぶしさ
3

診察で確認される特徴

クラミジア結膜炎でみられるまぶたの裏の濾胞の臨床写真
  • まぶたの裏の濾胞

注意: 市販の点眼薬だけでは改善しにくく、症状が長引くことがあります。 特に、充血や目やにが続く場合、片目から始まってなかなか治らない場合、 あるいは繰り返す場合には、早めに眼科で相談することが大切です。

結膜炎

クラミジア結膜炎の主な症状は、目の充血と多量の目やに、目の腫れです。

黄色で粘度の高い膿性(のうせい)の目やにがほとんどですが、稀に色が薄く粘り気の少ない漿液性(しょうえきせい)の目やにが出るケースもあります。

症状は流行性角結膜炎(はやり目)と似ているため、眼科での鑑別が大切です。

目以外の症状

成人型クラミジア結膜炎前耳リンパの腫れ、尿道炎、子宮頚管炎、咽頭炎、発熱、肺炎、直腸炎など
新生児クラミジア結膜炎無熱性肺炎

成人型クラミジア結膜炎では、原因菌が他の部位に感染すると、前耳リンパの腫れや尿道炎、子宮頚管炎などの症状が現れます。

ただし、他の部位へ感染しても自覚症状が乏しいケースが多く、男性では50%、女性では80%が無症状と言われています3)4)

一方、新生児クラミジア結膜炎では、生後1~3カ月後に発熱のない肺炎を発症する場合があります。

症状が現れた際の注意点

症状が現れた際の注意点
  • ウイルス性結膜炎や淋菌性結膜炎と類似する症状が現れる
  • 他の眼疾患や性感染症と合併が起こりうる
  • 放置すると重症化や慢性化の恐れがある
  • 他の人への感染リスクがある
  • 家族やパートナーが感染しているときは再感染の可能性がある

クラミジア結膜炎は、はやり目(流行性角結膜炎)のような他の結膜炎と症状が類似するだけでなく、合併例がある点に注意が必要です。

また、放置しても自然には治らず、重症化や慢性化のリスクが高まるので、早めに医療機関を受診するのが大切です。

万が一、家族やパートナーが感染していて治療が行われないときは、本人の治療が完了していても再感染する可能性があります。

そのため、発症者本人と同時に、家族やパートナーの受診や治療を開始しましょう。

クラミジア結膜炎の原因である病原体について

クラミジア結膜炎の原因は、細菌の一種であるクラミジア・トラコマチス(Chlamydia trachomatis)への感染です。

クラミジア結膜炎の原因

クラミジア・トラコマチスは非常に小さい細菌であり、人の粘膜細胞内でのみ生育する特性を持ちます。

粘膜分泌物や性的接触が主な感染経路で、身体の免疫反応により結膜炎が引き起こされます。

病型ごとの主な感染経路

成人型クラミジア結膜炎主に性的接触、自家感染
新生児クラミジア結膜炎分娩時の母子感染(垂直感染)
トラコーマ直接接触、間接接触、ハエによる媒介

成人型クラミジア結膜炎では性的接触、新生児クラミジア結膜炎では母子感染が主な感染経路です。

成人では、すでにのどや尿道などにクラミジア・トラコマチスが感染している場合、分泌物が目に入り結膜炎を発症する自家感染の可能性も考えられます。

対してトラコーマは、クラミジア・トラコマチスに汚染された涙や目やにを介しての直接感染、タオルやハンカチなどを介しての間接接触、ハエによる媒介が感染経路として挙げられます5)

免疫系の影響

免疫系の状態も、クラミジア結膜炎の発症に影響を与えるケースがあります。

ストレスや疲労、糖尿病やHIV感染などの疾患が原因で免疫力が低下していると、クラミジア・トラコマチスに対する抵抗力が弱まり、感染しやすくなります。

クラミジア結膜炎の検査・チェック方法

クラミジア結膜炎の診断には、問診やスリットランプ検査、結膜のふき取り検査などを行います。

検査方法詳細
問診と目の観察症状や感染の可能性に関する情報を収集し、目の状態を確認します。
眼科機器を用いた目の検査スリットランプ(細隙灯顕微鏡)を使用して、結膜や角膜の状態を詳細に観察します。
結膜のふき取り検査まぶたからの検体を用いて、クラミジア・トラコマチスの存在を確認します。

問診と目の診察

問診では、症状が現れた時期はいつ頃か、どのような症状があるか、症状の強さはどのくらいかなどをお聞きします。

周りにクラミジア感染症の方がいる、他の眼疾患などがある、といった場合は医師に伝えるようにしてください。

また、眼科医が患者の眼を直接観察し、結膜の腫れや目やにの状態などを確認します。

眼科機器を用いた目の検査

眼科機器を用いた目の検査

スリットランプ(細隙灯顕微鏡)と呼ばれる機器を用いて、結膜や角膜の詳細な観察を行います。

スリットランプは、光を照射しながら顕微鏡で目を観察する機器です。

検査による痛みはありませんが、光感覚過敏の症状が起きているときは、まぶしさを感じやすい傾向があります。

結膜のふき取り検査

クラミジア結膜炎の診断には、結膜から検体を採取する方法が用いられます。

具体的には、綿棒でまぶたをふき取って、目やにや分泌物などを採取する検査です。

診断法には、塗抹検査、分離培養法、抗原検査法、核酸増幅法などがあります。

クラミジア結膜炎の診断法

塗抹検査検体を顕微鏡で観察する
分離培養法検体から原因菌を取り出し培養する
抗原検査法細菌が持つ抗原を検出する
核酸増幅法細菌から抽出したDNAまたはRNA配列を検出する

尿道やのどなど他の部位に感染している可能性があるとき、淋菌やアデノウイルス、HIVなどへの同時感染が疑われるときは、複数の検査を受けていただく場合があります。

クラミジア結膜炎の治療方法と治療薬について

眼科治療薬

クラミジア結膜炎の治療は、細菌感染に有効な抗生物質(抗菌薬)を使用して行われますが、治療薬は点眼薬だけでなく内服薬を併用する場合が多いです。

抗生物質の点眼薬や眼軟膏

クラミジア結膜炎の治療には、ニューキノロン系、マクロライド系、テトラサイクリン系の点眼薬や眼軟膏が有効です。

抗生物質の種類薬剤名
ニューキノロン系レボフロキサシン、オフロキサシン、ノルフロキサシン
マクロライド系アジスロマイシン、エリスロマイシン
テトラサイクリン系テトラサイクリン、エラバサイクリン

クラミジア結膜炎の治療を行うには、通常の点眼回数では2週間以上経っても改善しないため、こまめな投与が必要です6)

具体的には、ニューキノロン系の点眼薬を1~2時間ごと、またはニューキノロン系やマクロライド系の眼軟膏を1日5回など、短い間隔で使用することが必要となります。

抗生物質の内服薬

成人型クラミジア結膜炎の内服薬として、スパルフロキサシンやクラリスロマイシンなどの抗生物質が選択肢として挙げられます。

抗生物質の種類薬剤名
ニューキノロン系スパルフロキサシン
マクロライド系クラリスロマイシン
テトラサイクリン系ミノサイクリン、ドキシサイクリン

このほかに、泌尿生殖器や上咽頭(のど)への感染の可能性を考え、アジスロマイシンを経口摂取する場合があります7)

新生児クラミジア結膜炎の治療

新生児クラミジア結膜炎の治療

母親がクラミジア感染症のケースでは、予防として分娩後の新生児にマクロライド系またはテトラサイクリン系の点眼薬を使用します。

使用目的抗生物質の種類投与方法
分娩後の予防マクロライド系、テトラサイクリン系点眼
発症後の治療マクロライド系経口
発症後の治療マクロライド系、フルオロキノロン系点眼

発症してからの治療として、アメリカ疾病予防管理センター(CDC)の「STD治療ガイドライン 2015」では、全身投与が推奨されています8)

新生児への全身投与(経口摂取)の第一選択として挙げられるのが、マクロライド系のエリスロマイシンやアジスロマイシンです。

一方、目への局所的治療を行うときは、マクロライド系またはフルオロキノロン系の点眼薬または眼軟膏を使用します。

クラミジア結膜炎の治療期間

治療期間

クラミジア結膜炎の治療期間は症状や感染の程度によって異なりますが、1カ月以上にわたって継続する必要があります。

成人型クラミジア結膜炎の治療期間

治療薬の種類治療期間の目安
点眼薬、眼軟膏6~8週間
内服薬(経口投与)1~2週間

抗生物質の点眼薬や眼軟膏は、原則として6~8週間ほど使用していただきます。

対して、内服薬の使用期間は、通常1~2週間程度が目安です。

多くの患者さんでは治療開始から数日で症状の軽減がみられますが、完全な回復までには長い期間を要するケースがあります。

治療期間中は定期的に診察を受ける、症状が改善しても医師の指示に従って治療薬を使用するなど、治療期間を長引かせないための対策が大切です。

新生児クラミジア結膜炎

薬剤名(経口投与)治療期間の目安
エリスロマイシン14日間
アジスロマイシン3日間

新生児クラミジア結膜炎は、エリスロマイシンを14日間、またはアジスロマイシンを3日間使用して治療を行います。

ただ、この治療法による有効率は80%といわれていて、さらに長期間の治療が必要となるケースがあります8)

治療後の定期検診

クラミジア結膜炎の再発を防ぐためには、治療終了後も定期的な検診が必要です。

性的に活発な成人では、とくに再発する可能性があり、目の症状がなくても定期的な検査が推奨されます。

薬の副作用や治療のデメリットについて

デメリット

クラミジア結膜炎の治療で用いられる抗生物質には、点眼薬や内服薬でそれぞれに異なる副作用が存在します。

点眼薬や眼軟膏の副作用

副作用症状
刺激感目にしみる、かゆみや充血が起こる
乾燥感目が乾燥しやすくなる
視界のぼやけ視界がぼやける
アナフィラキシーショックごく稀に発疹、腫れ、呼吸困難などが起こる

抗生物質の点眼薬や眼軟膏の副作用には、刺激感、乾燥感、視界のぼやけがありますが、通常は使用した際の一時的なものなので、過度な心配はいりません。

ただし、ごく稀ですが、アナフィラキシーショックを引き起こす例がある点には注意が必要です。

アナフィラキシーショックが疑われるとき、刺激感や乾燥感などが長時間続くときは、治療薬の使用を中断して、速やかに医師に相談してください。

内服薬の副作用

内服薬副作用
ニューキノロン系発疹、光線過敏症、下痢、吐き気、眠気、めまい、頭痛、アナフィラキシーショック など
マクロライド系発疹、下痢、しびれ、耳鳴り、嗅覚異常、筋肉痛、アナフィラキシーショック など
テトラサイクリン系発疹、発熱、むくみ、頭痛、下痢、吐き気、倦怠感、アナフィラキシーショック など

抗生物質は胃腸の働きに影響を与える可能性があり、吐き気、嘔吐、下痢、腹痛などが考えられます。

通常は副作用が軽度で、時間の経過とともに自然に改善する場合が多いです。

ただし、呼吸困難などの重篤なアレルギー反応(アナフィラキシーショック)がみられた際には、直ちに医療機関を受診しましょう。

乳児クラミジア結膜炎治療のデメリット

新生児へのエリスロマイシン経口投与の際は、生後12週までの乳児では乳児肥厚性幽門狭窄症※5に注意が必要です9)

※5 乳児肥厚性幽門狭窄症(にゅうじひこうせいゆうもんきょうさくしょう):胃の出口の筋肉(幽門筋)が厚くなり、胃の内容物の排出が妨げられる状態。

医療機関でも副作用の可能性を考えて、細心の注意を払い治療が行われますが、飲んだ母乳やミルクを吐く症状(吐乳)がみられるようであれば、早急に医師に相談しましょう。

クラミジア結膜炎治療のデメリット

クラミジア結膜炎の治療では、薬剤耐性の問題や長期間の治療がデメリットとして挙げられます。

薬剤耐性の問題

クラミジア・トラコマチスが抗生物質への薬剤耐性を持つようになると、症状が悪化したり再発したりして、今までの抗生物質が効かなくなる可能性があります。

指示された用法・用量を守らず治療を中断する、必要以上の長期間にわたって抗生物質を使用するなどの行為が、薬剤耐性を発生させやすくします。

そのため、医師の指示に従って治療薬を使用し、免疫力をアップさせてできるだけ短い期間で治療が完了するような工夫が必要です。

長期間の治療が必要

クラミジア・トラコマチスは、48~72時間の周期で、細胞に侵入する段階の「基本小体」と、増殖する段階の「網状体」を繰り返す特徴があります。

クラミジアのライフサイクル。細菌。性感染症とクラミジア感染症。

クラミジア結膜炎に使用される抗生物質は、網状体には効きますが、基本小体には効きません10)

薬が効かない時間があるため、長期間にわたる根気強い治療が必要な点がデメリットです。

保険適用について

保険適用について

クラミジア結膜炎の治療には、保険が適用されるものと適用されないものがあります。

一般的には保険が適用される治療を行いますが、症状や感染状態によって保険適用外の治療を行うケースがあります。

1カ月あたりの治療費の目安

保険適用の場合の1カ月あたりの治療費は、通院回数や処方される薬によって異なりますが、トータルで数千円から1万円程度が一般的です。

一方、保険適用外の検査や治療では、費用が高額になる場合があります。

治療費の目安

種類保険適用1カ月あたりの治療費
診察料1,000~1,500円程度
クラミジア検査1,000~1,500円程度
治療薬数百円~数千円
一部の抗生物質や検査×選択される薬や検査によって異なる

淋菌やアデノウイルスなどとの同時感染が考えられるときは、複数の検査や保険適用外の検査を受けていただくため、さらに費用がかかる場合があります。

検査や治療の詳しい内容については、診療を受ける眼科医にご確認ください。

参考文献

1) トラコーマについて(ファクトシート)/厚生労働省検疫所 FORTH

2) 眼と性感染症/日本眼科学会

3) 性器クラミジア感染症とは/NIID国立感染症研究所

4) クラミジアの予防方法とは?予防のための基礎知識もご紹介/フィットクリニック

5) トラコーマ/MDAマニュアル

6) Abu Samra K, et al. The eye in sexually transmitted infections : a review of the ocular complications of venereal diseases. Int Ophthalmol 2001 ; 31 :539-550.

7)Katusic D, et al. Azithromycin vs doxycycline in the treatment of inclusion conjunctivitis. Am J Ophthalmol 2003 ; 135 : 447-451.

8) 新生児結膜炎/MSDマニュアル

9) Workowski KA, et al. Sexually transmitted diseases treatment guidelines, 2015. MMWR Recomm Rep. 2015 ; 64(RR-03) : 1-137.

10) 結膜炎/オガタ眼科クリニック

MOORE, Rebecca, et al. Chlamydia trachomatis conjunctivitis in the pre-pubertal child. Archives of Disease in Childhood-Education and Practice, 2022.

MILLER, Darby D. Chlamydia Conjunctivitis. Infections of the Cornea and Conjunctiva, 2021, 51-63.

LINTON, Emma, et al. Adult conjunctivitis secondary to dual infection with Chlamydia trachomatis and Neisseria gonorrhoeae-A case report. American Journal of Ophthalmology Case Reports, 2019, 13: 6-8.

KOHLHOFF, Stephan, et al. Universal prenatal screening and testing and Chlamydia trachomatis conjunctivitis in infants. Sexually Transmitted Diseases, 2021, 48.9: e122-e123.

SAKINA, Adriani. Diagnosis Klinis, Tatalaksana, dan Pencegahan Chlamydial Conjunctivitis. Cermin Dunia Kedokteran, 2019, 46.7: 45-48.

ZIKIC, Andrew, et al. Treatment of neonatal chlamydial conjunctivitis: a systematic review and meta-analysis. Journal of the Pediatric Infectious Diseases Society, 2018, 7.3: e107-e115.

このブログの執筆者
髙田 尚忠
髙田 尚忠
高田眼科 院長|フラミンゴ美容クリニック/銀座Jクリニック/あさ美皮フ科 眼瞼手術担当
岡山大学医学部卒業後、郡山医療生活協同組合 桑野協立病院などの様々な医療機関を勤務し、現在は高田眼科の院長を務めつつ、関連クリニックの名古屋ののフラミンゴ眼瞼・美容クリニック、銀座のJ clinic、亀戸のあさ美皮フ科においても、眼瞼下垂手術を中心に多くの年間2000件以上の手術を行っています。「見え方(視機能)」と「日常の快適さ」を回復することを第一に、診察では原因(加齢・コンタクト・体質・既往手術など)を丁寧に整理し、必要な治療を分かりやすく説明すること心がけています。 このブログでは、眼瞼下垂の症状、治療選択、術後経過で不安になりやすいポイントなどを、専門医の立場からできるだけ具体的に発信しています。
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