片目だけまぶたが下がる原因|左右差のある眼瞼下垂の見分け方と治療

片目だけまぶたが下がる原因は、症状が「急に起こったのか」「徐々に進んだのか」「生まれつきなのか」によって大きく異なります。
加齢に伴う眼瞼下垂のように徐々に進行するものがある一方、動眼神経麻痺やホルネル症候群など、早急な検査が必要な病気が隠れていることもあります。
このページでは、片目だけに起こる眼瞼下垂の原因、左右差の見分け方、受診すべきサイン、片目だけ手術する場合の注意点について眼科医が解説します。
急に下がった
神経の病気などが原因となっている可能性があり、 早めの受診や救急受診が必要になる場合があります。
徐々に下がってきた
成人以降に少しずつまぶたが下がってきた場合は、 加齢などに伴う腱膜性眼瞼下垂が多くみられます。
生まれつき・子どもの頃から
生まれたときから、あるいは幼少期からまぶたが下がっている場合は、 先天性眼瞼下垂が考えられます。
なお、目の開きの左右差を「ガチャ目」と呼ぶ方がいますが、本来この言葉は左右の視力や度数の差(不同視)を指し、別のものです。

「ガチャ目」は本来、左右の視力(屈折度数)が違う“不同視”を指す言葉です。
片目だけ近視・遠視・乱視が強いと、左右で見え方やピントの合い方がズレて、疲れやすさや違和感が出ます。
一方で、眼瞼下垂による目の開きの左右差を「ガチャ目」と呼ぶ人もいますが、医学的にはそれは“開瞼の左右差(眼瞼下垂の左右差)”であって、不同視とは別物です。
急に片目が下がったら:すぐ受診すべきサイン
片目のまぶたが急に下がり、次のどれかを伴う場合は、救急外来を受診してください[1][2]。
物が二重に見える、目が外下を向く
瞳孔が開いている場合は、検査で否定されるまで 脳動脈瘤を念頭に置く必要があります。 破裂すると、くも膜下出血を起こす可能性があります。[1]
片側の頭痛、首の痛み
痛みを伴う場合、頸動脈解離などが原因となることがあります。 脳梗塞につながる可能性があります。[1][3]
ろれつが回らない
全身の筋肉に症状が広がっている可能性があり、 呼吸や嚥下に影響する場合があります。[1]
頸動脈解離の患者146人の報告では、ホルネル症候群が最も多い所見で、その半数では最初の唯一の症状でした[3]。まぶたの下がりと瞳の左右差だけでも、急に起きたものは受診が必要です。
片目だけまぶたが下がる原因
目の動きの制限が必ずある。瞳孔が開くことがある[1]
下がりは軽く、気づかれにくい。下がった側の瞳孔が小さい[1][3]
両目が多いが、片目や左右差のあることも珍しくない。瞳孔は正常[1]
まぶたを上げる筋肉の力はほぼ正常。二重の線が高くなる[4]
きっかけがはっきりしている[4][7]
まぶたを上げる筋肉の形成不全[6]
徐々に左右差が出てきた場合
最も多いのは、腱膜のゆるみによる眼瞼下垂です。 本来は両目に起こりやすい変化ですが、負担が片側に偏ると左右差が出ます。
コンタクトレンズ
片目だけに装用している場合や、左右で異なるレンズを使っている場合に、 片目だけ、あるいは左右差のある眼瞼下垂が起こることがあります[2]。
目の手術
白内障手術など、手術を受けた側に眼瞼下垂が起こることがあります。
けが・外傷
まぶたや眼の周囲への外傷をきっかけに、 片側の眼瞼下垂が起こることがあります。
神経の病気による場合
動眼神経麻痺は、片目のまぶたが下がり、目を内側・上・下に動かしにくくなります。原因は大きく2つです。
開きやすい。瞳孔が正常なのは5〜14%
保たれやすい。75%は瞳孔が正常[8]
90%にあり、2mmを超える
32%にあるが、1mm以下[8]
緊急の治療が必要
3か月以内に約8割、1年以内に約9割が完全に回復[8]
血管の障害による動眼神経麻痺でも、 77%に目の周りの痛みや頭痛があります[8]。
50歳以上で急に目の動きの神経麻痺を起こした109人の調査では、 血管の危険因子だけを持つ80人のうち 10%に腫瘍、脳幹の梗塞、巨細胞性動脈炎など別の原因 が見つかりました[9]。
危険因子の有無にかかわらず、受診して必要な検査を受けることが重要です。
まぶたを上げる補助的な筋肉である ミュラー筋への神経が障害されることで起こります。
まぶたの下がりは比較的軽く、 12%では眼瞼下垂がみられなかったという報告もあります[3]。
首・頸椎・肺上部の手術後が多く、 ほかに肺尖部腫瘍や頸動脈解離などがあります[1]。
重症筋無力症では、日によって、あるいは測るたびに 眼瞼下垂の程度が変動することがあります。
まぶたを数分冷やして、眼瞼下垂が改善するかを見る アイステストが診断の参考になります[1][11]。
症状が目だけにとどまる「眼筋型」から、 全身の筋肉に症状が広がる場合があります。
生まれつきの場合
先天性眼瞼下垂は、両目よりも片目だけに起こるケースが多いことが知られています。 また、小児では視機能の発達にも関わるため、眼科での経過観察が重要です。
報告によって差はありますが、先天性眼瞼下垂の多くは片目だけにみられます。[6]
片眼性では左目に多いと報告されています。 また、ほとんどは家族歴のない発症です。[6]
弱視を合併することが報告されています。 特にお子さんでは、視力の発達を確認しながら経過をみることが大切です。[6]
まぶたが瞳孔にかかる程度や、左右の視力差、乱視などによっては、 弱視につながる可能性があります。 先天性眼瞼下垂が疑われる場合は、定期的に眼科で視機能を確認することが重要です。

眼瞼下垂ではないのに、片目が下がって見える場合
- 反対側のまぶたが上がりすぎている:甲状腺の病気が代表です[1]。
- 眼球の位置や大きさの左右差:眼球がくぼんでいる、小さい、下を向いている場合です[1]。
- 皮膚のたるみの左右差:「まぶたのたるみと眼瞼下垂の違い」をご覧ください。

下がっていない側も、実は下がっていることがある

左右のまぶたを上げる筋肉には、脳から同じ強さの指令が届きます。
片方のまぶたが下がると、それを上げようとして指令が強まり、反対側のまぶたは本来より高い位置に上がります[1][4]。
このため、次の2つが起こります。
- 下がっていない側が、正常以上に開いて見える。 左右差が実際より大きく見えます。
- 片目だけ手術すると、反対側が下がってくる。 手術で指令が弱まり、隠れていた反対側の下垂が現れます[4]。
片目の眼瞼下垂を手術したあと、反対側の下垂が目立ってくることがあります。実際に、片眼手術を受けた患者さんの約5%が、術後に反対側の眼瞼下垂のため再手術を受けたという報告があります[4]。
そのため診察では、下がっている側のまぶたを指で持ち上げ、反対側のまぶたが下がるかどうかを確認することが基本です[1]。
このように、手術前にこの「ヘリングの法則」を考慮することは、術後の左右差を減らすうえで重要です。
ある研究では、ヘリングの法則を考慮せずに手術した場合、左右差がほとんど目立たない状態になったのは約6割でした。
一方、ヘリングの法則を考慮して手術した場合は、約95%で良好な左右差に収まったと報告されています[12]。
つまり、「下がっている片目だけを見る」のではなく、反対側のまぶたが隠れて下がっていないかまで確認して手術計画を立てることが大切です。

片目だけのまぶたを引き上げること自体は、眼瞼挙筋の機能に問題がなければ、それほど難しくありません。難しいのは、術後の左右差が出ないように調整することです。
ヘリングの法則が、手術中だけでなく手術後にも働くためです。診察では問題がないように見えた側にも、軽い眼瞼下垂があることは少なくありません。
左右差を自分で確かめる方法
- 昔の写真と比べる:運転免許証などの古い写真が役に立ちます。最近気づいた左右差が、実は以前からあったとわかることがあります[1]。
- 眉の高さを見る:下がっている側は、額の筋肉でまぶたを持ち上げようとするため、眉が高くなります[1]。
- 瞳の大きさを見る:明るい場所と暗い場所の両方で比べます。なお、1mm以下のわずかな左右差は、およそ5人に1人にみられる生理的なものです[1]。急に生じた左右差や、まぶたの下がりを伴う場合は受診してください。
まぶたの高さの測り方は「眼瞼下垂のセルフチェック」で解説しています。

片目だけ手術するか、両目同時にするか
片目だけの手術は可能です。保険診療では、症状のある側だけを手術するのが原則です。
ただし、片目だけを手術した場合、反対側のまぶたが下がって見えることで、術後も左右差が残ることがあります。
片眼手術を受けた患者さんを画像解析した研究では、手術後に左右のまぶたの形は大きく改善したものの、完全に左右対称になるとは限らないことが示されています[13]。
つまり、片目だけの手術でも左右差は改善しますが、反対側の隠れた下垂やヘリングの法則の影響によって、多少の左右差が残る可能性があります。

左右差が生じるリスクを減らすには、両眼同時手術をおすすめしています。片目の下がりが主な悩みで来院された方でも、反対側に軽い眼瞼下垂が見つかることが多いためです。
当グループは、2025年に関連クリニック全体で2,000件の手術を行っています。
その当院が両眼同時手術を基本としている理由は「当院が両眼同時手術を基本方針にしている理由」、術式は「眼瞼下垂の手術」をご覧ください。


費用と保険適用
眼瞼下垂と診断され、視野や生活に支障がある場合は、保険が適用されます。
※術前検査、診察、麻酔などの費用が別にかかります。
見た目の仕上がりを重視する場合の自由診療を含め、詳しくは「眼瞼下垂手術の費用相場」をご覧ください。

よくある質問
腱膜のゆるみによるものは自然には戻りません。 糖尿病や高血圧に伴う血管の障害による動眼神経麻痺は、 3か月以内に約8割が完全に回復します[8]。
ただし、この診断は他の原因を検査で除外したうえでつくものです[9]。
隠れていた反対側の下垂が、手術後に現れたと考えられます[4]。 反対側の手術で左右を合わせることができます。
昔からあり、明るさを変えても差が変わらない1mm以下の左右差は、 生理的なものが多いです[1]。
まぶたの下がりを伴う場合や、急に気づいた場合は受診してください。
できます。 先天性の場合は術式の選び方が異なるため、 「先天性眼瞼下垂」をご覧ください。
参考文献
- Latting MW, Huggins AB, Marx DP, Giacometti JN. Clinical evaluation of blepharoptosis: distinguishing age-related ptosis from masquerade conditions. Semin Plast Surg. 2017;31(1):5-16. PMID: 28255284
- Nichols KK, Malloy KA, Karpecki PM, et al. Topical review: an update of diagnostic and management algorithms for acquired blepharoptosis. Optom Vis Sci. 2022;99(3):230-240. PMID: 35058403
- Kanagalingam S, Miller NR. Horner syndrome: clinical perspectives. Eye Brain. 2015;7:35-46. PMID: 28539793. doi:10.2147/EB.S63633
- Bacharach J, Lee WW, Harrison AR, Freddo TF. A review of acquired blepharoptosis: prevalence, diagnosis, and current treatment options. Eye (Lond). 2021;35(9):2468-2481. PMID: 33927356
- Kitazawa T. Hard contact lens wear and the risk of acquired blepharoptosis: a case-control study. Eplasty. 2013;13:e30. PMID: 23826433
- Wu P, Ma J, Zhang T, Ma D. Advances in the genetics of congenital ptosis. Ophthalmic Res. 2022;65(2):131-139. PMID: 34969027
- Lim JM, Hou JH, Singa RM, Aakalu VK, Setabutr P. Relative incidence of blepharoptosis subtypes in an oculoplastics practice at a tertiary care center. Orbit. 2013;32(4):231-234. PMID: 23662688
- Galtrey CM, Schon F, Nitkunan A. Microvascular non-arteritic ocular motor nerve palsies: what we know and how should we treat? Neuroophthalmology. 2015;39(1):1-11. PMID: 27928323. doi:10.3109/01658107.2014.963252
- Tamhankar MA, Biousse V, Ying GS, et al. Isolated third, fourth, and sixth cranial nerve palsies from presumed microvascular versus other causes: a prospective study. Ophthalmology. 2013;120(11):2264-2269. PMID: 23747163. doi:10.1016/j.ophtha.2013.04.009
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- Pan E, Yu J, Zhang S, Nie Y, Li Q. Retrospective analysis of the effect of Hering’s law on outcomes of surgical correction of ptosis. Ann Plast Surg. 2018;80(3):242-244. PMID: 28930783. doi:10.1097/SAP.0000000000001250
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