先天性筋強直性ジストロフィー|症状・成長にともなう変化と、目・まぶたのことを眼形成外科医が解説

生まれてすぐに体がやわらかく、呼吸やミルクを飲むことに助けが必要だった。その後「先天性筋強直性ジストロフィー」と診断された。そうしたお子さんのご家族から、「まぶたが下がって見える」「目はちゃんと見えているのか」というご相談があります。病気の全体像と、目とまぶたについて知っておきたいことを、眼形成外科医が解説します。
- 筋強直性ジストロフィーの中で、最も早く、最も重く出るタイプ:ほとんどが母親から受け継がれ、生まれた直後から筋力の低下や呼吸の問題が出ます。運動の力は、成長とともに伸びていきます。
- まぶたは「下がって見える」ことが多く、本当の眼瞼下垂はまれ:一方で、遠視・乱視・斜視・目の動きの異常は多くみられます。早い時期から眼科で定期的にみていくことが大切です。
- お母さん自身も、診断されていないことがある:半数近くのお母さんは、お子さんの診断をきっかけに、自分の病気が分かっていました。
執筆:髙田 尚忠(高田眼科 院長/眼科医・眼形成外科) 最終更新:2026年10月
先天性筋強直性ジストロフィーとは
筋強直性ジストロフィー1型は、DMPKという遺伝子の中で、CTGという3つの塩基のくり返しが異常に長くなることで起こります。このくり返しは、親から子へ受け継がれるときにさらに長くなることがあり、世代を経るほど発症が早く、症状が重くなります1。その最も重い形が、生まれたときから症状がある「先天性」です。先天性は1型だけにみられます2。
くり返しが1,000回を超えるような大きな伸び方は、母親から受け継がれるときに起こりやすいことが分かっています3。
生まれた直後にみられること
91%が新生児集中治療室に入院していました。妊娠中は、羊水が多い、胎動が少ない、がそれぞれ51%にみられました1
日本の新生児集中治療室からの報告
成長とともに変わること
生まれた直後が最も大変で、その後、運動の力は伸びていきます。
3〜15歳の42人を毎年調べた研究では、歩く、立ち上がる、握るといった運動の力は、どれも年齢とともに伸びていました5。
生まれた直後には半数が気管に管を入れていましたが、8歳ごろには呼吸や栄養の補助が必要な子は少なくなっていました1
目とまぶたにみられること
まぶたは「下がって見える」ことが多いのですが、本当の眼瞼下垂はまれです。
スウェーデンの研究では、18歳までに診断された49人(先天性と小児期発症)のうち82%に、目の動きやまぶたの異常がみられました。多かったのは、両目をそろえて動かす動きの異常と、見かけ上まぶたが下がって見える状態で、まぶたを上げる筋肉の力が落ちる本当の眼瞼下垂はまれでした6。
視力が育つ時期に、眼科で定期的に確認を
この病気は、発達の途中にある視覚にも影響します。研究の著者は、早い時期に眼科の診察を受け、続けてみていくことが必要だと述べています8。遠視や乱視、斜視は、めがねなどで対応できることがあります。
まぶたの手術を考えるとき
まずは、見かけ上の下がりなのか、まぶたを上げる筋肉の力が落ちているのかを、診察で見分けます。見かけ上の下がりであれば、まぶたを上げる手術の対象にはなりません。
院長コメント:まず、本当の眼瞼下垂かどうかを見きわめます
お子さんのまぶたが下がって見えるときは、まぶたを上げる力、目を閉じる力、目の動き、視力の発達をあわせて確認します。当院の眼瞼下垂手術は局所麻酔で行うため、手術を検討できるのは、小学校高学年以降で、局所麻酔の手術を受けられる方です。
お母さん自身の症状にも、目を向けてください
大人の筋強直性ジストロフィーは、症状が軽いと気づかれにくい病気です。手のこわばりを、本人が大したことではないと思って伝えないことも多いとされています1。
お母さんに、こんな症状はありませんか
- 握った手が、すぐに開かない
- 日中に強い眠気がある
- まぶたが下がってきた
- 40歳前後で白内障と言われた
心臓や呼吸の検査が必要になる病気です。思い当たることがあれば、脳神経内科でご相談ください。まぶたと目の症状は「筋強直性ジストロフィーの眼瞼下垂」で解説しています。
よくある質問
眼科は、いつ受診すればよいですか。
診断がついたら、早めに一度受診してください。遠視、乱視、斜視は、視力が育つ時期に見つけて対応することが大切です。その後も定期的に確認します8。
まぶたが下がって見えます。手術が必要ですか。
多くは、手術の必要がない見かけ上の下がりです。子どもでは本当の眼瞼下垂はまれと報告されています6。まぶたが瞳孔にかかっていないか、視力が育っているかを、診察で確認します。
次の子どもにも遺伝しますか。
常染色体顕性(優性)遺伝で、次のお子さんに受け継がれることがあります。先天性のお子さんがいるご家庭では、次のお子さんも重いタイプになる可能性が高いとされています1。遺伝カウンセリングの外来で相談できます。
手術は保険が使えますか。
基準を満たす後天性の眼瞼下垂は、保険診療の対象です。生まれつきの眼瞼下垂や、それと同じくらいまぶたを上げる力が失われている場合は、自費診療になります。詳しくは「眼瞼下垂手術の費用」をご覧ください。
高田眼科の考え方
先天性筋強直性ジストロフィーのお子さんでは、まぶたの手術を急ぐよりも、視力の発達と目の位置を定期的に確認することを大切にしています。生まれつきまぶたが下がっている、ほかの原因については「先天性眼瞼下垂」を、筋肉の病気による眼瞼下垂の全体像は「筋肉の病気による眼瞼下垂」をご覧ください。
お子さんのまぶたや目の見え方、ご自身のまぶたが気になる方へ
まぶたの下がりの原因を見きわめ、全身の状態に合わせた方針をご提案します。
参考文献
PubMed収載論文をもとに作成しています。文献1・3・4・5は全文、それ以外は抄録を確認しています。
- Trucco F, Albamonte E, Pane M, et al. Parental diagnostic delay and developmental outcomes in congenital and childhood-onset myotonic dystrophy type 1. Dev Med Child Neurol. 2025;67(3):365-373. doi:10.1111/dmcn.16079
- Veyckemans F, Scholtes JL. Myotonic dystrophies type 1 and 2: anesthetic care. Paediatr Anaesth. 2013;23(9):794-803. doi:10.1111/pan.12120
- Scutifero M, Lanza M, Petillo R, et al. Gender effect on onset, prevalence and surgical treatment of cataract in patients with myotonic dystrophy type 1. Acta Myol. 2022;41(3):105-110. doi:10.36185/2532-1900-N75
- Saito Y, Matsumura K, Kageyama M, et al. Impact of prematurity and the CTG repeat length on outcomes in congenital myotonic dystrophy. BMC Res Notes. 2020;13(1):350. doi:10.1186/s13104-020-05186-z
- Kiefer M, Hartman JM, Berggren KN, et al. Toward trial readiness in congenital myotonic dystrophy: a longitudinal cohort study of predictors of motor function in childhood. Neurol Genet. 2026;12(2):e200363. doi:10.1212/NXG.0000000000200363
- Aring E, Ekström AB, Tulinius M, Sjöström A. Ocular motor function in relation to gross motor function in congenital and childhood myotonic dystrophy type 1. Acta Ophthalmol. 2012;90(4):369-374. doi:10.1111/j.1755-3768.2010.01956.x
- Sjögreen L, Engvall M, Ekström AB, et al. Orofacial dysfunction in children and adolescents with myotonic dystrophy. Dev Med Child Neurol. 2007;49(1):18-22. doi:10.1017/s0012162207000060.x
- Ekström AB, Tulinius M, Sjöström A, Aring E. Visual function in congenital and childhood myotonic dystrophy type 1. Ophthalmology. 2010;117(5):976-982. doi:10.1016/j.ophtha.2010.01.055






