霰粒腫と麦粒腫(ものもらい)について
瞼(まぶた)に急に痛みを感じ、腫れてきたりしたことってありませんか?
そして、治療せずに放置していたら、その瞼(まぶた)に大豆ぐらいの大きさのシコリができてしまい、なかなか治らなかった経験はありませんか?
それらは、恐らく、ものもらい と呼ばれるものだと思います。
ものもらいとは
ものもらいというのは、医学的には、霰粒腫と麦粒腫とに分けて考えます。
霰粒腫は、非感染性のマイボーム腺閉塞により生じた炎症性腫瘤を伴う状態で、麦粒腫とは、瞼に出来る感染を伴う炎症性の腫瘤です。
麦粒腫は、皮膚の常在菌、通常、ブドウ球菌の感染によって起こります。ときに、眼瞼炎(まぶたの皮膚とその周囲の炎症)も伴います。
教科書的には難しい内容となっておりますが、実際には、麦粒腫と霰粒腫は切り分けが臨床的には難しく、”急性型のものもらい”が麦粒腫で、”慢性型のものもらい”が霰粒腫と理解した方が良いと考えます。
急性型の麦粒腫が、なかなか治らず慢性化し、最終的には霰粒腫となると考えて差し支えありません。
典型的な麦粒腫は切開すると、ドロっとした乳白色の液状の膿(うみ)が出てきます。
逆に、霰粒腫を切開しても、麦粒腫みたいに出てくることはなく、基本的には、肉芽組織の塊で圧迫しないと出てこないお粥状の状態です。
麦粒腫から霰粒腫に変化して行きますので、そのような場合には、乳白色の膿とお粥状の肉芽組織が混ざったような状態となっていることもあります。
一般的に、麦粒腫の方が治りやすく、抗生剤やステロイドの点眼をしていると、自然と弾けて、中身である膿が出てしまい、2週間程度治ります。
麦粒腫は、痛みを伴うのですが、言い換えれば、細菌という異物を排除しようと活発に免疫細胞が働いているからと言えます。
そして、霰粒腫は、痛みを伴わないのは、ある程度、細菌を免疫反応によって押さえ込むことに成功はしたものの排除しきれず、ブルーシートのような硬い皮膜で包み込んで残してある様な状態とも言えます。
したがって、霰粒腫になってしまうと、免疫反応が活発に働いていないことに加え、皮膜が薬剤の浸透を邪魔するため、点眼などの薬物療法も効きにくく、早く治すためには外科的な処置を検討しなければならないと言えます。
一生のうちに、一度もものもらい にならない人もいれば、年に何度も繰り返す人もいます。
発生には、体質も関係がありますが、ストレス、疲労、生理の周期に起因するホルモンバランスの乱れ、免疫力の低下、抵抗力の低下等が関係します。
面白いことに、麦粒腫は地域の方言によって、呼び名が色々とあります。
例えば、『ものもらい』『めぼう』『めばちこ』・・・様々です。
麦粒腫は、急にまぶたが赤く腫れ、押すと痛む、または特に触れなくても瞬き(まばたき)をするだけでも痛むといった症状から始まります。
そして、触れると痛みを感じる小さな丸いデキモノができます。
涙目、明るい光に過敏になる、異物が入ったように感じる(異物感)などの角膜症状が出ることもあります。
多くの場合、腫れるのはまぶたの一部ですが、まぶた全体が激しく腫れることもあります。
腫れた部分の中心にしばしば乳白色の小さな点(膿点)ができることがあります(通常はまぶたの縁にみられます)。
麦粒腫は数日後に破れて、少量の膿が出て終わるという傾向があります。
麦粒腫は、その発生する場所によって、内と外の二つに分けて考えます。
外麦粒腫 :まぶたの外側の汗を出す腺や、まつげの毛根に細菌が感染する
内麦粒腫 :まぶたの内側のマイボーム腺(まつ毛の生え際にある油分を分泌する穴)に細菌が感染する
通常、内麦粒腫では外麦粒腫に比べて痛みやその他の症状が強く現れます。
ものもらいは、他の人にうつる病気ではありません。
ただし、汚れた手で患部をいじると、治りが遅くなったり、完治しても再発したりする場合があります。
患部を不必要に触らないようにしてください。