ポテンツァのニキビ跡への効果 – 何回必要?深さやかかる料金を解説
ニキビの炎症が治まったのに、赤みや色素沈着が残ってしまった経験はありませんか。
炎症が長期間続くと、皮膚の組織がダメージを受け、凸凹としたクレーターになってしまう場合があります。
セルフケアでは治すのが難しいニキビ跡には、ポテンツァがおすすめです。
本記事では、ポテンツァによるニキビ跡治療について、効果や料金、治療の経過、必要回数などを解説していきます。
ニキビ跡の治療によく使われるフラクショナルレーザーとの違いも紹介しますので、ニキビ跡にお悩みの方はぜひ参考にしてください。
この記事の著者
名前 / Name
藤井 あさ美
日本皮膚科学会認定 皮膚科専門医
医学博士。日本皮膚科学会皮膚科専門医。愛媛大学医学部卒業後、大阪大学医学部皮膚科入局。退役軍人病院(ロサンゼルス)皮膚科、岐阜大学医学部付属病院皮膚科を経て現職(あさ美皮フ科亀戸駅前院長)。
ポテンツァのニキビ跡への効果
ポテンツァとは、マイクロニードル(超極細針)を用いて肌に無数の穴をあけたあと、針先から高周波(RF: ラジオ波)を照射する治療法です。
ポテンツァのようなRFマイクロニードル治療は、肌が自ら傷を治そうとする創傷治癒力を高め、ターンオーバーを促す効果があり、ニキビ跡の治療に有望な結果をもたらすとして注目されています。1)
針の密度や長さが異なるバリエーション豊かなチップから選択できるのが特徴で、高周波(RF)を照射する範囲や強さも細かく調節できるため、ニキビ跡の症状に合わせた治療を受けられます。
ポテンツァで治療できるニキビ跡
ポテンツァはさまざまな種類のニキビ跡にアプローチが可能です。
- 赤み
- 色素沈着
- クレーター(肥厚性瘢痕・陥凹性瘢痕)
特に、従来のマイクロニードル治療では改善が難しかった、クレーター状のニキビ跡に対しても効果が期待できます。
赤み
ニキビの炎症が治まったあとも、患部周辺に赤みが残ることがあります。
これは、ニキビがあった部分の毛細血管に血液が集中し、肌から透けてみえるのが原因です。
通常、ニキビ跡の赤みは、肌のターンオーバー(肌の生まれ変わりのサイクル)によって自然と薄くなっていきます。
しかし、炎症によるダメージが肌の奥まで達していると、なかなか赤みは消えません。
色素沈着
長期間にわたるニキビの炎症によってメラニンが過剰に生成され、茶色いシミのように残ったものがニキビ跡の色素沈着です。
色素沈着を起こしている部分はターンオーバーが乱れているため、消失するまでには時間がかかります。
クレーター(肥厚性瘢痕・陥凹性瘢痕)
クレーターは、ニキビの炎症が肌の奥深くにある真皮層までおよび、皮膚が再生されなくなっている状態です。
真皮層ではターンオーバーが行われないため、自然にクレーターが元の肌の状態に戻ることはありません。
クレーターは、凹みの状態によって「ローリング型」や「アイスピック型」などいくつかのタイプに分けられますが、ポテンツァはあらゆるタイプのクレーター・瘢痕に適応です。
※ただし、深いクレーターでは効果の実感までに回数が多くかかります。
ポテンツァのニキビ跡治療のメリット
- ダウンタイムが短い
- さまざまな肌タイプに適応
- クレーター(瘢痕)のタイプや程度に応じてカスタマイズ可能
副作用は通常軽度で、赤み・腫れ・内出血があり、数時間~1週間程度で消失します。
ごく稀に色素沈着が起こる場合がありますが、特に色黒肌タイプの方は、色素沈着を防ぐために、施術後の日焼け防止、肌にやさしいスキンケアなど適切なアフターケアが重要です。
薬剤との併用治療でより効果的に
ポテンツァの効果をより高めるためには、症状に合わせた薬剤を併用すると、より効果を実感しやすくなります。
針が抜けると同時に薬剤を皮下に注入する「ドラッグデリバリーシステム」を備えたチップを使用すれば、効率よくニキビ跡を治療できます。
数ある薬剤のなかでも、ニキビ跡の治療に有効なのが「マックーム(McCoom)」です。
マックームは、ポテンツァ専用に開発された粒子の細かいPLLA(ポリ乳酸)製剤で、真皮層に働きかけてコラーゲンの生成を促す作用があります。
凹んだ瘢痕組織を埋めて、クレーター状のニキビ跡をなめらかに改善していきます。
ニキビ跡のほか、毛穴の開きやたるみ、小じわなど、さまざまな肌悩みの解消を目指せる薬剤です。
ポテンツァのニキビ跡治療で必要な回数は何回?
1回の施術でも肌の変化を実感できる方がほとんどですが、治療を重ねるほどポテンツァの効果は実感しやすくなります。
特に、肌の深くまでダメージが及んでいる重度のニキビ跡に対しては、複数回の治療が推奨されます。2)
治療回数の目安
ニキビ跡の重症度 | 治療回数の目安 |
---|---|
軽度 | 1〜2回 |
中等度 | 2〜4回 |
重度 | 4〜6回 |
ニキビ跡の重症度だけではなく、肌のタイプや年齢によっても必要な治療回数は変わってきます。
色黒の方は、炎症後色素沈着が起こるリスクが高く、肌のあまり深い部分まではアプローチができません。
そのため、より多くの回数が必要となる可能性があります。
また、年齢が若い方のほうが、肌のターンオーバーの周期が正常であるケースが多く、少ない回数で効果を実感しやすいでしょう。
適切なカウンセリング・診断が重要
ニキビ跡の状態によっては、ポテンツァだけで完治させるのは難しいケースもあります。
まずは医師とのカウンセリングでニキビ跡の状態をしっかりと確認し、適切な治療回数や治療法を決めていきましょう。
針の深さはどのくらいが良いの?
ポテンツァは、肌悩みに合わせて針の深さを細かく調節できます。
ドラッグデリバリーシステムを搭載したポンピングチップでは0.5~2.5mm、それ以外のチップでは0.5~4.0mmの間で深さを変えられます。
ニキビ跡の治療には1.5~2.0mmが目安
ニキビ跡の治療に効果的な針の深さは、表皮の基底層や真皮層に届く1.5~2.0mmが目安です。
ニキビ跡の症状が重いほど、皮膚の深い部分にまでダメージが及んでいる可能性が高いため、針を深くする必要があります。
ただし、上記はあくまでも目安であり、実際には医師がニキビ跡の状態や肌質、ダウンタイムなどを考慮して深さを設定していきます。
適切な深さで施術を行わないと、十分な効果を得られないだけではなく、色素沈着などが起こるリスクが高まります。
そのため、丁寧なカウンセリングやアフターケアがあり、信頼のできるクリニックで治療を受けましょう。
ポテンツァニキビ跡治療の料金
ポテンツァの料金は、使用するチップや薬剤によって異なります。
ニキビ跡の治療には、ドラッグデリバリーシステムを採用したポンピングチップが使われるケースが多く、薬剤はマックームが人気です。
料金の相場は1回8~12万円が目安
- 1回(全顔):8万〜12万円
- 3回(全顔): 20万〜30万円
当院では、1回6万円、3回セット15万円(施術料金:税込)でポテンツァマックームの施術を行っています。
ポテンツァニキビ跡治療の経過とダウンタイム
ポテンツァの高周波(RF)には止血作用があり、従来のマイクロニードル治療と比較して副作用が出にくい点が特徴です。
また、肌の状態に合わせて針の深さや出力を調節できるため、肌に大きな負担がかかりません。
個人差はありますが、ダウンタイムは1週間程度で、赤みや腫れは1〜3日で落ち着きます。
ポテンツァによるニキビ跡治療の一般的な経過は下記のとおりです。
針が深く刺入された場合や敏感肌の方は、これらの副作用がもう少し長引く場合があります3)。
施術当日
施術直後は、赤みや腫れが強く出ます。麻酔が切れると、ほてりやヒリヒリ感を覚える方もいます。
1〜3日後
赤みや腫れが徐々に落ち着き、針を刺した箇所がかさぶたになります。肌にザラつきが生じますが、かさぶたは非常に細かく、メイクでカバーできる程度です。
4〜7日後
かさぶたが自然に剥がれ落ち、肌の変化を感じられるようになります。 内出血が出ている場合は、約1〜2週間で黄色く変化し、徐々に消失していきます。
ニキビ跡の治療には約2〜6カ月かかる
肌質や症状にもよりますが、一般的にポテンツァの理想的な施術頻度は、4〜6週間に一度といわれています。
そのため、軽度・中等度のニキビ跡であれば2〜4カ月、重度のニキビ跡は4〜6カ月程度の治療期間が必要になると考えておきましょう。
色素沈着が起こる可能性は?
ごくまれに、ポテンツァの施術後に炎症後色素沈着が起こるケースがあります。
色素沈着とは
炎症後色素沈着(PIH)とは反応性色素沈着であり、にきびや火傷、処置などの炎症性事象のあとに起こる皮膚の黒化です4)。
肌色が濃いタイプの方はリスクが大きくなる
ポテンツァで照射されるRFエネルギーは、メラノサイトを刺激して過剰なメラニンを産生させ、色素沈着を引き起こす可能性があります5)。
特に肌の色が濃いほど、色素沈着が起こる可能性が高いです。
色素沈着を起こさないためには施術後のケアが大切
肌のタイプも影響しますが、ポテンツァ後のデリケートな肌が紫外線や摩擦といった刺激を受けると色素沈着のリスクが高まります。
とくにダウンタイム中は、紫外線対策や保湿ケアをしっかりと行い、肌をダメージから守りましょう。
万が一色素沈着が生じても、適切なケアを行っていれば3〜6カ月程度で自然と消えていくため心配はありません。
元に戻る可能性はある?
適切なアフターケアを心がけていれば、ポテンツァで治療した傷跡が治療前の状態に完全に戻るという意味での「元に戻る」ことはありません。
しかし、治療後に過度の紫外線を浴びたり、肌が乾燥した状態が続いたりすると、クレーターが再発してしまうおそれがあります。
また、新たなニキビの発生により、既存のクレーターが悪化する場合があります。
ポテンツァの治療効果を最大化するためには
ニキビ跡を治療したあとの再発を防ぐためには、スキンケアをしっかりと行うほか、毎日の食事や生活習慣を見直し、ニキビのできにくい環境づくりが大切です。
新たなニキビを誘発する要因を避け、定期的な受診でお肌の状態をチェックし、悪化しそうな症状には早期に対処すると治療効果を実感しやすくなります6)。
ポテンツァとフラクショナルレーザーとの違い
フラクショナルレーザーとは、レーザーを点状に照射して、肌本来の創傷治癒力を引き出す治療法です。
皮膚の深部に熱ダメージを与えてコラーゲンの生成を促進し、肌の生まれ変わりを促す効果があり、深いクレーター状のニキビ跡に対しても適応となります。
ポテンツァとフラクショナルレーザーは、肌をわざと傷つけて再生力を高めるという原理は同じですが、施術方法の違いによりダウンタイムや痛み、効果に差があります。
ポテンツァとフラクショナルレーザーの比較
ポテンツァとフラクショナルレーザーの主な違いをまとめました。
ポテンツァ | フラクショナルレーザー | |
---|---|---|
特徴 | ・マイクロニードルで肌に穴を形成し、針先から高周波を照射 ・ドラッグデリバリーシステムによる薬剤導入が可能 ・症状に応じてチップを差し替えられる ・ニキビ跡全般に有効 | ・点状にレーザーを照射し、肌の再生を促す ・点状の穴をあけるアブレイティブタイプと、肌の表面に傷をつけないノンアブレイティブタイプがある ・クレーター状のニキビ跡に効果的 |
ダウンタイム | 数日〜1週間 | 1〜2週間 |
痛み | チクチクとした痛み | 肌を刺すような強い痛み |
フラクショナルレーザーは効果が実感しやすい一方で、強い痛みを感じやすく、ダウンタイムも長引く傾向があります。
ただし、ニキビ跡の状態・重症度、照射する出力やモードなどによって効果は変わってくるため、どちらがニキビ跡に適しているか一概にはいえません。
医師と相談しながら、ニキビ跡の状態に合わせた治療法を選択してください。
まとめ
ポテンツァのニキビ跡への効果について解説しました。
ポテンツァは、マイクロニードルによる創傷治癒作用に加えて、線維芽細胞を活性化させる高周波(RF)の機能を備えた画期的な治療法です。
さらに、ドラッグデリバリーシステムによってニキビ跡の状態に合わせた薬剤を併用すると、より短期間での改善が期待できます。
ダーマペンのような従来のマイクロニードル治療では改善できなかった重度のニキビ跡に対しても、効果を実感できる方法です。
ニキビ跡がなかなか治らずにお悩みの方は、ぜひ一度当院にご相談ください。症状や肌質に応じた治療法をご提案させていただきます。
ポテンツァのニキビ跡への効果・治療でよくある質問
- ポテンツァのニキビ跡治療の主なメリットは何ですか?
-
ダウンタイムが短く、さまざまな肌タイプに対応でき、クレーター(瘢痕)のタイプや程度に応じてカスタマイズ可能な点があげられます。他にも、お肌の深い部分までダメージを与えず、肌の再生を促進し、ニキビ跡の改善を目指せるなど多くのメリットがあります。
- ポテンツァ治療後、どれくらいでニキビ跡の改善が見られますか?
-
個人差がありますが、1回の施術でも肌の変化を実感できます。一般的には、軽度のニキビ跡では1~2回、中等度のニキビ跡では2~4回、重度のニキビ跡では4~6回が効果実感の目安です。
- ポテンツァ治療後、再びニキビ跡ができる可能性はありますか。
-
ニキビ自体の再発や新しいニキビにより、新たな跡ができる可能性はあります。
- ポテンツァと他のニキビ跡治療法の併用は可能ですか?
-
はい、医師のアドバイスに基づいて併用できます。
- ポテンツァのニキビ跡治療での副作用は?
-
赤みや腫れ、稀に色素沈着が起こることが報告されています。
- ニキビ跡以外にもポテンツァは効果的ですか?
-
ポテンツァはニキビ跡だけでなく、毛穴の開きや小じわ、肝斑、赤ら顔など、あらゆる肌トラブルの治療にも対応可能です。
参考文献
1) Sang Tae Kim, et al. “Treatment of acne vulgaris with fractional radiofrequency microneedling.” J Dermatol. 2014 Jul;41(7):586-91. doi: 10.1111/1346-8138.12471.
2) Garg, S., & Baveja, S. (2014). Combination therapy in the management of atrophic acne scars. Journal of Cutaneous and Aesthetic Surgery.
3) Doddaballapur, S. (2009). Microneedling with dermaroller. Journal of Cutaneous and Aesthetic Surgery.
4) Davis, E. C., & Callender, V. D. (2010). Postinflammatory hyperpigmentation: a review of the epidemiology, clinical features, and treatment options in skin of color. Journal of Clinical and Aesthetic Dermatology.
5) Majid, I. (2009). Microneedling therapy in atrophic facial scars: An objective assessment. Journal of Cutaneous and Aesthetic Surgery.
6) hat, Y.J., Latief, I., & Hassan, I. (2016). Update on etiopathogenesis and treatment of Acne. Indian Journal of Dermatology.
- 赤み・腫れ(数時間~数日)
- 内出血(通常、一週間程度で消失します)
- ごく稀に色素沈着が起こる場合があります