眼瞼下垂の基礎知識

吊り上げ術(筋膜移植)の修正ーcase13ー

Dr.髙田

先日、車椅子に乗られた方が、家族に連れられ眼瞼下垂症手術の修正のご相談に来られました。

とある病院の形成外科で、2度にわたる手術を受け、収拾がつかなくなり、途方に暮れ、遠方から当院に来られました。

3年ほど前に、お体の具合を悪くされ、入院されたそうなのですが、その際に、ついでに眼瞼下垂症手術を受けられたようです。

初回の前転法の手術で、全く開瞼が得られず、結果、挙筋機能がないとの判断で筋膜移植を受けられましたが、お写真のような有り様になり、3度目の手術を同じ病院で受けようとしたところ、御家族からは別の病院でのセカンドオピニオンを勧められ、当院をインターネットで調べられご相談に来られました。
(前医では、これで大成功との診断だったようですが・・・・)

さらに、この方が不幸なのが、筋膜移植のため、大腿部から筋膜を採取されたたのですが、その部分が痺れてしまい、しかも、足の力が入らなくなったため、現在、車椅子生活になってしまったのです。

残念ながら、私には、足(大腿部)の治療はできませんが、瞼については、今よりは、改善させることができる見込みと自信がもありましたので、お引き受けすることとしました。

①術前のお写真。

一見、普通な印象を受けられると思います。

それは、皮膚の余剰が強いので、拘縮を起こした部分が隠れることで自然に見える状態になっております。

  
しかしながら、目を引き上げると、左眼の上眼瞼縁のラインが大きく、歪んでいるのがお分かりになられると思います。

術中の切開する前では、瞼がウイリーして、裏返り、睫毛が目に辺り、激しいドライアイ状態になるような状態です。

つまり、拘縮により、点で引っ張っていた部分が強くなり、瞼が歪んでしまったのです。

術前から考えられる問題点として、

  1. 移植された筋膜が、拘縮することによって、瞼に引きつりのようなベクトルがかかり、兎眼の状態になっていること
  2. 術後の瘢痕化により、むしろ、眼瞼下垂症症状が強くなってしまっていること。
  3. 二重の形が悪く、審美的な観点で問題があること。
  4. 大腿部から新たに筋膜を採取し、移植しなおすことは出来ないし、すでに、通してある筋膜が瘢痕化し、癒着していること。

以上が考えられます。

 
そこで、手術は、想定される二重で切開をし、眼瞼にある瘢痕化組織、拘縮を全て、取り除き、解除しました。

そして、新たに、吊り上げのやり直しをさせていただきました。

術前、隠れて、睫毛内反になっていた睫毛も元に戻り、兎眼も治り、二重もしっかりと出来、しかも、術前にあった皮膚の被りによる視野狭窄も改善しました。

1週間後の抜糸直後ですので、二重の幅は、まだ、特に左眼の目頭が広いのですが、時間が経つにつれて改善します。

結局、大腿部からの筋膜移植は、この症例のような拘縮の問題、足への侵襲の問題を考えると行うべきではなく、ゴアテックスによる筋膜移植の方が安全だと考えます。(もちろん、人工物を入れることのリスクはありますが、メリット、デメリットを勘案しての比較の上では、優っているのです。)

このような吊り上げ術(筋膜移植)の後遺症に悩まされている患者さんは意外に沢山いらっしゃいます。

ましてや、その修正を引き受ける施設は、非常に少ないのではないでしょうか??

他院の修正ほど難しい、そしてリスキーな手術は、ありません。

自分自身は、神様ではありませんが、眼瞼手術の職人としてのコダワリを持って、最大限の結果が出るように頑張っております。

- 【眼瞼下垂】延べ2万眼瞼以上の手術経験 -
- 【眼瞼下垂】延べ2万眼瞼以上の手術経験 -
記事URLをコピーしました